■またまた大企業による不祥事件が発生しました。今度は三菱自動車工業です。4月20日に、軽自動車4車種で燃費試験時に、燃費を実際よりよく見せるためにデータを改ざんする不正が行われたと発表しました。燃費偽装事件と言えば、昨年9月に発覚したドイツのフォルクスワーゲンの不正ソフトによるエンジンの燃費偽装事件が記憶に新しいところです。
○2015年9月25日:フォルクスワーゲンの排ガス違法制御ソフト搭載のディーゼル車が示した企業モラルの重要性↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1726.html
今回データ改ざん不正発覚の対象となったのは、三菱自動車工業のeKワゴンなど2車種と、同社が受託生産し日産自動車が販売する「デイズ」など2車種で、2016年3月末までに計62万5000台を販売しています。
一体なぜ、こんなことが起きてしまったのでしょうか。それは、大企業でも中小企業でも、上層部に対して、下からの意見が届きにくく、そうこうしているうちに、下からの意見も出てこなくなり、不正が分かっていても見て見ないふりをするようになってしまったのではないでしょうか。
この悪弊は企業以外にも、いち早く行政において蔓延してしまいました。役人の世界では、業務の過程で、違法行為を察知したら告発義務があるのですが、それよりも都合の良い守秘義務のほうばかり目を向けすぎてしまったことです。
■今回、4月20日の記者会見で謝罪を余儀なくされた社長の相川哲郎氏は、かつて三菱自動車の発祥だった三菱重工業の相川健太郎社長(その後会長)の息子だといいます。
もともと相川社長はエンジニアで、東京が医学工学部を卒業し、技術者として一貫して新車開発を担当してきましたが、最大のヒット作が2001年発売のeKワゴンでした。当時はまだ40歳代でしたが、この頃から「将来の社長候補、そしてプリンス」と呼ばれていて、「父親の威光を笠に着ることもなく、謙虚で頭のいい人」と社内の評判が高かった反面、剛腕で知られた父親と比べて「やはり御曹司。おっとりタイプで、改革トップというイメージはあまりない」という見方もされていたようです。
三菱自動車の過去30年は3つのステージを変遷してきました。1989年に就任した中村裕一社長はバブル期で、「パジェロ」がヒットし国内販売で3位に躍進しました。この黄金期に「自工は重工を抜いた」と豪語しましたが、中村社長の退任後は不祥事が続き、95年から05年までの10年ほどの間に、実に6人が社長を交代しました。
この間、2000年には独ダイムラー・クライスラー(当時)傘下となりましたが、2004年に独社は経営から手を引きました。その理由は短期間に2度もリコール隠し問題を起こし、「不祥事の三菱自」といわれるほどに企業統治に支障をきたしていたからでした。その結果、三菱重工、三菱商事など「三菱御三家」が面倒を見るかたちとなり、商事出身で現会長兼最高経営責任者(CEO)の益子修氏が9年間にわたって社長を務めて、再建の道筋をつけました。
■4月20日の会見で、相川社長は「コンプライアンスの徹底は難しい」と嘆きましたが、不正防止策については経営陣の1人としてこの15年間にわたって取り組んできた結果を見ると、抜本的意識改革が不可欠な同社のリーダーに相応しかったのかという疑問が湧いてきます。
相川氏を社長に指名した当時の三菱自動車の会長は、三菱重工で社長や会長を歴任した西岡喬氏でした。この西岡氏を三菱重工社長に指名したのが相川賢太郎氏でしだ。結局、こうした不祥事が発生した場合には、いくら能力があっても、世襲のような形になってしまったことから派生した弊害、あるいは因果関係を感じざるをえません。
その三菱重工は、平成23年に受注して長崎造船所で建造中だった大型客船が2016年1月に3度の火災を起こし、さらに度重なる仕様変更による手直しなどで、納期が大幅に遅れ2016年3月中旬に1番船を1年遅れで引渡、累計1866億円という巨額の損失を計上しました。その結果、同社の造船部門は別会社化となりました。
三菱商事も、同や天然ガスなど資源価格の低迷により先月3月24日に4,300億円という巨額の減損損失が発生するとの見通しを発表しました。前期は4,005億円の黒字だった同社の連結最終損益が、一転して2016年3月期は1,500億円の赤字に転落しました。1969年度に現在の会計を採用して以来、三菱商事の連結赤字は初めてで、長年守ってきた総合商社の収益トップの座も、伊藤忠商事に明け渡すことになりました。
■このように通常の民間のマーケットにおいては、長年かかって苦労して築いてきた顧客に対する信用というものは、製品(軽自動車)の性能(燃費)を偽ったことが一つでもバレてしまうことにより、あっけなく崩壊してしまい、企業に甚大な損害を与えてしまうのですが、なぜか、大同スラグの場合には、まったく様相が異なるようです。
これは、公共事業と言う市場で、行政と言う顧客に対しては、安心・安全という要素は問われない、あるいは二の次、ということなのかもしれません。
大同特殊鋼は、特殊鋼製造分野では世界的なメーカーです。特殊鋼という製品において、その性能や成分を偽ったりすれば、ただちに淘汰されてしまいます。しかし、有毒スラグを公共工事に大量に不法投棄しても、顧客である国や県、市町村は、なぜか、告発さえ躊躇してしまうのです。
こんな理不尽なことがあってもよいのでしょうか。やはり、顧客である行政がきちんとルールに則り、ウソの製品(スラグ混合再生砕石)を排除し、原因者であるブラック企業連合にたいしてきちんとケジメをつけるように、引導を渡す必要があるのではないでしょうか。
当会は、我が国の行政機関が、まともに機能するように、4月22日の前橋地裁での第4回口頭弁論での陳述を通じて、引き続き尽力を重ねて参る所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考記事
**********NHK NEWS WEB 2016年4月20日17時14分
三菱自動車 燃費の不正操作は62万5000台
三菱自動車工業は、自社で販売した軽自動車2車種と、日産自動車向けに生産した軽自動車2車種の合わせて62万5000台で、実際よりも燃費をよく見せる不正を意図的に行っていたことを明らかにしました。これまでの再試験で、国に提出したデータと5%から10%、燃費がかい離していたということで、該当する車種の生産と販売を停止しました。
これは三菱自動車の相川哲郎社長が、20日午後5時から都内で開いた記者会見で明らかにしました。
それによりますと、自社で販売した軽自動車2車種と、日産向けに生産した軽自動車2車種で、実際よりも燃費をよく見せるため、国に提出したデータで意図的に不正な操作を行っていたということです。
不正が行われていたのは、いずれも平成25年6月以降に生産した三菱自動車の「eKワゴン」と「eKスペース」、日産自動車向けの「デイズ」と「デイズルークス」です。これらの車種のうち三菱自動車が販売したのは、合わせて15万7000台、日産向けに生産したのは合わせて46万8000台で、すべてを合わせると62万5000台に上るということです。
会社側によりますと、これまでの再試験で、国に提出したデータと5%から10%、燃費がかい離していたということで、対象となる車は、生産と販売を停止しました。対象となる車の燃費試験は、開発を担当した三菱自動車が行いましたが、こうした不正は、日産側からの指摘を受けて調査した結果、判明したということです。
うした不正について、三菱自動車は、当時の性能実験部長が指示したと言っており、事実かどうか確認していると説明しています。さらに、国内向けに生産しているほかの車についても、社内調査のなかで、国が定めたものとは異なる方法で試験が行われていたことが分かったということです。今後、海外向けの車についても調査を行うとしています。
会社側では、これらの事態を重く見て、外部の有識者による委員会を設置し、徹底した調査を行うとしています。三菱自動車では、「燃費の不正が行われていた車種に乗っている顧客に対して誠実に対応したい」としています。
★三菱自動車 過去2回リコール隠し
三菱自動車工業は、かつて「リコール隠し」が発覚し、12年前、「最後の挑戦」だとして会社の再建に乗り出しました。
三菱自動車は、平成12年、内部告発をきっかけに国の立ち入り検査を受け、その結果、1万件を超えるクレーム情報を隠していたことや、4件のリコールを国に届け出ず、ひそかに車を改修していたことが発覚しました。このため、法人としての会社と、元副社長らが、虚偽の報告をしていたとして道路運送車両法違反の罪で略式起訴されました。会社は、当時の社長が、責任を取って辞任したほか、再発防止策をまとめ、その取り組みを監査する、第三者委員会を設けるなどしました。
ところが2年後の平成14年、横浜市で大型トレーラーの車輪が突然外れて歩行者を直撃し、親子3人が死傷する事故が起きました。この事故の原因のトレーラーの車軸と車輪をつなぐ「ハブ」と呼ばれる部品の欠陥について、会社は、平成16年3月にリコールを届け出るまで、国には「整備上の問題」と説明し、欠陥を隠していました。このため、虚偽の説明をしていたとして当時の副社長など元幹部らが逮捕、起訴され、6年前、道路運送車両法違反の罪で罰金が確定したうえ、業務上過失致死傷に問われた幹部2人も、平成24年に有罪が確定しました。
この2回目のリコール隠しの直後にも会社は社内に品質の管理やリコールの対応を専門に検討する「品質統括本部」を設けるなど企業体質を転換するための再建計画をまとめました。そして、三菱自動車の岡崎洋一郎会長は平成16年5月の記者会見で、「自動車メーカーとして存続するこれが最後の挑戦であるとの気概をもって今回の再建計画を作った。安全、品質を第一とする基本に立ち返る」と強調してました。
★フォルクスワーゲンでも大規模な不正発覚
自動車の検査を巡っては、去年、ドイツのフォルクスワーゲンで大規模な不正が発覚しました。排ガス規制を逃れるため、ディーゼル車に不正なソフトウエアを搭載していました。このソフトウエアは、検査の時にだけ窒素酸化物などの有害物質の排出を低く抑えるもので、実際には最大で基準の40倍に上る有害物質を排出していました。
フォルクスワーゲンによりますと不正な車両は全世界でおよそ1100万台に上るとされ、EU=ヨーロッパ連合の域内ではおよそ850万台がリコールの対象になったほか、当時の会長が責任を取って辞任する事態に発展しました。
フォルクスワーゲンは、去年12月に内部調査の結果を公表し、不正が起きた背景には、一部の社員による職務の怠慢などに加えて、会社側にも不正を防ぐためのチェック体制が不十分だったり、一部の部門が規則に違反する行為を黙認したりという問題があったという認識を示しています。
そして、コストを抑えながら厳しい排ガス規制をクリアするだけの技術がなかったことが、不正の発端になったとしています。
★3月期決算で1300億円余の営業利益
三菱自動車工業は、円安に加え、アメリカでの好調な販売などを背景に、このところ堅調な業績を挙げています。
去年3月期の決算は、売上高が2兆1800億円余り、期間中のもうけを示す営業利益が1300億円余りとなっていました。ことし3月期について、会社側では、売上高は1年前より3.6%多い2兆2600億円を見込んでいるほか、営業利益は1年前より8%少ないものの1200億円余りを見込んでいます。
ただ、日本国内での事業は、去年4月に軽自動車税が引き上げられたことなどもあり、昨年度の新車の販売台数は、1年前の実績より1万5000台少ない10万台を見込むなど苦戦しています。
**********NHK NEWS Web 2016年4月21日9時28分
三菱自動車に国交省がきょうも立ち入り検査
三菱自動車工業が実際よりも燃費をよく見せる不正を意図的に行っていた問題で、国土交通省は21日も愛知県にある三菱自動車の施設に立ち入り検査を行い、不正が行われたいきさつなどについて詳しく調べています。
愛知県岡崎市にある三菱自動車工業の「技術センター」には午前9時すぎ、国土交通省の自動車局の担当者が入り、立ち入り検査を始めました。
三菱自動車は20日、自社で販売した軽自動車2車種と日産自動車向けに生産した軽自動車2車種の合わせて62万5000台で、実際よりも燃費をよく見せる不正を意図的に行っていたことを明らかにし、国土交通省は20日から道路運送車両法に基づいて立ち入り検査を行っています。
不正を行ったのは技術センターにある「性能実験部」という部署で、三菱自動車によりますと、当時の性能実験部長が「私が指示した」と話しているということですが、事実かどうかは確認中だとしています。このため、国は立ち入り検査を通じ、不正が行われたいきさつなどについて詳しく調べています。
★従業員「不安で心配」
軽自動車を生産していた岡山県倉敷市の工場で働く人たちからは、今後、雇用などに影響が出るのではないかという不安の声が聞かれました。
三菱自動車は20日、日産自動車向けも含め、平成25年6月以降に生産した軽自動車4車種で、開発部門が実際よりも燃費をよく見せる不正を意図的に行っていたと発表しました。
これらの軽自動車の生産はいずれも岡山県倉敷市にある水島製作所で行っていて、去年4月からことし2月までの生産台数はおよそ16万2000台と水島製作所の生産台数の6割を占めています。
21日朝、水島製作所では午前7時半ごろから従業員たちが足早に出勤していました。工場で働く男性従業員は「このような不正があり残念のひと言です。今後、車が売れなくなるのではないかという不安があるし、会社がどうなるのか心配しています」と話していました。また、別の男性は「まだ詳しいことが何も分からず、不安がないと言えばうそになります。会社からの説明を聞きたいと思います」と話していました。
三菱自動車では、不正が明らかになった4車種の生産と販売を停止していて、今後、部品メーカーも含めた地域経済への影響が懸念されます。
★中古車販売店「どう対応すればよいのか」
問題となっている車種を扱う岡山県倉敷市の中古車販売店は「燃費のよさを売りにした主力商品だったのにどう対応すればよいのか」と困惑していました。
年間1000台以上の車を販売しているという岡山県倉敷市の中古車販売店では、日産自動車向けに三菱自動車が生産している車種も含めて問題となった4つの車種で合わせて10台の在庫があり、まもなく納車する予定の車もあるということです。
宮崎賢治店長によりますと、これらの車種は車内の広さと並んで「燃費がいい」という触れ込みで店の主力商品の一つになっていたということで、「私たちも客によく薦める車だった。今後、客からの問い合わせもあると思うがどう対応していいのか分からないところが多い」と困惑した表情で話していました。
★官房長官「深刻な事案 厳正に対応」
菅官房長官は午前の記者会見で、「本件は、自動車の燃費や排出ガスの検査に用いるデータを恣意(しい)的に改ざんしたもので、消費者の信頼を損なう行為で、あってはならないことであり、極めて深刻な事案だ。国土交通省の立ち入り検査や会社側からの報告を踏まえて、不正の全容を1日も早く解明し、厳正に対応して、車の安全を確かなものにしていきたい」と述べました。
**********Car Watch 2016年4月21日 16:55
三菱自動車の燃費不正行為、相川社長「いい燃費に見せるための操作があったことは確か」
三菱自動車工業は4月20日、同車製軽自動車62万5000台について、型式認証取得時に同社が国土交通省へ提出した燃費試験データに不正があることを公表。同社取締役社長 相川哲郎氏、同取締役副社長 中尾龍吾氏、同執行役員 開発本部長 横幕康次氏が出席する記者会見を実施した。
今回の発表では、対象車両の型式認証所得に際し、燃費を実際よりもよく見せるため不正なデータ操作が行なわれていたことが判明するとともに、国内法規で定められた試験方法と異なる試験方法が採られていたことも判明している。
排出ガスや燃費性能を計測する台上試験では、シャシーダイナモで走行抵抗負荷を再現するために走行抵抗値を入力する必要があるという。走行抵抗値はメーカーからデータが提出され、そのデータをもとに燃費試験が実施される。
まず、開発本部長の横幕氏の説明では、国が定めた測定方法の「惰行法」に対して、同社が「高速惰行法」と呼ぶ試験方法の存在を認めた。
横幕氏の説明によると「惰行法」はある一定速度からギヤをニュートラルにして速度の変化を見るというもので、例えば「惰行法」では90km/hから10km/h減速して80km/hになるのに何秒かかるのかといったことを計測するのに対して、「高速惰行法」では1秒間の間に何km/hスピードが減速するのかをみる違いがあるという。
今回不正を認めた62万5000台の燃費試験では、法律に定められた測定方法の違いに加えて、国交省に提出する走行抵抗値をもとめる際に、通常であれば計測したデータの中央値を捉えるところを、データの下限を捉えて燃費値をよくみせる不正な操作が行なわれたという。
同社取締役副社長の中尾龍吾氏は「現在、正しい走行抵抗値で再試験をしている最中。(JC08モード)燃費値の乖離の割合は5%~10%程度の影響があるとみているが、いずれにしても最新の数値を国土交通省に提示する予定」と話した。
また、相川社長は「この操作は意図的なものであると考えている。その理由は現在調査中であるが、いい燃費に見せるための意図があったことは確か。私としてはこの件は把握していなかったが経営として責任を感じている。まずはこの問題を解決する。そして再発防止のため道筋をつけることが私が責任を果たすこと。それ以上のことは考えていない」との考えを示した。
今回の不正発覚の経緯は、次期車の開発にあたり日産自動車が現行車である該当車の燃費を参考に測定したところ、届出値との乖離があり、三菱自動車が試験で設定した走行抵抗値について確認を求められた。これを受けた三菱自動車による社内調査の結果、実際より燃費に有利な走行抵抗値を使用した不正が明らかになった。
該当車は、2013年6月から生産している「eKワゴン」「eKスペース」と、日産自動車向けに供給している「デイズ」「デイズルークス」の計4車種。これまでに三菱自動車は計15万7000台を販売、日産自動車向けには計46万8000台を生産している(2016年3月末現在)。現在、該当車は生産と販売を停止。日産自動車でも販売を停止しており補償についても今後、協議するとしている。
今後のユーザーに対する保障について、中尾氏は「社内でどういうことをしていけばお客様に納得していただけるか検討を始めた段階。今後どのようなことをやる必要があるのかを決めてお客様に案内していきたい」と述べるとともに、エコカー減税に適合しないモデルについては、減税分の返納等など対応をしていく考えを示した。
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