パンダ イン・マイ・ライフ

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音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

伴連れ

2016-12-25 | book
安東能明の綾瀬署、柴崎令司シリーズの第3弾、「伴連れ」を読んだ。平成28年5月文庫。2014年から2016年にかけて雑誌連載。5つの短編からなる。

東京、警視庁。綾瀬署が舞台。署長のキャリア坂元真紀。副所長の助川。そして、主人公の警務課課長代理、警視庁総務部企画課でエリートコースを歩んでいた柴崎令司。組織の不祥事で、所轄の署に飛ばされ、悶々とした日々を過ごしている。

掏られた刑事
26歳の女性刑事、高野朋美が警察手帳を掏られた。本人はいたってあっけらかんとしている。署長から、高野の上司、刑事課長の浅井とともに調査を命じられる柴崎。そこに同じ刑事課の波多野係長の高級時計に気づく柴崎。高野の足取りを追い電車の駅構内での何気ない人の動きから、ある別の事件を突き止める。昔の上司から本庁への復帰を打診される柴崎だったが・・・。警察という組織の中で、うごめく人々。そして、社会悪との対決。警察小説のだいご味を再び。

墜ちた者
綾瀬署で17歳の若者がアパートから転落死する。しかし、危険ドラッグが検出されたことから事態が急展開する。生活安全課少年第2第3係や刑事課も動き出す。青少年の更生の場へ顔出した柴崎は、生活安全課の50歳の中道係長と知り合う。一方、大森署で振り込め詐欺の大掛かりな家宅捜索に踏み込むが末端の若者が逮捕されただけだった。柴崎は転落死の現場に行きキャッシュカードを見つける。転落死、危険ドラッグ、振り込め詐欺の点を若者たちが線で結んでいる。前作の高野刑事が若者の張り込み役で登場する。坂元署長が署員との交流の仕方を柴崎に相談するシーンも。

Mの行方
綾瀬署にDV被害が届けられる。29歳の男性が26歳の女性に対して付きまとい、暴力を振るっていた。女性には別に付き合っている男性がいた。
誓約書を書かせても女性の転居先にも姿を現したらしい。生活安全課の担当だが、坂元署長は、女性ということもあり、刑事課の高野刑事も関わせる。そして、柴崎も高野の世話係でこの事件に首を突っ込むことになる。男性はリベンジポルノに走り、告訴状でストーカー規制法違反へと話が展開する。そんな中、男性が姿を消した。そして、自分も死ぬとビデオメッセージが彼女の転居先に届けられる。その映像から柴崎は男性の居場所を突き止めるが・・・。

脈の制動
医療クレーマーの男性がいた。それも、柴崎の義父の山路が勤める病院だった。しかし、医療事故として綾瀬署が動くと、男性は退院してしまう。刑事課はその線で男性を追及する。刑事課の高野刑事が男性の家庭に行くと妻は看護師で連れ子の娘がいた。その保育園で虐待の痕跡を見つける。医療事故なのか、それとも・・・。刑事課での軋轢。Mの行方の自信を喪失していた高野は独自の捜査を始める。柴崎の援助を受けて立ち直る高野刑事。

伴連れ
マンションの一室で強盗傷害事件発生。車いす生活の80代の男性が重傷を負い、70代の妻もケガをした。被害者対応で柴崎が、刑事事件で高野が活躍する一編。捜査を進めるにつれ、次々と明るみに出る事実。度々空き巣に入られていた、老夫婦は階下の家から何回もクレームを言われていた、管理人が住民会費を横領していた、マンションの周りにたむろする若者たちにお金が渡っていたなど。高野は老夫婦の傷の具合に疑問を抱く。そして、最後に明るみになる老夫婦の事実。妻から語られる言葉。
ひとつの事件から、どんどん新たな事実が明らかになり、柴崎ら綾瀬署のメンバーが、当初考えられなかった真実を突き止めていく。安東の警察小説のだいご味だ。
伴連れは、暗証番号を押した住人のうしろについてマンションに侵入する手口だ。
コメント
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