Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

作曲家論 : バルトーク 第1回 (No.1341)

2006-08-16 21:24:00 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
次の通りです。

バルトーク(1881-1945)総合評価



ピアノソロ曲:☆☆☆☆
ピアノ協奏曲:☆☆☆☆
ピアノ室内楽:☆☆☆☆
連弾&2台 :☆☆☆☆☆
歌曲伴奏  :☆☆☆
ピアノ教育 :☆☆☆☆☆

音楽史評価 :☆☆☆☆


コメント等は明日号にて。
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作曲家論5人連投開始宣言 (No.1340)

2006-08-15 18:50:57 | ピアノ音楽全般
 8月13日

佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠るピアノソロ曲完全全曲演奏会Vol.2


も好評の内に終わった。シューベルトについての記載が圧倒的に多くなっているので、他の作曲家も取り上げたい、と思った。もちろんん、ピアノ作曲家であるので、ご安心を。
 伊福部昭,モーツァルト,リスト の3人は、佐伯周子、川上敦子、岡原慎也 の演奏会やCDで、プログラムノートを書いた経験があるので、書き慣れているが、別の作曲家を取り上げてみたい、と考えた。「自作自演の録音で名演が残っている大作曲家」が狙い目! CD紹介も出来るし!

 ・・・と言うことで、「ピアノ演奏自作自演の名演が残っている大作曲家」を思い付くまま挙げて見た。
  • スクリャービン
  • ラフマニノフ
  • バルトーク
  • ガーシュイン
  • グルダ

 この辺りならば、どの作曲家から取り上げても良さそう。ラヴェルは演奏が悪いし、バーンスタインは曲が少ないし、、、
 ・・・などなど、意外に該当者が少なかった。上記5人は(遅くなっても)必ず取り上げる作曲家であるので、ご安心を。

 誰から取り上げるか? いろいろ迷ったので、1人目は「ABC順で初め」に来る バルトーク を取り上げることに決めた。 「B」だから早い! 協奏曲、ソナタ、組曲、ミクロコスモスなどなど、いろいろ名曲揃い!

 しかも、今年「著作権が切れたばかり(没後61年)」で魅力的なコンテンツがいっぱい! だから「旬な作曲家」の1人!!

 では、明日。
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ご来場ありがとうございました (No.1339)

2006-08-14 21:24:49 | ピアニスト・佐伯周子
 昨日8月13日

佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠る完全全曲演奏会 Vol.2


に、多数のお客様のご来場を頂きまして、誠にありがとうございました。当日のアンコール曲は以下の通りです。

  1. ショパン : マズルカ 変ロ長調 作品7/1(ナショナル・エディション)
  2. シューベルト : ドイツ舞曲ニ長調 D146/1+D146/8Trio(M.Brown MS.9
    No.10 新シューベルト全集ピアノソロ第6巻 BA5529 P47
     : おそらく 日本初演)

です。シューベルト ドイツ舞曲は「新シューベルト全集」の中でも、最も価値の高い分野の1つです。
 次回公演は 来年2007年8月8日(水)19:00 「シューベルト : 幻想曲全曲演奏会」です。「第3回」以降は、東京文化会館を根拠地に据えて、ベーゼンドルファーピアノ の音色を最大に生かした演奏会を、高い頻度で演奏して行くつもりです。
 皆様のご来場を、佐伯周子 共々心よりお待ち申し上げております。
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佐伯周子 シューベルトピアノソロ曲完全全曲演奏会 Vol.2 (No.1338)

2006-08-12 16:15:04 | ピアニスト・佐伯周子
 いよいよ演奏会である。

8月13日 佐伯周子 シューベルトピアノソロ曲完全全曲演奏会 Vol.2



当日券あります



2006年8月13日(日)19:00開演 東京文化会館小ホール

使用楽譜 : ベーレンライター新シューベルト全集
使用ピアノ: ベーゼンドルファーインペリアル(シューベルト)
: スタインウェイ(ショパン)


1.ショパン : 12の大練習曲 作品10(1829-1833作曲,1833出版)
  楽譜 : ナショナルエディション エキエル校訂(2000ワルシャワ)

・第1番 ハ長調 Allegro 2/2 79小節
・第2番 イ短調 Allegro 2/2 49小節
・第3番 ホ長調 Lento ma non troppo 2/4 77小節
・第4番 嬰ハ短調 Presto con fuoco 2/2 82小節
・第5番 変ト長調 Vivace 2/4 85小節
・第6番 変ホ短調 Andante 6/8 53小節
・第7番 ハ長調 Vivace 6/8 59小節
・第8番 ヘ長調 Allegro 2/4 95小節
・第9番 ヘ短調 Allegro 6/8 67小節
・第10番 変イ長調 Vivace assai 12/8 77小節
・第11番 変ホ長調 Allegretto 3/4 54小節
・第12番 ハ短調 Allegro con fuoco 2/2 84小節


2.シューベルト : 未完成ピアノソナタ 嬰ハ短調 D655(1819.04作曲:補筆 高本秀行)
  楽譜 : ベーレンライター新シューベルト全集 リッチャウアー校訂(2003)
・(Moderato) 嬰ハ短調 4/4 ソナタ形式 73(+43補筆)小節

3.シューベルト : 楽興の時第4番 D780/4(1819? 1828? 作曲)
  楽譜 : ベーレンライター新シューベルト全集 ランドン校訂(1984)
・Moderato 嬰ハ短調 2/4 3部形式 167小節


4.シューベルト : ピアノソナタ第14番イ短調 D784 (1823.02作曲)
  楽譜 : ベーレンライター新シューベルト全集 リッチャウアー校訂(2003)
・第1楽章 Allegro giusto 4/4 イ短調 ソナタ形式 291小節
・第2楽章 Andante 2/2 ヘ長調 ソナタ形式 66小節
・第3楽章 Allegro vivace 3/4 イ短調 ソナタ形式 269小節

以上の通りです。
 尚、明日のブログ更新は休ませて頂きます。
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シューベルト弾き を育むピアノ = ベーゼンドルファー

2006-08-11 23:11:32 | グランドピアノの買い方・選び方
 本日、佐伯周子 が 東京都中野区の中野坂上の 日本ベーゼンドルファー にて、13日に演奏するシューベルトの「リハーサル」をした。 その報告である。
--------
 「ウィーンのベーゼンドルファー」は、シューベルトが死んだ年 = 1828年に(シューベルトが生まれ没したウィーンにて)創業された。(ちなみに、ハイドンもモーツァルトもベートーヴェンも没した後である。念のため)

シューベルト弾きを育むピアノ=ベーゼンドルファー


 ベーゼンドルファーは、コンサートグランドである「インペリアルモデル」が
  • 97鍵
  • 奥行き = 290cm

ばかりが有名であるが、本質的なところが語られることが少ないかも!
--------

  1. 基音の芯の太さ
  2. 減衰が遅く「響き」が保たれる

 この2点が、他のピアノ(スタインウェイ,ヤマハ,カワイ などなど)に比べ、ベーゼンドルファーは圧倒的に素晴らしい! 

 本日の 佐伯周子 も「その前までとは全く違う上の演奏」を聴かせてくれた。ピアノと 調律してくれた調律師 & 日本ベーゼンドルファー スタッフの皆様に感謝する次第である。
--------
 ・・・で、今まで聴いて来た演奏家の皆様は「ピアニストがピアノを制御している」と思えたのだが、

ベーゼンドルファー は 「シューベルト弾き」を育むピアノ


と本日は痛感した。「昨日までの佐伯周子」はどこにもいなくて、堂々と奏でる佐伯周子がそこにいた!
 もちろん、ピアノ = ベーゼンドルファー に助けられてである。

  1. 低音の深み
  2. 繋がり易い旋律線
  3. 保持されるトーン

 おそらく、上記3点の複合体が「魅惑の音色」を奏でていると思う。 13日の 「佐伯周子 ピアノリサイタル」にて、ご自分の耳で確認して頂くのが、最善と思う。

 「岡原慎也 シューベルト晩年の世界 1826-1828」も「ベーゼンドルファーインペリアル」で全て演奏されたが、

シューベルト弾きを育むピアノ=ベーゼンドルファー



と感じる。「音色自体の魅力」が これほどあるピアノは(シューベルトを演奏する限りでは)私高本は知らない。 岡原慎也 も 佐伯周子 も「ベーゼンドルファーに育まれた」ような気がする。
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楽譜が悪いため、演奏されなかった実例 = 未完成ソナタ D655 (No.1337)

2006-08-10 21:09:16 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 2日連続で「楽譜尊重が大切」を ショパン「12の大練習曲 作品10」を題材に書いたが、実は ショパン以上に シューベルトは、深刻に「楽譜問題」を抱えている。

・「音が違っている」 とか
・「アーティキュレーションが違っている」 とかのレベルでなく

「演奏不可能」 と思われて来た曲が実在する


からである。今回 佐伯周子 が演奏する 未完成ソナタ嬰ハ短調 D655 がそのものズバリ!

勝手に「Allegro」を附与され演奏不能に陥った D655



 シューベルトは、出版するまで「曲に手を入れるタイプ」の作曲家であった。昔々の捏造オペレッタや捏造映画で、「頭に浮かんだ曲を次々に書き付けて、振り返りもしなかった作曲家」のイメージを持っている方がいるが、だまされてはいけない。
 ・・・で、「出版する気がない時は、未定のことは書かないママが多かった作曲家 = シューベルト」でもある。

シューベルトが 未完成曲で書かなかった一覧



  1. ソナタ形式や3部形式の再現部全部(D655 もこれ!)
  2. オーケストレーション(← 未完成交響曲第3楽章など)
  3. 旋律以外の「伴奏音型」(← ヘ短調ソナタ D625終楽章など)
  4. ダイナミクス
  5. アーティキュレーション
  6. 表情記号
  7. 速度指示(D655 もこれ!)

などなど。

 嬰ハ短調ソナタ D655 の場合は「速度記号」が欠落していた。シューベルトは「全楽章書き上げた後で、最適のテンポ指示」をするつもりだったと推測される。D655 の場合、全楽章書き上げられた可能性は「ゼロ」なので、結局「テンポ指示」は書き込まれないママ、楽譜が残ってしまった。
 ここで「誰が見ても明らかに完成しているピアノソナタ11曲」を対象に「ソナタ第1楽章のテンポ」を集計してみよう。この11曲は全て「生前に出版された、または出版できるように浄書楽譜が用意された曲」であり、テンポ設定は全ての楽章まで行き亘っているからである。

Moderato = 3曲



  1. D845
  2. D894
  3. D960

Allegro moderato = 2曲



  1. D568
  2. D664

Allegro = 6曲



  1. D537
  2. D575
  3. D784
  4. D850
  5. D958
  6. D959


以上の通りである。「Allegro率 = 0.555・・・」である。勝手に断定できる率では決して無い!
 「Moderato」 や 「Allegro moderato」 の楽章を 「速い Allegro」で演奏すれば、曲が台無しになることは「シューベルト弾き」のピアニストは皆知っている。
 例えば、D960 や D894 の第1楽章を Allegro で弾いてみたらどうなるか? 想像できますか?
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 それを「ヤッてしまった」のが 「旧シューベルト全集の未完成嬰ハ短調ソナタ D655」 である! 冒頭ド頭から「オクターブユニゾン16分音符4連打!」の曲を 「Allegro」に 感じたのは 誰だったのだろうか? 尊敬するシューベルト学者の1人には違いないのだが、マンディチェフスキ(ブライトコプフ旧シューベルト全集責任者) 本人なのだろうか?
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 D850 や D958 と同じテンポで D655 を試しに弾いてみると良い。 はっきり言って「音楽的には全くの無駄な曲」にしかならない。 4分音符 =120 が「ごく普通のルールでの Allegro の最低テンポ」だが、それでも ゴチャゴチャしただけの曲 にしか聞こえない。 4分音符 = 168 で演奏? もう「狂気の沙汰」としか思えない騒音音楽である。

 ・・・を「旧シューベルト全集」は、
  • 楽譜自体に何も注釈を付けず
  • "Editors' Commentary on the Critical Edition" にも何も記載されずに
  • 「あたかも シューベルト自身が Allegro  と書いたかのように」出版した

 1897年のことである。この時が D655 の初出版。 出版と同時に埋葬されたかのような扱いである。
--------
 1897年の後、このような事態が続く。
  • 1951 Otto Erich DEUTSCH "The Schubert Thematic Catalogue" にて 「Allegro」断定
  • 1976 ヘンレ版第3巻初版(B=スコダ監修&校訂)から D655 外される

 はっきり言って「のけ者」扱いである。 LP時代には(断定できないモノの)1枚も録音が出版されなかったようである。 責任の全ては「旧シューベルト全集」である、と私高本は断言する。
--------
 この事態を一変させたのが、

ファーガソン校訂王立音楽院版シューベルトピアノソナタ全集出版(1979)



である。「旧シューベルト全集編纂者」の大先輩の残党が怖かったのか、何も注釈無しで(しかもカッコ付きで)
  • [Allegro moderato]

と表記した。 画期的だった。 とても 画期的だった。 シューベルト未完成ソナタ にとって「革命」が1回起こったくらい画期的だった。

ヴァイヒェルトが「世界初録音」した!


からである。 テンポはもちろん「Allegro moderato」である。 この後、2人の偉大なピアニスト(ティリモ と バール)が D655 を録音した。ティリモは 自分が校訂した楽譜には 「Allegro」と明記しているが、演奏ははっきり「Allegro moderato」である!
 ファーガソンの楽譜研究に拠って、D655 は世に出た曲なのである!
--------
 本日号の最後に 佐伯周子 からのメッセージを!

  • 第14小節からの第2主題は「2人の会話であるので、会話のテンポで弾かないと『シューベルトの良さ』が生きて来ない」

とのこと。 始めが ソプラノとバス。 そして ソプラノとアルト(もしかしてテノール?) の「デュエット」が 佐伯周子 のピアノからははっきり紡ぎ出される。

テンポ設定は 音楽の命だ!



 当たり前過ぎるこの言葉で本日号を締めたい。 ちなみに

  • 佐伯周子 は D655 を
  • Allegro moderato ではなく
  • Moderato で弾き
  • シューベルトの抒情性をたっぷり聴かせる!

ことは、ここに私高本が責任持って明記する。 特に「第2主題の抒情」は、これまでの3種のCD(← おそらく世界中の全ての録音)でも聴くことができない美しさである!
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続 ピアノ演奏は面白くなったのか? ショパン「12の大練習曲」作品10を例に (No.1336)

2006-08-09 22:54:29 | ピアノ音楽全般
 ここ30年間で、「演奏自体に素晴らしい成果」がはっきり誰でもが聴き取れる分野

1.ブルックナー交響曲
2.モーツァルト交響曲

について「何がきっかけで成果が挙がったのか?」を簡単に検証してみよう。

ブルックナー交響曲



 これはもう「楽譜」そのものであろう。次々と刊行される 旧・西ドイツ(後に、統一ドイツ)から出版される新ブルックナー全集の「異稿版楽譜」。 異稿が演奏され「以前の楽譜の稿の方が良い!」「以前の楽譜の方が良い!」などと、論争が起き「演奏で勝負!」と言う方向に高まって行った。

モーツァルト交響曲



 これは「マトモな学者(ザスロー)と腕利きの指揮者(ホグウッド)」の 大プロジェクトの成果であることに誰もが異存無いだろう。 ベーレンライター新モーツァルト全集「交響曲の巻」は、既にベーム指揮ベルリンフィルの演奏&録音で使われるほど前に刊行されていたのだが、「ブライトコプフ旧全集の残像」を引き摺っていた。 「ザスロー + ホグウッド」の演奏の「副作用」として「古楽器奏法」を「普通のモダンオーケストラ」にまで、まき散らしたことは、私高本個人の意見としては「遺憾」であるが。
--------
 「ピアノ音楽」の分野でも、というか「ピアノ音楽」の分野こそ、楽譜出版社は「数」が見込めるので、力を入れて「新校訂原典版楽譜」を出版している。昨日号で挙げた

・バッハ
・ベートーヴェン
・ショパン
・ドビュッシー

の全ての代表作に於いて「新校訂原典版楽譜」がここ30年で出版されている。だが「演奏上で、誰もがはっきり感じ取れる成果」は無い。 なぜか?
--------

暗譜演奏は、何も進化を産まないかも知れない



 「ピアノ演奏の特異性」と言うのは、昔は何も感じなかった。 だが、こうして「交響曲」と比較した時には、「ピアノ音楽の特異性」は顕著だと思う。 バロック時代~印象派時代 の4人の作曲家が「全部が全部、特に30年間偉大な演奏を産まない」なんてあり得るのか?

 これは、「ピアノ音楽システムに問題がある」と思うのがマトモな神経。何が問題なのか?

暗譜で弾くシステムが、ピアノ音楽を破壊して行く



が実態だと思う。


  1. 「暗譜で弾く」限り、「最初に覚えた残像」に引き摺られる
  2. ピアノ音楽の「オンガクヒョウロンカ」も、正確に楽譜の違いを掌握していないので、何も言わない
  3. 新しい「原典版楽譜」が出ても、何も評判を呼ばない

の「3点セット」にて、『古き良き時代』ばかりが回顧される。 う~ん、「ポリーニのショパン」も録音当時としては、最新の成果であったのだが。
--------
 「聴き手」からすれば(雑音さえ無ければ)

どんな楽譜で演奏してもいい! 名演を聴かせろ!



が実感だと思う。「ショパン 練習曲 作品10 演奏」を例に取れば

・パデレフスキ版
・ヘンレ版
・ナショナル・エディション

どれでも(聴く側からは)「価値は同じ」だろう。 その際「暗譜演奏が前提」だと、「ピアニストが昔に習った楽譜」の影響は避けられない。 「1回頭の奥深くにブチ込んだ楽譜」ですから。
--------
 これは「ピアノコンクールの害毒」が(他のクラシック音楽演奏家に比べて)顕著な結果だと断定したい。「暗譜しなくてもOKのピアノコンクール」は、お子様の日本国内コンクールを含め皆無。もちろん「世界的大コンクール」にもあり得ない。
 ・・・で、「指揮者コンクール」では、

特には必要とされない訓練 = 暗譜


なのである。暗譜しようが、しまいが、「いい演奏さえすれば良い」が「ピアノ以外の世界標準」なのである。声楽家でさえも「オペラ」では「プロンプター」が(音程は教えてくれないが)言葉を口伝えしてくれる。

音楽表現こそが全て!



 これが「実行できない」ことに「ピアノ音楽は進歩が無い」かと思われる原因がある。
 ポリーニは、おそらく ショパン「練習曲集」録音の際に、パデレフスキ版楽譜を使用したと思われる。素晴らしい演奏である。録音当時30才前後。ショパンコンクール優勝時 = 18才 の時から、まだ日時は経過していなかった。「斬新な演奏」は、

・瑞々しい感性 +
・瑞々しい楽譜

で生まれると思う。 「暗譜」で演奏する限り、ピアノ音楽に「明日は無い」かも知れない。 「コンクール用の仕込んだ時期の楽譜」に一生縛られたら、ショパン に限らず、どの作曲家のどの作品も「スカ」な演奏にしかならないだろう。
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ピアノ演奏は面白くなったのか? ショパン「12の大練習曲」作品10を例に (No.1335)

2006-08-08 22:02:41 | ピアノ音楽全般
「いい時代になったものだ!」

 タワーレコードやHMVの大店舗が日本の大都市各地にでき、それどころかタワーレコードやHMVのホームページで、冷房の利いた自宅で炎天下に出ないママにCD選びが出来、発注すれば在庫さえあれば 2~3日で宅配便業者が配送してくれる!

 値段も安い! 私高本が、自腹で初めて購入したLPの内1枚が

●ポリーニ「ショパン 練習曲集」 ポリドール国内盤 2,600円

だった。相当昔である。(CD発売前6年か?) 輸入盤の購入はできることはできたのだが、「輸入盤の方が国内盤よりも高くて当たり前」。輸入盤(ドイツグラモフォン盤)が、確か 2800円以上で、同じコーナーに陳列されていた。ヤマハ銀座店が「輸入盤」をごく普通に扱っていた時代の話である。 う~ん、「円安」だったんだろうな・・・

 ・・・で、値段のことはまた別の機会に譲るとして、

●ポリーニ「ショパン 練習曲集」1972年録音 を超す「ショパン 練習曲集」録音は存在するのか?

を考えてみたい。

ピアノ演奏は面白くなったのか?



と言うことである。 曲は何でも良かったのだが、8月13日 佐伯周子 ピアノリサイタル の演奏曲目で言えば、「シューベルト : 未完成ピアノソナタ嬰ハ短調 D655」では、LP時代に録音されていないようであるし、「シューベルト : ピアノソナタ イ短調 D784」では、読者の皆様が「持っているCD枚数」が ショパン練習曲 よりも少ない方が多いだろう。(持っていないと実感ベースで共感できないものである。)
--------
 ポリーニが弾く「ショパン:練習曲集」が発売されてから少なくとも30年以上が経過した。私高本が購入した時、既に「国内盤」が発売されて、今は亡きクラシック音楽雑誌群やら、FMクラシック音楽番組やらで延々と「いい」「悪い」と大論争されていたような気がする。「そんなに評判高いのか?」という潜在意識があり、銀座に出掛けた際に実物を手に取って見て、購入した(ような気がする)。

 「名曲中の名曲」であるので、その後も多数の優秀なピアニストがこの曲を録音した。日本人ピアニストも多い。
 ・・・が、特段「素晴らしい!」と絶賛される演奏は、1つも無い。(あっ、マズいこと言ってしまったか?!)

 なぜだろう?
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 ここ30年間で、「演奏自体に素晴らしい成果」がはっきり誰でもが聴き取れる分野もある。 この30年間に生存していた偉大な作曲家は除いて考えても

●ブルックナー交響曲
●モーツァルト交響曲

は、はっきりいくつかの点で「旧来の演奏を超える」演奏が出ている。ショパン以外の代表的ピアノ曲だと、どうだろうか?

●バッハ:平均律全2巻48曲
●ベートーヴェン:ピアノソナタ全32曲
●ドビュッシー:前奏曲集全2巻24曲

 時代のバランスを考えて、ショパン以外3人の作曲家を選んで、代表作を見てみよう。

●バッハ:平均律全2巻48曲 → グールド盤 ソニー録音 1962-1971年録音
●ベートーヴェン:ピアノソナタ全32曲 → グルダ盤 アマデオ録音 1967年録音
●ドビュッシー:前奏曲集全2巻24曲 → ベロフ盤 EMI録音 1970年録音

となる。あれっ? ポリーニの「ショパン:練習曲集」が最も新しい!!
--------
 ・・・となると、どうやら 1972年頃を境に「ピアノ音楽だけが、素晴らしい演奏&録音を産み出す力が減少した」と考える方が普通である。

 この続きは、明日号にて。
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佐伯周子 の シューベルト演奏の魅力 (No.1334)

2006-08-07 23:48:14 | ピアニスト・佐伯周子
 一昨日土曜、8月13日リサイタルのプログラム全曲を通して聴かせてもらった。 ショパンも魅力あったが、何と言っても「シューベルトの魅力」は素晴らしかった。

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「楽譜通り」 = 「しなやかさ + 力強さ」の佐伯周子



 シューベルトは、マーラーほどとは言わないが、楽譜に「相当に細かな指示を盛り込んだ作曲家」である。 少なく言っても「シューベルト本人が大事! と思った作品全て」に於いてである!

 イ短調ピアノソナタ D784 は、「第1楽章ソナタ形式呈示部第1主題主題」を聴いただけで、これまでのピアニストの演奏が「概要は示しているが、詳細までは描き切れていなかった!」と感じる。
  • 第2小節第1拍のアクセント
  • 第2小節第3拍の「短さ」
  • 第3小節第3拍のアクセント

などが緊張感みなぎる「pp」の中で、明瞭に聴こえて来る。

 ・・・で、過去の録音を聴き直して見ると、
  • 旋律線のなめらかさ優先で
  • ペダル(右ペダル)が長目

の演奏が大半。「第2小節第3拍 = 8分音符」に聴こえる演奏はほとんど無い。
 第2主題(ホ長調)の柔らかい表情と「ドキッ!」とする「ff(フォルティッシモ)」の対比も新鮮!
 これまた「音符の長さが シューベルトの指示通り」が原因のようだ。例えば、第75小節3拍目などなど。D784 全曲を通し

ppp ~ ffz までのダイナミクス通り を佐伯周子は弾く



も含め、「シューベルトの意図通り」が伝わって来る。 2年前の ハ長調ピアノソナタD840 新補筆完成版世界初演 と並ぶ演奏、または 2年前以上の名演が期待できる! D655 & D784/4 も併せ、大いに期待して頂きたい。私高本も リサイタル当日が楽しみでならない。
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1819~1823年の シューベルト (No.1333)

2006-08-06 23:27:42 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 8月13日 佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠るピアノソロ曲全曲演奏会 Vol.2 にて演奏する曲はタイトルの期間に作曲された2曲のピアノソナタである。
--------
 1818年2月に「交響曲第6番 ハ長調 D589」を作曲したシューベルトは、1822年11月に「さすらい人幻想曲 ハ長調 D760」 を完成させるまで、器楽曲の分野では「超大スランプ」に陥る。 前後の両方が「ハ長調」なのは、偶然の一致か???

 この期間に器楽曲に手を付けていないワケでは決してない!
  • 交響曲4曲 → D615,D718A,D729,D759
  • 弦楽四重奏曲1曲 → D703
  • ピアノソナタ2曲 → D613,D655

は、自筆譜に拠り証明されている。 他にも「この時期作曲の嫌疑のある名曲候補」が2曲(D664 と D667)あることにはあるのだが、残念ながら(おそらく100%)別の時期の作曲である。
--------
  • 1814年10月19日 「糸を紡ぐグレートヒェン」D118 作曲 以来
  • 1818年2月 交響曲第6番 ハ長調 D589 まで
  • 毎年「誰もが名曲!」と納得する名曲を量産して来たシューベルトが
  • 初めて遭遇したスランプ = 1819~1822年(9月)

である。 1818年3月以降シューベルトは「新たなシューベルト像」を求め、悪戦苦闘する。そして 1822年11月「さすらい人幻想曲 D760」にて、芸術的にも金銭的にも飛躍する。その次の大作が ピアノソナタイ短調D784 である。「循環形式ソナタ」として、あまりに「さすらい人幻想曲」に似てしまったことと、「核になる有名歌曲が無い」ことから、出版は見合わせたようだが、自信を付けたシューベルトは D784 の次の「ソナタ楽曲 = 弦楽四重奏曲イ短調 D804」以降、次々と出版に漕ぎ着け、高い評価を得るようになる。

「1819~1823年のシューベルト」は飛躍の日々


であった。
  • 規模の拡大
  • 構想の拡大

がついに成功したのである!

 ・・・で、この時期にシューベルトが熱中していたのは
  • 数々のオペラ であり
  • ミサ曲第5番 変イ長調 D678 (1819.11~1822.09作曲) であり
  • 宗教曲「ラザロ」D689(1820.02)

であった。これらの曲の21世紀の評価は必ずしも「費やした労力」に比例しているとは言えないが、「器楽曲」にも大きな「良い影響」を与えている。 8月13日の 佐伯周子 の演奏にて、ご確認頂ければ幸いである。
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シューベルト : 続 「楽興の時」について (No.1332)

2006-08-05 22:07:07 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 「楽興の時」の残り4曲(= 1,2,4,5)が「いつ作曲されたのか?」は、自筆譜(または信頼性の高い筆写譜)が発見されるまでは、誰にも判らない。

 ・・・が、全4曲が「一斉に出版年 = 1828年」に作曲されたとすると、「題名に疑念」が生じることは、昨日号でご理解頂けたことと思う。

 ・・・で、どの曲が「昔の曲か?」については、正直誰もが断定はできない。ここで(ちょっと大胆であるが)私高本の「たった今の主観」で、4曲の作曲時期についての推定と「推理の根拠」を述べてみたい。万が一、自筆譜が発見された時は「モノ笑いの種」になることだけは、ここに断定しておく。
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【第1番 ハ長調】
・出版時(= 1828年)の新作曲?
・スケルツォ楽章相当の曲だが、該当するピアノソナタが見当たらないように思える。 少々「もしかすると このソナタのスケルツォ?」と思える曲もないことはないのだが、中間部最後のフレーズ左手声部が、1826年以降に感じられるため、該当曲が無いように思える。もしかすると、相当前のピアノソナタのスケルツォ楽章の可能性もある。

【第2番 変イ長調】
・1826年頃の可能性が高い。1825年以前の可能性は皆無に近いと考えられる。(特に拍子記号)
・ピアノソナタト長調D894 第1楽章に極めて似ている。こちらが先の可能性高い。シューベルトには「下書き」的作品がある。(D946 → D960 など)。 D894 よりも後の作曲の可能性も大きい。

【第4番 嬰ハ短調】
・1819年?
・終楽章の可能性が高いが、すると ピアノソナタD655 以外には組み合わせる曲は考え難い

【第5番 ヘ短調】
・1827年? 新作曲の可能性は否定できないが、1826年以前作曲の可能性は考え難い
・終楽章の楽想だが、ピアノソナタでは組み合わせる曲が無い。 D935 の終楽章(と言うか終曲)の第1稿の可能性が高い。
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ドイッチュ番号 = 780 は「第3番の出版時期」から振られた番号であるが、もしかすると「もっと前」の作品があるように思える。 シューベルトは「昔の作品」を大事にする作曲家であったからだ!!!
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シューベルト : 「楽興の時」について (No.1331)

2006-08-04 23:35:21 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 8月13日に佐伯周子が弾く シューベルト作曲「楽興の時」第4番が属する「楽興の時」について、考察する。
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「楽興の時」 = 「音楽の生まれた瞬間たち」



 私高本のような「ヨーロッパ語学」に弱い人間(外国語全般に弱い?)は、「クラシック音楽」について語る時に、ちょっとだけ不利な点が存在する。 例えば、今回取り上げる「楽興の時」もその1つ。

  1. シューベルト の 作品94(D780) が最初で
  2. ラフマニノフも「作品16」で取り上げた有名な「名前」

である。 私高本のような「ヨーロッパ語系に弱い」ヤツが読むと、「?」と思える題名である。多くの皆様には理解できる または 理解できるかも知れない と思っているらしいが
  • 「楽興の時」とは
  • どのような意味なのか?

は、数冊の「シューベルト楽曲解説の本」&「音楽辞典」を私高本は、読んで全く理解できなかった。「楽興」と言う単語も全く意味不明。何だ? 「らっきょう」か??

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 シューベルト自身だか、出版社 = ライデスドルフ社 は
  • "6 Moment musicals" (← フランス語の文法上間違っている!)
  • と初版で表記していたので
  • 「6曲の 音楽の瞬間たち」
  • と思っていたハズ

である。 自筆譜が発見されていないので、シューベルトの発案なのだか、ライデスドルフの発案であるかは未だに意見が分かれていて統一されていないが。
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 「音楽の瞬間たち」がフランス語的な直訳である。 何を意味しているか? それはシューベルト本人以外には誰にも分からない。

 ・・・が、おおよその方向で「音楽が生まれた瞬間が(1つでなく)2つ以上集まった曲集」と言うことだけは理解できるだろう。 事実、シューベルト「楽興の時 作品94」は、最小限に言って 3つ以上の機会に作曲されたことが判明している。

  1.  第3番ヘ短調 : 1823年12月19日初版「ロシアの歌」
  2.  第6番変イ長調 : 1824年12月11日初版「吟遊詩人の嘆き」
  3.  残りの4曲 : 1828年7月11日初版

が「印刷楽譜」の歴史であり、全て「ライデスドルフ」から、初版印刷された。
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 残リ4曲が「同時に1828年に作曲された」可能性は極めて低い。 どんな音楽学者でもコワくて主張できていない。 もう1回「原題」に戻って考えると
  • 「音楽の瞬間」が異なった曲の集合体であり
  • 内2曲は「出自」がほぼ判明していて、5年前の曲 と 4年前の曲!

だからである。
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 第4番は「楽興の時」の中心を為す曲である。 第4曲を中心に「鏡の対照」を調性上に描いているのが、「楽興の時」である。
 ・・・で、第4番は 1828年作曲の曲なのだろうか?
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 自筆譜が再発見されない限り、論争が終結しないことは(誰の目にも)明らかであるが、私高本は「楽興の時 第4番 嬰ハ短調」は、嬰ハ短調ピアノソナタの終楽章として作曲された可能性が最も高い、と感じる。
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 8月13日 「佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠るピアノソロ曲全曲演奏会 Vol.2」では、ピアノソナタ嬰ハ短調D655 の「終楽章」の可能性を考えて、連続して演奏してもらう。
  • 納得性が高ければ「佐伯周子の演奏の質の高さ」を褒め称え
  • 納得性が低ければ「私高本の組み合わせの齟齬」を非難

するのが正しいと思う。 1人でも多くの「シューベルトファン」の皆様に聴いて判断して頂きたいと、心から願う次第である。
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ショパン 大練習曲 作品10(No.1330)

2006-08-03 22:22:18 | 作曲家・ショパン(1810-1849)
全12曲について述べて見たい。
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【第1曲 ハ長調】

 オープニングの華やかな曲。「これが、真のピアニズムの練習曲ですよ!」宣言しているかのように、右手が次から次へと「アルペジオ」を紡ぎ出す。

【第2曲 イ短調】

・右手の半音進行 と
・左手バスのおどけた表情 が織りなす
・スケルツォ

【第3曲 ホ長調「別れの曲」】

・4声部進行 と
・長調であるのにモノ悲しい旋律

【第4曲 嬰ハ短調】

 第3曲の平行調。1部資料には「atacca」で続けるように指示がある。
火の噴くような情熱が力強く歯切れ良く進む練習曲。

【第5曲 変ニ長調「黒鍵」】

 全曲の大半が「黒鍵のみを使用するフレーズ」で埋め尽くされた練習曲。右手はたった1回だけしか「白鍵」を弾かない(第66小節1拍目 E音)だが、この音は、譜面上は「左手」に書かれているので、「譜面上の右手」は全て黒鍵!!!

【第6曲 変ホ短調】

 緩徐楽章の練習曲。

【第7曲 ハ長調】

 ここから「後半」となり、第2部の開始曲相当。
右手の2声の16分音符の連続は、2本のヴァイオリンのよう!
その中で左手が、楽しくリズムを変幻自在に刻んで行く練習曲。

【第8曲 ヘ長調】

 16分音符が88小節の間、1回も休まずに進行する練習曲。右手が広い音域を不規則な音型で延々と走り続ける。

【第9曲 ヘ短調】

 両手で6度を鳴らす練習曲。旋律が「同じアーティキュレーションで演奏される」必要があるのだが、左手にはさらに1音が挟まれる。

【第10曲 変イ長調】

 目まぐるしく自在に変わる「アーティキュレーションの練習曲」。 楽譜に書いてある通りの演奏には滅多に出会えないほど、千変万化!

【第11曲 変ホ長調】

 連続アルペジオの練習曲。これほどまでに「アルペジオを連続させた曲」はかつて存在したのだろうか?

【第12曲 ハ短調「革命」】

 左手の16分音符連続の練習曲であると同時に「徹底した激しさ」を追求。全12曲の締めにふさわしい力感が全編にみなぎる。
 第1曲ハ長調 → 第12曲ハ短調 と同主調で、この偉大な「練習曲集」は終曲する。

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 ものすごい駆け足であるが、どの1曲を取っても、素晴らしい上に、前後の曲の対比や、全12曲を通しての「バランスの良さ」「聴きごたえ」などまでにも神経の行き届いた名曲である。
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ショパン 大練習曲 作品10(No.1329)

2006-08-02 21:12:39 | 作曲家・ショパン(1810-1849)

「演奏会用練習曲」ジャンル の創始者 = ショパン



 「演奏会用練習曲」と言うと、リストの「3つの演奏会用練習曲」「2つの演奏会用練習曲」などを思い浮かべる人も多いが、実は
ショパンが作り上げた新しいジャンル


である。 1810~1811年に生まれた 3人のロマン派ピアノ作曲家の主な「練習曲」の作曲年代を並べてみてみよう。

【ショパン】
  • 12の大練習曲 作品10 → 1829~1832年作曲
  • 12の練習曲 作品25 → 1832~1836年作曲
  • 3つの新しい練習曲 → 1839年作曲

【シューマン】
  • 6つのパガニーニ練習曲 作品3 → 1832年作曲
  • 6つのパガニーニ練習曲 作品10 → 1833年作曲
  • 交響的練習曲 作品13 → 1834~1837年作曲

【リスト】
  • 48の練習曲(実際は12曲) 作品6(ドイツ版は作品1) → 1826年作曲(ツェルニーの「指の練習曲」の延長線の作品)
  • 24の大練習曲(実際は12曲) → 1837年作曲
  • パガニーニの超絶技巧による練習曲(6曲) → 1838年作曲
  • 3つの演奏会用練習曲 → 1848年作曲
  • パガニーニ大練習曲(6曲) → 1851年作曲
  • 超絶技巧練習曲(12曲) → 1851年作曲
  • 2つの演奏会用練習曲 → 1862~1863年作曲


 シューマンには他に完成には至らなかったと通常考えられている 「ベートーヴェン交響曲第7番第2楽章の主題に拠る変奏曲(1833)」 も存在するが、上記が3名が生前に出版された全練習曲である。

 年齢は近接しているのだが、ショパン が「時期も早く、数も多く」他の2人を凌駕していたことは、シューマンファンも リストファンも 認めなければならない。「ショパンあっての 演奏会用練習曲」と言う事実は、シューマン & リスト のみならず、21世紀に至るまでの作曲家全てに行き亘っている真実である。
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ショパン 大練習曲 作品10(No.1328)

2006-08-01 22:27:19 | 作曲家・ショパン(1810-1849)
 佐伯周子 ピアノリサイタル 8月13日(日)19:00 東京文化会館小ホールの前半に演奏する曲目である。
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「練習曲」を 演奏会ステージ に上げた 画期的なショパンの大傑作



 「エチュード(etude)」とは、「練習曲」のフランス語であり、英語では「スタディ(study)」と呼称する。そう、すなわち「勉強」である!

 「エチュ-ド」は、ショパンのずっと古くから存在し、楽譜も印刷され販売されていた。「クラシック音楽」は、言葉の通り「古典音楽」であり、師匠 → 弟子 に1対1で伝承されるのが基本であったが、印刷技法の向上に伴い、「印刷された練習曲を用いてのレッスン」も相当に増えて行った様子である。

 古く有名なところでは、「バッハのクラヴィーア練習曲」は超有名。

  1.  第1巻 : パルティータ全6曲
  2.  第2巻 : 「イタリア協奏曲 + ロ短調パルティータ」
  3.  第3巻 : 4つのデュエット 他
  4.  第4巻 : 「ゴルトベルク変奏曲」

と4巻出版したところで、バッハは死去してしまったが、相当に質と量があり、現代のピアニストのレパートリーとなっている。「版の研究」に拠ると、大ヒットしたワケではないようであるが。

 ・・・が、時代が下って、ハイドン → モーツァルト → ベートーヴェン の頃になると、この3名は「練習曲の名称」では 曲を出版しなくなる。「ソナタ」や「変奏曲」が出版の中心を占める。
 では「練習曲」は作曲や出版されなくなったのか? と言えば違う。

 ベートーヴェンの弟子 = ツェルニーの大量生産の「練習曲集」の集積!

に代表されるように「機械的に生産されるかのような練習曲」がショパンの直前には、パリに限らず、ヨーロッパを覆っていたのである。
 「ツェルニのエチュード(練習曲)」は、ピアノ学習者に有用である。特に、初心者 → 中級者 への途上には有益であり、今も大いに活用されている。CD録音も多く、有名なところでは エッシェンバッハの録音 もある。

 ・・・が、「エッシェンバッハ ピアノリサイタル」に行っても聴くことはできなかったし、今後も未来永劫無理であろう。「演奏会で聴かせるレパートリー」とは、ピアニスト自身が思っていないからである。

 そんな時代に、ショパン「大練習曲 作品10」は生まれた。 ショパン自身が尊敬する「バッハの練習曲」を復活させたかったかのように、偉大な作品である。この続きは明日号にて。
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