■2016年1月15日深夜1時55分頃、長野県北佐久郡軽井沢町の国道18号碓氷バイパスの入山峠付近の群馬県(安中市)と長野県(軽井沢町)の境界から軽井沢側に下る坂道で、定員45人の大型観光バスがガードレールをなぎ倒して道路脇に転落しました。この事故で、乗員・乗客41人(運転手の乗員2人と乗客39人)のうち、15人が死亡(乗員は2人とも死亡)、生存者も全員が負傷し、バス事故としては1985年の犀川スキーバス転落事故以来の過去30年で最多の死者が出る事故となりました。
この事故では、事故に巻き込まれた乗客らが、現場に駆け付けた両県の救急隊員らにより直ちにトリアージ処置が行われ、重症度が判定され、その場で死亡が確認された乗員・乗客以外は救急車で最寄りの病院に運ばれました。
報道によれば、それらの病院としては、次のように報じられていました。
① JA長野厚生連佐久総合病院佐久医療センター(現場から直線距離で約20キロの佐久市。15日午前5時半までに男性6人を受入れ。1名死亡、2名渋滞、3名重症)
② 軽井沢病院(約5キロの軽井沢町。男性3名を受入れ。2名死亡、1名重症で長野市内の病院にヘリで転送)
③ くろさわ病院(約20キロの佐久市。午前4時ごろ、男性4名を受入れ。いずれも負傷者)
④ 公立富岡総合病院(約23キロの富岡市。消防から3人の搬送要請があったが病床に空きがなく15日午前4時過ぎ、女性2名を受入れ。いずれも重傷者)
⑤ 高崎総合医療センター(約30キロの高崎市。午前4時40分、男性1名を受入れ。意識不明の重傷者)
⑥ 群馬大医学部付属病院(約40キロの前橋市。午前5時50分ごろ、男性1名を受入れ。重傷者)
以上のように、事故発生から2~4時間以内に、佐久市、軽井沢町、富岡市、高崎市、前橋市に18人(うち長野県が13名、群馬県が5名)が搬送されました。
この報道を聞いた安中市民は、なぜ、現場から20キロしか離れていない安中市の公立碓氷病院の名前が出てこないのだろうか、とずっと疑問に思っていました。そうした声が当会にも寄せられたため、事故発生から約1カ月が経過した2016年2月17日に、次の情報内容の行政文書開示請求書を安中市に提出しました。
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<開示を請求する行政文書の内容又は件名>
2016年1月16日の東京新聞の報道によれば「多数の死傷者を出した十五日に長野県軽井沢町で起きたバス事故。事故現場の国道18号碓氷バイパス入山峠付近は県境に近く、県内の消防署からも救急隊員が出動して救命活動にあたり、負傷者は県内の三病院にも搬送された。(中略)高崎、安中両市でつくる高崎市等広域消防局が派遣した救急隊員たちの証言をまとめたところ、現場は氷点下で非常に寒く、負傷した乗客に毛布を一枚ずつ渡したが、足りずに二枚、三枚と重ねる人が相次いだ。(中略)同消防局によると、十五日午前二時十九分ごろ、長野県佐久市の佐久広域連合消防本部からファクスと電話で応援要請があった。管内各署から隊員計二十一人が計七台の救急車などで出動、現場には同三時以降に次々と到着した。先に到着していた長野の隊員が負傷者の救助に当たり、群馬の隊員は暫定的に重症度によって治療や搬送の順番を定める「トリアージ」と、五人の搬送を同六時ごろまで担当した。トリアージには最優先で治療が必要な重傷者に赤色、次いで入院が必要な重傷者らに黄色のタグを付ける。高崎総合医療センターに搬送した二十~三十代の男性、公立富岡総合病院に搬送した十九歳と二十三歳の女性二人、群馬大病院(前橋市)に搬送した二十代の男性はいずれもタグが赤色。浅間総合病院(佐久市)に搬送した二十五歳前後の女性はタグが黄色だった」とあります。これに関連して、次のことがわかる情報。
(1) 公立碓氷病院への重傷者らの搬送についていつどのような打診があったのか、あるいはなかったのか。
(2) 公立碓氷病院が重傷者らの搬送打診に対して、どのような対応をしたのか、あるいはしなかったのか。
(3) そのような対応をした(あるいはしなかった)理由や背景はどのようなものだったのか。
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その結果、2016年2月26日付で次の決定通知がありました。つまり、上記の(1)~(3)までの情報のうち、(2)(3)に係る情報はなく、(1)のみを開示するというものです。
※行政文書不存在通知書 → 20160226smixloxj.pdf
※行政文書部分開示決定通知書 → 20160226jmxloxj.pdf
部分開示決定通知書に基づき、当会は2016年3月1日午後2時から、安中市役所で情報開示を受けました。開示された情報は、当直日誌メモ帳のコピー1枚だけでした。当日のメモを次に示します。
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20160114oxaixloxj.jpg
※PDF→20160114xloxj.pdf
1/14(木) 中村DR911 嘉島NS951 河、篠原
3:20 高崎消防指令よりTEL。バス事故により負傷者多数あり。何名収容可能かDRにTEL繋ぐ。来院なし
5:55 高崎指令より、対応ありがとう終了した旨報告のTEL有り。(ニュースでは、11人死亡28人ケガ)
6:45 朝日新聞記者よりTEL
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■この当直日誌メモ帳から分かるのは、事故発生から1時間半後に、現場に出動していた高崎市等広域消防局から碓氷病院にもコンタクトがあったことです。
メモによると、当直の2名の職員は、午前3時20分に高崎市等広域消防局指令センターから電話を受けて外科の中村医師に繋ぎ、同医師が指令センターとやり取りをした結果、公立碓氷病院では、重傷者らの受け入れを断念したことがわかります。
断念した経緯や、後日、碓氷病院内でこの件について院長以下、協議をしたのかどうかという事実関係についても、(2)(3)の情報について不存在とされたことから、そうした判断や対応に関して、協議された経緯はなかった、ということがうかがえます。
ここからは当会の勝手な推測ですが、中村医師が高崎等広域消防局指令センターとのやり取りの結果、碓氷病院での受け入れを断念した背景には、次の2つの理由があったのではないかと推察されます。
1つ目は、重傷者の受け入れに対して、外科専門の中村医師としては、重傷者の受傷状況の説明を消防局から伝えられた際に、自分とは専門外の処置が必要と判断し、人的にも施設的にもより適切な措置が受けられる他の病院への転送を勧めたのではないか、ということです。
2つ目は、こうした社会的に重要な緊急事故対応について、日頃の院長の方針がきちんと出されていたのかどうか、ということです。
■碓氷病院では、群馬大学医学部からの医師派遣に依存する体制が、最近ずっと定着しています。ところが、一昨年から取り沙汰されている群馬大学附属病院での腹腔鏡手術ミスで、肝臓切除手術を受けた患者8人が2010年から2014年にかけて相次いで死亡した事故の影響もあって、群大からの医師派遣がますます難しくなっているという事情があるようです。
今回の事故被害者は、シートベルトを着用していなかったため、バスの転落と立木への衝突の衝撃で、頭部を天井などに強く打ち付けたことによる脳挫傷が多かったと報じられています。
高崎市消防指令センターから、現場でのトリアージの結果、碓氷バイパスから国道18号で直行できる碓氷病院に対して、どのような重傷者の受け入れ打診があったのかは、情報が不存在のため分かりませんが、碓氷病院に午前3時20分に受け入れ打診があり、碓氷病院が受け入れを断念した後、午後4時過ぎに公立富岡総合病院で、腰椎・頸椎骨折と骨盤骨折の女性2名の重傷者を受入れ、午後4時40分に高崎総合医療センターで男性1名の意識不明者を受入れ、午前5時50分ごろ、群馬大医学部付属病院で男性1名の重傷者を受入れたことがわかります。
いずれも、碓氷病院では処置の対応が難しい重傷者もしくは重体者だったことから、最初に高崎消防局指令センターから打診を受けた碓氷病院では、受け入れを断念したのではないか、と推察されます。
あるいは、設備的には対応可能だったかもしれないが、人的な面で対応が困難だと、当直の中村医師は判断したようです。
いずれにしても、高崎島広域消防局から、碓氷病院に対して対応についての謝辞があったことから、対応に特に問題はなかったと推測されます。しかし、そうした事情はともかく、市民感情としては、碓氷病院で一人でもよいから重傷者を受入れて処置をすることで、全国にその存在を知らしめることができたらよかったのに・・・と思った市民も結構いらっしゃると思います。
【3月20日追記】
**********2016年3月19日上毛新聞社会面
安中・公立碓氷病院 3カ年計画で経営立て直し
安中市は18日、2016年度から3か年計画で公立碓氷病院の軽軽を立て直す方針を示した。常勤医不足で整形外科などで入院患者を受け入れられず、赤字が拡大している。
同日の市議会全員協議会に報告した。
病院経営に詳しいコンサルタントに経営状況の分析と改善計画の策定を委託する。委託業者は公募型プロポーザル方式で選考する。
市が昨年7月に設置した有識者でつくる検討委員会が、整形外科と泌尿器科の医師の確保や、高齢者施設や開業医からの照会件数の増加などの早期実現を求め、コンサルタントの導入を提言した。
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【ひらく会情報部】
※参考情報「事故に関する新聞報道」
**********毎日新聞2016年1月15日 11時00分(最終更新 1月15日 14時10分)
スキーバス転落 長野、群馬の病院搬送「多くが頭を損傷」

↑記者会見で患者の状態を説明する岡田邦彦・救命救急センター長(左)。右は渡辺仁院長=長野県佐久市のJA長野厚生連佐久総合病院佐久医療センターで2016年1月15日午前8時47分、武田博仁撮影↑
スキー客を乗せて暗闇の峠を走っていたバスに、何が起きたのか。長野県軽井沢町の国道18号碓氷バイパスで15日、乗客・乗員41人を乗せた大型バスがガードレールを突き破り、14人が死亡、27人が重軽傷を負った事故。現場では負傷者のうめき声が響く中、懸命の救出活動が繰り広げられた。
負傷者は長野、群馬両県の計9病院に搬送され、緊急手術など救命・救急治療を受けた。
長野県佐久市のJA長野厚生連佐久総合病院佐久医療センターには15日午前5時半までに20代の男性6人が運ばれた。同センターによると、このうち川崎市の男性(22)が脳挫傷で死亡。2人が内臓損傷などで重体、3人が重傷という。岡田邦彦・救命救急センター長は「患者の多くが頭を損傷している。無防備な状態でバスが転落したため、かなりの衝撃を受けたのだと思う」と話した。
3人が搬送された軽井沢病院(同県軽井沢町)によると、心肺停止状態で運ばれた20代男性が頭蓋(とうがい)内損傷で、30代男性が頸椎(けいつい)損傷で死亡が確認された。30代後半の男性は意識はあるものの、顔や上半身に多発骨折があり重傷。長野市内の病院にドクターヘリで転送された。
佐久市のくろさわ病院には午前4時ごろ、男性4人が搬送された。救急車が足りなかったためか、他の消防車両で運ばれてきたという。いずれも意識はあり、命に別条はないが、顎(あご)や鼻を骨折したり、頭や顔、肩、腕を打撲したりしていた。黒澤一也院長は「4人は擦り傷が多く、かなり出血して服も破れていた」と話した。
群馬県富岡市の公立富岡総合病院には午前4時過ぎ、女子学生2人が相次いで搬送された。沖縄県うるま市の女性(19)が腰椎(ようつい)骨折と頸椎骨折、神奈川県茅ケ崎市の女性(23)が骨盤骨折で入院。ともに搬送時は意識があり、家族とも連絡が取れているという。病院関係者は「消防から3人を搬送したいと要請があったが病床に空きがなく、2人しか受け入れられなかった」と話した。
群馬県高崎市の高崎総合医療センターには午前4時40分、20〜30代とみられる男性1人が搬送された。病院によると、氏名は不明。脳挫傷のほか、鎖骨と肋骨(ろっこつ)を骨折しており、意識不明の重体という。
前橋市の群馬大医学部付属病院には午前5時50分ごろ、東京都八王子市の20代の男子大学生が運び込まれた。背骨を骨折したほか、胸を強く打っているため緊急手術する予定だが命に別条はないという。宮城県から家族が病院に到着した。【武田博仁、安藤いく子、高橋努】
**********IZAニュース2016.1.15 17:03
軽井沢スキーバス転落 シートベルト着用徹底せず、指示なく被害拡大か
長野県軽井沢町の国道バイパスを走行中の大型バスが転落しスキー客ら14人が死亡、27人が負傷した事故で、シートベルト着用が徹底されず、死傷者の多くが事故発生時に着用していなかった疑いがあることが15日、複数の乗客の証言で分かった。出発前や走行中も着用を指示するアナウンスはなかったという。ベルト非着用が甚大な被害につながった可能性がある。
負傷者の一部は一定速度の交通事故など大きな衝撃で生じる「高エネルギー外傷」と診断されていたことも判明。犠牲者はバスがガードレールに激しくぶつかったり、横転したりした際、いすから投げ出されて壁や窓に激突し頭部などを負傷、死亡したとみられる。多くは即死状態だった。
病院で取材に応じた大学4年の男子学生(23)は「周りにシートベルトをしてない人が多かった」と説明。腰などを負傷した別の大学生も「着用指示はなく、自分もしていなかった」と話した。
**********2016年1月15日NHK 18時11分
スキーバス転落で14人死亡 バス会社を捜索へ
15日午前2時ごろ、長野県軽井沢町のバイパスで、スキー客を乗せたバスが道路から転落し、乗っていた41人のうち、乗客12人と乗員2人の合わせて14人が死亡したほか、27人が病院に搬送されて手当てを受けていて、意識がない人もいるということです。警察は過失運転致死傷の疑いで東京のバス運行会社を捜索する方針です。
15日午前2時ごろ、長野県軽井沢町の国道18号の碓氷バイパスで、スキーツアー客を乗せて群馬方面から長野方面に向かっていたバスが反対車線に出てガードレールを乗り越え、およそ3メートル下に転落しました。
このバスには大学生など18歳から38歳までの乗客39人と乗員2人の合わせて41人が乗っていて、警察によりますと、乗客12人と運転手ら乗員2人の男女合わせて14人の死亡が確認されました。
このうち、いずれも大学生で川崎市中原区の林晃孝さん(22)、さいたま市大宮区の阿部真理絵さん(22)、東京・渋谷区の田端勇登さん(22)、東京・小金井市の小嶋亮太さん(19)、東京・杉並区の大谷陸人さん(19)、東京・八王子市の田原寛さん(19)、東京・多摩市の池田衣里さん(19)の7人の身元が確認されました。
また、死亡した乗員2人はバスを運転していた土屋廣運転手(65)と補助員の勝原恵造運転手(57)と確認されました。
このほか、27人が病院に搬送されて手当てを受けていて、病院によりますとこの中には意識がない人もいるということです。
ツアーを企画した東京・渋谷区の「キースツアー」によりますと、このバスは14日午後11時に東京を出発して、長野県飯山市の斑尾高原に向かっていましたが、途中、行程表にある上信越自動車道ではなく、ルートを変えて今回事故が起きた碓氷バイパスを通っていました。
道路を管理する高崎河川国道事務所によりますと、碓氷バイパスのおよそ16キロの区間には合わせて45か所のカーブがあり、事故が起きたのは群馬県側から数えて43か所目のカーブだったということです。
現場のカーブは緩やかで、当時、積雪や路面の凍結などはなく、警察は過失運転致死傷の疑いで東京・羽村市にあるバス運行会社「イーエスピー」の捜索を始め、事故の原因や安全管理などについて詳しく調べることにしています。
**********毎日新聞2016年1月15日 23時16分(最終更新 1月16日 01時52分)
スキーバス転落 タイヤ痕1本、直前に片輪浮いて走行か
↑ガードレールを突き破り転落したスキーバスのタイヤ痕=長野県軽井沢町で2016年1月15日午後2時52分、宮間俊樹撮影↑
14人死亡、2人重体、24人が重軽傷の大惨事に
長野県軽井沢町の国道18号「碓氷(うすい)バイパス」入山(いりやま)峠で15日未明に起きたスキーツアーバス転落事故は、運転手2人を含む男性9人と女性5人の計14人が死亡し、2人が重体、24人が重軽傷を負う大惨事となった。バスは事故直前、蛇行していた可能性があることが乗客らの証言で判明。車外に投げ出されたり上半身などが車外に出たりした状態の遺体も多く、県警軽井沢署捜査本部は何らかの原因でバスがかなりの速度になっていたとみている。一方、路上にはタイヤ痕が1本しか残っていなかったことが、国土交通省が委託した事業用自動車事故調査委員会の調査で分かった。調査委はバスが事故直前に傾いて片輪が浮いた状態で走行したとみている。
国交省によると、10人以上が死亡したバス事故は、長野市で1985年1月に25人が死亡した犀川スキーバス転落事故以来。
捜査本部は15日夕、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑でバス運行会社「イーエスピー」(東京都羽村市)本社の家宅捜索を始めた。
捜査本部は、死亡した乗客全員の身元を確認した。いずれも大学生だった。乗客1人は、けがはなかった。
群馬県側から峠を越えるとカーブは緩やかだが急な下り坂になり、バスは約1キロ先の左カーブに差し掛かった地点で対向車線側ガードレールをなぎ倒して、立ち木に衝突した。タイヤと路面がこすれたとみられる直線状の跡が1本残っており、左側ガードレールにも接触痕があった。
乗客の男子大学生(19)は取材に「尋常ではない速度で、左右に少なくとも3回は揺れた」と証言。別の男子大学生(22)は「揺れが異常で、『やばいよ』『え、なに?』と言っていたところ、大きな衝撃がきた」と話した。
乗務していたのは契約社員の土屋広運転手(65)=東京都青梅市=と社員の勝原恵造運転手(57)=同=で、事故当時は土屋運転手が運転していた。土屋運転手は昨年12月に雇用され、大型バスの運転は4回目。その前に5年間勤めた会社によると主にマイクロバスを担当し、大型バスを運転したことはない。
国交省によると、大型バスの車齢平均は11年程度。事故を起こしたバスは使用し始めてから約13年経過していた。累積走行距離など詳しい車体の状況は分かっていない。
ツアーは旅行会社「キースツアー」(東京都渋谷区)が企画した。行程表の予定通りの場合、事故現場は通行しない。イーエスピーの山本崇人営業部長は「(異なるルートだった理由は)分からない」と話した。運転手が会社へ報告せずにルートを変更した場合、道路運送法違反になる。【巽賢司、川辺和将】
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この事故では、事故に巻き込まれた乗客らが、現場に駆け付けた両県の救急隊員らにより直ちにトリアージ処置が行われ、重症度が判定され、その場で死亡が確認された乗員・乗客以外は救急車で最寄りの病院に運ばれました。
報道によれば、それらの病院としては、次のように報じられていました。
① JA長野厚生連佐久総合病院佐久医療センター(現場から直線距離で約20キロの佐久市。15日午前5時半までに男性6人を受入れ。1名死亡、2名渋滞、3名重症)
② 軽井沢病院(約5キロの軽井沢町。男性3名を受入れ。2名死亡、1名重症で長野市内の病院にヘリで転送)
③ くろさわ病院(約20キロの佐久市。午前4時ごろ、男性4名を受入れ。いずれも負傷者)
④ 公立富岡総合病院(約23キロの富岡市。消防から3人の搬送要請があったが病床に空きがなく15日午前4時過ぎ、女性2名を受入れ。いずれも重傷者)
⑤ 高崎総合医療センター(約30キロの高崎市。午前4時40分、男性1名を受入れ。意識不明の重傷者)
⑥ 群馬大医学部付属病院(約40キロの前橋市。午前5時50分ごろ、男性1名を受入れ。重傷者)
以上のように、事故発生から2~4時間以内に、佐久市、軽井沢町、富岡市、高崎市、前橋市に18人(うち長野県が13名、群馬県が5名)が搬送されました。
この報道を聞いた安中市民は、なぜ、現場から20キロしか離れていない安中市の公立碓氷病院の名前が出てこないのだろうか、とずっと疑問に思っていました。そうした声が当会にも寄せられたため、事故発生から約1カ月が経過した2016年2月17日に、次の情報内容の行政文書開示請求書を安中市に提出しました。
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<開示を請求する行政文書の内容又は件名>
2016年1月16日の東京新聞の報道によれば「多数の死傷者を出した十五日に長野県軽井沢町で起きたバス事故。事故現場の国道18号碓氷バイパス入山峠付近は県境に近く、県内の消防署からも救急隊員が出動して救命活動にあたり、負傷者は県内の三病院にも搬送された。(中略)高崎、安中両市でつくる高崎市等広域消防局が派遣した救急隊員たちの証言をまとめたところ、現場は氷点下で非常に寒く、負傷した乗客に毛布を一枚ずつ渡したが、足りずに二枚、三枚と重ねる人が相次いだ。(中略)同消防局によると、十五日午前二時十九分ごろ、長野県佐久市の佐久広域連合消防本部からファクスと電話で応援要請があった。管内各署から隊員計二十一人が計七台の救急車などで出動、現場には同三時以降に次々と到着した。先に到着していた長野の隊員が負傷者の救助に当たり、群馬の隊員は暫定的に重症度によって治療や搬送の順番を定める「トリアージ」と、五人の搬送を同六時ごろまで担当した。トリアージには最優先で治療が必要な重傷者に赤色、次いで入院が必要な重傷者らに黄色のタグを付ける。高崎総合医療センターに搬送した二十~三十代の男性、公立富岡総合病院に搬送した十九歳と二十三歳の女性二人、群馬大病院(前橋市)に搬送した二十代の男性はいずれもタグが赤色。浅間総合病院(佐久市)に搬送した二十五歳前後の女性はタグが黄色だった」とあります。これに関連して、次のことがわかる情報。
(1) 公立碓氷病院への重傷者らの搬送についていつどのような打診があったのか、あるいはなかったのか。
(2) 公立碓氷病院が重傷者らの搬送打診に対して、どのような対応をしたのか、あるいはしなかったのか。
(3) そのような対応をした(あるいはしなかった)理由や背景はどのようなものだったのか。
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その結果、2016年2月26日付で次の決定通知がありました。つまり、上記の(1)~(3)までの情報のうち、(2)(3)に係る情報はなく、(1)のみを開示するというものです。
※行政文書不存在通知書 → 20160226smixloxj.pdf
※行政文書部分開示決定通知書 → 20160226jmxloxj.pdf
部分開示決定通知書に基づき、当会は2016年3月1日午後2時から、安中市役所で情報開示を受けました。開示された情報は、当直日誌メモ帳のコピー1枚だけでした。当日のメモを次に示します。
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20160114oxaixloxj.jpg
※PDF→20160114xloxj.pdf
1/14(木) 中村DR911 嘉島NS951 河、篠原
3:20 高崎消防指令よりTEL。バス事故により負傷者多数あり。何名収容可能かDRにTEL繋ぐ。来院なし
5:55 高崎指令より、対応ありがとう終了した旨報告のTEL有り。(ニュースでは、11人死亡28人ケガ)
6:45 朝日新聞記者よりTEL
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■この当直日誌メモ帳から分かるのは、事故発生から1時間半後に、現場に出動していた高崎市等広域消防局から碓氷病院にもコンタクトがあったことです。
メモによると、当直の2名の職員は、午前3時20分に高崎市等広域消防局指令センターから電話を受けて外科の中村医師に繋ぎ、同医師が指令センターとやり取りをした結果、公立碓氷病院では、重傷者らの受け入れを断念したことがわかります。
断念した経緯や、後日、碓氷病院内でこの件について院長以下、協議をしたのかどうかという事実関係についても、(2)(3)の情報について不存在とされたことから、そうした判断や対応に関して、協議された経緯はなかった、ということがうかがえます。
ここからは当会の勝手な推測ですが、中村医師が高崎等広域消防局指令センターとのやり取りの結果、碓氷病院での受け入れを断念した背景には、次の2つの理由があったのではないかと推察されます。
1つ目は、重傷者の受け入れに対して、外科専門の中村医師としては、重傷者の受傷状況の説明を消防局から伝えられた際に、自分とは専門外の処置が必要と判断し、人的にも施設的にもより適切な措置が受けられる他の病院への転送を勧めたのではないか、ということです。
2つ目は、こうした社会的に重要な緊急事故対応について、日頃の院長の方針がきちんと出されていたのかどうか、ということです。
■碓氷病院では、群馬大学医学部からの医師派遣に依存する体制が、最近ずっと定着しています。ところが、一昨年から取り沙汰されている群馬大学附属病院での腹腔鏡手術ミスで、肝臓切除手術を受けた患者8人が2010年から2014年にかけて相次いで死亡した事故の影響もあって、群大からの医師派遣がますます難しくなっているという事情があるようです。
今回の事故被害者は、シートベルトを着用していなかったため、バスの転落と立木への衝突の衝撃で、頭部を天井などに強く打ち付けたことによる脳挫傷が多かったと報じられています。
高崎市消防指令センターから、現場でのトリアージの結果、碓氷バイパスから国道18号で直行できる碓氷病院に対して、どのような重傷者の受け入れ打診があったのかは、情報が不存在のため分かりませんが、碓氷病院に午前3時20分に受け入れ打診があり、碓氷病院が受け入れを断念した後、午後4時過ぎに公立富岡総合病院で、腰椎・頸椎骨折と骨盤骨折の女性2名の重傷者を受入れ、午後4時40分に高崎総合医療センターで男性1名の意識不明者を受入れ、午前5時50分ごろ、群馬大医学部付属病院で男性1名の重傷者を受入れたことがわかります。
いずれも、碓氷病院では処置の対応が難しい重傷者もしくは重体者だったことから、最初に高崎消防局指令センターから打診を受けた碓氷病院では、受け入れを断念したのではないか、と推察されます。
あるいは、設備的には対応可能だったかもしれないが、人的な面で対応が困難だと、当直の中村医師は判断したようです。
いずれにしても、高崎島広域消防局から、碓氷病院に対して対応についての謝辞があったことから、対応に特に問題はなかったと推測されます。しかし、そうした事情はともかく、市民感情としては、碓氷病院で一人でもよいから重傷者を受入れて処置をすることで、全国にその存在を知らしめることができたらよかったのに・・・と思った市民も結構いらっしゃると思います。
【3月20日追記】
**********2016年3月19日上毛新聞社会面
安中・公立碓氷病院 3カ年計画で経営立て直し
安中市は18日、2016年度から3か年計画で公立碓氷病院の軽軽を立て直す方針を示した。常勤医不足で整形外科などで入院患者を受け入れられず、赤字が拡大している。
同日の市議会全員協議会に報告した。
病院経営に詳しいコンサルタントに経営状況の分析と改善計画の策定を委託する。委託業者は公募型プロポーザル方式で選考する。
市が昨年7月に設置した有識者でつくる検討委員会が、整形外科と泌尿器科の医師の確保や、高齢者施設や開業医からの照会件数の増加などの早期実現を求め、コンサルタントの導入を提言した。
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【ひらく会情報部】
※参考情報「事故に関する新聞報道」
**********毎日新聞2016年1月15日 11時00分(最終更新 1月15日 14時10分)
スキーバス転落 長野、群馬の病院搬送「多くが頭を損傷」

↑記者会見で患者の状態を説明する岡田邦彦・救命救急センター長(左)。右は渡辺仁院長=長野県佐久市のJA長野厚生連佐久総合病院佐久医療センターで2016年1月15日午前8時47分、武田博仁撮影↑
スキー客を乗せて暗闇の峠を走っていたバスに、何が起きたのか。長野県軽井沢町の国道18号碓氷バイパスで15日、乗客・乗員41人を乗せた大型バスがガードレールを突き破り、14人が死亡、27人が重軽傷を負った事故。現場では負傷者のうめき声が響く中、懸命の救出活動が繰り広げられた。
負傷者は長野、群馬両県の計9病院に搬送され、緊急手術など救命・救急治療を受けた。
長野県佐久市のJA長野厚生連佐久総合病院佐久医療センターには15日午前5時半までに20代の男性6人が運ばれた。同センターによると、このうち川崎市の男性(22)が脳挫傷で死亡。2人が内臓損傷などで重体、3人が重傷という。岡田邦彦・救命救急センター長は「患者の多くが頭を損傷している。無防備な状態でバスが転落したため、かなりの衝撃を受けたのだと思う」と話した。
3人が搬送された軽井沢病院(同県軽井沢町)によると、心肺停止状態で運ばれた20代男性が頭蓋(とうがい)内損傷で、30代男性が頸椎(けいつい)損傷で死亡が確認された。30代後半の男性は意識はあるものの、顔や上半身に多発骨折があり重傷。長野市内の病院にドクターヘリで転送された。
佐久市のくろさわ病院には午前4時ごろ、男性4人が搬送された。救急車が足りなかったためか、他の消防車両で運ばれてきたという。いずれも意識はあり、命に別条はないが、顎(あご)や鼻を骨折したり、頭や顔、肩、腕を打撲したりしていた。黒澤一也院長は「4人は擦り傷が多く、かなり出血して服も破れていた」と話した。
群馬県富岡市の公立富岡総合病院には午前4時過ぎ、女子学生2人が相次いで搬送された。沖縄県うるま市の女性(19)が腰椎(ようつい)骨折と頸椎骨折、神奈川県茅ケ崎市の女性(23)が骨盤骨折で入院。ともに搬送時は意識があり、家族とも連絡が取れているという。病院関係者は「消防から3人を搬送したいと要請があったが病床に空きがなく、2人しか受け入れられなかった」と話した。
群馬県高崎市の高崎総合医療センターには午前4時40分、20〜30代とみられる男性1人が搬送された。病院によると、氏名は不明。脳挫傷のほか、鎖骨と肋骨(ろっこつ)を骨折しており、意識不明の重体という。
前橋市の群馬大医学部付属病院には午前5時50分ごろ、東京都八王子市の20代の男子大学生が運び込まれた。背骨を骨折したほか、胸を強く打っているため緊急手術する予定だが命に別条はないという。宮城県から家族が病院に到着した。【武田博仁、安藤いく子、高橋努】
**********IZAニュース2016.1.15 17:03
軽井沢スキーバス転落 シートベルト着用徹底せず、指示なく被害拡大か

長野県軽井沢町の国道バイパスを走行中の大型バスが転落しスキー客ら14人が死亡、27人が負傷した事故で、シートベルト着用が徹底されず、死傷者の多くが事故発生時に着用していなかった疑いがあることが15日、複数の乗客の証言で分かった。出発前や走行中も着用を指示するアナウンスはなかったという。ベルト非着用が甚大な被害につながった可能性がある。
負傷者の一部は一定速度の交通事故など大きな衝撃で生じる「高エネルギー外傷」と診断されていたことも判明。犠牲者はバスがガードレールに激しくぶつかったり、横転したりした際、いすから投げ出されて壁や窓に激突し頭部などを負傷、死亡したとみられる。多くは即死状態だった。
病院で取材に応じた大学4年の男子学生(23)は「周りにシートベルトをしてない人が多かった」と説明。腰などを負傷した別の大学生も「着用指示はなく、自分もしていなかった」と話した。
**********2016年1月15日NHK 18時11分
スキーバス転落で14人死亡 バス会社を捜索へ

15日午前2時ごろ、長野県軽井沢町のバイパスで、スキー客を乗せたバスが道路から転落し、乗っていた41人のうち、乗客12人と乗員2人の合わせて14人が死亡したほか、27人が病院に搬送されて手当てを受けていて、意識がない人もいるということです。警察は過失運転致死傷の疑いで東京のバス運行会社を捜索する方針です。
15日午前2時ごろ、長野県軽井沢町の国道18号の碓氷バイパスで、スキーツアー客を乗せて群馬方面から長野方面に向かっていたバスが反対車線に出てガードレールを乗り越え、およそ3メートル下に転落しました。
このバスには大学生など18歳から38歳までの乗客39人と乗員2人の合わせて41人が乗っていて、警察によりますと、乗客12人と運転手ら乗員2人の男女合わせて14人の死亡が確認されました。
このうち、いずれも大学生で川崎市中原区の林晃孝さん(22)、さいたま市大宮区の阿部真理絵さん(22)、東京・渋谷区の田端勇登さん(22)、東京・小金井市の小嶋亮太さん(19)、東京・杉並区の大谷陸人さん(19)、東京・八王子市の田原寛さん(19)、東京・多摩市の池田衣里さん(19)の7人の身元が確認されました。
また、死亡した乗員2人はバスを運転していた土屋廣運転手(65)と補助員の勝原恵造運転手(57)と確認されました。
このほか、27人が病院に搬送されて手当てを受けていて、病院によりますとこの中には意識がない人もいるということです。
ツアーを企画した東京・渋谷区の「キースツアー」によりますと、このバスは14日午後11時に東京を出発して、長野県飯山市の斑尾高原に向かっていましたが、途中、行程表にある上信越自動車道ではなく、ルートを変えて今回事故が起きた碓氷バイパスを通っていました。
道路を管理する高崎河川国道事務所によりますと、碓氷バイパスのおよそ16キロの区間には合わせて45か所のカーブがあり、事故が起きたのは群馬県側から数えて43か所目のカーブだったということです。
現場のカーブは緩やかで、当時、積雪や路面の凍結などはなく、警察は過失運転致死傷の疑いで東京・羽村市にあるバス運行会社「イーエスピー」の捜索を始め、事故の原因や安全管理などについて詳しく調べることにしています。
**********毎日新聞2016年1月15日 23時16分(最終更新 1月16日 01時52分)
スキーバス転落 タイヤ痕1本、直前に片輪浮いて走行か

↑ガードレールを突き破り転落したスキーバスのタイヤ痕=長野県軽井沢町で2016年1月15日午後2時52分、宮間俊樹撮影↑
14人死亡、2人重体、24人が重軽傷の大惨事に
長野県軽井沢町の国道18号「碓氷(うすい)バイパス」入山(いりやま)峠で15日未明に起きたスキーツアーバス転落事故は、運転手2人を含む男性9人と女性5人の計14人が死亡し、2人が重体、24人が重軽傷を負う大惨事となった。バスは事故直前、蛇行していた可能性があることが乗客らの証言で判明。車外に投げ出されたり上半身などが車外に出たりした状態の遺体も多く、県警軽井沢署捜査本部は何らかの原因でバスがかなりの速度になっていたとみている。一方、路上にはタイヤ痕が1本しか残っていなかったことが、国土交通省が委託した事業用自動車事故調査委員会の調査で分かった。調査委はバスが事故直前に傾いて片輪が浮いた状態で走行したとみている。
国交省によると、10人以上が死亡したバス事故は、長野市で1985年1月に25人が死亡した犀川スキーバス転落事故以来。
捜査本部は15日夕、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑でバス運行会社「イーエスピー」(東京都羽村市)本社の家宅捜索を始めた。
捜査本部は、死亡した乗客全員の身元を確認した。いずれも大学生だった。乗客1人は、けがはなかった。
群馬県側から峠を越えるとカーブは緩やかだが急な下り坂になり、バスは約1キロ先の左カーブに差し掛かった地点で対向車線側ガードレールをなぎ倒して、立ち木に衝突した。タイヤと路面がこすれたとみられる直線状の跡が1本残っており、左側ガードレールにも接触痕があった。
乗客の男子大学生(19)は取材に「尋常ではない速度で、左右に少なくとも3回は揺れた」と証言。別の男子大学生(22)は「揺れが異常で、『やばいよ』『え、なに?』と言っていたところ、大きな衝撃がきた」と話した。
乗務していたのは契約社員の土屋広運転手(65)=東京都青梅市=と社員の勝原恵造運転手(57)=同=で、事故当時は土屋運転手が運転していた。土屋運転手は昨年12月に雇用され、大型バスの運転は4回目。その前に5年間勤めた会社によると主にマイクロバスを担当し、大型バスを運転したことはない。
国交省によると、大型バスの車齢平均は11年程度。事故を起こしたバスは使用し始めてから約13年経過していた。累積走行距離など詳しい車体の状況は分かっていない。
ツアーは旅行会社「キースツアー」(東京都渋谷区)が企画した。行程表の予定通りの場合、事故現場は通行しない。イーエスピーの山本崇人営業部長は「(異なるルートだった理由は)分からない」と話した。運転手が会社へ報告せずにルートを変更した場合、道路運送法違反になる。【巽賢司、川辺和将】
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