ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/10/09 東宝『エリザベート』ミーハーキャスト評その2

2005-10-09 22:48:04 | 観劇
その2はフランツとルキーニ。
(3)皇帝フランツ・ヨーゼフ=石川禅
昨年の公演からダブルキャストになり加わった石川禅。鈴木綜馬は今回観れず。昨年はまだまだ役にはまっていなかった感じがあったが、それでもの最後の「悪夢」の場面はトートと感情を爆発させて対決する芝居がすごい迫力だったのが印象に残っている。また、青年時代のメイクで宝塚のように目に青いラインを入れていたのがいただけなかった。今回観たら青ラインは入れずにマリウスメイクっぽくなっていてホッとした。彼は細かい芝居をきちんとしてくれるし、歌詞もはっきり伝わるように歌ってくれるので、マリウス時代からご贔屓だ。

表情も豊かで笑顔も可愛いのでエリザベートに惚れてにっこり微笑みかけるところなどは青年フランツの純情さが伝わるし、年をとるにつれて頑固に硬い表情になっていく変化もよい。母親のゾフィーとの絶縁の場面も苦悩がよく伝わってきた。
今回「夜のボート」でのエリザとのデュエットは思わず涙が出てきてしまうほど素晴らしかった。そこで妻への思いの強さが伝わってきたからこそ、最後のトートとの対決の場面で髪を振り乱してもその真剣な思いがさらに迫力を持って伝わってきてクライマックスが盛り上がるのだった。
この禅さんを観て『ジキル&ハイド』のチケを買ってしまった。これまでは最後の結婚式で鹿賀ジキルに殺される憎まれ役だったが、次は鹿賀ジキルに殺してくれるよう頼まれる友人弁護士役だ。鹿賀さんとの共演も多くて信頼も厚くなっているようだし楽しみが増してきた。

(4)ルイジ・ルキーニ=高嶋政宏
初演からシングルキャストで頑張っている。ジャペール役はあまりよくなかったが、この役は実にハマリ役だと思う。とてもアクを強く出して濃い役づくりをしているのがなかないい。エッセン版などでもっと軽い役の感じでルキーニが歌っているのと比べても、高嶋ルキーニはとても個性的だ。プログラムにあった実際のルキーニの写真もとてもムサイし(笑)役づくり的確かもしれないと思った。

初演でマダム・ヴォルフ役をやったシルビア・グラブとこの『エリザ』での共演をきっかけにおつきあいし結婚されたというし、彼の人生でもよい出会いの場になったんだなあと思っていた。そうしたら今回公演の終盤、舞台で怪我をされてしまったようで、千秋楽のカテコは車椅子で登場したときいている。早くお元気になられるように祈りたい。

写真は、東宝のHPから皇帝フランツの石川禅の画像。

05/10/09 東宝『エリザベート』ミーハーキャスト評その1

2005-10-09 15:36:18 | 観劇

帝劇で9月1ヶ月だけの上演で9/17マチネと9/18マチネで観劇。9/17マチネ山口トート公演はVISA貸切でゆきさんに譲っていただき、観劇後お茶をご一緒させていただいた。9/18マチネ内野トートは自力でとって観劇後yukariさんお茶屋娘さんとミニオフ会。連日の盛り上がり。皆さん、楽しい時をありがとう。遅ればせながら御礼申し上げますm(_ _)m
さて、ミーハーキャスト評を書く。まずはエリザベートとトートから。

(1)エリザベート=一路真輝
2000年以来の東宝版主演で完全に彼女の代表作になっている。その彼女が「私だけに」の一番の高音が裏返る恐怖といつも闘っていて、それはピアさんや各国のエリザベートをつとめる女優さんが皆抱く思いだということをプログラムで読んで、その苦労を理解した。♪「私に~」♪はいつも不安定でハラハラする。エッセン盤とききくらべても最後の音が日本語の歌詞はきれいに出にくいと思う。
それにしても少女時代の側転など軽い身のこなしを見せてくれるし、夢見がちな少女が自分を殺して皇后としての務めを果たす義務を押し付ける姑とのたたかいにも勝って自分の人生を生き始める強さをストイックに演じ、時々にみせる気持ちのゆらぎをはかなく見せ、最後の最後まで孤独の中で生きていく孤高の存在を魅力的に演じ切っている。その見事さに感嘆しながらもいつまでもシングルキャストで大丈夫なんだろうかという心配がよぎる。だからといって他にエリザベートを演れる人がいるだろうか?今のところ誰も思いつかない。

(2)トート
9/17=山口祐一郎
このトート役は早くから自分のものにされていて(そういう時は魅力的な大きな目が見開いている)、歌もくせになる「麻薬声」で文句のつけようがない。細かい芝居部分はあまり上手くないのでバルジャンなどよりもトート役のような人間ではない役がとても似合うというのが私の評価だった。ところが死神なのに昨年のトートはちょっと太られて二重顎顔になってしまっていてちょっと??になってきていた。

8月の『モーツァルト!』でダイエットされたことを確認したのでやはり観たくなり、今回観たらトートでも輪郭がすっきりしていた。ただし、目の周りがパンダ状態になっていたのは死神メイクだったのだろうか?二枚目がちょっとだいなし。
余裕たっぷりのせいか素の根の明るいところがところどころ出てくるのが気になった。適度なら微笑ましいのだが、熱烈ファンでない私はちょっと引く。だから1回観られただけで満足。それよりも来年の『ヴァンパイヤ』が楽しみになってきている。

9/18=内野聖陽
初演では芝居部分はいいが、歌になると声量が落ちて山口さんとダブルキャストというわりに圧倒的な差があって一度でいいやという感じだった。ところが、公演のたびにヴォイストレーニングの成果が上がっているのがはっきりわかった。スリムな身体のこなしもしなやか。エリザの机に身を横たえてすべり降りて誘惑したり、ルドルフに近づくために装置の2階部分からバーを使って降りるところなどもう堪らない。指先まで神経の行き届く繊細な演技は両性具有的なセクシーさを増している。

子ども時代のルドルフに近づく場面の表情の変化についてどなたかのブログで拝見して双眼鏡で確認すると本当に死神らしいリアクションをされていてそれも感心。そのルドルフを追いつめ「死のキス」で命を奪う場面などもう耽美的でドキドキものだ。エリザベートに勝手に惚れて「愛と死の輪舞」で決意表明したようにずっとストーカー的に追いかけていくいくのだが、この魅力に勝ち続けたエリザベートの自我の強さには脱帽する。それくらい魅力的だ。しかし、今年井上ひさしの『箱根強羅ホテル』で角刈りの植木職人実は陸軍軍人を演じた同じ人だとは思えないセクシーな演技。うーん、これはもう次の『ベガーズ・オペラ』のマクヒースは期待◎!女にモテモテの超ヤバイ男の役ですから。コクーン蜷川版の『三文オペラ』の鹿賀マクヒースに負けないものになる予感!!!

写真は、東宝のHPからエリザベートの一路真輝の画像。
今回公演の全体の感想はこちら