ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/11/04 演舞場花形歌舞伎昼の部②菊之助の「弁天小僧」

2006-11-12 22:59:24 | 観劇
今月の演舞場は「勧進帳」とこの演目を楽しみにしていて観ている。
「弁天小僧」の演目を観るのはこれで3回目。高校時代の国立劇場の鑑賞教室で当時の菊之助(現菊五郎)で観た。娘だったのに本性がばれて男へ切り替わるところに歌舞伎の女方というものの面白さを感じた記憶がある。南郷力丸は辰之助だったような気がする。2回目は一昨年4月の歌舞伎座で『青砥稿花紅彩画』版を勘九郎の弁天小僧で観た。
そして今回が3回目。まさに同じ役を父と息子で観ることになったわけだ。30年もたってしまったのだから感慨深いものがある。

ウィキペディアで「青砥稿花紅彩画」はこちら
2.『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』
浜松屋見世先より稲瀬川勢揃いまで
今回の配役は以下の通り。
弁天小僧菊之助=菊之助  南郷力丸=松緑
忠信利平=男女蔵  赤星十三郎=松也
日本駄右衛門=左團次  鳶頭清次=團蔵
浜松屋幸兵衛=家橘  浜松屋伜宗之助=梅枝
浜松屋番頭=橘太郎

【浜松屋見世先の場】
番頭と手代や丁稚たちのやりとりで気分が高まる中で、美しい武家の娘と供の者に化けた菊之助と松緑の花道の出。姿の美しさにまず客席から溜息がもれる。ところが本性丸出しで悪事の相談をしながら歩いているのが可笑しい。
浜松屋の男たちはそのお嬢様の美しさにデレデレになりながら反物などを見せているが、万引の様子を見て番頭以下がさっと商品を引き上げて詮議にかかる。二人の計略にひっかかったのだ。
番頭が算盤でお嬢様の額を割ったことで力丸の強請りの調子がぐっと強まる。お金で解決を図ろうとまずは出入りの鳶頭清次が話をつけようとして失敗。次に浜松屋主人の伜の宗之助が対応。埒が明かずに幸兵衛が出てきてあれよあれよという間にまんまと百両をせしめた!
と思ったところで玉島一刀と名乗る侍が奥から出てきてこれは強請りだから金を払う必要がないと喝破する。お嬢様は男が化けている、二の腕の刺青が見えたという。
身を縮めて追い詰められ、「サアそれは」「サア」「サア」「サア」の声も美しい菊之助。
緊張が高まったところで身体の力が抜ける。そして出される男の声。このタイミングがよくてゾクゾクする。本性がばれたら窮屈な女の着物は着ていられねぇとくりからもんもんの刺青まで見せてはだけてドッカと胡坐をかく。そして「しらざぁ言ってきかせやしょう」からの名台詞の場面できまる。
河竹黙阿弥がこんなに面白い脚本を書いてくれたことに感謝の極み。『NINAGAWA十二夜』の女から男への変身より遥かに面白い。男女の変化だけでなく、気品あふれる娘から下品な小悪党の男に一瞬で変わるからその落差が激しいのが面白いのだ。人間の変身願望も満たしてくれるからかもしれない。この場面だけで言えば一昨年の勘九郎とは比べ物にならないくらい姿と声の良さで楽しめる(今回はない立腹場面などでは凄みが出せる分、勘九郎の方がいいに決まっているが)。「時分の花」の菊之助でこれを観ることができる幸せというものだ。

松緑の南郷力丸もなかなかいい。このコンビで再演を重ねていけばもっと魅力的な舞台になっていくだろう。
橘太郎の番頭さんが三枚目のなかなかいい味を出していてコミカルなこの場面を支えていたと思う。
【稲瀬川勢揃いの場】
玉島一刀の本性は日本駄右衛門という盗賊の頭目。わざと弁天たちの悪事をあばいて浜松屋の信頼を得、さらなる大金をゆすろうとしていた。そのくだりはとばしてこの場面になっている。
日本駄右衛門以下5人の盗賊代表が稲瀬川で勢揃いして捕り方に囲まれて立ち回りとなって幕という単純な場面。とにかくビジュアルと台詞が美しい。それを堪能するためだけにある場面。

左團次の駄右衛門は貫禄十分の手馴れた役だと思ったが、NHKのお遍路ドラマに出演されているので負担を減らすためなのかなとも推測。男女蔵の忠信が予想以上によかった。松也の赤星の美しさにも惚れ惚れ。『NINAGAWA十二夜』の博多座公演では菊之助だけで双子の兄妹をやるのではなく、松也に兄をやらせてくれないかな。そうするとあのラバーマスクを使わなくてすむのにとまた思ってしまった。

写真は歌舞伎ガイドブックの中の菊之助の弁天小僧の画像(菊之助襲名公演の時のもの?)より。
この写真を見た時はまだまだ少年っぽさが残っているなぁと思った。今回は十分に若者の弁天小僧だった。それも美しい若者!眼福至福のひとときだった。
関連の感想記事はこちらm(_ _)m
11/4昼の部①ヒートアップの「勧進帳」
11/4昼の部③奴隷と主人の恋「番町皿屋敷」
11/24夜の部①「馬盥」で松緑を見直す
11/24夜の部②菊之助の「船弁慶」
11/24夜の部③海老蔵の澤潟屋型「四の切」!
追記
本日(11/12)歌舞伎座昼の部でおじさま達の大歌舞伎を観た。ベテランと若者の歌舞伎の舞台を同じ月に観ることができるのはとても有難く嬉しいものだ。
そして歌舞伎座とワッフル屋さんで次々に5人のブロガーさんとお会いできた。その盛り上がりの楽しかったこと。その勢いでこの記事を書き上げることができたことに感謝しますm(_ _)m


最新の画像もっと見る

11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
5人ノブロガーさんって? (yukari57)
2006-11-13 00:17:54
昼の部(自分除いて)ひいふうみいよお、なんですが、あと1人はどこから出てきたのだろう・・・

夜の部、Sさんと一緒になって小諸蕎麦行きました。クレムリにも一人で行きました!今日は演舞場通し、頑張ります。
返信する
TBありがとうございます (harumichin)
2006-11-13 00:35:11
2週続けてのオフ会楽しそうですね!
11日に3度目の花形昼の部鑑賞!でついに
勧進帳の弁慶を見ていて笑ってしまいました。
(隣にいた海老大ファンの母にもちろん即刻注意されましたが・・)
ほんと今月は、何につけ盛り上がれることは、楽しいですね!
返信する
皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-11-13 01:50:09
★yukari57さま
今日は短時間でしたが楽しかったです。さてメンバーはmayaribeさん、けろちゃんさん、お茶屋娘さんまででしたね。そして私がお会いしたブロガーさんの5人目は真聖さん。シアターコクーンで『タンゴ 冬の終わりに』を観てから移動してきてワッフル屋さんで合流されたんですよ。yukariさんとはすれ違いでした、残念!またの機会があると思いますよ(^O^)/
★「花がいっぱい」のharumichin様
先週は銀河劇場にてのオフ会たのしゅうございました。またまた今週も歌舞伎座界隈でのオフ会をやっておりました。当初2人の予定が3人になり4人になり最終5人のブロガーさんとお会いできました。これってけっこうすごいかも(^^ゞ
harumichinさんご存知の方も複数いて、話題に登場していただきましたよ。
さて「勧進帳」の賛否両論についても末尾にリンクした方の記事でふれています。しかしこれだけ両論が出て盛り上がるというのはそれだけ話題になっているということでそれはそれでいいことなのかも。
一方、今日の歌舞伎座「先代萩」竹の間で菊五郎丈仁左衛門丈で火花が散っていたし、最後の幕切れには勝元に落涙。やっぱりおじさまたちが本気出すとすごかったです。そちらもボチボチ書いていきます(^O^)/
返信する
楽しかったです (あいらぶけろちゃん)
2006-11-13 14:37:28
10~15分の立ち話でさえ、あそこまでいろいろ話が発展するのだから(爆)
ワッフル屋さんにも未練はあったのですが、松禄の光秀もみてあげなきゃという母性本能が

段ちゃんの義経 良かったです~
お茶屋娘さんに謝らなくてはならないのは 松竹座のお殿様は初登場の場面だけ染ちゃんの「俺をみてくれ」オーラに負けてたとこだけ残念だっただけなのでしたが、言葉が足りませんでした。
ってよそさまのコメント欄にて・・・まぁ、お茶屋娘さんもここをみてくださると信じて(笑)
返信する
有難うございました。 (mayaribe)
2006-11-13 19:04:17
皆様の愛と熱に圧倒されて、ロクな事言えませんでした…。
ほんっとーにお気楽極楽に観ている自分を痛感、あと何年観たら皆さんのように鋭い目を持つ事が出来るかしら??

お声をかけていただきまして、有難うございました。
返信する
昨日はどうも! (お茶屋娘)
2006-11-13 21:25:29
でした~。

けろちゃんさん、あの段ちゃんは、さりげない存在感を見せればいいのだから、最初は印象薄くても全然無問題!染ちゃんを食っちゃったら、それこそよろしくないでしょう!義経は今回が一番のでき!という方が多いですね。うれしいなあ。

yukariさま、mayaribeさま、ぴかちゅうさま、真聖さま、楽しくすごさせていただきありがとうございました。
返信する
続・皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-11-14 01:58:19
★「pu*pu*pu」のねも様
お初のTBありがとうございます。これからもよろしくお願いしますm(_ _)m
「弁天小僧」は父子2代観たことになり、感慨深いです。松緑とのコンビがよかった。こちらも練り上げていって欲しいです。
★あいらぶけろちゃん様
歌舞伎座に向かう途中でメールを入れたらすぐにお返事いただいたのに、今度はこちらが気づくのが遅くてごめんなさい。早く気づけばランチ幕間もご一緒できたのにちょっと残念。上京の際はダメもとで事前にご連絡くださるとけっこう有楽町・銀座界隈なら合流が可能です。
段治郎の義経から細川の殿様に飛ぶわけね。来秋の演舞場でかかると信じて待ってます!
★mayaribe様
おばさま達で囲みすぎてしまったかしら(笑)大丈夫、そのうちズケズケしゃべれますよ。それぞれがご贔屓を褒めまくり、でも~っとか言って課題も提示。おいおい勝手に評定するなよ~、いやいいんだよ~状態でございます。
これからもよろしく(^O^)/
★お茶屋娘さま
2週連続わざわざお茶だけしに合流していただきまして有難うm(_ _)m
そうそう、主役が出ている舞台で脇役は必要以上に目立ってはいけないんですよね。段ちゃんの四天王もよかった。目立たないようでいてでもやっぱり目についてしまった。オーラまでは出てないけれど、やっぱりカッコよかったです。引き続き応援しますからね(^O^)/
返信する
倒れるかと思いました^^ (Ren)
2006-11-14 07:57:31
TBありがとうございます☆
菊之助さんの弁天小僧が正体を現して、刺青を見せちゃう場面ではあまりの艶っぽさにクラクラして倒れるかと思いました今が時分の花、美しい菊之助さんの弁天小僧に心底惚れました
返信する
★「如意宝珠」のRen様 (ぴかちゅう)
2006-11-14 22:16:08
TB、コメント有難うございますm(_ _)m
>倒れるかと思いました.....惚れっ惚れ気分最高潮ですね!私は今月のベストは仁左衛門丈になりそうな感じです。「先代萩」の八汐で笑わせていただいた後に二役の勝元で泣かされてしまうし、急性症状がもう数日続いてます。
「番町皿屋敷」も早く書かなくてはと思うのですが、話があまり好きではないので気がのらないというのが本音です。今書きつつはあるのですが(^^ゞ
今月は演舞場と歌舞伎座で若手とベテランの歌舞伎を観ることができて充実しそうで嬉しいです。感想を書くのが相当遅れることが予想されますが、ボチボチ書いていくつもりです。
返信する
TB&コメントありがとうございました (dream)
2006-11-26 19:32:16
ぴかちゅう様も「弁天小僧」を父子2代ともご覧になられたのですね。私は菊之助さんが菊五郎様に似てきて綺麗なので嬉しいです。
「勧進帳」は弁慶役の「海老蔵様」の迫力に圧倒されました。本当に凄かったです。
ぴかちゅう様は、花形歌舞伎(夜の部)も観劇されたのですね。記事を楽しみにしております。
こちらかも、TBさせて頂きました。
返信する

コメントを投稿