ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/11/04 演舞場花形歌舞伎昼の部③奴隷と主人の恋「番町皿屋敷」

2006-11-15 21:45:51 | 観劇

今月の演舞場で一番気がのらなかった「番町皿屋敷」。この演目が「四谷怪談」や「牡丹灯篭」のような怪談だったら楽しみになるのに。ガイドブックでこの話の内容がわかってからこれまでの歌舞伎座でかかった時もずっと観るのを避けてきた。それくらいこの話と私の相性が悪い。江戸時代の倫理観は現代人である私たちには理解できないことも少なくないので、そのあたりは割り切って観ているのだが、この話は私の許容範囲を超えてしまう。
しかし今回は「勧進帳」「弁天小僧」と抱き合わせなので見送れない。そういう意識があるからか、朝一番のこの演目、しっかり遅れて到着。周囲の皆様には恐縮m(_ _)m

3.『番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)』
この話の主人公は旗本奴の「白柄組」の一員。二月歌舞伎昼の部で惚れこんだ播磨屋の「幡随長兵衛」たち町奴の反対勢力だ。それは別に構わないのだが。
2/18二月歌舞伎昼の部「幡随長兵衛」の感想はこちら
あらすじは以下の通り。
主人公は旗本(それも番方)の青山播磨(イヤホンガイドで番方の人たちが住んでいた町が番町と聞いてなるほど感あり)。かねてから犬猿の仲である町奴たちと花見に行った先で出くわし喧嘩を始めることろ、伯母の眞弓が駕籠に乗って現れて喧嘩を預かり播磨を諫める。喧嘩に明け暮れる播磨を落ち着かせようと眞弓は縁談を勧めるが播磨はきっぱりと断る。腰元お菊との恋を貫くつもりなのだ。
一方、縁談の噂を聞いたお菊は播磨の本心を知りたい気持ちが募るばかり。白柄組の頭目たちを招いた酒宴の日。それを割る者はお手打ちという家訓まである家宝である皿がその宴席のために用意されている。お菊は播磨の心を確かめるために恐ろしいことを思いつくお菊。お菊は迷った末に家宝の皿を割ってしまうのだ。
播磨は粗相なら仕方がないと赦し、その愛情に幸福の絶頂に上るお菊。そこに現場を見ていた腰元のお仙から事実が用人の十太夫に伝わり再びの詮議。ついにお菊は播磨の心を試すためにわざと割ったことを明かす。
播磨は態度を急変。白柄組で吉原に繰り出しても女に手を出さず、伯母からの縁談も断って貫こうとした自分の想いを疑ったことに怒る。そして皿を割ったから成敗するのでないことを残りの皿を次々に割って示す。これで思い残すことがないというお菊を庭先で一刀のもとに手打ち。その遺骸は井戸に放り込ませる(まさにこれで‘皿屋敷物’になるわけだ)。
そこに白柄組と町奴たちの喧嘩が起こったとの知らせがくる。「生涯で一度の恋も失うた」とか言って喧嘩三昧の日々に生きがいを求め、その現場に駆けつけていくところで幕。

岡本綺堂作の新歌舞伎の代表的な演目で大正5年の初演以来の人気狂言だという。だから繰り返しかかってしまう演目なのだ。
このふたりの場合、身分を越えた恋愛をしているようだが、やはり“奴隷と主人の恋”でしかない。相手の気持ちを疑ったからといって命を奪われても仕方がないのは奴隷という立場だ。お菊は播磨の気持ちを確認して満足して死んでいったが、まさに奴隷根性だ。絶対的な主人と奴隷の恋愛のドラマをこの私がどうして観なくてはいけないのだろう。このへんが私の場合は「赦しがたい!」のである。

以下、今回の配役についてひとことずつ、ここは冷静に書く。
青山播磨=松緑:今年の国立劇場の鑑賞教室で見た時の印象と違って顔がすっきりとしていてイイ感じだった。うーん勘三郎・海老蔵だけではなく松緑までダイエットしたのかなぁと思った。今回が初役だというが、単純で一本気な若殿(馬鹿殿だけど)を好演していたと思った。
渋川後家真弓=家橘:先月のおかやに続く女方だったがこちらの方がいい感じ。それだけおかやが難しい役なんだろうとあらためて思う。
腰元お菊=芝雀:浅はかだが可愛いお菊だった。もう芝雀はこういうお役が無類にハマる。雀右衛門の女方の持つ雰囲気によく似ているのが嬉しい。
腰元お仙=松也:美し~い。ボーっとしているお菊をたしなめる姿もキリッとしているし、結局は現場を有態に報告してしまうその現場をみているところも緊張感があってよかった。今のうちに松也の女方をいっぱい見ておきたい。
放駒四郎兵衛=猿弥、並木長吉=薪車の印象が残っていないのは何故だろう。遅刻して冒頭を見逃したし、話が好みでないから入ていきづらかったせいだろう。
柴田十太夫=亀蔵:3月のコクーンでの「四谷怪談」の宅悦以来の「人がいい人」のお役だったと思う。アクの強い役からこういう役まで魅力的にこなしてくれるので私は贔屓である。

写真は今回の席から撮影した新橋演舞場。歌舞伎座よりも客席数が少ないので歌舞伎会一般会員では休日は3階席はとれなくて戻りで二等席を奮発。2階右1列目で観劇。「勧進帳」も「弁天小僧」の特に【稲瀬川勢揃いの場】も花道度が高かったので、甲斐があったというものだ。
関連の感想記事はこちらm(_ _)m
11/4昼の部①ヒートアップの「勧進帳」
11/4昼の部②菊之助の「弁天小僧」
11/24夜の部①「馬盥」で松緑を見直す
11/24夜の部②菊之助の「船弁慶」
11/24夜の部③海老蔵の澤潟屋型「四の切」!