■フリマ中止をめぐる未来塾と安中市・岡田市長との間の前橋地裁高崎支部における一審裁判で、平成22年1月25日の証人尋問の後、同3月8日付けで、被告岡田義弘個人と、原告未来塾とその代表がそれぞれ最終の準備書面を提出しましたが、ほぼ同時期の同3月10日付けで、安中市も一審で最後となる被告準備書面(4)を提出しました。
それでは、安中市が訴訟代理人渡辺明男の名前で地裁高崎支部に提出した13ページの準備書面(4)を見てみましょう。←で示した赤字部分は当会のコメントです。
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【送 付 書】
平成22年3月15日
受信者 安中市役所 行政課 吉田
発信者 〒370-0801 群馬県高崎市上並榎町140番地2
弁護士 渡辺明男
TEL 027-363-1341 FAX 027-361-4372
連絡事項 未来塾の件
原告からの書面と今回提出した書面を御送り致します。
【被告安中市の準備書面(4)】
平成20年(ワ)第492号 損害賠償等請求事件
原告 松本立家 外1名
被告 岡田義弘 外1名
準備書面(4)
平成22年3月10日
前橋地方裁判所高崎支部合議2係 御中
被告安中市訴訟代理人弁護士 渡辺 明男
第1 事件の経過
1 第31回フリーマーケットinあんなかが平成19年6月3日に開催されるにあたり,安中市建設部長及び安中市教育部長連名の平成19年5月21日付け「フリーマーケットの運営について」(甲22の1)が被告安中市から主催者の原告未来塾松本立家代表に送付された。通知の主旨は,フリーマーケットは公共の土地を利用して行われるため,出店料等の徴収を自粛し,真のボランティア活動で実施するよう依頼するものであった。当該文書が出される経緯は,当時の建設部長のメモ(丙10の2)及び証言によれば,市長と教育委員会との協議により,当該文書を出すことが決定され,後日,教育委員会で起案するので,合議に押印するよう市長から指示があったとされている。
2 第31回フリーマーケットinあんなか終了後,平成19年7月2日に安中市役所において,フリーマーケットでのバザーの収益金から被告安中市及び安中市社会福祉協議会へ寄付が行われる予定であったが,被告安中市は,「公共施設を利用しているのに(参加費などの)金銭を徴収するなど会計が不明瞭。市が寄付を受けるのは良くない」との理由で寄附金の受け取りを拒否している(甲2の4)。
3 平成19年8月頃,原告未来塾の■■■■■■■が,平成19年10月28日開催予定の第32回フリーマーケットinあんなかの公園使用許可申請を行ったところ,被告安中市の所管課である都市整座談職員から,申請した当日に使用許可を出すことを保留されたため,使用許可申請書を持ち帰った。
この経緯について,原告らは,申請書の不受理と主張しているが,■■■■■は意見交換会の中で「今,今日の段階では,貸せないのでこれはお預かりするか,お持ち帰りくださいと言われたもんだから,私は持ち帰りました。」と発言している。
また,被告安中市が当時の都市整備課職員に聴取したところ,出店料徴収について自粛の問題等があったので,検討の必要があり,今日は許可書を出せないとしたところ,■■■■■が申請書を持ち帰るというので,申請書を返却したとしている。
4 その後,被告安中市から平成19年8月20日付けで,フリーマーケットの開催について,原告らと話し合いを行うため,意見交換会開催の通知(甲24の1)がなされた。
意見交換会は,平成19年9月10日,予定より1時間30分程度遅れて午後6時30分頃,被告安中市の市長室において,被告安中市から市長,建設部長,教育部長及び総務部長,原告未来塾から松本立家代表,■■■■■■■及び■■■■■■■が出席して開催されたが,使用する公園の許可の決定にあたっては,類似団体等の調査が必要であるとして,当日に許可するまでには至らなかった。
5 原告未来塾は,9月11日(訴状11頁20行目によると同月12日であるが,甲2の2の新聞報道及び甲50の陳述書22頁11~12行目によれば同月11日)には,被告安中市から公園の使用許可が得られないと判断のうえ,フリーマーケットの中止を決定し,翌12日に関係者にフリーマーケット中止の連絡を行ったとされている。
被告安中市は,そうした事実を原告らから明らかにされないまま,他市の類似団体の調査や群馬県への照会等を行い,フリーマーケットまでの期日が迫っていることも併せて,9月13日の朝(原告らの主張によれば9月14日)に,建設部長から,原告松本代表に公園の使用を許可する旨の通知を行った。
6 原告未来塾は,平成19年10月12日付けの未来塾ニュース(乙10)で,フリーマーケット開催断念のお知らせを新聞折り込みにより発行した。その内容によれば,フリーマーケット会場の借用申請の不受理をはじめとして,被告安中市側の一方的な理由により,フリーマーケットが開催できなくなったとされていた。
これに対し,安中市では,申請書を不受理とした事実はないばかりか,9月 13日には使用の許可をしているにもかかわらず,市からは何の問答がなかったかのような記述であったため,訂正の要求を行うなどの対応を検討することとなった。
7 そうしたなか,未来塾ニュース発行後,マスコミにも大きく報道され,市民から問い合わせの電話もあったことから,市民に真実を伝えるため,被告安中市は「談話」という形式で,その概要と市長の考えを同年12月21日発行の広報おしらせ版あんなかに掲載した。
これは,以前,自動車の高崎ナンバーの導入に関して,市長の考えを「談話」で明らかにしたことがあり,同じ手法により市民に説明を行ったものである(丙13の1)。「談話」を作成したのは,被告岡田本人であり,内容の事実確認のため,意見交換会当日に出席していた3人の部長に事実と違っている点があれば訂正するように指示をしたが,特に訂正はなかった。←この意味するところは、3人の部長が、岡田市長の強権発動でクビにされるのではないかと怯えていたため、事実と異なっていることでもノーといえないイエスマンたちであることを示している。
ただ,建設部長は文章が強すぎると考え,代替案を作成した経過があるが,その内容は,市の主張がなく経過説明だけであったことから被告岡田の了承が得られなかった。なお,原告らの求釈明で「被告岡田が原稿を作成するよりも前に同席した部長が原稿を作成していなかったか」という質問があり,建設部長が代替案を作成したのは,談話の原稿を見せられた後のことであるから,その回答として,「被告岡田が作成する前には部長は原稿を作成していない」とした。
そして,本件談話が掲載されたおしらせ版あんなかは,自治会組織である区長及び組長を通じて,12月中旬頃に安中市内の毎戸に配布された。
第2 市長「談話」発行に至る理由
1 フリーマーケットの中止
上記経過によると,原告らが第32回フリーマーケットinあんなかの開催を断念したのは,意見交換会の翌日であり,あれほど開催を熱望していたにもかかわらず,その間,被告らに問い合わせや確認を行うことなく,すぐに中止が決定されたことには理解できない。
また,新聞折り込みされた平成19年10月12日発行の未来塾ニュースにおいては,市側の発言部分の「ボランティア」を,「ボランテア」と侮蔑的に誤記するなどをはじめ,開催を断念するまでの経過も一方的に市側に責任があるかのごとくの内容で,市民の誤解を招くものであった。
マスコミ報道も,市側に不利な記事が書かれることが多かった。
2 公園使用許可手続の違法性
被告岡田が被告安中市の市長として,原告未来塾が開催しているフリーマーケットの運営に疑問を生じたのは,マスコミの報道等からも明らかなように出店料等の徴収の問題からである。
公の施設である公園等の使用料が免除されているにもかかわらず,出店料等を徴収し,その会計報告も市民に公表されていないことを問題視したためであった。その後,調査を進めると,原告未来塾と行政の間で「なれあい」が生じており,その公園等の使用許可申請手続においても,使用料免除などで問題があることがわかってきた。←「なれあい」で行政と癒着しているのは、他にもっとたくさんの団体があるのに、未来塾だけを槍玉に挙げているのは極めて不自然であり、特定の団体を排除しようとする岡田市長の市政を擁護する安中市の立場は、既に岡田市長の独裁体制に染まりきったことを示している。
もちろん,行政における指導がきちんとなされなかったことの責任が大きいことは否定しないが,許可書には許可条件として「安中市公園条例及び同条例施行規則を守らなければならない」と明記されていたにもかかわらず,募金問題等をはじめとして関係条例・規則が遵守されていなかった。
原告らは,申請したその日のうちに担当者から使用許可書が渡されることが通常となっていたとしているが,原告らが証拠として提出した甲9の1から甲11の2を検証しても,申請した日に許可となったのは,8回(1回は日付けが記入されていなくて不明)中2回だけである。
なお,被告岡田が市長に就任した後は申請した日に許可されたことは一度もない。
第3 名誉毀損について
1 名誉毀損の成立
名誉毀損が成立するためには,表現者に故意又は過失があって,名誉権が侵害され,その結果として損害が発生していなければならない。原告らは,本件談話により,社会的評価が低下したとしているが,その後の新聞報道(甲2の7)で,談話に対する原告松本の主張や批判が記事として載せられている。
原告未来塾は,役員に市議会議員及び県議会議員を有する団体であり、しかも,未来塾ニュースを随時発行するなど,被告安中市の主張に対して、公私にわたって,十分反論できる立場にあり,しかも平成22年4月に行われる安中市長選挙には,役員の市議会議員が出馬表明をしている(乙18)。←それをいうなら、議員をメンバーとする行政がらみの諸団体は、すべて、批判の対象として談話で掲載しなければならない。それをしないのは、未来塾の関係議員らは、岡田市長の所属する自民党に所属していないので、不満があるからなのだろうか。そうだとすれば、なんと了見の狭い市長なのだろう。
また,本件の第1回口頭弁論や証人尋問では,平日にもかかわらず、傍聴席が全く足りなくなるはどの未来塾の会員又は関係者の傍聴を集めるなど,その活動及び影響力に翳りは全く見られない(乙19の1,2)。←名誉毀損によるイメージダウンと傍聴者数の増加は、比例関係にはないのは当たり前なのに、市側はわざとこう書いている。
さらに,談話発行から2年が経過したが,多くの市民は,今後フリーマーケットが開催されるかという点には関心があるものの,既に談話の内容については,興味はなく,ほとんど億えていないというのが実状である。←この市側のコメントは何を根拠にしたものなのか、記載しておらず、まことに無責任行政だ。
表現が名誉毀損的な内容で社会的評価を下げるかどうかの判断としては,「一般読者の普通の注意と読み方」が基準とされ,一般読者とは何か非常に曖昧ではあるものの,少なくとも談話の内容で安中市民が原告らの社会的評価を下げていないことは以上の事実からも十分推知される。
つまり,原告らが主張する名誉は,客観的な社会的な評価ではなく,主観的な名誉感情であって,それは名誉毀損における「名誉」には含まれない。←この論理だと、安中市をいくら根拠なく批判しても何の問題も起きないということらしい。
確かに,平成14年の「石に泳ぐ魚」事件判決で,最高裁も名誉感情の侵害が不法行為となりうることを認めているが,それは人格的利益を侵害する程度の不法行為が存在した場合である。
なお,本件談話によって,原告らの人格的価値が侵害され,法的な不利益が生じたとは,到底考えられず,何らかの具体的な被害が生じたとの主張立証もなされていないことから,原告らの人格権侵害の主張が失当であることは言うまでもない。
そもそも,人格権を主張する者が,会話を無断録音したうえ,訴訟の証拠として、しかも不意打ちのような形で提出すること自体許されるものではない。その不当性については,あらためて述べる。←では、タゴ51億円事件の尻拭いをタゴ一族ではなく公金=血税で行っている安中市には人格権を云々する資格があるというのか。
意見交換会に参加した未来塾の個人名についても,本件談話には書かれておらず,どこにも公表されていなかった。このため,一般市民は意見交換会で誰がどのような発言したか,個人を推測又は特定することはできず,原告松本の個人としての訴えは,認められない。
2 本件談話の検証
①安中市からの回答日
原告らは,9月14日に回答があったと主張するが,市の回答を原告松本に伝えた長澤建設部長の証言によれば,手帳に9月13日と記録されており,事実,そのように被告岡田に報告している。どのような経過で回答日の認識に違いが生じているのか理由は明らかではないが,新聞報道(甲2の2)によっても「市は13日に許可を出した」とされており,被告らとしては伝えた本人の言を信用するほかはない。
また,開催予定日までには「市の回答から44日間もある」との記述も全くの事実であり,十分開催可能であったことを言外に示しているが,いずれも原告らの社会的評価を低下させるものでない。
なお,平成10年以後で許可から44日以内で開催されたフリーマーケットは,7回もあり(中には3日前や5日前もある。乙20の1~7),意見交換会が開催されてから2目しか経過していないことを併せて考慮しても,十分開催できたはずである。
おそらく,安中市の回答前に開催中止の決定を関係者に連絡してしまったため,あらためて開催ができなかったのが事実と思われるが,被告らに何ら確認を行うことなく,中止が決定された以上,被告らにはその責任はない。
②「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」
意見交換会が開始されてまもなく,被告岡田が未来塾出席者から目を見て話をするように大声を出されたことは全くの事実であり,出席した3部長をはじめ,隣室にいた市職員も聞いている。したがって,甲39については,丙22の鑑定書で明らかにされたように編集加工されている。原告松本は,送付された鑑定書を当初,読んでいないと証言し,後になって目だけは通したと証言を訂正している。←岡田市長がどこかから探し出してきたいかがわしい研究所が作ったインチキ鑑定書をなぜこんなにも敬うのか不思議だ。もっともタゴ51億円事件を起こした自治体ならさもありなん。
しかし,通常,録音として提出した証拠が,編集加工されているとされれば,非常に驚き,なぜ,そのような鑑定結果になったかその原因を究明するために精読するはずである。
鑑定書の内容も専門的知識がなければ理解できないものではなく,原告松本が代表取締役を務める松本商店は,「デンキのマツモト」として家庭電化製品を取り扱う仕事をしており,原告松本は,一般人よりも専門知識を有していると思われる。
このため,内容は十分理解できたはずであり,その対応から考えると,編集加工されたという鑑定結果をはじめから予想し,諦観していたかのようである。←ここまで論理の矛盾を抱えたまま、平然とウソを自由につき通せる神経を持つ自治体は他に例を見ない。
また,原告らが提出した陳述書及び証言では,被告岡田が対話相手の原告松本の方を全く見ないで,3部長の方に顔や身体を向けてずっと話をしていたとあるが,その場面を想像してもらえばわかるが,あまりに不自然である。
確かに相手の顔や目を見ないで,対話することはあるが,顔ばかりか身体をずっと横に向けたまま人と話をするなど,到底考えられない。
意見交換会において,被告岡田が相手に威圧感を与えないように配慮して相手の目や顔を見なかったか,若しくは「要点筆記」のため下を向いて話していたことは事実としてあったと思うが,15分以上もの間,会話している相手の方を全く見ずに身体も向けないで話を進めるなどということがあるわけがない。
以上のように原告らの陳述書及び証言は,信用しがたいものがある。
「目を見て話をしろ」と怒鴫ったことが公表されたところで,談話を読んだ市民は,目を見て話さない市長に対して,原告らが礼儀がないと怒って注意したと考えるに過ぎず,原告らの社会的評価を低下させたとまでは言えない。民間会社の調査によっても,72.3%の人が話をするときは,礼儀やマナーとして目を見て話してもらいたいと思っており、原告らの言動について不誠実な態度を示したものとは思わない(乙21)。
③参加料徴収,募金活動及び駐車場に関する議論
既に答弁書及び準備書面で主張してきたとおりであり,事実と相違していないが,仮りに多少相違したとしても,その内容は原告らの社会的評価は低下させるものではない。
④「サワイ産業」に関する記述及びフリーマーケット資料の抜粋
「サワイ産業」の記述は,原告らが市長室に何度か来ており,フリーマーケットの内容の説明ができたことの補足として,囲み記事で載せたものである。
フリーマーケット資料の抜粋については,意見交換会で議論になっていた参加費,寄付金及び駐巾場に関する事項を,原告らの説明会資料から抜粋して載せたものであるから,いずれも内容は事実と相違しておらず,原告らの社会的評価を低下させるものではない。
⑤安中市行政の銘に関する記述
市長が市行政を進めるうえでの基本理念を書いたように表現されており,原告らの社会的評価を低下させるものではないことは言うまでもない。
3 最高裁の免責要件
これまでの主張及び上記のとおり,本件談話は,原告らの社会的評価を低下させておらず,名誉毀損に対し賠償請求できる不法行為として成立しない。
仮りに社会的評価を低下させたとしても,事実の公共性及び目的の公益性があり,事実の真実性又は真実相当性も認められるため,最高裁判例から不法行為が成立しないことは,準備書面等で主張してきたとおりである。
さらに加えるならば,本件談話は市長の自由な意見や考えを載せるものであり,談話という名称や論調から主観的に書かれていることは一般市民も知り得ることである。
問題となる表現が事実摘示なのか意見表明なのか区別することは難しく,「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」の記述にしたところで,言った本人は怒鳴ったつもりがなくても,強い口調又は大声で言われた相手や周りの人間にとっては怒鳴られたように感じることはある。
このように内容の一部が「事実摘示」にとられる部分もあるかもしれないが,談話全休として捉えた場合には,市長が市民に伝えたかった意見を自分の言葉で書いていると考えるのが通常である。
こうした意見・論評に対しては,「有害無能な教職員」として氏名,住所,電話番号まで書かれた長崎教師批判ビラ事件(最高裁平成元年12月21日判決)においても,「公共の利害に関する事項について自由に批判,論評を行うことは,もとより表現の自由の行使として尊重されるべきである」としている。
この事件で批判された相手は公務員であり,原告未来塾は公的立場にはないが,上述のとおり,議員を有する影響力のある団体で,事実,市議会でもこの問題に関して一般質問(丙4)を行っているため,未来塾ニュースの発行も含めて,原告未来塾に対しては,批判には批判で返せる「対抗言論」を求めることができる。
そして,何人といえども公的事項に関する意見表明の自由については,広く確保されるという原則は,市長においても尊重されなければならない。
第4 無断録音について
1 裁判例
無断録音の証拠の適格性については,大分地判昭46.11.8判時656号で対話の相手方の同意のない無断録音テープは不法手段で収集された証拠と言うべきで,法廷においてこれを証拠として許容することは訴訟法上の信義則,公正の原則に反するものと解すべきであるから証拠として採用しがたいと判示している。
しかし,他の裁判例の動向では,証拠の重要性,侵害される利益等を総合的に比較衛星して決せられ,録音時の態様,それまでの事実経緯,侵害される利益等を検討したうえで証拠能力を判断している。
本件においても,個別具体的な検討が加えられ,適正な判断が示されることを希望するが,編集加工されたものには証拠能力が全くないことは言うまでもない。
2 本件における違法性
甲39及び甲54は,どちらも対話の相手の同意がなく秘密に録音されたものであり,こうした無断録音が原則として人格権の侵害となる反社会的な行為であることは,裁判例や学説でも明らかである。
原告らからは,無断録音を行ったことの違法性阻却事由の証明が尽くされておらず,証拠方法の獲得や保全といった私的利益だけの理由で,無断録音の正当化を主張することは許されるものではない。
原告松本の陳述書及び証言によれば,被告岡田に不信感を持っており,知り合いから話の内容を録音するように助言されたとあるが,単にそれだけの理由であれば,被告らの承諾を得てから録音しても何ら問題がなく,むしろ被告らとの紛争の発生に備えて,内容を疋確に記録するという目的にも合致する。本件訴訟に発展しなかった可能性も大きい。
また,甲54については,原告松本の自宅で録音されたもので,■■■■■原告松本の誘導的発問に対して,証人長澤和雄が自己の立場を有利にするため迎合的に行われたものであるから,その供述内容は人間の心理として信用しがたい。
しかも,怒鳴っていないとは明言しておらず,その質問に対して苦慮のうえ言葉を濁しており,本人を前にしての苦渋の対応であったことが推察される。
原告らは,この会話を無断録音したものを証人尋問の当日に証拠として提出しているが,弁論準備手続で証人尋問の証拠の提出は,12月21日までに行うこととされ,被告岡田も重要な証拠である鑑定書について,弾劾証拠することも検討したものの,誠実性に欠けるため,届き次第,早急に証拠として提出している。←「誠実性に欠ける」のではなく、「真実性」に欠けるから、インチキの鑑定書を出すのをためらったのではないのか。
甲54にしても事前に提出があれば,証人長澤和雄の回答があれほど詰まることはなかったはずであり,著しく訴訟における信義誠実の原則に反する。
偽証罪のおそれがあることを示唆されたため,回答には慎重にならざるを得ないうえ,あれだけの傍聴人がいる証人尋問の堤で,急に2年以上も前の会話を思い出し,間違えずに証言しろという方が無理な話である。
第5 補 足
最後に安中市の名誉のために付言すると,証人尋問において原告松本から,フリーマーケットを開催する前の米山公園が,ゴミだらけの公園で不良の集まりがいっぱいいたかのような証許がなされたが,当時の担当者や関係者に確認してもそのような事実はない。←これは変だ。当時、不良の溜まり場という認識は近隣の住民が抱いていたはず。落書きも至る所で見た記憶がある。もし、当時の公園担当者や関係者がそうした事実を覚えていないとなると、岡田市長への気兼ねや無用な配慮としか考えられない。
米山公園が設置されたのが平成3年のことで,原告らがフリーマーケットで使用するようになったのは平成5年からである。公園の定期的な管理もされているなか,たった2年程度で新設された公園がそのような荒れた状態になるはずがないし,その後も原告未来塾の会員が清掃活動をしてくれていたならともかく,フリーマーケットが開催されるようになってからきれいになったという因果関係が全く理解できない。
第6 結 論
原告らは,本件訴訟において,原告らの名誉が毀損された旨主張するが,訴訟でいう名誉とは人格価値そのものである内部的名誉ではなく,人格価値に対する社会的評価である外部的名誉を意味する。
本件談話で外部的名誉が毀損されたとするためには,原告らの社会的評価を低下させるだけの具体的な事実を摘示していることを要するが,本件談話はそのような内容ではなく,たとえ原告らの名誉感情を害した可能性はあっても,外部的名誉まで毀損するものではない。
また,仮りに本件談話が原告らの外部的名誉を毀損したとしても,本件談話の発行は公共の利害に関する事実に係り,もっぱら公益を図る目的によるもので,その摘示した事実の真実性又は真実相当性が証明されているため,違法性はなく不法行為は成立しない。
名誉毀損については,憲法上の表現の自由との調整が重要であり,その保護法益は社会的評価と解されるが,表現の自由は,憲法の保障する基本的人権の中でも特に改変な優越的権利とされていることから,その保護のために上記の免責要件だけでは十分でなく,たとえ真実性の証明がなされなくても,本件談話のような合理的根拠を有する意見論評に対しては一定の免責を与えるべきであり、現在,この結論に異論はないとされている。←インチキに基づいた論評を合理的根拠と称することこそ、タゴ事件を起こした役所の体質を雄弁に物語っているといえる。
【被告安中市の証拠説明書】
平成20年(ワ)第492号 損害賠償等請求事件
原告 松本立家 外1名
被告 岡田義弘 外1名
証拠説明書
平成22年3月10日
前橋地方裁判所高崎支部合議2係 御中
被告安中市 訴訟代理人 弁護士 渡辺明男
号証/標目(原本・写しの別)/作成/年月日/作成者/立証趣旨/備考
乙18/新聞記事・写し/22.2.25/上毛新聞社/原告未来塾の役員が市長選に出馬表明してい
ること
乙19の1/公開口頭弁論期日決定のチラシ・写し/不明/原告未来塾/原告未来塾の呼びかけで多数の傍聴人を集めることができたこと
乙19の2/議会報告・写し/22.1月/高橋よしのぶ後援会/同 上
乙20の1/公園使用許可申請書及び許可書・写し/10.4.13及び10.4.13/原告未来塾及び
被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット開催までの期日
乙20の2/同上・写し/10.9.7及び10.9.8/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット開催までの期日
乙20の3/同上・写し/11.10.7及び11.10.8/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット則崔までの期日
乙20の4/同上・写し/13.9.28及び13.9.28/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット開催までの期日
乙20の5/同上・写し/14.4.30及び14.5.2/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット開催までの期日
乙20の6/同上・写し/17.10.5及び17.10.6/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット開催までの期日
乙20の7/同上・写し/18.10.13及び18.10.17/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット剛崔までの期日
乙21/MSNインターネットニュース・写し/22、2.19/堀内彰宏/柏手の目を見て話す人の割合及びその考え
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■当然といえば当然ながら、安中市の訴訟代理人である渡辺明男弁護士が作成した被告準備書面(4)は、岡田市長の主張を全面的に反映した真実性に乏しい内容です。
さすが、タゴ51億円事件を生んだ自治体だ、などと妙な納得をせずに、改革の歩みを市民の力で進めていきましょう。
■そして、地域づくり団体未来塾の安中市に対する損害賠償等請求(事件番号:平成20年(ワ)第492号)の訴えについて、平成22年3月25日(木)午後1時30分から40分にかけて、前橋地裁高崎支部第1号法廷(3階)で最終口頭弁論が行われました。出席したのは、裁判長・安藤裕子、裁判官・木村洋平、亀村忠子、書記官・福田秀太良のほか、原告の未来塾と同代表松本立家、弁護士山下敏稚、被告の岡田義弘、弁護士・渡辺明男、安中市指定代理人・鳥越一成、吉田隆、反町勇でした。
最終弁論では、原告から送付されている原告最終準備書面、被告岡田市長から送付されている被告準備書面(6)及び証拠申出書・丙第23号証・丙第24号証、被告安中市から送付されている準備書面(4)及び証拠申出書・乙第18号証ないし乙第21号証について陳述が行われた後、裁判長から原告、被告ともそのほかの主張、立証がないことを確認するとともに、被告安中市は、互いの主張で不足している部分は援用することで弁論を終了しました。
判決は5月27日(木)午後1弁15分からと決まりました。
【ひらく会情報部・一審判決へと続く】
それでは、安中市が訴訟代理人渡辺明男の名前で地裁高崎支部に提出した13ページの準備書面(4)を見てみましょう。←で示した赤字部分は当会のコメントです。
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【送 付 書】
平成22年3月15日
受信者 安中市役所 行政課 吉田
発信者 〒370-0801 群馬県高崎市上並榎町140番地2
弁護士 渡辺明男
TEL 027-363-1341 FAX 027-361-4372
連絡事項 未来塾の件
原告からの書面と今回提出した書面を御送り致します。
【被告安中市の準備書面(4)】
平成20年(ワ)第492号 損害賠償等請求事件
原告 松本立家 外1名
被告 岡田義弘 外1名
準備書面(4)
平成22年3月10日
前橋地方裁判所高崎支部合議2係 御中
被告安中市訴訟代理人弁護士 渡辺 明男
第1 事件の経過
1 第31回フリーマーケットinあんなかが平成19年6月3日に開催されるにあたり,安中市建設部長及び安中市教育部長連名の平成19年5月21日付け「フリーマーケットの運営について」(甲22の1)が被告安中市から主催者の原告未来塾松本立家代表に送付された。通知の主旨は,フリーマーケットは公共の土地を利用して行われるため,出店料等の徴収を自粛し,真のボランティア活動で実施するよう依頼するものであった。当該文書が出される経緯は,当時の建設部長のメモ(丙10の2)及び証言によれば,市長と教育委員会との協議により,当該文書を出すことが決定され,後日,教育委員会で起案するので,合議に押印するよう市長から指示があったとされている。
2 第31回フリーマーケットinあんなか終了後,平成19年7月2日に安中市役所において,フリーマーケットでのバザーの収益金から被告安中市及び安中市社会福祉協議会へ寄付が行われる予定であったが,被告安中市は,「公共施設を利用しているのに(参加費などの)金銭を徴収するなど会計が不明瞭。市が寄付を受けるのは良くない」との理由で寄附金の受け取りを拒否している(甲2の4)。
3 平成19年8月頃,原告未来塾の■■■■■■■が,平成19年10月28日開催予定の第32回フリーマーケットinあんなかの公園使用許可申請を行ったところ,被告安中市の所管課である都市整座談職員から,申請した当日に使用許可を出すことを保留されたため,使用許可申請書を持ち帰った。
この経緯について,原告らは,申請書の不受理と主張しているが,■■■■■は意見交換会の中で「今,今日の段階では,貸せないのでこれはお預かりするか,お持ち帰りくださいと言われたもんだから,私は持ち帰りました。」と発言している。
また,被告安中市が当時の都市整備課職員に聴取したところ,出店料徴収について自粛の問題等があったので,検討の必要があり,今日は許可書を出せないとしたところ,■■■■■が申請書を持ち帰るというので,申請書を返却したとしている。
4 その後,被告安中市から平成19年8月20日付けで,フリーマーケットの開催について,原告らと話し合いを行うため,意見交換会開催の通知(甲24の1)がなされた。
意見交換会は,平成19年9月10日,予定より1時間30分程度遅れて午後6時30分頃,被告安中市の市長室において,被告安中市から市長,建設部長,教育部長及び総務部長,原告未来塾から松本立家代表,■■■■■■■及び■■■■■■■が出席して開催されたが,使用する公園の許可の決定にあたっては,類似団体等の調査が必要であるとして,当日に許可するまでには至らなかった。
5 原告未来塾は,9月11日(訴状11頁20行目によると同月12日であるが,甲2の2の新聞報道及び甲50の陳述書22頁11~12行目によれば同月11日)には,被告安中市から公園の使用許可が得られないと判断のうえ,フリーマーケットの中止を決定し,翌12日に関係者にフリーマーケット中止の連絡を行ったとされている。
被告安中市は,そうした事実を原告らから明らかにされないまま,他市の類似団体の調査や群馬県への照会等を行い,フリーマーケットまでの期日が迫っていることも併せて,9月13日の朝(原告らの主張によれば9月14日)に,建設部長から,原告松本代表に公園の使用を許可する旨の通知を行った。
6 原告未来塾は,平成19年10月12日付けの未来塾ニュース(乙10)で,フリーマーケット開催断念のお知らせを新聞折り込みにより発行した。その内容によれば,フリーマーケット会場の借用申請の不受理をはじめとして,被告安中市側の一方的な理由により,フリーマーケットが開催できなくなったとされていた。
これに対し,安中市では,申請書を不受理とした事実はないばかりか,9月 13日には使用の許可をしているにもかかわらず,市からは何の問答がなかったかのような記述であったため,訂正の要求を行うなどの対応を検討することとなった。
7 そうしたなか,未来塾ニュース発行後,マスコミにも大きく報道され,市民から問い合わせの電話もあったことから,市民に真実を伝えるため,被告安中市は「談話」という形式で,その概要と市長の考えを同年12月21日発行の広報おしらせ版あんなかに掲載した。
これは,以前,自動車の高崎ナンバーの導入に関して,市長の考えを「談話」で明らかにしたことがあり,同じ手法により市民に説明を行ったものである(丙13の1)。「談話」を作成したのは,被告岡田本人であり,内容の事実確認のため,意見交換会当日に出席していた3人の部長に事実と違っている点があれば訂正するように指示をしたが,特に訂正はなかった。←この意味するところは、3人の部長が、岡田市長の強権発動でクビにされるのではないかと怯えていたため、事実と異なっていることでもノーといえないイエスマンたちであることを示している。
ただ,建設部長は文章が強すぎると考え,代替案を作成した経過があるが,その内容は,市の主張がなく経過説明だけであったことから被告岡田の了承が得られなかった。なお,原告らの求釈明で「被告岡田が原稿を作成するよりも前に同席した部長が原稿を作成していなかったか」という質問があり,建設部長が代替案を作成したのは,談話の原稿を見せられた後のことであるから,その回答として,「被告岡田が作成する前には部長は原稿を作成していない」とした。
そして,本件談話が掲載されたおしらせ版あんなかは,自治会組織である区長及び組長を通じて,12月中旬頃に安中市内の毎戸に配布された。
第2 市長「談話」発行に至る理由
1 フリーマーケットの中止
上記経過によると,原告らが第32回フリーマーケットinあんなかの開催を断念したのは,意見交換会の翌日であり,あれほど開催を熱望していたにもかかわらず,その間,被告らに問い合わせや確認を行うことなく,すぐに中止が決定されたことには理解できない。
また,新聞折り込みされた平成19年10月12日発行の未来塾ニュースにおいては,市側の発言部分の「ボランティア」を,「ボランテア」と侮蔑的に誤記するなどをはじめ,開催を断念するまでの経過も一方的に市側に責任があるかのごとくの内容で,市民の誤解を招くものであった。
マスコミ報道も,市側に不利な記事が書かれることが多かった。
2 公園使用許可手続の違法性
被告岡田が被告安中市の市長として,原告未来塾が開催しているフリーマーケットの運営に疑問を生じたのは,マスコミの報道等からも明らかなように出店料等の徴収の問題からである。
公の施設である公園等の使用料が免除されているにもかかわらず,出店料等を徴収し,その会計報告も市民に公表されていないことを問題視したためであった。その後,調査を進めると,原告未来塾と行政の間で「なれあい」が生じており,その公園等の使用許可申請手続においても,使用料免除などで問題があることがわかってきた。←「なれあい」で行政と癒着しているのは、他にもっとたくさんの団体があるのに、未来塾だけを槍玉に挙げているのは極めて不自然であり、特定の団体を排除しようとする岡田市長の市政を擁護する安中市の立場は、既に岡田市長の独裁体制に染まりきったことを示している。
もちろん,行政における指導がきちんとなされなかったことの責任が大きいことは否定しないが,許可書には許可条件として「安中市公園条例及び同条例施行規則を守らなければならない」と明記されていたにもかかわらず,募金問題等をはじめとして関係条例・規則が遵守されていなかった。
原告らは,申請したその日のうちに担当者から使用許可書が渡されることが通常となっていたとしているが,原告らが証拠として提出した甲9の1から甲11の2を検証しても,申請した日に許可となったのは,8回(1回は日付けが記入されていなくて不明)中2回だけである。
なお,被告岡田が市長に就任した後は申請した日に許可されたことは一度もない。
第3 名誉毀損について
1 名誉毀損の成立
名誉毀損が成立するためには,表現者に故意又は過失があって,名誉権が侵害され,その結果として損害が発生していなければならない。原告らは,本件談話により,社会的評価が低下したとしているが,その後の新聞報道(甲2の7)で,談話に対する原告松本の主張や批判が記事として載せられている。
原告未来塾は,役員に市議会議員及び県議会議員を有する団体であり、しかも,未来塾ニュースを随時発行するなど,被告安中市の主張に対して、公私にわたって,十分反論できる立場にあり,しかも平成22年4月に行われる安中市長選挙には,役員の市議会議員が出馬表明をしている(乙18)。←それをいうなら、議員をメンバーとする行政がらみの諸団体は、すべて、批判の対象として談話で掲載しなければならない。それをしないのは、未来塾の関係議員らは、岡田市長の所属する自民党に所属していないので、不満があるからなのだろうか。そうだとすれば、なんと了見の狭い市長なのだろう。
また,本件の第1回口頭弁論や証人尋問では,平日にもかかわらず、傍聴席が全く足りなくなるはどの未来塾の会員又は関係者の傍聴を集めるなど,その活動及び影響力に翳りは全く見られない(乙19の1,2)。←名誉毀損によるイメージダウンと傍聴者数の増加は、比例関係にはないのは当たり前なのに、市側はわざとこう書いている。
さらに,談話発行から2年が経過したが,多くの市民は,今後フリーマーケットが開催されるかという点には関心があるものの,既に談話の内容については,興味はなく,ほとんど億えていないというのが実状である。←この市側のコメントは何を根拠にしたものなのか、記載しておらず、まことに無責任行政だ。
表現が名誉毀損的な内容で社会的評価を下げるかどうかの判断としては,「一般読者の普通の注意と読み方」が基準とされ,一般読者とは何か非常に曖昧ではあるものの,少なくとも談話の内容で安中市民が原告らの社会的評価を下げていないことは以上の事実からも十分推知される。
つまり,原告らが主張する名誉は,客観的な社会的な評価ではなく,主観的な名誉感情であって,それは名誉毀損における「名誉」には含まれない。←この論理だと、安中市をいくら根拠なく批判しても何の問題も起きないということらしい。
確かに,平成14年の「石に泳ぐ魚」事件判決で,最高裁も名誉感情の侵害が不法行為となりうることを認めているが,それは人格的利益を侵害する程度の不法行為が存在した場合である。
なお,本件談話によって,原告らの人格的価値が侵害され,法的な不利益が生じたとは,到底考えられず,何らかの具体的な被害が生じたとの主張立証もなされていないことから,原告らの人格権侵害の主張が失当であることは言うまでもない。
そもそも,人格権を主張する者が,会話を無断録音したうえ,訴訟の証拠として、しかも不意打ちのような形で提出すること自体許されるものではない。その不当性については,あらためて述べる。←では、タゴ51億円事件の尻拭いをタゴ一族ではなく公金=血税で行っている安中市には人格権を云々する資格があるというのか。
意見交換会に参加した未来塾の個人名についても,本件談話には書かれておらず,どこにも公表されていなかった。このため,一般市民は意見交換会で誰がどのような発言したか,個人を推測又は特定することはできず,原告松本の個人としての訴えは,認められない。
2 本件談話の検証
①安中市からの回答日
原告らは,9月14日に回答があったと主張するが,市の回答を原告松本に伝えた長澤建設部長の証言によれば,手帳に9月13日と記録されており,事実,そのように被告岡田に報告している。どのような経過で回答日の認識に違いが生じているのか理由は明らかではないが,新聞報道(甲2の2)によっても「市は13日に許可を出した」とされており,被告らとしては伝えた本人の言を信用するほかはない。
また,開催予定日までには「市の回答から44日間もある」との記述も全くの事実であり,十分開催可能であったことを言外に示しているが,いずれも原告らの社会的評価を低下させるものでない。
なお,平成10年以後で許可から44日以内で開催されたフリーマーケットは,7回もあり(中には3日前や5日前もある。乙20の1~7),意見交換会が開催されてから2目しか経過していないことを併せて考慮しても,十分開催できたはずである。
おそらく,安中市の回答前に開催中止の決定を関係者に連絡してしまったため,あらためて開催ができなかったのが事実と思われるが,被告らに何ら確認を行うことなく,中止が決定された以上,被告らにはその責任はない。
②「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」
意見交換会が開始されてまもなく,被告岡田が未来塾出席者から目を見て話をするように大声を出されたことは全くの事実であり,出席した3部長をはじめ,隣室にいた市職員も聞いている。したがって,甲39については,丙22の鑑定書で明らかにされたように編集加工されている。原告松本は,送付された鑑定書を当初,読んでいないと証言し,後になって目だけは通したと証言を訂正している。←岡田市長がどこかから探し出してきたいかがわしい研究所が作ったインチキ鑑定書をなぜこんなにも敬うのか不思議だ。もっともタゴ51億円事件を起こした自治体ならさもありなん。
しかし,通常,録音として提出した証拠が,編集加工されているとされれば,非常に驚き,なぜ,そのような鑑定結果になったかその原因を究明するために精読するはずである。
鑑定書の内容も専門的知識がなければ理解できないものではなく,原告松本が代表取締役を務める松本商店は,「デンキのマツモト」として家庭電化製品を取り扱う仕事をしており,原告松本は,一般人よりも専門知識を有していると思われる。
このため,内容は十分理解できたはずであり,その対応から考えると,編集加工されたという鑑定結果をはじめから予想し,諦観していたかのようである。←ここまで論理の矛盾を抱えたまま、平然とウソを自由につき通せる神経を持つ自治体は他に例を見ない。
また,原告らが提出した陳述書及び証言では,被告岡田が対話相手の原告松本の方を全く見ないで,3部長の方に顔や身体を向けてずっと話をしていたとあるが,その場面を想像してもらえばわかるが,あまりに不自然である。
確かに相手の顔や目を見ないで,対話することはあるが,顔ばかりか身体をずっと横に向けたまま人と話をするなど,到底考えられない。
意見交換会において,被告岡田が相手に威圧感を与えないように配慮して相手の目や顔を見なかったか,若しくは「要点筆記」のため下を向いて話していたことは事実としてあったと思うが,15分以上もの間,会話している相手の方を全く見ずに身体も向けないで話を進めるなどということがあるわけがない。
以上のように原告らの陳述書及び証言は,信用しがたいものがある。
「目を見て話をしろ」と怒鴫ったことが公表されたところで,談話を読んだ市民は,目を見て話さない市長に対して,原告らが礼儀がないと怒って注意したと考えるに過ぎず,原告らの社会的評価を低下させたとまでは言えない。民間会社の調査によっても,72.3%の人が話をするときは,礼儀やマナーとして目を見て話してもらいたいと思っており、原告らの言動について不誠実な態度を示したものとは思わない(乙21)。
③参加料徴収,募金活動及び駐車場に関する議論
既に答弁書及び準備書面で主張してきたとおりであり,事実と相違していないが,仮りに多少相違したとしても,その内容は原告らの社会的評価は低下させるものではない。
④「サワイ産業」に関する記述及びフリーマーケット資料の抜粋
「サワイ産業」の記述は,原告らが市長室に何度か来ており,フリーマーケットの内容の説明ができたことの補足として,囲み記事で載せたものである。
フリーマーケット資料の抜粋については,意見交換会で議論になっていた参加費,寄付金及び駐巾場に関する事項を,原告らの説明会資料から抜粋して載せたものであるから,いずれも内容は事実と相違しておらず,原告らの社会的評価を低下させるものではない。
⑤安中市行政の銘に関する記述
市長が市行政を進めるうえでの基本理念を書いたように表現されており,原告らの社会的評価を低下させるものではないことは言うまでもない。
3 最高裁の免責要件
これまでの主張及び上記のとおり,本件談話は,原告らの社会的評価を低下させておらず,名誉毀損に対し賠償請求できる不法行為として成立しない。
仮りに社会的評価を低下させたとしても,事実の公共性及び目的の公益性があり,事実の真実性又は真実相当性も認められるため,最高裁判例から不法行為が成立しないことは,準備書面等で主張してきたとおりである。
さらに加えるならば,本件談話は市長の自由な意見や考えを載せるものであり,談話という名称や論調から主観的に書かれていることは一般市民も知り得ることである。
問題となる表現が事実摘示なのか意見表明なのか区別することは難しく,「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」の記述にしたところで,言った本人は怒鳴ったつもりがなくても,強い口調又は大声で言われた相手や周りの人間にとっては怒鳴られたように感じることはある。
このように内容の一部が「事実摘示」にとられる部分もあるかもしれないが,談話全休として捉えた場合には,市長が市民に伝えたかった意見を自分の言葉で書いていると考えるのが通常である。
こうした意見・論評に対しては,「有害無能な教職員」として氏名,住所,電話番号まで書かれた長崎教師批判ビラ事件(最高裁平成元年12月21日判決)においても,「公共の利害に関する事項について自由に批判,論評を行うことは,もとより表現の自由の行使として尊重されるべきである」としている。
この事件で批判された相手は公務員であり,原告未来塾は公的立場にはないが,上述のとおり,議員を有する影響力のある団体で,事実,市議会でもこの問題に関して一般質問(丙4)を行っているため,未来塾ニュースの発行も含めて,原告未来塾に対しては,批判には批判で返せる「対抗言論」を求めることができる。
そして,何人といえども公的事項に関する意見表明の自由については,広く確保されるという原則は,市長においても尊重されなければならない。
第4 無断録音について
1 裁判例
無断録音の証拠の適格性については,大分地判昭46.11.8判時656号で対話の相手方の同意のない無断録音テープは不法手段で収集された証拠と言うべきで,法廷においてこれを証拠として許容することは訴訟法上の信義則,公正の原則に反するものと解すべきであるから証拠として採用しがたいと判示している。
しかし,他の裁判例の動向では,証拠の重要性,侵害される利益等を総合的に比較衛星して決せられ,録音時の態様,それまでの事実経緯,侵害される利益等を検討したうえで証拠能力を判断している。
本件においても,個別具体的な検討が加えられ,適正な判断が示されることを希望するが,編集加工されたものには証拠能力が全くないことは言うまでもない。
2 本件における違法性
甲39及び甲54は,どちらも対話の相手の同意がなく秘密に録音されたものであり,こうした無断録音が原則として人格権の侵害となる反社会的な行為であることは,裁判例や学説でも明らかである。
原告らからは,無断録音を行ったことの違法性阻却事由の証明が尽くされておらず,証拠方法の獲得や保全といった私的利益だけの理由で,無断録音の正当化を主張することは許されるものではない。
原告松本の陳述書及び証言によれば,被告岡田に不信感を持っており,知り合いから話の内容を録音するように助言されたとあるが,単にそれだけの理由であれば,被告らの承諾を得てから録音しても何ら問題がなく,むしろ被告らとの紛争の発生に備えて,内容を疋確に記録するという目的にも合致する。本件訴訟に発展しなかった可能性も大きい。
また,甲54については,原告松本の自宅で録音されたもので,■■■■■原告松本の誘導的発問に対して,証人長澤和雄が自己の立場を有利にするため迎合的に行われたものであるから,その供述内容は人間の心理として信用しがたい。
しかも,怒鳴っていないとは明言しておらず,その質問に対して苦慮のうえ言葉を濁しており,本人を前にしての苦渋の対応であったことが推察される。
原告らは,この会話を無断録音したものを証人尋問の当日に証拠として提出しているが,弁論準備手続で証人尋問の証拠の提出は,12月21日までに行うこととされ,被告岡田も重要な証拠である鑑定書について,弾劾証拠することも検討したものの,誠実性に欠けるため,届き次第,早急に証拠として提出している。←「誠実性に欠ける」のではなく、「真実性」に欠けるから、インチキの鑑定書を出すのをためらったのではないのか。
甲54にしても事前に提出があれば,証人長澤和雄の回答があれほど詰まることはなかったはずであり,著しく訴訟における信義誠実の原則に反する。
偽証罪のおそれがあることを示唆されたため,回答には慎重にならざるを得ないうえ,あれだけの傍聴人がいる証人尋問の堤で,急に2年以上も前の会話を思い出し,間違えずに証言しろという方が無理な話である。
第5 補 足
最後に安中市の名誉のために付言すると,証人尋問において原告松本から,フリーマーケットを開催する前の米山公園が,ゴミだらけの公園で不良の集まりがいっぱいいたかのような証許がなされたが,当時の担当者や関係者に確認してもそのような事実はない。←これは変だ。当時、不良の溜まり場という認識は近隣の住民が抱いていたはず。落書きも至る所で見た記憶がある。もし、当時の公園担当者や関係者がそうした事実を覚えていないとなると、岡田市長への気兼ねや無用な配慮としか考えられない。
米山公園が設置されたのが平成3年のことで,原告らがフリーマーケットで使用するようになったのは平成5年からである。公園の定期的な管理もされているなか,たった2年程度で新設された公園がそのような荒れた状態になるはずがないし,その後も原告未来塾の会員が清掃活動をしてくれていたならともかく,フリーマーケットが開催されるようになってからきれいになったという因果関係が全く理解できない。
第6 結 論
原告らは,本件訴訟において,原告らの名誉が毀損された旨主張するが,訴訟でいう名誉とは人格価値そのものである内部的名誉ではなく,人格価値に対する社会的評価である外部的名誉を意味する。
本件談話で外部的名誉が毀損されたとするためには,原告らの社会的評価を低下させるだけの具体的な事実を摘示していることを要するが,本件談話はそのような内容ではなく,たとえ原告らの名誉感情を害した可能性はあっても,外部的名誉まで毀損するものではない。
また,仮りに本件談話が原告らの外部的名誉を毀損したとしても,本件談話の発行は公共の利害に関する事実に係り,もっぱら公益を図る目的によるもので,その摘示した事実の真実性又は真実相当性が証明されているため,違法性はなく不法行為は成立しない。
名誉毀損については,憲法上の表現の自由との調整が重要であり,その保護法益は社会的評価と解されるが,表現の自由は,憲法の保障する基本的人権の中でも特に改変な優越的権利とされていることから,その保護のために上記の免責要件だけでは十分でなく,たとえ真実性の証明がなされなくても,本件談話のような合理的根拠を有する意見論評に対しては一定の免責を与えるべきであり、現在,この結論に異論はないとされている。←インチキに基づいた論評を合理的根拠と称することこそ、タゴ事件を起こした役所の体質を雄弁に物語っているといえる。
【被告安中市の証拠説明書】
平成20年(ワ)第492号 損害賠償等請求事件
原告 松本立家 外1名
被告 岡田義弘 外1名
証拠説明書
平成22年3月10日
前橋地方裁判所高崎支部合議2係 御中
被告安中市 訴訟代理人 弁護士 渡辺明男
号証/標目(原本・写しの別)/作成/年月日/作成者/立証趣旨/備考
乙18/新聞記事・写し/22.2.25/上毛新聞社/原告未来塾の役員が市長選に出馬表明してい
ること
乙19の1/公開口頭弁論期日決定のチラシ・写し/不明/原告未来塾/原告未来塾の呼びかけで多数の傍聴人を集めることができたこと
乙19の2/議会報告・写し/22.1月/高橋よしのぶ後援会/同 上
乙20の1/公園使用許可申請書及び許可書・写し/10.4.13及び10.4.13/原告未来塾及び
被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット開催までの期日
乙20の2/同上・写し/10.9.7及び10.9.8/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット開催までの期日
乙20の3/同上・写し/11.10.7及び11.10.8/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット則崔までの期日
乙20の4/同上・写し/13.9.28及び13.9.28/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット開催までの期日
乙20の5/同上・写し/14.4.30及び14.5.2/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット開催までの期日
乙20の6/同上・写し/17.10.5及び17.10.6/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット開催までの期日
乙20の7/同上・写し/18.10.13及び18.10.17/原告未来塾及び被告安中市/公園使用許可からフリーマーケット剛崔までの期日
乙21/MSNインターネットニュース・写し/22、2.19/堀内彰宏/柏手の目を見て話す人の割合及びその考え
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■当然といえば当然ながら、安中市の訴訟代理人である渡辺明男弁護士が作成した被告準備書面(4)は、岡田市長の主張を全面的に反映した真実性に乏しい内容です。
さすが、タゴ51億円事件を生んだ自治体だ、などと妙な納得をせずに、改革の歩みを市民の力で進めていきましょう。
■そして、地域づくり団体未来塾の安中市に対する損害賠償等請求(事件番号:平成20年(ワ)第492号)の訴えについて、平成22年3月25日(木)午後1時30分から40分にかけて、前橋地裁高崎支部第1号法廷(3階)で最終口頭弁論が行われました。出席したのは、裁判長・安藤裕子、裁判官・木村洋平、亀村忠子、書記官・福田秀太良のほか、原告の未来塾と同代表松本立家、弁護士山下敏稚、被告の岡田義弘、弁護士・渡辺明男、安中市指定代理人・鳥越一成、吉田隆、反町勇でした。
最終弁論では、原告から送付されている原告最終準備書面、被告岡田市長から送付されている被告準備書面(6)及び証拠申出書・丙第23号証・丙第24号証、被告安中市から送付されている準備書面(4)及び証拠申出書・乙第18号証ないし乙第21号証について陳述が行われた後、裁判長から原告、被告ともそのほかの主張、立証がないことを確認するとともに、被告安中市は、互いの主張で不足している部分は援用することで弁論を終了しました。
判決は5月27日(木)午後1弁15分からと決まりました。
【ひらく会情報部・一審判決へと続く】
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