パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

娘が巣立つ朝

2025-01-19 | book
1969年昭和44年生まれの伊吹有喜の「娘が巣立つ朝」を読んだ。2022年令和4年から2024年令和6年2月まで新聞掲載された。2024年5月第1刷。

東京多摩に、26年前に購入した中古住宅に住む夫婦。サラリーマンの高梨建一54歳とひとつ下の妻智子。一人娘の娘の真奈は26歳で、都内で一人暮らしをしている。真奈には、お付き合いしている大学時代の同級生の彼、渡辺優吾がいる。その彼が、結婚を申し込みに高梨家を訪ねてくるところから物語は始まる。

建一、智子、優吾の両親とその親族。結婚というセレモニーを通し、それぞれの家族の現実があぶり出されて、ギクシャクし始める。健一の生まれた三島で、母が入所する施設のボランティア、健一の2つ年上のリコが健一の家族に波風を立てる。

婚約解消に至る両家のしんどいまでの確執。30年近く暮らす夫婦といえども一人の人間である以上、感情のすれ違いは当然で、ストレスは増すばかり。ましてや結婚により付き合わざるを得ない相手の家族を理解することは不可能だ。

登場人物のすべてが苦しみながらも生きる意味を見つけていく。単に娘だけでなく、登場人物それぞれの巣立ちが描かれる。新聞小説らしく飽きさせない。



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秩父事件 農民軍会計長 井上伝蔵の俳句

2025-01-12 | book
秩父事件。明治17年1884年。埼玉県の秩父地方で起きた事件。自由民権運動と農民の困窮がもたらした農民の武装蜂起事件。憲兵隊は農民軍に敗れたものの、東京鎮台兵2個大隊により鎮圧された。死刑7名を含めた3386人の有罪となった。
その指導者の一人、事件当時30歳の商家の6代目井上伝蔵。幕末の元治元年10歳で6代目となった。事件後死刑を宣告されたが、当時移民が増加していた北海道に逃れ、伊藤房次郎として、大正7年64歳で北海道で亡くなる。その句を集めたのが、中嶋鬼谷編著の「秩父事件 農民軍会計長 井上伝蔵の俳句」だ。2024年10月刊行。
江戸時代、芭蕉の登場から始まった俳句の大衆化。叔父にあたる4代目伝蔵は俳号を持ち、父や従兄の5代目も俳号を持っていた。歴代井上家はもちろん北海道時代の句を掘り起こした。解説も付している。伝蔵は、明治22年憲法発布の大赦で赦免となっている。


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新編 虚子自伝

2025-01-05 | book
2024年4月に刊行された岩波文庫「新編 虚子自伝」を読んだ。昭和23年9月の菁柿堂版虚子自伝と昭和29年12月の朝日新聞社版の虚子自伝を掲載している。共に俳人の岸本尚毅編だ。

前者は明治7年(1874)愛媛県松山市に武家の池内家に生まれた人間虚子の、後者は俳人虚子のもの。85歳で亡くなる虚子は、昭和29年に80歳で文化勲章を受章するのでそれまでのことが書かれている。
武士の子として生まれ、維新という変革の中、養子となる。学生時代は京都・仙台で暮らし、小説家を目指し東京で暮らすも、俳句を選び、明治・大正・昭和を通じて、ホトトギスという俳誌を発行することで生計を立て、俳句のすそ野を広げ、雑詠と通じて多くの俳人・愛好者を育てた。それまで一部の知識人教養人のものであった俳句を、現在に至る近代において、俳句を一般に広げた功績は、虚子抜きに語れない。
巻末に昭和30年にホトトギス700号を記念し、虚子が自選した48句を、また、略年譜を掲載する。

今年はどんな年になるのだろう。健康第一でいきたいものです。


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和漢朗詠集

2024-12-29 | book
西暦1000年頃、平安時代、藤原道長や紫式部、清少納言が生きた時代。藤原公任は、名門の摂関家に生まれるも、自らの代には傍系に甘んじた。その彼が、娘の婚姻に際し、編集、作成した「和漢朗詠集(わかんろうえいしゅう)」を読んでいる。当時から愛読され、多くの写本が作成されている。

日本の和歌と中国・日本の漢詩を編集し、朗詠を楽しむ作品集だ。漢詩文587和歌216 計803首。

講談社学術文庫は図書館で借りた。1982年昭和57刊行、1999年平成11に28刷。字も大きく読みやすい。
手元にあるのは角川文庫で2013平成25年刊行、2024年令和6年23版。原文、読み、注解からなり、巻末には作者略伝を。。ただ、講談社版とは異なり、注解の字が小さい。高齢社会の今、これはなんとかしてほしかった。
上下からなり、上は四季に分け、歳時・節日、季節の景物を。下巻は天象、草木、禽獣、遊宴など48からなる。
漢文の読み方を忘れてしまい。返点レ点、一二点をネットで調べた。高校時代に帰ったようだ。
とりあえず、上巻の冬から始め、下巻に移った。一年かけて声に出して、朗詠しよう。

今年もいろんなことがありました。ありすぎかな。
皆さん、よいお年をお迎えください。

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月夜の森の梟

2024-12-22 | book
1954年生まれの直木賞作家小池真理子のエッセイ、「月夜の森の梟」を読んだ。文庫版は2024年1月刊行。

2020年令和2年1月に死去した1950生まれの夫、直木賞作家(小池の5年後に受賞)藤田宣永(よしなが)との思い出を、新聞の土曜日別刷りで2020年6月から翌21年6月まで50回連載した。当時多くの反響があった。

37年前に出会い、ともに小説家を目指す。同棲し、11年前に籍を入れた。藤田に2018年平成30年春に癌が見つかる。1年と10か月の闘病生活。いずれは来る、もう来た人もいる配偶者との永遠の別れ。

亡くなった2020年といえば、新型コロナウイルス感染者が爆発的に増えた時期。2023年5月に5類に移行した。
ストレスランキングでダントツの一位は「配偶者もしくは恋人の死」だそうだ。生まれる時と死ぬときは一人というが、そのカップルにある歴史。そして、残されたものの暮らしは、それぞれ異なり、ひとくくりでこうだなどとはいえない。
ストック原稿は作らなったというから、リアルタイムで、30年前に東京から引っ越した高原の四季が織り込まれていく。
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