ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/01/11 NHK「若者よ 心をぶつけろ~演出家・蜷川幸雄 -格闘の記録~」再放送も見る

2010-01-12 23:59:36 | テレビ
(追記も少し入れました!)

年末に下記の記事にコメントをいただいていた。
2006/07/14 半分だけ観たNHK「この人にトキメキっ!蜷川幸雄」
蜷川幸雄のドキュメンタリー番組情報を教えてくださるコメントだった。NHKの「若者よ 心をぶつけろ~演出家・蜷川幸雄 -格闘の記録~」だ。チェックしてはいたものの、すぐに忘れてしまう私には有難く、12/23のオンエアをしっかり見た。
monchanさん有難うございますm(_ _)mこの間の既述の事情により返事のコメントもままならず、返事も遅れたことにお詫び申し上げます。

【若者よ 心をぶつけろ~演出家・蜷川幸雄 -格闘の記録~】1月11日(月)総合TV午前10:05~午前10:50
2009年末のNHKワールドプレミアム 番組表の情報から以下、抜粋。
“世界のニナガワ”として知られる、演出家の蜷川幸雄さん、74歳。演出家になって40年目を迎えた今年、無名の若手俳優をオーディションで選び、新たな演劇集団『さいたまネクスト・シアター』を立ち上げた。若者たちに求めるのは、社会に対する不満や怒りといった“ノイズ”あふれる演技。それは、蜷川さんが演劇を通して社会に投げかけ続けてきたメッセージだ。蜷川さんは今年6月、突然、脳梗塞で倒れた。幸い症状は軽かったが、経過観察の状態が続き、他にも心臓や肺、糖尿など、一日10種類もの薬を飲みながら舞台に挑んでいる。番組は、老いを抱えながら、無名の若者たちと真剣に向き合った蜷川さんの日々に密着した。
NHK番組表の情報1月分から以下、引用。
“世界のニナガワ”として知られる演出家・蜷川幸雄。74歳になり、演出家としての残り時間を考え始める折、2009年に無名の若手俳優44人と新演劇集団「さいたまネクスト・シアター」を作った。蜷川は怒りや不満など心の内面を演技に込めるよう、若者たちを徹底的に追い詰め、厳しく指導。若者たちはもがき苦しみながら、懸命に食らいつく。老演出家と平均年齢25歳の若者たちの、旗揚げ公演に向けた真剣勝負に密着した。

同じNHK番組の情報なのに切り取り方が違うのに感心。“世界の~”で始めるのは共通しているのがちょっと笑えたが(^^ゞ
「真田風雲録」の千穐楽をしっかり観ているので、ドキュメンタリーの内容が実に胸に迫った。戯曲もあらかじめ読んでの観劇だった。時代とともにそこで育つ人間の意識も違ってくる。1960年安保闘争から70年安保闘争にかけて全共闘の学生だけでなく社会全体の政治意識が高まった時代や人間の熱さが滲む作品を現代の若者がどれだけ自分のものにしてくるのか、観てやるぞ!と客席に着いたものだ。
予想以上に素晴らしかったのだが、やはりここまでの苦闘が蜷川さんにも若者たちにもあったのかと2回とも胸が熱くなった。

若者に投げかける言葉。以下、記憶なので正確さは求めないでねm(_ _)m
「台詞としてしゃべっているから嘘っぽい。お前っていう人間の感情がこもった固有名詞の芝居じゃなきゃ意味がない。普通名詞の芝居はいらないんだ」「なんでジャニーズの方がお前たちより一生懸命なんだよ」どんな風に言ったら若者たちが変わるかもの凄くいらだち、考え込む蜷川幸雄。これじゃ胃にガンもできたことがあるだろうことがよくわかる。
もちろん頑張ってはいるだろうけれど、一生懸命覚えて間違えないようにというレベルの、学生演劇に毛の生えたレベルの若者たちの演技。戦国時代の戦場でのアンサンブルの歌「下克上のブルース」が確かにぬるい。
「空気が嘘っぽいんだよ」蜷川の怒りが爆発する。

役はどんどん入れ替えられる。ギター侍の場面もある望月六郎役の露敏(ろびん)にスポットがあてられ、稽古場でボロクソに言われ、役をはずされて別の役に回され、父のいない家族の暮らしを支えて睡眠時間を削ってカラオケでバイトする姿にも密着。ギターを使っての独唱がどんどん変わっていく。
「♪どんなくるしみにも人は馴れる、いつか馴れる・・・・・・馴れたときからくるしみがはじまる・・・・・・」(T-T)この歌詞はなかなか胸に迫ったもんなぁ。

最近の稽古場では灰皿も飛ばなくなったというように聞いていたが、当日の特設ステージ同様にすり鉢状に客席を設けた稽古場の上段からパイプ椅子が投げつけられた。
騎馬隊はもちろんいるが、足軽たちが泥土の戦場を駆け回る当時の戦争(いくさ)!雨が降れば文字通り泥まみれだ。その死体からお宝を奪って生きている人間群像。
その人間の感覚をわからせるための思いつき。若者たちを泥まみれにする。言葉でだけではダメで、触覚や嗅覚なども動員した身体の感覚全体でこそわかることがある。その劇的変化が稽古場で起きた!
これであの泥を敷き詰めた異様な舞台が生まれたのかと、あらためて感動する。このドキュメンタリーがとらえた千穐楽の舞台に立ち会えたことは幸せだったなぁと噛み締める。

旗揚げ公演までの苦闘で一回り成長したかに思えたネクストシアターの面々に次なる課題が与えられた。次回の作品はウィリアム・サローヤンの「おーい、救けてくれ!」。課題をやってこれなければクビだと宣言されていた。

番組中でインタビューに答える的に蜷川が語っていたことで印象に残ったことをもう一つ。「年寄りは若い奴らがこれから世に出られるように場所をつくってやらなきゃいけないでしょう」。そういう責任感に突き動かされ、今になってネクストシアターを立ち上げたのかぁと納得。
ハヤカワ演劇文庫から出版されている。私もまずはしっかり戯曲を読んでみよう。その作品が気に入って、若者たちがどう向き合うかが楽しみになればまた観に行くつもりだ。

*関連して・・・・・・寺山修司の「血は立ったまま凍っている」は見送りです。
今の私は戯曲が手に入れば事前にチェックし、いくら蜷川幸雄演出の舞台でも作品的に自分に合わないと思うものは観ないことにしている。無理をして観てつらい時間を過ごすリスクを負わないというのも必要な自衛措置だと思っている。

そうそう、最近オンエアされている『通販生活』のTVCMで蜷川さんが寝っころがって本を読むのにいいライトを気に入っていると宣伝している笑顔はなかなか可愛いと思ってしまった。怒ったり笑ったりと喜怒哀楽の感情の起伏が大きい人物だからこそ、ああいう心を突き動かすような舞台を創り出せるのだろうか。