Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

「遺作3大ソナタ」ハ短調D958 その1(No.1748)

2010-05-29 19:29:38 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 シューベルトは「人生31年10ヶ月」の内、「30年2ヶ月」がベートーヴェンが生きた時代を生き、しかも『同じ都市=ウィーン』で生活した。年齢差は27才あったが、『完全に同時代人&同地域人』だった。

シューベルトが最も尊敬した作曲家 = ベートーヴェン


である。モーツァルトもハイドンも尊敬し大きな影響を受けたが、シューベルトが最も影響を受けた作曲家は間違いなくベートーヴェンであった。
 ベートーヴェン「3大ソナタ = 悲愴+月光+熱情」はどれも名曲であるが、シューベルトも大いに影響を受けた曲を作曲した。「月光」の場合は、ピアノソナタやピアノ曲でなく「月に寄せて」作品57の3 D193 と言う歌曲になっている。「糸を紡ぐグレートヒェン」D118 の直後の作品で、「魔王」D326 よりも少し前だ。
 この曲も「シューベルトを代表する歌曲の1つ」ということは、岡原慎也 から教わった。レルシュタープが広めた「レマン湖上に浮かぶ月の姿」のイメージは、シューベルト作曲時=1815年5月17日=18才 には、ウィーンには敷衍していたことが鮮明にわかる。ベートーヴェン自身は「幻想曲風ソナタ」第2番 として作曲しただけであったのだから。
 1819年10月以前(=22才9ヶ月以前)の「初期シューベルト」の曲を詳細に追って行くと、

  1. ハイドン風
  2. モーツァルト風
  3. ベートーヴェン風
  4. ロッシーニ風

の4パターンが出現することがわかる。
 「中期シューベルト = 1819.11 - 1825.02」になると、オペラ作品でモーツァルトの影響が濃く残っていることはあるが、「ハイドン風」「ロッシーニ風」はほとんど消え去り、「ベートーヴェンの影響」が最大となっている。
 「後期シューベルト = 1825.03 - 1828.11」になると、「完全にベートーヴェンの影響最優先」となる。もう、モーツァルトの影響さえ薄くなってしまっている。「第9」「弦楽四重奏曲作品130」など「晩年のベートーヴェン」の影響も大きいので、シューベルト自身は死ぬ間際まで「ベートーヴェン研究」を続けていたことが判っている。


 多くのスカな音楽学者が「シューベルトはベートーヴェンを模倣したので、ベートーヴェン以下の作曲家」と言う誤った評価を下している。

この論法だと、マルチェッロ > バッハ > モーツァルト > ベートーヴェン > シューベルト


と断定されることになる。こんなワケないでしょ(爆
 「若い時は先輩大作曲家の良いところを取り込む努力を誰もがする」のがクラシック音楽の伝統。ベートーヴェンもシューベルトも伝統に忠実に従い、その類い希なる才能を開花させたのだ!


シューベルトが「最もベートーヴェンに影響された名作」は何か?


 この問いに対しては、いろいろな意見が出るだろう。

  1. ピアノソナタ 変ロ長調 D960(← 終楽章冒頭が ベートーヴェン作品130の弦楽四重奏曲の終楽章と瓜二つ!)
  2. ピアノソナタ イ長調 D959(← 終楽章が ベートーヴェン作品31/1のピアノソナタ終楽章と構造が全く同じ!)
  3. ピアノソナタ ハ短調 D958(← あっちもこっちもベートーヴェン作品に似ているが、冒頭が WoO80 とほとんど同じ!)
  4. ヴァイオリン幻想曲 ハ長調 D934(← ベートーヴェンチェロソナタ第4番作品102の2 と構造が完全に同一)
  5. 8重奏曲 ヘ長調 D803(← 誰が聴いても ベートーヴェン「7重奏曲」作品21 と全く同じ構造)

などなど、挙げ始めるとキリが無いほどなのだ!


 シューベルトの名作はどれもが甲乙付け難い名作である。私高本はどの曲も好きだ。その中で『どの曲が最もベートーヴェンに似た部分が多いか?』と問われば答える。

ハ短調ソナタD958 が「最もベートーヴェンの影響」を直裁的に反映した名曲だ!


と。
 D958 以上に「ベートーヴェンの影響を受けた曲」はある可能性が高い。「月に寄す」D193 の影響の方が大きいことは誰が聴いてもわかるだろうが、D958を越す名曲であるかどうかは大いに疑わしい。「ドイツリートファン」からは異論が来るかも知れないが(爆
コメント
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