ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/01/17 新春浅草歌舞伎(1)立役二人の「正札附根元草摺」

2010-01-18 22:48:37 | 観劇

快晴の気持ちのよい日曜日、新春浅草歌舞伎第1部に出かけた。北西のキティさんと雷門で待ち合わせ。そこからすぐに役者の名前の札の掲げられた仲見世の飾りが賑わしい。

【年始ご挨拶】
1/17のお年玉の年始ご挨拶は愛之助だった。北西のキティさんに今回イチオシの愛之助の挨拶に偶然当たってちょっといい感じ。
1階席限定だったがお客さんから質問を受け付けるという趣向で、1列目の若い男性が元気よく両手を挙げ、愛之助が指名して飛び降りてその方のところへ。京都から「日本一の役者さんの愛之助を観にやってきた」ということで熱烈贔屓の方らしい。
Q:「役者にならなかったら何になっていましたか?」
A:「何かで答えたことがありますが、パイロットです。飛行機を運転、じゃなくて操縦しているところでUFOに出会いたい」というような内容。真面目な職業を志向しつつ、夢を求めるという感じかな。こういう受け答えも実に好青年である(^^ゞ
それと「客席も一緒につくるのが歌舞伎なので可笑しかったら笑ってください。いいと思ったら拍手をしてください」ということで、拍手の練習を階ごとにやって全体でやってきっちり盛り上げて締めた。
合格!

【正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)】
以下、内容と配役は公式サイトより引用。
「工藤左衛門祐経に父を討たれた曽我五郎時致(亀治郎)は、血気盛んな若者に成長し、父の仇を討とうと鎧を手にして工藤の館へ駆け出そうとします。これを止めたのは名うての大力の持ち主である小林朝比奈(勘太郎)。朝比奈は、五郎と鎧の草摺を引き合い、その行く手を阻みます。朝比奈が「悪身(わるみ)」と呼ばれる男姿で女の振りを滑稽に見せるのが見どころのひとつです。鎧などを引き合って力を自慢する「引き合い事」という荒事の演技を取り入れた華やかな舞踊です。

お正月の歌舞伎の定番「曽我物」の舞踊だが、五郎と小林朝比奈の立役二人で踊るのを観るのは初見なので新鮮。これまでは朝比奈の妹の舞鶴が五郎とからむバージョンの「正札附根元草摺」を観て来た。菊音会さんのサイトの説明によると小林朝比奈は曽我兄弟の後見人的存在とのこと。

長唄の皆さんが乗った台が左右に割れ、後ろから亀治郎と勘太郎が登場。浅草公会堂はセリから登場できないのを工夫して補っている。3階からだと二人の頭が見えていたが、そこはご愛嬌。
長唄は何を歌っているやらちゃんとは聞き取れない私だが、二人が踊るのを観るだけで面白かった。小柄な亀治郎も五郎を熱演。五郎の隈取も似合って見得を切った顔も立派。
朝比奈が力紙の上から姉様かぶりのような帽子をつけて猿隈・鎌髭の顔のままでシナをつくって踊るギャップが可笑しい。こういう滑稽な芸を楽しむことができるのも歌舞伎というものの面白さだと思う。
勘太郎は女方の踊りがちゃんとできるので「悪身」で踊るところも柔らかくてそれらしくていい。芝翫が勘太郎を小さい時に女方に向いた身体と判定してきっちり稽古しているのが生きているのだろう。それに立役としての大きさも出てきたのは初代吉右衛門と同じ血が流れているせいだと思う。いつかの秀山祭で見た初代吉右衛門の若い頃の写真で勘太郎にそっくりなものがあってDNAに感心したことがある。とにかく勘太郎の朝比奈は立派だった。
踊りの巧い亀治郎・勘太郎の「正札附根元草摺」は花形らしい若々しい清新さがあって、予想以上の見ごたえがあって満足した。

写真は「正札附根元草摺」の絵看板を携帯で撮影したもの。