マーラー「子供の不思議な角笛」についての「種類」分類
面白おかしさ 系
神 or 王 系
しっとり 系
軍隊脱走兵 系
の4種類である。「若き日の歌」第2集&第3集に収録されている曲も含めて全24曲を並べて見る。「若き日の歌」は作曲順不明なので出版順、「子供の不思議な角笛」15曲は「新マーラー全集」オーケストラ版の曲順である。(ピアノ版と第3-5番が異なる)
面白おかしさ 系
悪い子を良い子にするには Um schlimme Kinder artig zu machen
それ行け! Aus! Aus!
強烈な想像力 Starke Einbildungskraft
夏に交代 Ablösung im Sommer
別れて会えない Scheiden und Meiden
自意識過剰 Selbstgefühl
歩哨の夜の歌 Der Schildwache Nachtlied
無駄な努力 Verlorne müh'
不幸中の慰め Trost im Unglück
誰がこの小唄を思いついたの? Wer hat dies Liedlein erdacht?
高度な知性を讃えて Lob des hohen Verstands
塔に囚われて迫害を受けし者の歌 Lied des Verfolgten im Turm
神 or 王 系
あの世の暮らし Das himmlische Leben
この世の暮らし Das irdische Leben
はじめての灯り Urlicht
パドヴァのアントニウス 魚へお説教 Des Antonius von Padua Fischpredigt
ラインの伝説 Rheinlegendchen
三人の天使がやさしい歌を歌ってた Es sungen drei Engel einen süßen Gesang
しっとり 系
私は喜びに満ちて緑の森を歩いた Ich ging mit Lust durch einen grünen Wald
二度と会えない Nicht wiedersehen
美しきトランペットが鳴り響くところ Wo die schönen Trompeten blasen
軍隊脱走兵 系
シュトラスブルクの砦の上 Zu Straßburg auf der Schanz'
起床合図 Revelge
少年鼓手 Der Tambourgesell
ご覧頂くとお判りの通り「面白おかしさ 系」が半数を占めている。「嘆きの歌」「若き日の歌第1巻」「さすらう若人の歌」「復活」「おお人間よ! 心せよ」「リュッケルト歌曲集」「亡き子をしのぶ歌」「千人」「大地の歌」全てを通して、この手の曲は
「ハンスとグレーテ」唯1曲のみが「面白おかしさ 系」
である。また、(少々傾向は異なるが)
同じような「面白おかしさ 系」を作曲した「ドイツリート作曲家」は ヴォルフ だけ
である。フランスには、シャブリエ、サティ、ラヴェル など多々いるのだが、、、
「面白おかしさ 系」「しっとり 系」「軍隊脱走兵 系」は「若き日の歌」第2&3巻と「子供の不思議な角笛」両方に存在しているのだが、「神 or 王 系」は「子供の不思議な角笛」だけに存在しているのが1つの特徴。もう少し拡大して掘り下げて見よう。
「子供の不思議な角笛」に作曲した全24曲の『作曲時期』区分
ピアノ伴奏版のみの時代 = 「若き日の歌」第2&3巻 = 1887-1890
「若き日の歌」第2&3巻全9曲。特徴は「ページ数で4ページ以内」で全て収まっている!!!
怒涛の集中作曲時代 = 幻の1892年版 10の新しい歌『フモレスケ』 = 1892
「10の・・・」は実は、「ピアノ伴奏版5曲 + オーケストラ伴奏版5曲」で「10曲」である(← 本当
「面白おかしさ 系 = 4曲」と「神 or 王 系 = 1曲」から成り立っている。「ピアノ伴奏版」同士で比較した時に、「伴奏音型」が細やかになっており「オーケストレーション前提の作曲」になっていることが明らかである。時間的にも拡大されており、『大規模な音楽』を予感させる。この5曲全てが魅力的だが、マーラーは「あの世の生活」に『それまでのどの作曲家が到達していなかった世界を予感』したらしい。その予感が「幻の1892年版出版中止」の直接の原因、と私高本は考える。
『角笛交響曲楽章』作曲時代 = 1893-1895
「ラインの伝説」1曲を除き、全てが全て「角笛交響曲構想」に表面立って現れ、「交響曲第10番第3楽章」まで亡霊のように出現したのが、この時期の作品。『全歌曲中、最もマーラーらしい』と私高本は感じている。「ラインの伝説」も、もしかしたら「交響曲の1楽章」の予定だった可能性が高い、と感じる。「あの世の生活」を除くと、「神 or 王 系」はこの時期だけに集中作曲され、この前もこの後も一切出現していない。
「1899年版出版決意」までの3曲 = 1896-1898
「神 or 王 系」が(マーラー人生中)終了し、「元のペース」に戻った時期に当たる。「面白おかしさ 系」2曲作曲した後に、「しっとり 系」の超名作 = 「美しきトランペットが鳴り響くところ Wo die schönen Trompeten blasen」を作曲する。「これで出版したい!」とマーラーが考えたのは、まさにこの時であった。この後は主としてリュッケルトの詩に興味が移る。
「軍隊脱走兵 系」2曲の余韻時代 = 1899-1901
「若き日の歌」で1回だけ作曲した「軍隊脱走兵 系」を2曲も作曲する。2曲とも「テノールのための曲」であり、ニ短調 = 交響曲第3番の基本調性!