■安中市土地開発公社を舞台にした巨額詐欺横領事件が1995年5月に発覚してから23年が経ちました。間違いなく我が国の公務員による不正行為では空前絶後、前代未聞の最大級の不祥事件です。先日、1995年3月に地下鉄サリン事件を起こして日本国民を恐怖に陥れたオウム真理教教祖ら幹部7人の死刑が執行されましたが、報道によれば来年5月に新年号制定を控えて「平成の総括」がその背景にあるとされています。このことからも、当会では、群馬銀行に対する和解金の支払いは、平成最後の年となる本年12月25日の20回目の支払いをもって総括すべきだと考えます。そこで、安中市長に対して、和解20周年まであと165日と迫るこの時点で、一昨日、情報開示請求をFAXで市役所宛てに発出したことは既に報告済みです。
このままだと西暦2013年までタゴの豪遊のツケ回しが継承されかねないタゴ51億円事件の負の遺産ですが、この解消についての当会の要請に対して群馬銀行は「しかるべき立場の者としか話さない」と頑なに拒んでいます。そのため、この問題を解決できるのは安中市長しかいないため、当会は一昨日情報開示請求を安中市長あてに行いました。
今回は、あらためてタゴ51億円事件の顛末について、検証してみたいと思います。
ネットで「安中市土地開発公社 巨額公金事件」で検索すると、「安中市土地開発公社を舞台にした巨額公金詐取事件の顛末」というタイトルで次のURLがヒットします。
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I4756951-00
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問題レポート 安中市土地開発公社を舞台にした巨額公金詐取事件の顛末
小田勉
<詳細情報>
タイトル 問題レポート 安中市土地開発公社を舞台にした巨額公金詐取事件の顛末
著者 小田 勉
出版地(国名コード) JP
出版年(W3CDTF) 1999-07
NDLC ZA1
対象利用者 一般
資料の種別 記事・論文
掲載誌情報(URI形式) http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000012797-00
掲載誌名 政界往来
掲載巻 65
掲載号 7
掲載ページ 46~53
言語(ISO639-2形式) jpn : 日本語
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NDLとは国立国会図書館のことなので、先日、国会議事堂の裏まで足を運びました。受付を経て、中に入るとパソコンで館内の所蔵図書類を検索できるので、さっそく「安中市土地開発公社」で検索すると、3件ヒットしました。そのうちの2件が、1999年7月発行の「政界往来」という雑誌と、51億円事件の記事で、残りの1件が、「安中市史」でした。
■入手した記事は、1999年夏時点でのタゴ51億円事件について記載したもので、事件発覚後4年経過しておりますが、マスコミがなぜか報道したがらないこの歴史的な詐欺横領事件について、限られたページではありますが、全貌をまとめたものとして、一読の価値があります。
*****「政界往来」1999年7月号*****PDF ⇒ 201807111_tago_51okuen_jiken_report.pdf
201807112_tago_51okuen_jiken_report.pdf
<P46>
問題レポート 小田勉
安中市土地開発公社を舞台にした巨額公金詐取事件の顛末
▼群馬・安中市土地開発公社で起こった職員による公金詐取事件は、どこの自治体にでも起こりうる事件なだけに改めて問題点を浮き彫りにし、警鐘とする▲
●土地開発公社の職員はなぜ巨額を詐取できたのか?
「質問― 市土地開発公社五十一億円不祥事件について
(一)民事裁判での和解提案受諾に於ける市の心境と七月十七日の和解打診で議会に報告がなかった理由。
(二)真相解明について市民は不十分と多くの人が感じているが、市の真相解明プロジェクト報告を市民の前に公表を。
(三)損害賠償請求について、時効の時期はいつか、また、前市長、前理事長の責任は辞職をもって全て免責になったのか。
(四)市民負担を求めない方法、市長は税を使わず、公社で処理するとの見解ですが、財源もなく無理だと思いますが考えを伺います。
答弁―
(一)七月七日に打診があり、八月十一日に正式に受け入れ議会に報告致しました。
(二)和解交渉に影響を与えるので今後慎重に検討してまいります。
(三)損害賠償請求は金額が決定していないので、時効の起算に至っていません。また、前市長、前理事長の免責についての答弁は差し控えさせていただきます。
<P47>
(四)市民に負担を求めず公社で処理していく考えに変わりありません」
これは、安中市議会平成十年九月定例会の質疑内容である。
そして、同年十一月に中島博範市長は、市民に対し次のようなコメントを発表した。
「土地開発公社不祥事件にかかわる民事訴訟の和解成立に伴い、この和解に至った経過とその内容について、ご報告させていただきます。
平成七年の五月に公社不祥事件が発党して以来、市民の皆様には、大変なご迷惑とご心配をおかけいたしましたが、お陰様を持ちまして、十二月九日和解が成立いたしました。
和解の内容につきましては、主債務者は公社となり、市についてはその連帯保証人という立場で和解条項に沿った対応が成される訳でございます。
これを教訓に二度とこのような事態が生じないよう十分配意し、公社に対し、一層適切な指導・監督をしてまいります。また、この和解成立を契機として、安中市の発展に向け、新たな気持ちで努力するとともに信頼回復に努めてまいりたいと存じますのでご理解とご協力をお願い申し上げます」
群馬県安中市は、中仙道の宿場町として栄えた城下町である。市街地は、碓氷川に沿って細長く碓氷峠へと続く。市内の秋間梅林ゴルフ場はよく知られている。念願だった長野新幹線「安中榛名駅」も開設、昨年は市政四十周年を迎えた。
人口約四万八千人。平成十年度の一般会計予算は約百八十億円。平成九年度の市税収入決算額は約七十三億円だった。
この市税収入額に匹敵する公金を「市土地開発公社」の一職員が詐取した。前代未間の不祥事である。この事件経過は、詳しく報道されていないが、全国の自治体に警鐘を鳴らす大事件だ。つまり〝職員の不祥事〟に対する「自治体の管理責任」が問われる重要な問題を示唆している。
ところで「土地開発公社」という組織について、住民はどれほどの知識があるだろうか。まず馴染みの薄い存在だろう。公社は「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づいて、地方自治体が全額出資で設立する法人である。大半の自治体が設立しているが、その業務内容は次のとおりだ。
(1)公共、公用施設用地.公営企業用地の取得、造成及びその他の管理処分。
(2)住宅用地の造成事業
(3)関連公共施設整備事業
こうした業務内容だが、業務は日常的に発生するものでないため、専従職員は一人か二人という〝閑職的な部署〟だ。問題は土地買収の必要性が発生した場合、その事業資金は、市の一般会計予算でカバーするのではなく、民間金融機関からの融資(借入)で運用されることだろう。ここに落とし穴があった。
公社の借入額に対しては、自治体が「保証」をする。金融機関にとって、取りはぐれのない安心な融資先だろう。まず貸し渋りはせず融資依頼があれば、厳しい審査などフリーパスで実行する。こうした盲点を巧妙に利用して長期間にわたって詐取を続けていた。
さらに問題なのは、公社の役職者は、首長など行政役職者が兼務していることだ。主要部署でない〝土地開発公社〟に対する関心は極度に低い。したがって提出される書類の決
<P48>
済はほとんど無審査状態だったという。埼玉県A市の元公社専従職員は、次のように告白する。
「かねてから危惧していた不祥事が起きてしまった。公社には疑惑を生む危険性を内在し ている。業務は少数の担当者にまかされ、行政の中では〝離れ小島〟のような存在だ。そこへ土地絡みの〝売買操作〟で、地元有力者や議員が介入してくる。疑惑も少なくない」
さらに同職員は当初、安中事件を知った時、売買操作の贈収賄の不祥事かと思ったという。ありうることだからだ。しかし、まさか〝融資操作〟による巨額詐取とは驚いたが、決して難しい操作ではない。
公社が〝離れ小島〟とはいえ、庁舎内の片隅でもデスクがあれば、外部者は全面的に信頼する。この信頼を巧妙に利用した悪質な手口だった。
●借用証書を偽造して〝特命口座〟に振り込ませる手口
安中事件の発覚は、平成七年五月だった。純朴な市民性、そして小都市特有の〝身内意識〟による信頼感が長期にわたる犯行を隠蔽する結果となった。つまり〝信頼性〟が犯行を可能にする死角となってしまったのではないか。
職員T(43)が許取に手を染めたのは平成二年四月のことである。Tは「市長の特命」という文書を偽造して「群馬銀行」に「安中市土地開発公社特別会計口座」を開設している。この「特命口座」を舞台にしてTは泥沼にはまり込んでいく。
平成二年五月の市長選で現市長が当選したが、Tは〝理事長(現市長)名義〟に口座変更をしている。
銀行側は、まったく不信を抱かず変更に応じ〝特命口座〟は存続した。Tの融資操作は「借用証書(金銭貸借契約証書)」を偽造し、金額を上乗せし〝特命口座〟に振り込ませて いる。
現金の引き出しは〝理事長印〟を盗用して実行した。会社の正規の借入残高は約十億二千万円。銀行の融資残高は約四十七億六千万円という異常さである。
さすがに銀行も不審を抱いたのか。平成七年三月末に「借入残高」の照会を行なっている。
公社は平成六年度の決算委員会をひかえ他の職員が、その照会を疑問に思い、逆に銀行に対し「借入金残高証明書」を請求した。
その結果、袈空の〝特命口座〟の存在が明らかとなった。Tは、事実関係を認め「有印公文書偽造」及び「同行使」で逮捕されている。
平成七年七月から前橋地裁で公判が始まった。一職員による前代未聞の巨額詐欺事件である。市の財政基盤をゆるがせかねない不祥事だ。
Tは、昭和五十四年から「都市計画課」に在籍し、公社設立事務にかかわった。そして、公社経理を任される。すでにこの時点から、公金の流用を思いたったと供述したという。本格的な詐取に着手したのは、前述のとおり〝特命口座〟の開設以降である。
不正借入分の返済期限が迫ると、Tは、どのような隠蔽工作をしたのか。水増し融資による〝自転車操作〟による処理だ。どこまで続くぬかるみぞである。こうして事件が発覚する平成七年五月までに総額約四十八億円を詐取した。Tは、この巨額をどのように使ったのか。
明らかになったのはギャンブルをはじめ、自宅や喫茶店、倉庫などの建築費、骨董品、株券、ゴルフ会員券、リゾートマンション利用券、高級外車、貴金属類など〝欲望〟の命ずるままに使っている。
それにしても、これほどの派手な生活ぶりに、同僚や付近の住民たちは不思議に思わなかったのか。Tの実家は資産家ではない。しかも〝地方公務員〟という身分だ。Tは、派手な生活を送る一方で、借入金の返済期限に追われ、日常業務は犯行の発覚防止対策に専念する。予定のない事業用地取得資金として
<P49>
せっせと〝特命口座〟に振り込ませるという手口だ。
Tは犯行が発覚するんではないかと危険を感じた時があった。平成六年九月に新規借入依頼をした際、銀行は「借入依頼申込書」に市の「債務保証限度額」を明記するよう求めている。Tは「疑われているのではないか」と不安を覚えたという。
Tは、不安を感じながらも、その後の借入額は約二十三億円である。すでに正常な感覚は失われていた。そして、平成七年五月の犯行発覚となる。
平成八年二月の公判で、Tに対する論告求刑が行われた。求刑は〝懲役十五年〟だったが、検察側は、
「公務員の地位を悪用し、公文書の持つ信用力を低下させるなど犯行は悪質である。その手口も巧妙で上司や銀行担当者の信頼を逆手にとった。犯行の動機は〝派手な生活〟をしたいという金銭欲からだ」
と厳しい論告だった。何しろ五年間で二百四十九回にわたって詐取を続けていたのである。
一方、群馬銀行は平成七年十月、安中市を相手に「貸金保証債務履行請求」訴訟に踏み切った。請求金額は、Tが弁済した六億円を差し引いた約四十億円である。どのような公判が展開するのだろうか。
●公判でも指摘された公社および市側の問題点
平成八年四月、Tに対する刑事事件の判決が言い渡された。判決内容は、全国の公社関係者にとって多くの示唆を含んでいる。詳しい報道がされていないので要旨を取り上げてみよう。
① 犯罪事実
被告人は、安中市職員で、安中市土地開発公社の職員に併任され、同公社の用地取得事業資金借入などの事務を担当していたが、同公社の群馬銀行安中支店からの資金借り入れに際し、正規借入額に水増しして、その水増し分をだまし取ろうと企て、処理を偽造し、普通預金口座を無断で開設した上、借り入れにかかる借入依頼書、あるいは、金銭消費貸借契約証書および連帯保証契約書などを偽造・変造し、また、「安中市土地開発公社の公有地取得事業資金として、一億四千五百九十八万一千円の借入手続きをしていただきたい。そのうち一億円を特別会計の普通預金口座に入金して欲しい」などと嘘を言い、同二年四月から同七年三月までの間、十一回にわたり、被告人が同支店に特別会計用の名目で開設した同公社名義の普通預金口座に約三十二億三千万円を振込入金させて、これらをだまし取った。
② 犯行までの経過
被告人は、昭和五十七年ころから事務費の一部を使い込むようになり、昭和六十年ころまでに四~五千万円を着服して競馬や麻雀などのギャンブル資金、生活費などに充てていた。被告人は、その不正行為が発覚しないように金銭を調達する必要に迫られ、正規の借入額を水増しして、同公社名義の正規の普通預金口座に振込入金を受け、その水増し分を払い戻して使い込むようになり、平成二年四月ころまでに、その総額は十一億円余りに達した。
その後、被告人は、自己の不正行為の発覚を恐れ、密かに特別会計用の名目で普通預金口座を新規に開設し、ここから水増し分を振り込ませて本件各犯行に及んだ。
③ 犯行の動機など
被告人は、派手な生活をしたいとか見栄を張りたいなどと考えて、事務費の一部を自己のギャンブル代等に充て、入金された土地代金にも手をつけ、その発覚を免れるための資金繰りとさらに自己の用途に費消するため、借入額の水増しをする方法で犯罪を重ねた。本件各犯行の動機は、公務員の身分を弁えない誠に身勝手なものであり、酌量の余地が全くない。
本件起訴にかかる被害額は合計三十二億三千万円であるが、そのうち二十二億円余りを
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被告人は自己の用途に費消している。その余を被告人は、それまでの借入金の返済等に充てているが、その費消状況を見ると、被告人が公判廷で述べる「犯行の発覚を免れるため」というにはかけ離れたものであり、見栄を張るというには常軌を逸している。
また、本件犯行は、被告人が、同公社および同市役所の上司や群馬銀行融資担当者から信用・信頼を得ていたことを利用し、長期間にわたり功妙かつ計画的に反復したものである。
④ 犯行の結果など
被告人は、公務員としての職責を放棄したばかりか、その地位を濫用して巨額の私利を貪っていたのであり、これにより公務員に対する信頼を大きく失墜させるとともに、公文書の信用性を著しく損ねた。
群馬銀行に対して莫大な損害を与えたところ、結局、群馬銀行と安中市土地開発公社・安中市との間でその損害の解決を図らざるを得ないことから、群馬銀行は安中市土地開発公社および安中市を被告として、約四十憶円の返済を求める民事訴訟を提起した。
本件犯行は、安中市政に対する市民の不信を募らせて、市長、助役、収入役が辞職し、市役所関係職員が懲戒処分を受けるなどの事態に発展し、安中市政に重大な混乱を生じさせた。
被告人は、公判廷において、内心では自己の不正が発覚してもらいたいとの思いがあったなどと供述しているが、被告人は長期間にわたり、次第に発展させながら犯行を重ねていき、本件各犯行に及んでこれを反復していたこと、平成七年四月に人事異動で転出を余儀なくされるや、公社理事長印を冒捺した預金払戻請求書を作成して以降の犯行に供え、融資担当行員に対しては、「教育委員会に移った後も市長の特命を受けて公社の仕事を手伝うことになっている。」などと嘘を言い、同年五月にも払い戻しを受けていること、不正が発覚してからも、虚言を弄し、また、特別会計口座の預金通帳や預金払戻請求書を焼却して証拠の隠滅を図っていることなどからすれば、被告人の犯行継続の意思はかなり強いものであったといわざるを得ず、犯行継続中はもちろん、犯行発覚後の行状も芳しくない。
⑤ 公社および市側の問題点
もっとも、被告人の犯行がここまで拡大した背景には、安中市土地開発公社の監査方法などに問題点があったことも否定できない。
監査に際して決算書類とその預金通帳の入出金出状況を照合してさえおれば、容易に被告人の使い込みを発見でき、その後の犯行を防止できたはずである。
公社理事長の公印管理については、被告人のような部内者が故意に密かに公印を冒捺することを防止することには困難を伴うとはいえ、被告人が極めて多数回にわたって公印を暴捺していたところをみると、その管理が杜撰であったとの謗りを免れない。
次に、市長公印についても、厳密な点検をして問題点を見逃さないという姿勢に欠けていたとの非難を免れない。
また、被告人を公社設立当初から十五年も同じ職場に配置しておいたことは、被告人が本件犯行を反復する土壌となったものであり、人事管理の観点からも問題があったといわざるを得ない。
⑥ 群馬銀行の問題点
一方、群馬銀行にも問題点が少なくない。すなわち、融資金と用途について十分な調査もせず、一職員にすぎない被告人の「公社の窓口は自分だけである。融資の話は必ず自分を通して欲しい」などと言う言葉を真に受け、特別会計用口座も併設して借入金を振り分けて管理している点、特別会計用口座については預金残高証明書の発行を求めない点、借入金残高証明書の発行を求めない点、通常、地権者の銀行口座に振込入金されるべきところ、被告人一人が銀行窓口を訪れ、約二百五十回もの多数回にわたって現金でこれを引き下ろしている点など、容易に疑問を抱いて然るべきところが多々あったにもかかわらず、これ
<P51>
らを不審に思って調査した様子もなく、却って被告人をゴルフに接待していることなどからすれば、被告人が安中市および安中市土地開発公社の職員であることに気を許し、安中市の債務保証も得られていると即断し、安易に巨額の融資を継続してきた点で、銀行としてあるべき対応に欠けるところがあったとの謗りを免れない。
⑦ 結論
本件各犯行がそれぞれに悪質極まりなく、他に例を見ない巨額な被害を発生させ、社会の多方面にわたって大変深刻な影響を及ぼしていること、被告人の得た額が莫大であることに鑑みれば、被告人の刑事責任は誠に重く、被告人が本件各犯行を素直に認めて反省の情を示していること、現在まで六億円を超える被害弁償をし、さらに今後もある程度の被害弁償が見込まれること、被告人は懲戒免職処分となり、家族を含めて社会的な制裁を受けていることなどの事情を十二分に考慮しても、懲役十四年の実刑は免れないものというほかはない。
●民事で対立した安中市と群馬銀行の言い分
こうしてTの犯行については結審した。しかし〝債務保証〟を行っている安中市に対する民事訴訟は、両者の言い分は平行線をたどった。
ある市幹部は、
「群銀の主張を全面的に容認することは、安中市だけの問題ではない。二度とこのような事件が再発しないと信じるが、安易な妥協は前例となってしまう。たしかにTの判決で市や公社の問題点を指摘されている。謙虚に事実関係は受け止めるが、群銀の責任も回避できない」
と苦渋の弁明だった。
安中市側は、刑事事件の判決で、事実関係が明らかになった。原告は、その判決を踏まえ請求原因人(貸金、保証債務履行請求)を変更する考えがあるのかないのか。そして〝偽造〟の事実をあくまで否認するのか、または認めて新たな主張をするのかと反論した。
原告側は「表見代理(民法第一一〇条)を類推適用、さらに「使用者責任(民法第七一五条)」を主張し対立した。安中市は「偽造や変造」というTの行為は「業務遂行上」で実行された原告の〝重大な過失〟については次のように陳述している。
① 犯行行為の受け皿となった特別会計口座の開設について、市長の特命が存在したとのことであるが、これにかかわる意思確認が行われるべきところ、なされていない。市長が変わった経過もある。
② 証拠として提出されている借入にかかわる変更契約関係の書類を見ると、記名押印の不足しているもの、あるいは意思確認の押印欠如のものなどが見受けられるが、一般の借入手続きでは考えられないことである。
③ 融資額はその借入目的によりおのずと決まってくるはずであるが、借入目的に対する融資金額が、通常では考えられない過大なものもある。
④ 土地代金については事故防止のため、通常口座振替であるが、多数回に及ぶ現金払戻しは理解しがたい。
⑤ 偽造および変造の態様は、漢数字が加筆されていることがわかる形でなされているが、原告は何故疑念を抱かなかったのか。
安中市の主張に対し原告は、次のように反論した。
① 特別会計口座開設理由が、市長の特命であるとの主張は、事実に反する。
② 元となる借入契約における書類には全ての意思確認の押印があり、これが変更の場合の意思確認欄の押印は原告内部の手続き上省略を許されたものである。
③ 被告公社は、原告にとって極めて新余生の高い得意先であり、通常行われる不動産取得資金の貸付に伴う担保権の設定もしておらず、原告において借入目的を深く斟酌、詮索をすることは必要としない取引である。
<P52>
④ 土地代金の支払いについては口座振替もあれば、現金払いによる場合もあると承知している。
⑤ 偽造・詐欺事件の詳細が明らかとなった現在、疑惑の目をもって検証すればいざ知らず、平常の取引下においては、むしろ「誰も」加筆されていることに気づくものはいないと言っても過言ではない。
これに対し安中市はさらに反論する。
① 被告公社の借入決定手続きおよび被告安中市の債務保証手続きについて、Tが各法令、規則などの規定上関与する場面はなく、原告の主張は適当でないこと。
② 原告が事実を誤認している点は、前記のTの権限の他にも多々あること。
③ 本訴請求における原告の表見代理の主張および使用者責任は各貸付について事情が異なるのであるから、それぞれ別個にその類推の基礎や職務執行性を主張すべきであること。
また、その中で、公社および市の指摘する「原告の重大な過失」については、原告は再反論する。
① 保証債務の意思確認については特に厳重な手続きが取られるべきであることが、原告の事務取扱細則に規定されているが被告安中市に対する保証債務意思確認手続が、この事務取扱規則に定める方法で行われていることは明白であること。
② 同様に、この事務取扱細則において、借入金に係る債務保証限度額の確認は必須の要件とされているが、安中市の債務保証限度額を超えての融資が行われている。
●裁判長の勧告で和解したものの結局ツケは市民に・・・
こうして平成十年十二月、裁判長の和解勧告を受け入れ、別掲内容で和解が成立した。簡単に要旨をまとめると、
一、よりよい地域社会づくりの実現に向けて努力することを目的に、互譲の精神を持って和解を行なう。
二、土地開発公社が主債務者、安中市については連帯保証人と位置付けた上で、原告に対して、原告請求の借入元金三十三億八千六百十八万二千四百二十五円及び和解成立期日までに発生した利息損害金全額、それぞれの相当額の支払い義務の存在を認める。
三、二項でその存在を認めた債務のうち、元金相当額部分の九億三千六百十八万二千四百二十五円及び利息損害金全額相当額(約五億円)の支払いについて、原告は免除する。
四、三項において免除された後の残債務金二十四億五千万円にかかる具体的な支払い方法を示しているが、この中で、残務債権については、利息を付さない。
五、支払い期日及び額が特定された支払いが、一回でも、一月以上遅れた場合には、残額及び遅延損害金を一括して支払う。
六、訴訟開始以降公社が償還義務を履行するため、法務局に供託を行ってきたものがあり、この供託金について、公社がこれを取り戻すものとし、また、原告はこれに異議なく了承する。
七、これまでの各項に明示された内容以外の請求について、原告はこれを放棄する。
八、本訴訟に関して、この和解条項に定められた事項以外に、何も債権や債務はないことを、互いに確認する。
和解に伴って生じる負担については、公社で対応するという。和解条項第四項第一号及び二号において、平成十年十二月二十五日に四億円を、平成十一年から十年間は年二千万円を毎年十二月二十五日に支払うことになった。
平成九年度決算時における公社の準備金は四億二千万円余りで、今回の和解成立により群馬銀行に対し債務が消滅することとなる訴訟対象になっていた公社の正規の借入金の残二億二千万円等があるので、これらを合計すれば、六億円を超えることになる。この額及び支払い期日が特定された部分については、対応が可能となるものだ。ただ、準備金について、全額が現金・預金というものではなく、今後の事業活動により現金化される部分も含
<P53>
まれている。
今後とも適切な事業の執行が求められることになり、容易なことではない。
残債務については、両者で協議して支払い方法を定めることになっている。今後において求められる事項については十分な協議を行ない、誠実に対応するという。
それにしても、Tが詐取した確定金額は三十三億八千六百万円という巨額である。これに利息と遅延損害金などを合わせると十数億円と推定されるが、和解で免除ということになった。
しかし、平成十年十二月に四億円を支払い、十一年から毎年二千万円を分割で返済。
その後は同公社の財政状況などを見ながら、年間支払額が二千万円を下らない範囲で、十年ごとに返済額を双方で協議して決めるとされており、計算上では〝百年返済〟も可能だ。
「市長は、借金の返済は公社で処理するので、市民は理解してくれると言っているが、公社で処理しようと、しまいと公金ではないか。市民の負担であることは間違いない。市が〝管理責任〟を問われるのは当然だ。管理者が多少でも金銭的弁済が不可能ならば〝引責辞任〟すべきではないか」
と厳しく責任追及する市民の声はいまも出ている。
=====和解条項=====
一 原告と被告らは、友好的且つ健全な金融取引得を通じて、よりよい地域社会の実現に向け努力することを目的とし、本件事実の特殊性及び被告らの財務負担の軽減ひいては住民福祉に配慮した裁判所の和解勧告を尊重し、互譲の精神をもって、以下のとおり和解する。
二 被告安中市土地開発公社は主債務者として、被告安中市は連帯保証人として、原告に対し、連帯して、原告請求にかかる本件借入金元金三十三億八千六百十八万二千四百二十五円及び本日までに発生した利息損害金全額相当額の支払義務あることを認める。
三 原告は、被告らに対し、本日、前項の債務のうち借入金元金九億三千六百三十八万円及び前項の利息損害金全額相当額の支払いを免除する。
四 被告らは、連帯して、原告に対し、前項の免除後の残債務金二十四億五千万円を、次のとおり分割して、原告安中支店における群馬銀行安中支店長名義別段預金口座番号○○○○○○○に振り込んで支払う。但し、残債務金には利息を付さない。
1 平成十年十二月二十五日限り金四億円
2 平成十一年から十年間は、毎年十二月二十五日限り金二千万円宛
3 前号後の十年間の残金支払方法については、原告と被告らが前号の最終支払期日までに、その時の被告らの財務状況並びに一般経済情勢等を勘案のうえ、前号の年間支払額を下回らない範囲で協議して定め、以降も残金支払済まで同様とする。
五 被告らが前項1及び2の各分割金の支払いを一回でも一か月以上遅滞したときは、被告らは当然に期限の利益を失い、残額及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から支払い済みまで年十四パーセントの割合による損害金を一括して直ちに支払う。
六 被告安中市土地開発公社は、別紙供託金一覧表記載の供託金を取り戻すものとし、原告はこれに異議はない。
七 原告はその余の請求を放棄する。
八 原告と被告らは、本件に関し、本和解事項に定める他には何ら債権債務のないことを相互に確認する。
九 訴訟費用は、各自の負担とする。
**********
■以上のように、当時の事件のことが脳裏に蘇ってきます。しかし、この記事は、裁判の判決文や、安中市議会の議事録などをベースに書き上げているだけなので、事件の真相に係わる情報はありません。それでも、全体の事件の全容を把握するには、分かりやすいと思います。
それにしても、判決文の「⑦結論」のところを読むと、「・・・被告人が本件各犯行を素直に認めて反省の情を示していること、現在まで六億円を超える被害弁償をし、さらに今後もある程度の被害弁償が見込まれること、被告人は懲戒免職処分となり、家族を含めて社会的な制裁を受けていることなどの事情を十二分に考慮しても・・・」とありますが、「今後もある程度の被害弁償が見込まれる」というくだりには思わず苦笑いを禁じ得ません。
なぜなら、15年間で、タゴから直接の返済があったのは昨年初めの3万円と、今年初めの5万円の合計8万円のみだからです。
また、「家族を含めて社会的な制裁を受けている」というくだりも、的外れです。家族は、多胡運輸の後継企業である「美正」の庇護のもと、家計に不自由はなく、それどころか、警察の調べでも14億円を超える使途不明金のおかげで、未だに左ウチワの生活であり、しかも、タゴひとりが刑務所で服役したことから、共同正犯同然の市役所のOBや政治関係者らは、いまだにタゴに頭が上がらず、そうした事件関係者から永久的にタゴはちやほやされている始末です。
このような状況なので、「事件の制裁を受けている」のは、我々事件の真相を何もしらされていない善良な納税者市民なのです。その救済のためにも、茂木市長には、群馬銀行に対して、今回の20回目の和解金支払いをもって、後世に無用なツケ回しをしないよう、毅然として交渉してほしいと真に願う次第です。
【市政をひらく安中市民の会事務局より】
このままだと西暦2013年までタゴの豪遊のツケ回しが継承されかねないタゴ51億円事件の負の遺産ですが、この解消についての当会の要請に対して群馬銀行は「しかるべき立場の者としか話さない」と頑なに拒んでいます。そのため、この問題を解決できるのは安中市長しかいないため、当会は一昨日情報開示請求を安中市長あてに行いました。
今回は、あらためてタゴ51億円事件の顛末について、検証してみたいと思います。
ネットで「安中市土地開発公社 巨額公金事件」で検索すると、「安中市土地開発公社を舞台にした巨額公金詐取事件の顛末」というタイトルで次のURLがヒットします。
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I4756951-00
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問題レポート 安中市土地開発公社を舞台にした巨額公金詐取事件の顛末
小田勉
<詳細情報>
タイトル 問題レポート 安中市土地開発公社を舞台にした巨額公金詐取事件の顛末
著者 小田 勉
出版地(国名コード) JP
出版年(W3CDTF) 1999-07
NDLC ZA1
対象利用者 一般
資料の種別 記事・論文
掲載誌情報(URI形式) http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000012797-00
掲載誌名 政界往来
掲載巻 65
掲載号 7
掲載ページ 46~53
言語(ISO639-2形式) jpn : 日本語
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NDLとは国立国会図書館のことなので、先日、国会議事堂の裏まで足を運びました。受付を経て、中に入るとパソコンで館内の所蔵図書類を検索できるので、さっそく「安中市土地開発公社」で検索すると、3件ヒットしました。そのうちの2件が、1999年7月発行の「政界往来」という雑誌と、51億円事件の記事で、残りの1件が、「安中市史」でした。
■入手した記事は、1999年夏時点でのタゴ51億円事件について記載したもので、事件発覚後4年経過しておりますが、マスコミがなぜか報道したがらないこの歴史的な詐欺横領事件について、限られたページではありますが、全貌をまとめたものとして、一読の価値があります。
*****「政界往来」1999年7月号*****PDF ⇒ 201807111_tago_51okuen_jiken_report.pdf
201807112_tago_51okuen_jiken_report.pdf
<P46>
問題レポート 小田勉
安中市土地開発公社を舞台にした巨額公金詐取事件の顛末
▼群馬・安中市土地開発公社で起こった職員による公金詐取事件は、どこの自治体にでも起こりうる事件なだけに改めて問題点を浮き彫りにし、警鐘とする▲
●土地開発公社の職員はなぜ巨額を詐取できたのか?
「質問― 市土地開発公社五十一億円不祥事件について
(一)民事裁判での和解提案受諾に於ける市の心境と七月十七日の和解打診で議会に報告がなかった理由。
(二)真相解明について市民は不十分と多くの人が感じているが、市の真相解明プロジェクト報告を市民の前に公表を。
(三)損害賠償請求について、時効の時期はいつか、また、前市長、前理事長の責任は辞職をもって全て免責になったのか。
(四)市民負担を求めない方法、市長は税を使わず、公社で処理するとの見解ですが、財源もなく無理だと思いますが考えを伺います。
答弁―
(一)七月七日に打診があり、八月十一日に正式に受け入れ議会に報告致しました。
(二)和解交渉に影響を与えるので今後慎重に検討してまいります。
(三)損害賠償請求は金額が決定していないので、時効の起算に至っていません。また、前市長、前理事長の免責についての答弁は差し控えさせていただきます。
<P47>
(四)市民に負担を求めず公社で処理していく考えに変わりありません」
これは、安中市議会平成十年九月定例会の質疑内容である。
そして、同年十一月に中島博範市長は、市民に対し次のようなコメントを発表した。
「土地開発公社不祥事件にかかわる民事訴訟の和解成立に伴い、この和解に至った経過とその内容について、ご報告させていただきます。
平成七年の五月に公社不祥事件が発党して以来、市民の皆様には、大変なご迷惑とご心配をおかけいたしましたが、お陰様を持ちまして、十二月九日和解が成立いたしました。
和解の内容につきましては、主債務者は公社となり、市についてはその連帯保証人という立場で和解条項に沿った対応が成される訳でございます。
これを教訓に二度とこのような事態が生じないよう十分配意し、公社に対し、一層適切な指導・監督をしてまいります。また、この和解成立を契機として、安中市の発展に向け、新たな気持ちで努力するとともに信頼回復に努めてまいりたいと存じますのでご理解とご協力をお願い申し上げます」
群馬県安中市は、中仙道の宿場町として栄えた城下町である。市街地は、碓氷川に沿って細長く碓氷峠へと続く。市内の秋間梅林ゴルフ場はよく知られている。念願だった長野新幹線「安中榛名駅」も開設、昨年は市政四十周年を迎えた。
人口約四万八千人。平成十年度の一般会計予算は約百八十億円。平成九年度の市税収入決算額は約七十三億円だった。
この市税収入額に匹敵する公金を「市土地開発公社」の一職員が詐取した。前代未間の不祥事である。この事件経過は、詳しく報道されていないが、全国の自治体に警鐘を鳴らす大事件だ。つまり〝職員の不祥事〟に対する「自治体の管理責任」が問われる重要な問題を示唆している。
ところで「土地開発公社」という組織について、住民はどれほどの知識があるだろうか。まず馴染みの薄い存在だろう。公社は「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づいて、地方自治体が全額出資で設立する法人である。大半の自治体が設立しているが、その業務内容は次のとおりだ。
(1)公共、公用施設用地.公営企業用地の取得、造成及びその他の管理処分。
(2)住宅用地の造成事業
(3)関連公共施設整備事業
こうした業務内容だが、業務は日常的に発生するものでないため、専従職員は一人か二人という〝閑職的な部署〟だ。問題は土地買収の必要性が発生した場合、その事業資金は、市の一般会計予算でカバーするのではなく、民間金融機関からの融資(借入)で運用されることだろう。ここに落とし穴があった。
公社の借入額に対しては、自治体が「保証」をする。金融機関にとって、取りはぐれのない安心な融資先だろう。まず貸し渋りはせず融資依頼があれば、厳しい審査などフリーパスで実行する。こうした盲点を巧妙に利用して長期間にわたって詐取を続けていた。
さらに問題なのは、公社の役職者は、首長など行政役職者が兼務していることだ。主要部署でない〝土地開発公社〟に対する関心は極度に低い。したがって提出される書類の決
<P48>
済はほとんど無審査状態だったという。埼玉県A市の元公社専従職員は、次のように告白する。
「かねてから危惧していた不祥事が起きてしまった。公社には疑惑を生む危険性を内在し ている。業務は少数の担当者にまかされ、行政の中では〝離れ小島〟のような存在だ。そこへ土地絡みの〝売買操作〟で、地元有力者や議員が介入してくる。疑惑も少なくない」
さらに同職員は当初、安中事件を知った時、売買操作の贈収賄の不祥事かと思ったという。ありうることだからだ。しかし、まさか〝融資操作〟による巨額詐取とは驚いたが、決して難しい操作ではない。
公社が〝離れ小島〟とはいえ、庁舎内の片隅でもデスクがあれば、外部者は全面的に信頼する。この信頼を巧妙に利用した悪質な手口だった。
●借用証書を偽造して〝特命口座〟に振り込ませる手口
安中事件の発覚は、平成七年五月だった。純朴な市民性、そして小都市特有の〝身内意識〟による信頼感が長期にわたる犯行を隠蔽する結果となった。つまり〝信頼性〟が犯行を可能にする死角となってしまったのではないか。
職員T(43)が許取に手を染めたのは平成二年四月のことである。Tは「市長の特命」という文書を偽造して「群馬銀行」に「安中市土地開発公社特別会計口座」を開設している。この「特命口座」を舞台にしてTは泥沼にはまり込んでいく。
平成二年五月の市長選で現市長が当選したが、Tは〝理事長(現市長)名義〟に口座変更をしている。
銀行側は、まったく不信を抱かず変更に応じ〝特命口座〟は存続した。Tの融資操作は「借用証書(金銭貸借契約証書)」を偽造し、金額を上乗せし〝特命口座〟に振り込ませて いる。
現金の引き出しは〝理事長印〟を盗用して実行した。会社の正規の借入残高は約十億二千万円。銀行の融資残高は約四十七億六千万円という異常さである。
さすがに銀行も不審を抱いたのか。平成七年三月末に「借入残高」の照会を行なっている。
公社は平成六年度の決算委員会をひかえ他の職員が、その照会を疑問に思い、逆に銀行に対し「借入金残高証明書」を請求した。
その結果、袈空の〝特命口座〟の存在が明らかとなった。Tは、事実関係を認め「有印公文書偽造」及び「同行使」で逮捕されている。
平成七年七月から前橋地裁で公判が始まった。一職員による前代未聞の巨額詐欺事件である。市の財政基盤をゆるがせかねない不祥事だ。
Tは、昭和五十四年から「都市計画課」に在籍し、公社設立事務にかかわった。そして、公社経理を任される。すでにこの時点から、公金の流用を思いたったと供述したという。本格的な詐取に着手したのは、前述のとおり〝特命口座〟の開設以降である。
不正借入分の返済期限が迫ると、Tは、どのような隠蔽工作をしたのか。水増し融資による〝自転車操作〟による処理だ。どこまで続くぬかるみぞである。こうして事件が発覚する平成七年五月までに総額約四十八億円を詐取した。Tは、この巨額をどのように使ったのか。
明らかになったのはギャンブルをはじめ、自宅や喫茶店、倉庫などの建築費、骨董品、株券、ゴルフ会員券、リゾートマンション利用券、高級外車、貴金属類など〝欲望〟の命ずるままに使っている。
それにしても、これほどの派手な生活ぶりに、同僚や付近の住民たちは不思議に思わなかったのか。Tの実家は資産家ではない。しかも〝地方公務員〟という身分だ。Tは、派手な生活を送る一方で、借入金の返済期限に追われ、日常業務は犯行の発覚防止対策に専念する。予定のない事業用地取得資金として
<P49>
せっせと〝特命口座〟に振り込ませるという手口だ。
Tは犯行が発覚するんではないかと危険を感じた時があった。平成六年九月に新規借入依頼をした際、銀行は「借入依頼申込書」に市の「債務保証限度額」を明記するよう求めている。Tは「疑われているのではないか」と不安を覚えたという。
Tは、不安を感じながらも、その後の借入額は約二十三億円である。すでに正常な感覚は失われていた。そして、平成七年五月の犯行発覚となる。
平成八年二月の公判で、Tに対する論告求刑が行われた。求刑は〝懲役十五年〟だったが、検察側は、
「公務員の地位を悪用し、公文書の持つ信用力を低下させるなど犯行は悪質である。その手口も巧妙で上司や銀行担当者の信頼を逆手にとった。犯行の動機は〝派手な生活〟をしたいという金銭欲からだ」
と厳しい論告だった。何しろ五年間で二百四十九回にわたって詐取を続けていたのである。
一方、群馬銀行は平成七年十月、安中市を相手に「貸金保証債務履行請求」訴訟に踏み切った。請求金額は、Tが弁済した六億円を差し引いた約四十億円である。どのような公判が展開するのだろうか。
●公判でも指摘された公社および市側の問題点
平成八年四月、Tに対する刑事事件の判決が言い渡された。判決内容は、全国の公社関係者にとって多くの示唆を含んでいる。詳しい報道がされていないので要旨を取り上げてみよう。
① 犯罪事実
被告人は、安中市職員で、安中市土地開発公社の職員に併任され、同公社の用地取得事業資金借入などの事務を担当していたが、同公社の群馬銀行安中支店からの資金借り入れに際し、正規借入額に水増しして、その水増し分をだまし取ろうと企て、処理を偽造し、普通預金口座を無断で開設した上、借り入れにかかる借入依頼書、あるいは、金銭消費貸借契約証書および連帯保証契約書などを偽造・変造し、また、「安中市土地開発公社の公有地取得事業資金として、一億四千五百九十八万一千円の借入手続きをしていただきたい。そのうち一億円を特別会計の普通預金口座に入金して欲しい」などと嘘を言い、同二年四月から同七年三月までの間、十一回にわたり、被告人が同支店に特別会計用の名目で開設した同公社名義の普通預金口座に約三十二億三千万円を振込入金させて、これらをだまし取った。
② 犯行までの経過
被告人は、昭和五十七年ころから事務費の一部を使い込むようになり、昭和六十年ころまでに四~五千万円を着服して競馬や麻雀などのギャンブル資金、生活費などに充てていた。被告人は、その不正行為が発覚しないように金銭を調達する必要に迫られ、正規の借入額を水増しして、同公社名義の正規の普通預金口座に振込入金を受け、その水増し分を払い戻して使い込むようになり、平成二年四月ころまでに、その総額は十一億円余りに達した。
その後、被告人は、自己の不正行為の発覚を恐れ、密かに特別会計用の名目で普通預金口座を新規に開設し、ここから水増し分を振り込ませて本件各犯行に及んだ。
③ 犯行の動機など
被告人は、派手な生活をしたいとか見栄を張りたいなどと考えて、事務費の一部を自己のギャンブル代等に充て、入金された土地代金にも手をつけ、その発覚を免れるための資金繰りとさらに自己の用途に費消するため、借入額の水増しをする方法で犯罪を重ねた。本件各犯行の動機は、公務員の身分を弁えない誠に身勝手なものであり、酌量の余地が全くない。
本件起訴にかかる被害額は合計三十二億三千万円であるが、そのうち二十二億円余りを
<P50>
被告人は自己の用途に費消している。その余を被告人は、それまでの借入金の返済等に充てているが、その費消状況を見ると、被告人が公判廷で述べる「犯行の発覚を免れるため」というにはかけ離れたものであり、見栄を張るというには常軌を逸している。
また、本件犯行は、被告人が、同公社および同市役所の上司や群馬銀行融資担当者から信用・信頼を得ていたことを利用し、長期間にわたり功妙かつ計画的に反復したものである。
④ 犯行の結果など
被告人は、公務員としての職責を放棄したばかりか、その地位を濫用して巨額の私利を貪っていたのであり、これにより公務員に対する信頼を大きく失墜させるとともに、公文書の信用性を著しく損ねた。
群馬銀行に対して莫大な損害を与えたところ、結局、群馬銀行と安中市土地開発公社・安中市との間でその損害の解決を図らざるを得ないことから、群馬銀行は安中市土地開発公社および安中市を被告として、約四十憶円の返済を求める民事訴訟を提起した。
本件犯行は、安中市政に対する市民の不信を募らせて、市長、助役、収入役が辞職し、市役所関係職員が懲戒処分を受けるなどの事態に発展し、安中市政に重大な混乱を生じさせた。
被告人は、公判廷において、内心では自己の不正が発覚してもらいたいとの思いがあったなどと供述しているが、被告人は長期間にわたり、次第に発展させながら犯行を重ねていき、本件各犯行に及んでこれを反復していたこと、平成七年四月に人事異動で転出を余儀なくされるや、公社理事長印を冒捺した預金払戻請求書を作成して以降の犯行に供え、融資担当行員に対しては、「教育委員会に移った後も市長の特命を受けて公社の仕事を手伝うことになっている。」などと嘘を言い、同年五月にも払い戻しを受けていること、不正が発覚してからも、虚言を弄し、また、特別会計口座の預金通帳や預金払戻請求書を焼却して証拠の隠滅を図っていることなどからすれば、被告人の犯行継続の意思はかなり強いものであったといわざるを得ず、犯行継続中はもちろん、犯行発覚後の行状も芳しくない。
⑤ 公社および市側の問題点
もっとも、被告人の犯行がここまで拡大した背景には、安中市土地開発公社の監査方法などに問題点があったことも否定できない。
監査に際して決算書類とその預金通帳の入出金出状況を照合してさえおれば、容易に被告人の使い込みを発見でき、その後の犯行を防止できたはずである。
公社理事長の公印管理については、被告人のような部内者が故意に密かに公印を冒捺することを防止することには困難を伴うとはいえ、被告人が極めて多数回にわたって公印を暴捺していたところをみると、その管理が杜撰であったとの謗りを免れない。
次に、市長公印についても、厳密な点検をして問題点を見逃さないという姿勢に欠けていたとの非難を免れない。
また、被告人を公社設立当初から十五年も同じ職場に配置しておいたことは、被告人が本件犯行を反復する土壌となったものであり、人事管理の観点からも問題があったといわざるを得ない。
⑥ 群馬銀行の問題点
一方、群馬銀行にも問題点が少なくない。すなわち、融資金と用途について十分な調査もせず、一職員にすぎない被告人の「公社の窓口は自分だけである。融資の話は必ず自分を通して欲しい」などと言う言葉を真に受け、特別会計用口座も併設して借入金を振り分けて管理している点、特別会計用口座については預金残高証明書の発行を求めない点、借入金残高証明書の発行を求めない点、通常、地権者の銀行口座に振込入金されるべきところ、被告人一人が銀行窓口を訪れ、約二百五十回もの多数回にわたって現金でこれを引き下ろしている点など、容易に疑問を抱いて然るべきところが多々あったにもかかわらず、これ
<P51>
らを不審に思って調査した様子もなく、却って被告人をゴルフに接待していることなどからすれば、被告人が安中市および安中市土地開発公社の職員であることに気を許し、安中市の債務保証も得られていると即断し、安易に巨額の融資を継続してきた点で、銀行としてあるべき対応に欠けるところがあったとの謗りを免れない。
⑦ 結論
本件各犯行がそれぞれに悪質極まりなく、他に例を見ない巨額な被害を発生させ、社会の多方面にわたって大変深刻な影響を及ぼしていること、被告人の得た額が莫大であることに鑑みれば、被告人の刑事責任は誠に重く、被告人が本件各犯行を素直に認めて反省の情を示していること、現在まで六億円を超える被害弁償をし、さらに今後もある程度の被害弁償が見込まれること、被告人は懲戒免職処分となり、家族を含めて社会的な制裁を受けていることなどの事情を十二分に考慮しても、懲役十四年の実刑は免れないものというほかはない。
●民事で対立した安中市と群馬銀行の言い分
こうしてTの犯行については結審した。しかし〝債務保証〟を行っている安中市に対する民事訴訟は、両者の言い分は平行線をたどった。
ある市幹部は、
「群銀の主張を全面的に容認することは、安中市だけの問題ではない。二度とこのような事件が再発しないと信じるが、安易な妥協は前例となってしまう。たしかにTの判決で市や公社の問題点を指摘されている。謙虚に事実関係は受け止めるが、群銀の責任も回避できない」
と苦渋の弁明だった。
安中市側は、刑事事件の判決で、事実関係が明らかになった。原告は、その判決を踏まえ請求原因人(貸金、保証債務履行請求)を変更する考えがあるのかないのか。そして〝偽造〟の事実をあくまで否認するのか、または認めて新たな主張をするのかと反論した。
原告側は「表見代理(民法第一一〇条)を類推適用、さらに「使用者責任(民法第七一五条)」を主張し対立した。安中市は「偽造や変造」というTの行為は「業務遂行上」で実行された原告の〝重大な過失〟については次のように陳述している。
① 犯行行為の受け皿となった特別会計口座の開設について、市長の特命が存在したとのことであるが、これにかかわる意思確認が行われるべきところ、なされていない。市長が変わった経過もある。
② 証拠として提出されている借入にかかわる変更契約関係の書類を見ると、記名押印の不足しているもの、あるいは意思確認の押印欠如のものなどが見受けられるが、一般の借入手続きでは考えられないことである。
③ 融資額はその借入目的によりおのずと決まってくるはずであるが、借入目的に対する融資金額が、通常では考えられない過大なものもある。
④ 土地代金については事故防止のため、通常口座振替であるが、多数回に及ぶ現金払戻しは理解しがたい。
⑤ 偽造および変造の態様は、漢数字が加筆されていることがわかる形でなされているが、原告は何故疑念を抱かなかったのか。
安中市の主張に対し原告は、次のように反論した。
① 特別会計口座開設理由が、市長の特命であるとの主張は、事実に反する。
② 元となる借入契約における書類には全ての意思確認の押印があり、これが変更の場合の意思確認欄の押印は原告内部の手続き上省略を許されたものである。
③ 被告公社は、原告にとって極めて新余生の高い得意先であり、通常行われる不動産取得資金の貸付に伴う担保権の設定もしておらず、原告において借入目的を深く斟酌、詮索をすることは必要としない取引である。
<P52>
④ 土地代金の支払いについては口座振替もあれば、現金払いによる場合もあると承知している。
⑤ 偽造・詐欺事件の詳細が明らかとなった現在、疑惑の目をもって検証すればいざ知らず、平常の取引下においては、むしろ「誰も」加筆されていることに気づくものはいないと言っても過言ではない。
これに対し安中市はさらに反論する。
① 被告公社の借入決定手続きおよび被告安中市の債務保証手続きについて、Tが各法令、規則などの規定上関与する場面はなく、原告の主張は適当でないこと。
② 原告が事実を誤認している点は、前記のTの権限の他にも多々あること。
③ 本訴請求における原告の表見代理の主張および使用者責任は各貸付について事情が異なるのであるから、それぞれ別個にその類推の基礎や職務執行性を主張すべきであること。
また、その中で、公社および市の指摘する「原告の重大な過失」については、原告は再反論する。
① 保証債務の意思確認については特に厳重な手続きが取られるべきであることが、原告の事務取扱細則に規定されているが被告安中市に対する保証債務意思確認手続が、この事務取扱規則に定める方法で行われていることは明白であること。
② 同様に、この事務取扱細則において、借入金に係る債務保証限度額の確認は必須の要件とされているが、安中市の債務保証限度額を超えての融資が行われている。
●裁判長の勧告で和解したものの結局ツケは市民に・・・
こうして平成十年十二月、裁判長の和解勧告を受け入れ、別掲内容で和解が成立した。簡単に要旨をまとめると、
一、よりよい地域社会づくりの実現に向けて努力することを目的に、互譲の精神を持って和解を行なう。
二、土地開発公社が主債務者、安中市については連帯保証人と位置付けた上で、原告に対して、原告請求の借入元金三十三億八千六百十八万二千四百二十五円及び和解成立期日までに発生した利息損害金全額、それぞれの相当額の支払い義務の存在を認める。
三、二項でその存在を認めた債務のうち、元金相当額部分の九億三千六百十八万二千四百二十五円及び利息損害金全額相当額(約五億円)の支払いについて、原告は免除する。
四、三項において免除された後の残債務金二十四億五千万円にかかる具体的な支払い方法を示しているが、この中で、残務債権については、利息を付さない。
五、支払い期日及び額が特定された支払いが、一回でも、一月以上遅れた場合には、残額及び遅延損害金を一括して支払う。
六、訴訟開始以降公社が償還義務を履行するため、法務局に供託を行ってきたものがあり、この供託金について、公社がこれを取り戻すものとし、また、原告はこれに異議なく了承する。
七、これまでの各項に明示された内容以外の請求について、原告はこれを放棄する。
八、本訴訟に関して、この和解条項に定められた事項以外に、何も債権や債務はないことを、互いに確認する。
和解に伴って生じる負担については、公社で対応するという。和解条項第四項第一号及び二号において、平成十年十二月二十五日に四億円を、平成十一年から十年間は年二千万円を毎年十二月二十五日に支払うことになった。
平成九年度決算時における公社の準備金は四億二千万円余りで、今回の和解成立により群馬銀行に対し債務が消滅することとなる訴訟対象になっていた公社の正規の借入金の残二億二千万円等があるので、これらを合計すれば、六億円を超えることになる。この額及び支払い期日が特定された部分については、対応が可能となるものだ。ただ、準備金について、全額が現金・預金というものではなく、今後の事業活動により現金化される部分も含
<P53>
まれている。
今後とも適切な事業の執行が求められることになり、容易なことではない。
残債務については、両者で協議して支払い方法を定めることになっている。今後において求められる事項については十分な協議を行ない、誠実に対応するという。
それにしても、Tが詐取した確定金額は三十三億八千六百万円という巨額である。これに利息と遅延損害金などを合わせると十数億円と推定されるが、和解で免除ということになった。
しかし、平成十年十二月に四億円を支払い、十一年から毎年二千万円を分割で返済。
その後は同公社の財政状況などを見ながら、年間支払額が二千万円を下らない範囲で、十年ごとに返済額を双方で協議して決めるとされており、計算上では〝百年返済〟も可能だ。
「市長は、借金の返済は公社で処理するので、市民は理解してくれると言っているが、公社で処理しようと、しまいと公金ではないか。市民の負担であることは間違いない。市が〝管理責任〟を問われるのは当然だ。管理者が多少でも金銭的弁済が不可能ならば〝引責辞任〟すべきではないか」
と厳しく責任追及する市民の声はいまも出ている。
=====和解条項=====
一 原告と被告らは、友好的且つ健全な金融取引得を通じて、よりよい地域社会の実現に向け努力することを目的とし、本件事実の特殊性及び被告らの財務負担の軽減ひいては住民福祉に配慮した裁判所の和解勧告を尊重し、互譲の精神をもって、以下のとおり和解する。
二 被告安中市土地開発公社は主債務者として、被告安中市は連帯保証人として、原告に対し、連帯して、原告請求にかかる本件借入金元金三十三億八千六百十八万二千四百二十五円及び本日までに発生した利息損害金全額相当額の支払義務あることを認める。
三 原告は、被告らに対し、本日、前項の債務のうち借入金元金九億三千六百三十八万円及び前項の利息損害金全額相当額の支払いを免除する。
四 被告らは、連帯して、原告に対し、前項の免除後の残債務金二十四億五千万円を、次のとおり分割して、原告安中支店における群馬銀行安中支店長名義別段預金口座番号○○○○○○○に振り込んで支払う。但し、残債務金には利息を付さない。
1 平成十年十二月二十五日限り金四億円
2 平成十一年から十年間は、毎年十二月二十五日限り金二千万円宛
3 前号後の十年間の残金支払方法については、原告と被告らが前号の最終支払期日までに、その時の被告らの財務状況並びに一般経済情勢等を勘案のうえ、前号の年間支払額を下回らない範囲で協議して定め、以降も残金支払済まで同様とする。
五 被告らが前項1及び2の各分割金の支払いを一回でも一か月以上遅滞したときは、被告らは当然に期限の利益を失い、残額及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から支払い済みまで年十四パーセントの割合による損害金を一括して直ちに支払う。
六 被告安中市土地開発公社は、別紙供託金一覧表記載の供託金を取り戻すものとし、原告はこれに異議はない。
七 原告はその余の請求を放棄する。
八 原告と被告らは、本件に関し、本和解事項に定める他には何ら債権債務のないことを相互に確認する。
九 訴訟費用は、各自の負担とする。
**********
■以上のように、当時の事件のことが脳裏に蘇ってきます。しかし、この記事は、裁判の判決文や、安中市議会の議事録などをベースに書き上げているだけなので、事件の真相に係わる情報はありません。それでも、全体の事件の全容を把握するには、分かりやすいと思います。
それにしても、判決文の「⑦結論」のところを読むと、「・・・被告人が本件各犯行を素直に認めて反省の情を示していること、現在まで六億円を超える被害弁償をし、さらに今後もある程度の被害弁償が見込まれること、被告人は懲戒免職処分となり、家族を含めて社会的な制裁を受けていることなどの事情を十二分に考慮しても・・・」とありますが、「今後もある程度の被害弁償が見込まれる」というくだりには思わず苦笑いを禁じ得ません。
なぜなら、15年間で、タゴから直接の返済があったのは昨年初めの3万円と、今年初めの5万円の合計8万円のみだからです。
また、「家族を含めて社会的な制裁を受けている」というくだりも、的外れです。家族は、多胡運輸の後継企業である「美正」の庇護のもと、家計に不自由はなく、それどころか、警察の調べでも14億円を超える使途不明金のおかげで、未だに左ウチワの生活であり、しかも、タゴひとりが刑務所で服役したことから、共同正犯同然の市役所のOBや政治関係者らは、いまだにタゴに頭が上がらず、そうした事件関係者から永久的にタゴはちやほやされている始末です。
このような状況なので、「事件の制裁を受けている」のは、我々事件の真相を何もしらされていない善良な納税者市民なのです。その救済のためにも、茂木市長には、群馬銀行に対して、今回の20回目の和解金支払いをもって、後世に無用なツケ回しをしないよう、毅然として交渉してほしいと真に願う次第です。
【市政をひらく安中市民の会事務局より】
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