ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/10/09 東宝『エリザベート』ミーハーキャスト評その3

2005-10-10 00:21:32 | 観劇
その3はゾフィー、ルドルフ、マックス、ルドヴィカ。一応これでしめくくる。
(5)皇太后ゾフィー=寿ひずる
初演からの初風諄が体調不良のため休演となりピンチヒッターとして登場したが、これが素晴らしかった。昔昔、宝塚『ベルばら』の小公子を演った時に観たが、トップになる前に退団。舞台復帰後は数年前の『風とともに去りぬ』のベル・ワトリングでふくよかになったお姿にあいまみえた。そして今回の皇太后ゾフィー。初風諄もマリー・アントワネット主演以来の貫禄あるお姿だったが、いかんせん声域がミスマッチで迫力が今ひとつなかった。ここで寿ゾフィーは元男役だっただけに声域も無理なく迫力ある歌唱力も発揮され、芝居も細かく情感あふれ、息子フランツを思いながら心臓麻痺で亡くなる前に歌い上げるソロは万感胸に迫るものがあった。
初風さんには申し訳ないが、この役は今後、寿さんに演っていただきたいと思う。

(6)皇太子ルドルフ=パク・トンハ
他のおふたりは今回観れず。昨年の公演からの登場だが、3人の中で一番のお兄さん的雰囲気のルドルフで熱血派という感じがいい。韓国ミュージカル界で主役をはっていただけにダンスシーンは一番よかった。日本に活躍の場を求めて来日し劇団四季にも在団して鍛えられている。四季がアジアのミュージカル界の人材を育てる役割を果たしていることは大いに評価したい。
実際のルドルフは本当は30過ぎのカイゼル髭をたくわえた妻子持ちで、映画『うたかたの恋』でよく知られているようにずいぶん年下のマリー・ベッツェラ男爵令嬢と心中したわけだけど、脇筋は簡素化でこのミュージカルではまるで独身の若者のような設定になっている。しかしながら十分な大人になって政策的に父親と対立した末の自殺というのが史実だ。だからその辺の政治活動の様子を独立派とともに活動する場面やドイツ民族主義の台頭に対して怒りをあらわにする場面、父親に自分の主張をする場面などで大人の男としての振る舞いを感じさせたパク・トンハに好感をもった。それと韓国では男子に2年間の徴兵制がしかれているので日本人よりも政治意識がしっかりせざるを得ないという社会の違いがあることの影響もあると思う。だからそういう意識の違いが演技にも出てきているのだと思っている。

(7)マックス(エリザベートの父親)=村井国夫
マックスは自由奔放に生きた変わり者の公爵で、娘のエリザベートがその生き方に憧れて「パパみたいになりたい」と歌うような魅力あふれる人物として演じなければならない役だ。村井マックスは昨年の公演からの登場だが、冒頭の娘の家庭教師との浮気現場からその魅力が炸裂。好色さもその魅力に女の方から寄ってくるような感じで嫌らしさがなく、実にいい。♪「結婚は失敗だ」♪と寿ゾフィーとデュエットする場面など今回の公演で初めてうなってしまった。コルフ島で霊として現れ、娘と不協和音でデュエットする場面もきちんと成り立っている。初演の寺泉憲はちょっと歌が力及ばずだった。ここは二人とも歌が上手くないとひどい場面になってしまう。村井マックスによってエリザベートの不幸な人生が際立ついい場面になった。

(8)ルドヴィカ(エリザベートの母)=春風ひとみ
初演の阿知波悟美も悪くはなかった。しかしゾフィーと姉妹には見えなかった(失礼m(_ _)m)。春風ルドヴィカが娘ふたり、姉ゾフィーと並ぶとちゃんと貴族が並んでいるように見える。それってけっこう大事だと思っている。
春風ひとみのひとり舞台『壁の中の妖精』を今年は観たかったのだが、8月の短期間の上演だったし体調をくずしていたのでまた見送ってしまった。次回こそ是非観たいと思っている。

キャスト評、以上8人でしめくくる。次回の公演あたりからまたキャスト一新の噂があるが、またそれもありだろう。作品も進化しているし長く上演を続けていってほしいものだ。

写真は、東宝のHPから皇太后ゾフィーの寿ひずるの画像。