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パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

瀬尾まいこ⑱ 夜明けのすべて

2025-02-16 | book
1974年生まれの瀬尾まいこの「夜明けのすべて」を読んだ。2020年10月。

社員6人の小さな会社、栗田金属。建築資材や金物をホームセンターや商店に卸している。そこに就職して3年目の藤沢美紗28歳と2年目の山添孝俊25歳。藤沢は毎月起こるPMS(月経前症候群)、山添はパニック障害のため、大学を卒業して就職した会社を辞めていた。
その二人が、なんとなくお互いの病気に気づき始める。山添の髪切りやお守り事件、事務所の片付け、クイーンのサントラ鑑賞、藤沢の盲腸入院など、さまざまな出来事を通し、二人は近づいていく。
病気を抱えて、生きづらさを感じている人はきっと多いに違いない。焦らないで、ゆっくりでいいよと、彼らを温かく見守ることができるのか。
20代の若者たち。働かなければ収入がない。仕事がなければすることはない。本人は病気のことを周りの人には知られたくない気持ちがあるだろう、今はもとより、将来への不安や焦りを抱えているだろう。
この本で、病気を知ることもできた。また、病気のつらさ・不安も随所にちりばめられている。普通とは何だろうか。読後の思いだ。
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かえるくん、東京を救う

2025-02-09 | book
村上春樹の「かえるくん、東京を救う」を読んだ。これも新年にラジオ朗読で放送されていた。図書館で調べると文芸春秋社の「はじめての文学」シリーズ全12巻の中の村上春樹の中に所収されている。17の短編の一つだ。図書館ではYAというヤングアダルトのコーナーにあった。これは主に中高生のためのコーナーだ。

信用金庫に勤めて16年、独り暮らしの片桐のアパートに、身長2メートル以上のカエルが現れる。ミミズと戦い、東京を地震から救うので手伝ってほしいというのだ。

村上のあとがき(かえるくんのいる場所)によると、このシリーズは、若い人々が読むための短編小説集が編纂方針らしい。村上も、これまでの作品から自選したという。巻末に、それぞれの作品にコメントが寄せられている。

春樹ファンならこういう切り口も満足いただけるのではないか。
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瀬尾まいこ⑩ おしまいのデート

2025-02-02 | book
1974年生まれの瀨尾まいこの「おしまいのデート」をよんだ。表題作他四編の短編集だ。2003年、2005年に月刊誌に掲載された。2011年1月第一刷。

中学生の彗子は、小4の時に両親が離婚。父が再婚したため、父の父、おじいちゃんと月に一回、会う。その母も小学生の男の子を持つ男性と再婚することになり、おじいちゃんとさいごのデートをする。おしまいのデート。
高校卒業し、スーパーに勤めた三好。高校時代に喧嘩かきっかけで、高校教師の上じいに毎月玉子丼をおごってもらっていた。卒業後は、退職した上じいに玉子丼をおごっていた。二十歳になった三好は、上じいに天丼をおごろうといつもの店で待つ。ランクアップ丼
高校二年生の広田は野球部。2月のある日、同じクラスの宝田からデートに誘われる。宝田は、男子だった。ファーストラブ。
32歳のOLの私は、バツイチ。通勤途中の公園で捨て犬を見つける。そこにいつも置いてある中華料理。大学生の内村君が持ってきたものだった。ドッグシェア。
保育士の祥子は、担任のカンちゃんのパパ、妻を亡くした脩平と恋仲になる。三人の初デートを考える祥子。デートまでの道のり

新年のラジオの朗読で「デートまでの道のり」が再放送されていた。瀬尾作品は初めてだ。
軽妙な語り。読みやすく、分かりやすい文章。いずれもほっとできる秀作ぞろいだ。人気作家の理由がわかる。
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句集 カムイ

2025-01-26 | book
1960年生まれ昭和35年俳人 櫂未知子の句集「カムイ」2017年を読んだ。

櫂と同様に昭和30年台生まれの俳人小川軽舟1961年昭和36年生まれの「名句水先案内」2024年4月を新聞紹介で知り、購入した。その中に、櫂さんの句が4句紹介されていた。感性の鋭さ、表現の斬新さに驚き、声に出して諳んじた。
南風(みなみ)吹くカレーライスに海と陸 一瞬にして皆遺品雲の峰 海流のぶつかる匂ひ返り花 火事かしらあそこも地獄なのかしら 
いずれも有季定型で、リズムがある。いずれも句集「カムイ」からであった。
気に入りの他の句も紹介する。
夏空をちよつと高枝切り鋏 車間距離取るごと年の瀬を歩む 桃咲いて戸車おとなしくなりぬ 何着ても田舎臭くて桃の花 風少し連れてくるらし散水車 青空に用あるごとく出初式 てのひらに既婚の匂ひ春の雨 春荒れや封書は二十四グラム 今日ビーフシチュゥは重し養花天 仮通夜や冷し中華に紅少し 扇風機弱めに母を独り占め 勝手口持たぬ暮らしや西瓜切る 探梅やかばんをもたぬ者同士 子は母を選べす雪の中に待つ

櫂さんは北海道余市の出身。その近くに神威岬があるという。句集のタイトルはそこからとったとあとがきにある。
EテレのNHK俳句の選者で初心者コースの担当をされていた。生徒とのトークが楽しみで、添削が洒脱でコメントも辛口。毎月とても楽しみな時間であった。
305の櫂さんの世界を楽しんでいる。小川によると第1,第2句集から17年たった句集で、口語を多用した斬新な作風から北海道の厳しい環境に根ざした本格俳句に舵を切ったとある。
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娘が巣立つ朝

2025-01-19 | book
1969年昭和44年生まれの伊吹有喜の「娘が巣立つ朝」を読んだ。2022年令和4年から2024年令和6年2月まで新聞掲載された。2024年5月第1刷。

東京多摩に、26年前に購入した中古住宅に住む夫婦。サラリーマンの高梨建一54歳とひとつ下の妻智子。一人娘の娘の真奈は26歳で、都内で一人暮らしをしている。真奈には、お付き合いしている大学時代の同級生の彼、渡辺優吾がいる。その彼が、結婚を申し込みに高梨家を訪ねてくるところから物語は始まる。

建一、智子、優吾の両親とその親族。結婚というセレモニーを通し、それぞれの家族の現実があぶり出されて、ギクシャクし始める。健一の生まれた三島で、母が入所する施設のボランティア、健一の2つ年上のリコが健一の家族に波風を立てる。

婚約解消に至る両家のしんどいまでの確執。30年近く暮らす夫婦といえども一人の人間である以上、感情のすれ違いは当然で、ストレスは増すばかり。ましてや結婚により付き合わざるを得ない相手の家族を理解することは不可能だ。

登場人物のすべてが苦しみながらも生きる意味を見つけていく。単に娘だけでなく、登場人物それぞれの巣立ちが描かれる。新聞小説らしく飽きさせない。



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