市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【速報】大同スラグ控訴審…4年越しの住民訴訟の挙句3月6日13:10東京高裁424号法廷で住民完全敗訴!

2019-03-06 23:00:00 | スラグ不法投棄問題
■当会が東吾妻町萩生地区の圃場整備事業で、農道に大同のフッ素・六価クロム入り有毒生スラグが敷砂利として投棄されていた現場をはじめて2014年6月1日に確認して以来、4年9カ月が経過しました。「臭いものに蓋をしないでほしい」と農道舗装工事施工主体である吾妻農業所長に電話で懇願したにもかかわらず、その直後、有害スラグを撤去せずに舗装工事が行われたため、住民監査請求を2015年1月30日に提出しました。しかし、群馬県監査委員が棄却したため、2015年4月30日に住民訴訟を提起しました。以来ほぼ3年が経過しようとしていた2018年3月16日(金)午後1時10分に前橋地裁21号法廷で、裁判長の「主文 原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする」という判決の声が法廷に響き渡りました。この判決を確定させてしまうと、さまざまな方面で収拾のつかない事態が発生し、我が国の土木建設業界のみならず、生活及び営農環境面に甚大な影響を及ぼしかねないため、当会は2018年3月26日(月)に、前橋地裁で控訴手続きをとり、その後、舞台を東京高裁に移し、同8月15日(水)に第1回口頭弁論、同10月31日(水)に第2回口頭弁論、2019年1月9日(水)に第3回口頭弁論で結審し、そして本日3月6日(水)午後1時10分に東京高裁で判決が言い渡されました。結果は一審判決を支持し、原告住民側の完全敗訴に終わりました。


 一審敗訴以降のこの件に関する情報は、次の当会のブログ記事を参照ください。
○2018年3月27日:大同スラグ裁判・・・3月16日に前橋地裁が言渡した判決を不服としてオンブズマンが3月27日に控訴状提出!
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2604.html
○2018年5月15日:大同スラグ裁判・・・3月16日の前橋地裁での敗訴判決を受けて、東京高裁に控訴理由書を提出!
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2640.html
○2018年5月26日:大同スラグ裁判・・・控訴審の第1回口頭弁論が8月15日に東京高裁で開廷が決定!
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2648.html
○2018年8月3日:大同スラグ控訴審…8月15日の第1回口頭弁論が迫り、被控訴人群馬県から控訴答弁書が到来!(前編)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2714.html
○2018年8月3日:大同スラグ控訴審…8月15日の第1回口頭弁論が迫り、被控訴人群馬県から控訴答弁書が到来!(後編)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2715.html
○2018年10月3日:大同スラグ控訴審…10月31日の第2回口頭弁論に向けて控訴人準備書面(1)を提出!(前編)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2768.html
○2018年10月3日:大同スラグ控訴審…10月31日の第2回口頭弁論に向けて控訴人準備書面(1)を提出!(後編)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2768.html
○2018年10月31日:大同スラグ控訴審…10月31日に開かれた第2回口頭弁論で次回結審が決定!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2798.html
○2018年12月18日:大同スラグ控訴審…1月9日の第3回口頭弁論が迫り被控訴人群馬県から控訴審第1準備書面が到来!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2845.html
○2018年12月27日:大同スラグ控訴審…1月9日の第3回口頭弁論が迫るなか被控訴人群馬県へ反論の控訴人準備書面(2)を提出!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2850.html
〇2019年1月9日:大同スラグ控訴審…4年越しの住民訴訟がついに終結!3月6日13:10東京高裁424号法廷で判決!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2857.html



*****424号法廷(4階)開廷表*****
     平成31年3月6日 水曜日
●開始/終了/予定  10:00/第1回弁論
○事件番号/事件名  平成31年(ネ)第220号/簡易生命保険契約存在確認請求控訴事件
○当事者       濱田重則/独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構
○担当係       第22民事部ニ係
●開始/終了/予定  10:30/第1回弁論
○事件番号/事件名  平成30年(行コ)第364号/保険給付不支給決定医処分取消等請求控訴事件
○当事者       山本仁美/国
○担当係       第22民事部ハ係
●開始/終了/予定  13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名  平成30年(ネ)第3925号/損害賠償請求控訴事件
○当事者       石井利幸/近藤富司
○担当係       第22民事部ハ係
●開始/終了/予定  13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名  平成30年(ネ)第4096号/損害賠償請求控訴事件
○当事者       武井重吉/曽雌初美
○担当係       第22民事部ロ係
●開始/終了/予定  13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名  平成30年(ネ)第4473号/持分移転登記抹消登記手続等、不当利得返還反訴請求控訴事件
○当事者       株式会社GOT 外/長沼美津子
○担当係       第22民事部ホ係
●開始/終了/予定  13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名  平成30年(行コ)第139号/住民訴訟控訴事件
○当事者       小川賢/群馬県知事大澤正明

○担当係       第22民事部ニ係
●開始/終了/予定  14:00/第1回弁論
○事件番号/事件名  平成30年(ネ)第5407号/建物明渡請求控訴事件
○当事者       渡部美や子/鐘築美佐子
○担当係 ネ      第22民事部ハ係
**********

■午後0時45分に高裁に着き、4階の424号法廷に行くとまだカギがかかっていたので、待合室で待機しました。午後1時に法廷が点灯され、傍聴席のドアのカギが開きました。中に入ると、出席カードがおいてあり、自分の事件の原告名に〇をつけました。現地には被告群馬県の訴訟代理人の関夕三郎弁護士と農村整備課の職員2名の合計3名が来ており、傍聴席の被告席側に陣取りました。

 最初に当会の大同スラグ事件の控訴審判決が言い渡されるというので本人出頭したことから、法廷内に入って判決を聞けることになりました。

 傍聴席にはほかの事件の判決を聞きに来た人たちも含めて8名の傍聴人が着席していました。なぜか被告県側の訴訟代理人らは法廷内に入ろうとしませんでした、すでに判決内容は高裁から非公式に聞いていたようです。

 まもなく白井裁判長以下3名の判事が入廷してきました。すると、全員起立して礼をしました。

 すかさず、女性の書記官が早口で「平成30年(行コ)第139号」と事件番号を告げました。そして裁判長が「それでは今、読み上げられた住民訴訟控訴事件について判決を言い渡します。主文 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。事実及び理由の朗読は省略をいたします。この事件の言い渡しは以上です。」と告げました。

 一瞬、耳を疑いましたが、長居は無用のため、ただちに退廷しました。傍聴席に出るや、書記官は次の事件番号である「平成30年(ネ)第2925号」を告げると、裁判長は「同じく今読みあげられた損害賠償請求控訴事件の判決を・・」と判決言い渡しを続けていました。

 さっそく15階の民事第22部の窓口に行き、判決文を受け取りました。遅れて被告側もやってきて判決文を受け取りました。こちらが声をかけても、答えようとしません。勝訴したのだから、笑顔を見せてもよいはずですが、なぜかニコリともしません。それもそのはず、控訴審ではほとんど主張らしい主張をしていないためです。

■仰天すべき判決文は次の内容です。

*****判決文*****ZIP ⇒ 20190306.zip
<P1>
平成31年3月6日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成30年(行コ)第139号 住民訴訟控訴事件(原審・前橋地方裁判所平成27年(行ウ)第7号)
口頭弁論終結日 平成31年1月9日
               判    決
   群馬県安中市野殿980番地
          控訴人(1審原告)   小   川       賢
   前橋市大手町1丁目1番1号
          被控訴人(1審被告)  群  馬  県  知  事
                      大   澤   正   明
          同訴訟代理人弁護士   関       夕 三 郎
          同指定代理人      富   澤   貞   夫
          同           篠   原   孝   幸
          同           澤   下       勲
          同           稲   木   一   秀
          同           油   井   祐   紀
               主    文
       1 本件控訴を棄却する。
       2 控訴費用は控訴人の負担とする。
               事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,狩野伸雄に対し, 649万0800円の賠償の命令をせよ。
第2 事案の概要等
1 事案の要旨
(1) 本件は,群馬県の住民である控訴人他1名が,同県が同県吾妻郡東吾妻町

<P2>
内の農道の舗装工事の請負契約を締結し,その請負代金として649万0800円を支出したことが違法であると主張して,地方自治法242条の2第1項4号ただし書に基づき,同県知事である被控訴人に対し,上記請負契約の締結及びその支出に関する権限の委任を受けていた狩野伸雄吾妻農業事務所長に対し上記請負代金に相当する649万0800円の賠償の命令をすることを求めた事案である。
(2) 原審が上記請求を棄却したところ,これを不服として,原審の原告のうち控訴人のみが本件控訴を提起した。(以下,略語は,原則として原判決の表記に従う。)
2 前提となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張
 前提となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決8頁18行目の「又は」を「及び」に改め,次項に当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の「1 前提となる事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)」及び「2 争点及び当事者の主張」に記載のとおりであるから,これらを引用する。
3 当審における当事者の主張
(1) 本件舗装工事の必要性について
(控訴人の主張)
 ア 本件舗装工事は,本件農道が急勾配であることから,その必要性があったとされているが,本件農道のうち,支道6号は急勾配であるのは一部でしかなく,支道27号は急勾配ではなかった。また,支道6号は,地元関係者からは,舗装ではなく,支道側からの進入路を要望されていたものである。
 イ 萩生川西地区には,「区間整理5工事」以外の場所を含め,敷砂利の道路が多数あり,また,急勾配の場所も多数あるのに,被控訴人が平成26

<P3>
年度の地域公共事業調整費により実施した工事の中で,スラグ混合再生路盤材が敷砂利に用いられた道路のみが舗装をされた。
 ウ 吾妻農業事務所は,農道の舗装工事をする場合,自ら設計図書で指定したとおり,下層路盤工,上層路盤工及び表層工に3区分して施工する方法又は路盤工及び表層工に2区分して施工する方法のいずれかによらなければならないにもかかわらず,自ら指定した舗装設計を破ってまで,それ以外の方法によって本件舗装工事を行っており,しかも,その方法は,指定された方法に準じたものとも推認されない。
 エ これらに加え,本件農道整備工事が自己完結的な工事であったことも考慮すると,本件舗装工事は,その必要がないのに,スラグ隠しなど吾妻農業事務所の違法行為を隠蔽する目的で行われたものというべきである。
(被控訴人の主張)
 ア 本件農道のうち,支道6号は急勾配の地点が含まれており,支道27号は,急勾配ではないが,維持管理上必要な路線又は営農上利用状況の多い路線として,地元関係者からの要望を受けて舗装工事をしたものである。
 イ 萩生川西地区の本件ほ場整備事業の施行地域内において,本件舗装工事の後に,本件農道以外の5路線で舗装工事が施工されている。
 ウ 本件舗装工事の仕様は,標準断面図(甲23)のとおりであり,本件再生砕石とは無関係に作成された取付舗装工標準構造図(甲8)と比較すると,表層工が3cm,下層路盤厚が15cmとなる点で基本的に同等の仕様となっているから,指定された方法に準じた方法によったということができる。
(2) 本件舗装工事に先立って本件再生砕石を撤去する必要性について
(控訴人の主張)
ア 道路用鉄鋼スラグの日本工業規格(JIS)A5015が平成25年に改正され,環境安全品質が追加されたから,被控訴人は,プロファ設計に

<P4>
委託するのではなく,自ら,本件再生砕石の安全品質基準適合性を検査すべきであったのに,それを怠った。この懈怠により,本件再生砕石が撤去を要するような有害物であるかどうか分からない状況となっている。
 イ 本件再生砕石には鉄鋼スラグと天然石が混合しており,国土交通省が行う検査では,その中から鉄鋼スラグのみを取り出した上で検査をしているが,プロファ設計による調査は,鉄鋼スラグのみを取り出して検査したものではない。また,プロファ設計による調査は,本件再生砕石は土壌そのものではないのに,土壌の環境基準適合性試験をしている。したがって,プロファ設計による調査は,その結果を信用することができず,非商業的な群馬県農業技術センターなどの機関に検査を委託すべきである。
 ウ 被控訴人が,廃棄物処理に関する指示書を発出し,これに基づき中央橋混合場の立入調査をし,渋川工場スラグを「鉱さい」という分類の廃棄物として認めたことや,国土交通省が道路用鉄銅スラグを用いた工事の調査をしたところ,複数の工事箇所から基準値を超える有害物質が検出されたことからすると,渋川工場スラグから製造された本件再生砕石から六価クロムやフッ素が土壌環境基準値を超えて検出されるのは確実であり,フッ素等による土壌汚染を防止するために撤去を要する有害物である可能性は極めて高いというべきである。とりわけ,本件農道は,農業地帯にあり,安心・安全な食の源となる農作物を生み出すのに必須の土壌と地下水が汚染されないようにすることが営農環境の保全の銀点から重要であるから,被控訴人は,環境部局に助言を求めるなどした上で,大同特殊鋼又は佐藤建設工業に対し,本件再生砕石を本件農道から撤去させるべきであった。
 エ 本件再生砕石は,本件農道整備工事に使用されたが,その後,設計図書で指定された基本設計に従って舗装工事が行われていれば撤去されていたものであるから,循環型社会形成推進基本法2条2項にいう「廃棄物等」に当たる。そこで,それが土壌・水質等の環境に影響を及ぼさないもので

<P5>
ない限り,撤去されなければならないというべきである。
 オ 以上によると,本件舗装工事をする前に本件再生砕石を撤去する必要があったというべきである。
(被控訴人の主張)
 ア 日本工業規格(JIS)A5015に準ずる試験を行うのであれば,鉄鋼スラグが天然砕石とブレンドされている本件再生砕石については,鉄鋼スラグのみを抽出して実施するのではなく,ブレンドされた状態のまま資料を採取するのが合理的である。
   国土交通省も,有害物質の含有量等を確認する調査においては,ブレンドした状態のまま試験を行っている。
   また,農道に使用された再生砕石の検査は,土壌汚染対策法に準拠し,土壌の安全性を確認・維持するために必要かつ合理的な方法によって行うべきである。
 イ 本件舗装工事を施行した各農道に撤去を要するような有害物質がないことは,被控訴人がプロファ設計に委託した試験によって確認済みである。被控訴人が中央橋混合場における土壌の調査を指示したのは,鉱さいである渋川工場スラグの再生処理を行っていた場所であるからにすぎない。
 ウ 被控訴人は,国土交通省関東地方整備局及び渋川市との間で,鉄鋼スラグを含む材料が使用されている施工箇所についての確認をし,材料が環境基準値を満足している施工箇所については,鉄鋼スラグを含む材料は直ちには撤去する必要がないとし,同材料を存置する箇所については,地下水の常時監視等を通じて環境への影響等の監視を行うこととなった。本件農道については,上記の材料を存置する施工箇所に該当するので,被控訴人は,本件農道について地下水の常時監視を行っているが,地下水の汚染が確認された地点は1箇所もない。
(3) 本件舗装工事を差し控える必要性について

<P5>
(控訴人の主張) .
 本件農道整備工事は,「鉄銅スラグ製品の管理に関するガイドライン」 の「路盤材の上層は舗装を実施して下さい」との記載を満たしていないこと,本件農道整備工事で用いられた本件再生砕石は,鉄銅スラグがブレンドされているから,これがブレンドされていない再生砕石に関する「再生資源の利 用に関する実施要領」(建設副産物から生産した再生材の使用に関する仕様書)を満たすとはいえないこと,敷砂利工である本件農道整備工事において鉄鋼スラグがプレンドされた骨材を使用したことは本件監理課通知に違反していることから,被控訴人は,本件農道整備工事のこれらの違法性を隠蔽することになる本件舗装工事を差し控えるべきであったというべきである。
(被控訴人の主張)
 控訴人の上記主張は否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないのでこれを棄却すべきであると判断する。
  その理由は,以下のとおり補正し,次項で当審における当事者の主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを利用する。
(原判決の補正)
(1) 原判決21頁19行目の「工程等」を「工種等」に改める。
(2) 原判決23頁15行目の「株式会社分析センター」を「株式会社環境分析センター」に改める。
2 当審における当事者の主張に対する判断
(1) 本件舗装工事の必要性について
 控訴人は,①本件農道のうち支道6号は,急勾配であるのは一部にとどまる上,地元関係者からは,舗装を要望されていたのではなく,支道側からの

<P7>
進入路を要望されていたこと,②本件農道のうち支道27号は,急勾配ではないこと,③萩生川西地区には,「区間整理5工事」以外の場所を含め,敷砂利の道路が多数あり,また, 急勾配の場所も多数あるのに,平成26年度の地域公共事業調整費により実施された工事の中で,スラグ混合再生路盤材を敷砂利に用いた本件農道のみが舗装されていること,④本件舗装工事の方法が,吾妻農業事務所が設計図書で指定した方法と異なり,それに準ずるものともいえないこと,⑤本件農道整備工事が自己完結的な工事であったことからすると,本件舗装工事は,その必要がないのに行われた舗装工事であると主張する。
 しかし, 上記①については,本件農道のうちの支道6号は,一部とはいえ急勾配の部分があるところ,証拠(乙3)によると,地元関係者から,「区間整理5工事」内の急勾配の路線について舗装の要望がされていたことが認められるものである。
 上記②については,証拠(乙3,16)及び弁論の全趣旨によると,地元関係者の要望に対し,被控訴人の担当者は,急勾配の道路のほか,維持管理上必要な道路,営農上利用状況の多い道路についても,優先度,予算の状況等を考えながら舗装工事をする旨回答しており, 本件農道のうちの支道27号は,これに接する山林からの出水等によりぬかるみやすい箇所があるため舗装をする必要があったことが認められるから,支道27号は,急勾配ではないものの,舗装の必要性があったというべきである。
 上記③については,証拠(乙33の1及び2)及び弁論の全趣旨によると,萩生川西地区の本件ほ場整備事業の施行地域内において,本件舗装工事の後に,スラグ混合再生路盤材を敷砂利に用いていない五つの道路が,急勾配等を理由として舗装されたことが認められるから,萩生川西地区においてスラグ混合再生路盤材を敷砂利に用いた道路として本件農道のみが舗装されたということはできない。

<P8>
 上記④については,吾妻農業事務所が設計図書で指定した方法(甲8)は,敷砂利工がされていない農道の舗装工に係る方法であるところ,本件舗装工事は,敷砂利工がされた農道を舗装するのであるから,その方法が,敷砂利工がされていない農道の舗装工に係る方法と完全に同一にならないのは当然であるというべきであるし 本件舗装工事の仕様(甲23)が不適切であるというわけではなく,設計図書の指定と異なる方法で本件舗装工事をしたということにより,本件舗装工事の必要がなかったことが推認されるものではない。
 上記⑤については,本件農道整備工事が,舗装の時期を具体的に想定しないという意味において自己完結的な工事であったとしても,本件舗装工事をする必要がなかったとはいえないというのは,原審の説示するとおりである。(原判決28頁20行目から29頁22行目まで)。
 以上によると,上記①ないし⑤の主張を踏まえても,本件舗装工事について,その必要がなかったとは認められず,控訴人の上記主張は,これを採用することができない。
(2) 本件再生砕石の撤去の必要性について
 控訴人は,本件舗装工事に先立ち本件再生砕石を撤去する必要性があったと主張し,その理由として,①道路用鉄鋼スラグの日本工業規格が改正されて環境安全品質が追加されたから,被控訴人は自ら本件再生砕石の安全品質基準適合性を検査すべきであったのに,それを怠ったこと,②プロファ設計による調査は,本件再生砕石から鉄銅スラグのみを取り出して検査したものではなく,また,本件再生砕石は土壌そのものではないのに土壌の環境基準 適合性試験をしているから,その結果を信用することができないこと,③被控訴人が,廃棄物処理に関する指示書を発出し,これに基づき中央橋混合場の立入調査をし,渋川工場スラグを「鉱さい」という分類の廃棄物として認めたことや,国土交通省の調査により道路用鉄銅スラグを用いた複数の工事

<P9>
の施工箇所から基準値を超える・有害物質が検出されたことからすると,渋川工場スラグから製造された本件再生砕石から六価クロムやフッ素が土壌環境基準値を超えて検出されるのは確実であり,本件再生砕石がブッ素等による土壌汚染を防止するために撤去を要する有害物である可能性が極めて高いというべきであること,④本件再生砕石は,本件農道整備工事に使用されたが,その後,設計図書で指定された基本設計に従って舗装工事が行われていれば撤去されていたものであるから,循環型社会形成推進基本法2条2項にいう「廃棄物等」に当たり,それが土壌・水質等の環境に影響を及ぼさないものでない限り撤去されなければならないものであることを挙げる。
 しかし,上記①については,道路用鉄鋼スラグの日本工業規格が改正されて環境安全品質が追加されたからといって,それにより直ちにプロファ設計に調査を委託することが不当となるものではなく,被控訴人が自ら本件再生砕石の安全品質基準適合性を検査しなければならないということもできない。
 上記②については,プロファ設計による調査は,本件再生砕石から鉄銅スラグのみを取り出して検査したものではないが,鉄鋼スラグのみを取り出して検査することが適当であるとする専門的知見は認められず,原審も説示するとおり(原判決30頁22行目から25行目まで),鉄鋼スラグのみを取り出して検査した方が適当であると認めるに足りる的確な証拠はない。また,本件再生砕石は土壌そのものではないが,その有害性の有無を確認するために土壌汚染対策法に準拠した検査をしたことについては,これを不適当とする専門的知見は認められず,不合理とはいえない。
 上記③については,被控訴人が,渋川工場スラグの再生処理を行った場所である中央橋混合場において土壌の調査を指示し,あるいは,本件農道以外の場所を対象とした国土交通省の調査によって基準値を超える有害物質が検出されたとしても,そのことから直ちに本件再生砕石から六価クロムやフッ

<P10>
素が土壌環境基準値を超えて検出されるのが確実であるということはできず,かえって, 原審が認定したとおり(原判決25頁5行目から22行目まで),プロファ設計による検査では,「区画整理5工事」区域内の道路では,フッ素も六価クロムも環境安全品質基準が定める基準値を下回ったものである。
 上記④については,本件再生砕石は,循環型社会形成推進基本法2条2項1号の廃棄物ではなく,また,同項2号の一度使用されてその後撤去されたものにも該当しないから,同項に定める「廃棄物等」には該当しないと解されるが,そもそも,同法の趣旨からして,同法に定める廃棄物等に該当するか否かが,直ちに本件再生砕石を撤去すべきか否かに結びつくものではないというべきである。
 以上によると,上記①ないし④の主張を踏まえても,本件舗装工事に先立ち本件再生砕石を撤去する必要性があったと認めることはできないから,控訴人の上記主張は採用できない。
(3) 本件舗装工事を差し控える必要性について
 控訴人は,本件農道整備工事が,「鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン」の記載再生資源の利用に関する実施要領及び本件監理課所定の基準のいずれも満たしていないから,被控訴人は,本件農道整備工事の違法性を隠ぺいすることになる本件舗装工事を差し控えるべきであったと主張しているとも解される。
 しかしながら,本件舗装工事に先立って本件再生砕石を撤去すべき必要性が認められないことは上記(2)のとおりであり, 本件農道整備工事に,本件舗装工事契約をしたことやそのための支出をしたことを地方自治法2条14項に反して違法とならしめる事情があることについての具体的な主張立証はない。
 また,控訴人は,本件農道整備工事が,「鉄銅スラグ製品の管理に関する

<P10>
ガイドライン」の「路盤材の上層は舗装を実施して下さい」の記載に抵触すると主張するものであるが,この記載に従えば,かえって,本件舗装工事をすべきであったということもできる。
 本件監理課通知についても,控訴人は,鉄鋼スラグがブレンドされた骨材は路面敷砂利に使用しないとされているから,敷砂利工である本件農道整備工事において鉄鋼スラグがブレンドされた骨材を使用したことは上記通知に違反していると主張するが, 原審も説示するとおり(原判決32頁21行目から33頁1行目まで),本件舗装工事がされ,本件農道が路面敷砂利ではなくなったことで,この違反状態が解消されたということもできる。
 以上によると,控訴人の上記主張を踏まえても,本件舗装工事に係る契約をしたことやそのための支出をしたことが地方自治法2条14項に反して違法であるということはできない。
(4) 小括
 その他,控訴人の主張に鑑み,当審で追加提出された証拠を含め, 本件訴訟記録を精査しても,原審の認定判断に違法不当な点はなく,これを左右するに足りる的確な主張立証はない。
第4 結論
 以上の次第で,控訴人の請求は理由がないのでこれを棄却すべきであるところ,これと同旨の原判決は相当である。
 よって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。

  東京高等裁判所第22民事部
        裁判長裁判官  白 井 幸 夫

<P12>
        裁判官     岡 田 基 一
        裁判官     田 中 孝 一

<P13>
これは正本である。
平成31年3月6日
 東京高等裁判所第22民事部
  裁判所書記官  神 山    剛
                 東京(高)14-040226
**********

■やはり国を交えた県と渋川氏の3者協議で、有害スラグを放置しても上に舗装をすれば直ちに営農環境や生活環境に影響はない、という司法の判断がまたしても出されたことになります。

 今後、迅速に判決内容を精査したうえで、上告も含めて対応を検討することになります。







ひとたび日本の司法制度の歪みの犠牲となれば、このような形で理不尽な裁判官に抗議の声を粘り強く上げ続けるしか方法がない。↑

【3月9日追記】


※郵券返還書 ZIP ⇒ 20190309ux.zip
3月7日付で東京高裁から郵券返還書が送られてきました。
予納した切手のうち余ったものが返却されてきたものです。
被告からもっと反論が出れば、これほど切手が余らなかったはずです。


【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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2 コメント

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Unknown (主婦)
2019-03-10 11:10:53
インチキ裁判だらけで、日本の司法はないですね。
4千年の昔から、ヒドイ話は変わりませんね。
ヒドイです。
返信する
Unknown (ひらく会情報部)
2019-03-11 13:36:37
>>「主婦」さんへ
 いつも当会のブログを愛読くださり厚く御礼申し上げます。
 ご指摘の通り、東京高裁における控訴審では、当方が主張しただけで、被告の群馬県は何も主張しませんでした。ところが、判決では被告の主張をそのまま取り入れており、これではレフェリー役の裁判所が被告群馬県のセコンドとしてテコ入れしているようなものです。
 いかにこの事件が、大企業と政治力による圧力で、公正であるべき司法の場をゆがめているのかがお分かりいただけることと思います。さらに言えば、大同特殊鋼のヤメ検弁護士が、大同に判決文を書かせてそれを校閲したのではないか、と思えるほどです。
 裁判官が、スラグの現場内利用について、原告の主張の隘路をついて判決文をかけるはずがないからです。
 もういちど上告して再度、公平・公正な裁判の機会を申し出たいと思います。引き続き当会の活動にご理解とご支援のほどお願いいたします。
  市民オンブズマン群馬事務局より
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