ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/02/14 『間違いの喜劇』蜷川シェイクスピアのベスト1

2006-05-03 23:03:32 | 観劇
2/14に観た蜷川シェイクスピアの『間違いの喜劇』の感想を書くことにする。なぜ今かというと5/6に『タイタス・アンドロニカス』を観る予定なので先にちゃんと書いておかねばと自分的に納得したいためである。
2/14の感動の第一報の短い感想はこちら
彩の国さいたま芸術劇場で37作品の上演を予定していてこれが15番目。もちろん途中から観ているので観ていない舞台も少なくない。この劇場以外での上演の舞台もある。とにかく私が観た蜷川幸雄幸雄演出のシェイクスピアではベスト1の舞台だった。彼のシェイクスピアの舞台にはいつもいつも圧倒されてねじふせられて感心したり感動したりする思いを抱いてきたが、今回のように心にあたたかいものが残る舞台は初めてだった。予想以上の素晴らしい舞台となっていて、カーテンコールで思わず涙が出てきてしまった。あまりのカンパニーの素晴らしさに感動してしまったのだった!

さて、脳内再現開始。
開幕前のロビーには楽しげな音楽を奏でる数人の楽隊がいた。ギリギリに着席した私は噂の鏡張りの舞台に目をひきつけられる。しかし『十二夜』と違ってガラスには欧風の建物の壁を飾る彫像などの絵が描かれていた。実在の劇場(イタリアのテアトロ・オリンピコ)を模した舞台美術の第3弾だったらしい。
開幕すると蜷川さんの常套手段の客席通路を通ってキャストの登場なのだが、今回は楽隊が先導する。1階客席通路側の席にいた私は思わず自然に身体ごと後ろを向いて手拍子。一人ひとりの役者さんたちの目を見るようにしながらお出迎え態勢に入ってしまっていた。その中で吉田鋼太郎さんとしっかりアイコンタクトがとれてしまい、じっと見送ると「サンキュー」と言ってくれたのだった!もうしっかり蜷川マジックの術中にハマった私。

『十二夜』同様、海難事故でバラバラになった双子を周囲が勝手に取り違えておこる混乱による喜劇なのだが、こちらは主従二組が一卵性の双子で混乱が二乗三乗と増幅されている。
主従二組の双子を演じているのは小栗旬と高橋洋。衣装はほとんど同じで帽子などの装飾品などで工夫しているがそれにしても歌舞伎にも負けないけっこうな早替わりなので若い二人にはかなりの負荷がかかったはずだ。兄弟での性格の違い、状況の違い、間違って扱われての混乱する心情のそれぞれの違いをあっという間に演じ分けなければならない。
蜷川さんは役者にかなりの負荷をかけてそこから通常では出てこないようなものを引き出すのがお好きなようだから、それにしっかり応えたふたりを褒めてあげたい。それと二人のやりとりを聞いていて原作を松岡和子さんの翻訳本で読んだ時のことを思い出した。あまりに主人が召使に手を上げるので嫌な気分になったことを。しかし今回実際にふたりが演じているのを見たらかけあい漫才のようで気にならなかった。やはり本で読むのと舞台を観るのとは相当違うなと実感した次第。

小栗旬は藤原竜也主演の『ハムレット』でフォーティンブラスを演じ、その時の眼力(めぢから)の強さにすっかり惚れこんでいる私だが、昨年の『お気に召すまま』のオーランドーでも成長を確認。そして今回の難役を立派にこなしてくれた。エフェソスに漂着したアンティフォラス弟のまっすぐな気性、エフェソスの名家の養子となって当主となっているアンティフォラス兄のちょっと傲慢なまでの自信たっぷりな剛毅な気性をどちらも魅力的に演じてくれた。特に兄は妻にも浮気をしている飲み屋の女将にも深く愛されているのだがそういう男の魅力をしっかり出さないといけないのだが、ちゃんと合格。
高橋洋は蜷川さんの舞台の常連でいつも手堅い演技で安心して観ていられる役者なのだが今回はいつも言葉遊びたっぷりの台詞を繰り出す道化的な役回り。この役の出来がこの舞台の成否を大きく左右してしまう。ドローミオ弟はいつも腰のベルト代わりのひもがゆるんでいてすぐにズボンが落ちてパンツ丸見えになるという役作りだったが、しつこく落としていたなあ。でもまあ嫌らしくないギリギリ許容範囲内だった(お下品なことが嫌いな人はダメかも)。役者としては先輩の彼がリズム感よく台詞を繰り出してくれたのでそれに主人役の小栗旬がうまく乗りテンポのよいやりとりが成立したのだと思う。

それと今回も昨年の『お気に召すまま』に引き続いて全員男性による舞台。昨年は成宮寛貴のヒロインの出来がよくなくて作品全体のしまりが悪かったのだが、今回のオーディションでこの役をかちとったという兄の妻エイドリアーナ役の内田滋の女形の演技が実にうまかった。美しいし嫉妬に燃えるテンションのアップダウンのきつい演技を実に魅力的に演じてくれた。がやきもちを妬く姿は滑稽だが可愛く、妬けば妬くほど夫が魅力的に見えた。その妹のルシアーナ役を毎回美女役を担当する月川悠貴が今回も冷たいまでに冷静で美しい演技。情動の激しい姉と冷静な妹という対比もきいていて魅力的。弟がひとめ惚れしてしまって言い寄ってしまったことから姉の夫から言い寄られたことになっての混乱となってしまうのだ。
最後は家族がバラバラになっていて漂着して囚われ人になっていた父親イジーオン(吉田鋼太郎)は処刑前に許され、弟たちがかけこんだ尼僧院の院長になっていた母親エミリア(鶴見慎悟)にも再会でき、その元で兄弟二組が再会でき、あらたに惹かれあった弟と妹も結ばれ、兄夫婦、両親とともに赤い糸で結ばれていたというイメージの3組の姿で夢のようにTHE ENDとなる。弟夫婦の結婚を祝う白い衣装で踊る
三組のカップルの接吻のあと、向かい合った二人の口から赤いリボン状のものがするすると動きにあわせて出てくるという美しい演出。

さてさて、双子の兄弟の再会場面はどうするの~という『NINAGAWA十二夜』以来の興味だが、今回はマスクを使わずにメイクを似せた別の役者を使って声だけ本役がしゃべっていた。小栗旬の本当の兄が兄役を演じたのでかなり雰囲気が似ていてちょっと感心した。それとプログラムによると双子=鏡というイメージで今回も鏡が使われたのだそうだ。なるほど、それで連続して鏡だったんだと納得。

脇を固める役者たちも素晴らしい出来。最後はオールキャストが客席通路を通っていくのを手拍子の中で送り出すことになる。そこで一人ひとりとアイコンタクトをとりながら送り出した私。
こちらの通路を小栗旬が通る。そこで...長~くアイコンタクト実現!!え~っ、本当???本当にキラキラしたいい目だなあ。(誰ですか、変なおばさんだからしっかり見られただけだっていうの!)この目に惚れているために見送るはずだった『タイタス・アンドロニカス』再演を観ることになってしまった私なのだった。

写真は、今回公演のサイトより。


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2 コメント

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Unknown (sino)
2006-05-04 10:12:03
はじめまして。この時期に「間違いの喜劇」の感想なので嬉しい驚きでした(笑)。私もこのカンパニーの素晴らしさには感動でした。全ての役者が個々の役割をきっちりと果たし魅力的で光ってました。これだけのドタバタ劇でしかもスピード感のある舞台でありながらも、今でも役者さん達の姿がくっきりと浮かび上がってきます。しかも全ての役者さんがです!これは凄い事だと思います。「タイタス」観に行かれるんですね。迫力のある素晴らしい舞台で役者の力を感じましたが、観終わった瞬間、「間違いの~」を又観たいな~と思ってしまったのでした。

小栗くんのキラキラ輝く目を堪能してきてください。今回はキラキラというよりギラギラですがまた成長し中々良い演技をしてますよ。
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忘れた頃の感想アップで恐縮ですm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-05-05 19:01:58


★sinoさま

2月の公演の感想アップを今頃しているのに早速のコメントありがとうございますm(_ _)m

>このカンパニーの素晴らしさには感動でした。全ての役者が個々の役割をきっちりと果たし魅力的で光ってました...本当に同感です。だから毎回観てしまうのです。

いよいよ明日「タイタス」観てきます。小栗くんのギラギラした目を見たいし、成長を確認してきたいです。
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