■関電工による放射能汚染木材を大量に集荷し、チップにしてから、機械的に油圧プレスで脱水し、ボイラーに投入して燃焼させ、発生した高温高圧の蒸気でタービンを回すことで、発電機を駆動させて電気を起こし東電に販売するという亡国事業=バイオマス発電施設設置計画で、事業者である関電工が群馬県環境アセスメント条例の適用を受けずに間もなく運転開始が為されようとしています。
当会では、なぜこのようなことが出来るのか、その理由を確かめようと、当会が群馬県に情報開示請求しましたが、群馬県はその根拠を示す文書が存在しないと主張しています。そのため、行政訴訟に踏み切りましたが、一審の前橋地裁の塩田裁判長は、被告群馬県側の主張である「口頭で条例の特例措置を説明したが、条例に対象外と判断したのは事業者である関電工だから、文書としては存在しない」という、無茶苦茶な主張だけを採用し、11月8日に原告オンブズマン敗訴の判決を下してしまいました。
そこで、当会では11月22日に控訴状を前橋地裁に提出したところ、この度、11月30日付で補正指示が地検からあったため、12月4日に補正の為の追加文書を裁判所に提出しました。併せて控訴理由書も一緒に提出しました。判決から今の控訴に至る過程は次のブログをご覧ください。
○2017年11月8日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…環境アセス不要根拠文書不存在訴訟で地裁が原告敗訴の問答無用判決↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2456.html#readmore
○2017年11月22日:【緊急速報】東電の毒牙から赤城と県土を守れ!・・・バイオマス発電施設から大量の白煙!関電工の暴挙!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2472.html#readmore
○2017年11月30日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…赤城山南麓に漂うバイオマス発電の白煙と控訴状不備を指摘してきた裁判所↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2482.html#readmore
*****控訴状訂正申立書*****PDF ⇒ 20171204_kousoteisei_mousitatesho.pdf
平成29年(レ)第 号 公文書不存在決定処分取消控訴事件
控 訴 人 市民オンブズマン群馬 代表 小川賢
被控訴人 群馬県
平成29年12月4日
東京高等裁判所 御中
控訴人 市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 印
控 訴 状 訂 正 申 立 書
頭書事件について,控訴人は次のとおり控訴状を訂正する。
第1 申立ての趣旨及び理由
(1)趣旨
控訴状の被控訴人名「群馬県知事大澤正明」を次のとおり訂正する。
「被控訴人 群馬県」
(2)理由
原審判決の被告名の記載に合わせた。
以上
*****控訴理由書*****PDF ⇒ 20171204_kousoriyuusho.pdf
平成29年(レ)第 号 公文書不存在決定処分取消控訴事件
控 訴 人 市民オンブズマン群馬 代表 小川賢
被控訴人 群馬県
平成29年12月4日
東京高等裁判所 御中
控訴人 市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 印
控 訴 理 由 書
頭書事件について,控訴人は次のとおり控訴理由書を提出します。
ちなみに控訴状に記載した控訴の趣旨は次のとおりです。
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,平成28年5月6日付環政第30066-1号で行った次の文書:
関電工とトーセンが赤城山南麓の電中研の敷地内で計画中の「前橋バイオマス発電施設」に関する情報のうち、次のもの。
③ 環境政策課が、上記施設について群馬県環境影響評価条例に定める毎時4万ノルマル㎡の排ガス量の観点から、対象除外と判断した根拠と経緯等を示す一切の情報(とくに関電工から提供された排ガス量に関する情報、条例に基づく判断基準、その判断基準の根拠となった議論の経緯が分かる会議録等、当該判断基準の運用を最終決定した協議の議事録、そして当該判断基準の運用を開始した年月日と県庁関係出先等への通達内容、さらに関電工との間でこの件について交わしたすべてのやり取りを示す情報を含む)。
の不存在決定処分を取り消す。
3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
次に控訴の理由は次のとおりです。
控訴理由
原判決でもっとも事実誤認をしていることは、原審裁判所が被告の「・・・条例アセスメントは,事業者において,その対象となるか否かを自ら判断するものとされており,行政機関は,条例アセスメントにつき,その対象となるか否かを判断する立場にはない。したがって,被告が,本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの対象とならない」とする主張を全面的に鵜呑みにしてそれを支持してしまい,原告側の反論に全く耳を傾けようとしなかったことです。
原審のこのような偏った判断、つまり常に行政側を勝たせようとする現在の我が国の司法の悪しき体質を表面化したことにより、原審は次のとおり間違った判断をしてしまったのでした。即ち、
「・・・しかし,仮に,環境政策課の職員が本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの適用対象となるか否かについて,株式会社関電工と何らかの協議及び確認を行った事実があったとしても,その協議及び確認の態様は明らかではなく,直ちに環境政策課において主体的に本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの適用対象となるか否かを判断したとまで認めることはできないし,協議及び確認が口頭のみによるものであった可能性も否定できず,上記書面の記載から,直ちに被告の担当者が,本件文書を作成し,又は取得し,群馬県知事が本件文書を保有するに至ったと推認することはできない。」
だとか、
「なお、少なくとも被告の担当者が,主体的に本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの対象となるか否かを判断すべき立場にないことは既に説示したとおりであり,羽鳥の開示請求により群馬県知事が開示した文書(甲10)は,事業者の判断の資料になるものということはできても,環境政策課の判断の資料となることはあり得ず,本件文書には該当しない。以上により,原告の主張はいずれも採用できない。その他に本件決定当時において群馬県知事が本件文書を保有していたことを認めるに足りる証拠はないから,被告が本件文書を保有していないことを理由として行われた本件決定を違法ということはできない。」
などと結論付けたことは、我が国の司法、とりわけ、保守色の強い政治風土にある群馬県の裁判所の典型と言えるでしょう。
以上の背景を踏まえて、控訴人はあらためて次のとおり控訴の理由を項目ごとに述べます。
1.環境影響評価条例は、該当する事業を行う事業者は必ず条例を遵守しなければならないこと
全国の各都道府県、自治体にはそれぞれ環境影響評価条例があります。今回事件の舞台となった群馬県にも群馬県環境影響評価条例(以下「条例」という)が存在します。
今回の事件では、木質原料を燃料として燃焼させるバイオマス発電施設であることから、燃焼後に必ず発生する排ガス量と、間伐材や製材端材など、いわゆる木くずとしての観点から、産業廃棄物の燃焼(=中間処理)の観点から、全国の主な自治体の条例について調べてみました。これについては、被控訴人の群馬県も事前に調査していることが控訴人の会員の公文書開示請求の結果、判明しています。(甲21号証)
これを見ると、幾つかの自治体では排ガス量が4万ノルマル㎥以上の火力発電設備は条例で環境影響評価を課していることが分かります。
群馬県も条例で、排ガス量4万ノルマル㎥以上の火力発電設備に対して環境影響評価を義務付けています。条例による環境影響評価の義務化については、原審裁判所も、判断理由のところで明示しています。
したがって、関電工は条例に基づいて、平成27年1月~3月にかけて、自ら計画する前橋バイオマス発電施設計画における排ガス量が被控訴人に対して、環境影響評価条例に該当するのかどうか、判断を被控訴人に仰いでいたことは間違いない事実です。
しかし原審裁判所は、そのことについて「その協議及び確認の態様は明らかではなく,直ちに環境政策課において主体的に本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの適用対象となるか否かを判断したとまで認めることはできないし,協議及び確認が口頭のみによるものであった可能性も否定できず,上記書面の記載から,直ちに被告の担当者が,本件文書を作成し,又は取得し,群馬県知事が本件文書を保有するに至ったと推認することはできない。」と、推測だけで結論付けてしまっています。
控訴人は、関電工が被控訴人群馬県との間で、どのような協議をしたのかを確認するために調査嘱託申立を行いました。同時に、群馬県がバイオマス発電施設の排ガス量について、どの様な基準で関電工に対して対象外と判断できたのかを確認するために、文書送付嘱託申立を行いまして。しかし、これら2つの申し立ては、原審裁判所によって、前者は「本件訴訟と関係がないから」として、後者は「既に原告(控訴人)がすでに手元に所有済みだから」として、認められませんでした。
原審裁判所は、被控訴人の言い分のみに耳を傾けて、鵜呑みにしただけで、その真偽や真相を確認しないまま控訴人らの主張や調査嘱託・文書送付嘱託の申立てをことごとく退けました。条例対象外の可否の判断の根拠となった文書が存在しているにもかかわらず、判断をしていないなどということは、行政の事務事業において、決して有り得ません。あるいは、本当に存在していないのに、あとで日付をバックデートしてでっち上げたとなれば、それこそ被控訴人の所為は公文書変偽造に当たります。
2.行政判断は必ず文書により行われなければならないこと
内閣府のHPにも記載があるとおり、行政の文書主義の原則として、「行政事務の遂行に当たっては、記録として文書を作成すること」が定められています。
※内閣府のHP「文書の作成」:http://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/about/shikumi/g_bun/tebiki1.pdf
これによれば、文書の作成が明確に義務付けられているのです(公文書の管理に関する法律第4条・行政文書の管理に関するガイドライン第3関係)。
これは、とりもなおさず、行政機関の諸活動における正確性の確保、責任の明確化等の観点から重要であり、行政の適正かつ効率的な運営にとって必要だからです。
また、作成すべき文書についても、①意思決定に関する文書、②事務及び事業の実績に関する文書があります。前者は、最終的な意思決定のみならず経緯・過程を跡付け、検証できるよう文書を作成するものです。後者は事務及び事業の実績を合理的に跡付け、検証でいるよう文書を作成するものです。
行政手続法第7条は「申請に対する審査、応答」について定めており、「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならない。また、行政庁は、法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(申請者)に対し申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない」とあります。申請は当然文書主義で為されなければなりません。今回、被控訴人は、事業者との協議及び確認が口頭のみであったとしているようだが、本来そのようなことは考え難い。
このため、控訴人は、事業者である関電工に対して、裁判所に調査嘱託申立をしました。しかし原審裁判所はこれを、本事件とは無関係だとして、取り上げようとしませんでした。
ちなみに我が国の文書主義を定めた法令には行政手続法を含め次のものがあります。
・行政手続法(平成五年十一月十二日法律第八十八号)
・公文書等の管理に関する法律(平成二十一年七月一日法律第六十六号)
・公文書等の管理に関する法律施行令(平成二十二年十二月二十二日政令第二百五十号)
一方、司法における文書主義としては、民事訴訟法131条に定めるとおり、「訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。」とあります。但し、司法の分野では口頭弁論など、口頭主義も見られることから、原審裁判所は、「行政も同様に口頭主義の場合もあるのでは」とその判断を誤った可能性が指摘されます。
3.曖昧な事情を確認しようとしないまま、推測だけで判断してしまったこと
原審裁判所は「・・・しかし,仮に,環境政策課の職員が本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの適用対象となるか否かについて,株式会社関電工と何らかの協議及び確認を行った事実があったとしても,その協議及び確認の態様は明らかではなく,直ちに環境政策課において主体的に本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの適用対象となるか否かを判断したとまで認めることはできないし,・・・」と判断していますが、控訴人は、関電工と被控訴人との間で取り交わされた何らかの協議及び確認の態様を明らかにすべく、原審裁判所に、事業者である関電工に対する調査嘱託申立をしました。しかし、原審裁判所はこれを不要だとして却下しました。
このことは、原審裁判所はそれなりの心証を確信して、控訴人の調査嘱託申立を却下したはずにちがいありません。そうであれば、「行政と事業者との間の虚偽及び確認の態様は明らかではなく」などと判断するはずがありません。
原審裁判所の心証に基づく訴訟指揮と、判決に至る判断過程と結果がチグハグです。控訴審であらためて、関電工への調査嘱託申立を受理していただきたいと思います。
4.これまでの時系列の出来事を鑑みると関電工が被控訴人と協議を始めた時期は平成27年1~3月だけではないこと
関電工が開催した地元説明会における情報や、関電工と地元住民との直接面談時における関電工の回答内容などから、これまでに判明して本件に係る出来事を時系列の順番に並べてみました。
平成26年7月 関電工が赤城試験センターを視察した。
群馬県の環境影響評価条例では環境アセスメントを実施しなければならず、条例だけがネックと判断、群馬県に環境アセスメント不要等の圧力をかけた可能性がある。その為、群馬県は、アンケート形式で全国の県・市の環境アセスメント条例状況を調べた。調査結果、規制緩和(おまけ等)の自治体が無かった。
全国の状況をアンケート形式で調査して一覧表まで作成しているのだから、見解なり、会議で議論した議事録などがあるはずだ。群馬県と同じ基準である埼玉、北九州市に再度確認のための問合せをした可能性もある。
平成26年8月頃 被控訴人は、根拠も無く、GOサインを出した可能性がある。この場合には、関連する文書が存在するはずである。
平成26年9月 関電工は赤城山に木質バイオマス発電所を建設すること決定した。
平成26年10月 関電工はボイラー設計開始、FIT申請。群馬県森林組合連合会を訪問。
平成27年1月 関電工は前橋市と調整を開始。環境アセスメントの適応有無について協議を開始。
平成27年3月 群馬県が口頭で、関電工に対して、条例の運用に基づき本件はアセス対象外と通告をした、と主張するが、これには確たる根拠がありません。
平成27年4月 群馬県は、設計排ガス量(4万2千)を関電工から報告を受けた。
平成28年3月31日 控訴人の代表をしている小川が直接事情を群馬県当局(環境政策課)に聴取する。
平成28年5月 控訴人代表の小川が情報公開請求したところ、公文書不存在決定通知が到来する。その後、控訴人が提起した裁判でも、一審で被告は「無い」と主張し、判決に至った。
平成28年7月頃 平成27年3月31日付けのおまけ文書を偽造した可能性が高いが、実際には公開されずに書庫へ格納した。
平成28年9月 控訴人の会員である羽鳥が情報公開請求し、おまけ文書が公開された。
以上の経過推移から鑑みれば、関電工は平成26年7月以降に被控訴人にアプローチをかけた可能性があります。そのため、被控訴人群馬県環境政策課は全国のバイオマス発電の現状を把握するため、主要な自治体にアンケートを送り、実態調査をしました。
このように控訴人は被控訴人に対して、被控訴人が関電工の事業を環境アセスメント条例適用外と判断した根拠になったさまざまな情報について、開示請求をしたわけですが、被控訴人はことごとく不存在決定にしました。しかし、実際には被控訴人が、数多くの情報を保有していたことは間違いない事実です。それにもかかわらず、原審裁判所は、ことごとくそうした情報は不存在だとする被控訴人の主張のみを採用しました。これは公正な裁判ではありません。
5.被控訴人代表小川の開示請求情報と会員羽鳥の開示請求情報は同一であること
原審裁判所は「なお、少なくとも被告の担当者が,主体的に本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの対象となるか否かを判断すべき立場にないことは既に説示したとおりであり,羽鳥の開示請求により群馬県知事が開示した文書(甲10)は,事業者の判断の資料になるものということはできても,環境政策課の判断の資料となることはあり得ず,本件文書には該当しない。・・・」と判断し、小川と羽鳥の開示請求情報が異なるかのように歪めて判断しています。これでは、開示請求情報を特定する場合に、恣意的な判断を許すことになり、行政の今後の事務事業において、住民が公文書開示請求をする場合、行政側がいかようにも自らの不都合な情報を不存在として回答できる余地を担保してしまうことになり、ひらかれた行政の実現に対して重大な脅威となってしまいます。
控訴人代表小川の情報開示請求は、平成28年4月22日に行われ、同5月6日に被控訴人群馬県が不存在決定を通知しました。この時の請求内容は次のとおりでした。
関電工とトーセンが赤城山南麓の電中研の敷地内で計画中の「前橋バイオマス発電施設」に関する情報のうち、次のもの。
環境政策課が、上記施設について群馬県環境影響評価条例に定める毎時4万ノルマル㎥の排ガス量の観点から、対象除外と判断した根拠と経緯等を示す一切の情報(特に関電工から提出された排ガス量に関する情報、条例に基づく判断基準、その判断基準の根拠となった議論の経緯が分かる会議等、当該判断基準の運用を最終決定した協議の議事録、そして当該判断基準の運用を開始した年月日と県庁関係出先等への通知内容、さらに関電工との間でこの件について交わした全てのやり取りを示す情報を含む)。
他方、控訴人の会員である羽鳥の情報開示請求は、平成28年9月13日に行われ、同9月27日に公開決定されました。この時の請求内容は次のとおりでした。
環境影響評価条例施行規則の別表第1で、6工場又は事業場の新設または増設の事業の第一種事業の規模要件である琲ガス量4万立方メートル以上ですが、木質バイオマス発電に関しては、その排ガス量を2割削減して計算してもよいとされているようですが、技術的な根拠、決定までの議論経過や議事録、承認された会議等のすべての資料。
以上のとおり下線で示したように、約5カ月のインターバルを置いて、両者から出された情報開示請求は、いずれも木質バイオマス発電において排ガス量の観点からなんらかの線引きをしたことが分かる基準根拠を求めている点で、同一であることは明らかです。
控訴人の会員である羽鳥は、前橋バイオマス発電施設予定地のすぐ近くに居住する住民であり、市民運動の事務局長であり、開示請求に記した木質バイオマス発電として想定しているのは前橋バイオマス発電施設を念頭においていたことは容易に推測され得ます。
6.被控訴人代表小川の開示請求時点で不存在の公文書が、会員羽鳥の開示請求時点で存在したのであれば、当該文書はその期間内に新たに作成されたことを意味し、それは虚偽公文書の作成及び行使にあたること
控訴人が提起した本件訴訟に対して原審裁判所は、平成29年11月8日判決言渡で控訴人の請求を棄却しました。判決の趣旨は、①環境影響評価の実施は、事業者の判断次第、②被告(被控訴人)が条例の除外対象事例として内部で作成したルールは、事業者の判断用資料であり、被控訴人の判断資料ではない、というものでした。
しかし①については、群馬県環境影響評価条例の条文に、そのように判断できる文言は見当たりません。対象事業には実施義務があると明確に記載されています。
環境影響評価法は、環境アセスメントを行うことにより重大な環境影響を未然に防止し、持続可能な社会を構築していくためにとても重要であるとの考えのもとに作られた法律です。その中で、事業者は、事業の位置・規模等の検討段階において環境保全のために適切な配慮をすべき事項について検討を行い、国民等や地方公共団体等の意見を聴取するよう努め、その結果をまとめた「計画段階環境配慮書」を作成することになっています。さらに、条例で、新たに基準を設け、環境影響評価法を補完することができる仕組みになっています。
しかし、今回の一件では、第一種事業の場合は「環境影響調査を行わなければならない」というふうに法や条例でその実施の義務づけをしているのにかかわらず、被控訴人は、明らかにその実施を事業者である関電工が逃れられるよう、配慮を画策しているのです。
控訴人は、この特定事業者だけ、なぜ環境アセスメントを実施しなくて済むのか、その根拠を示す情報の公開を求めました。にもかかわらず、被控訴人は、なんとか不正な手続きの過程がばれないように、また、裁判を有利に進めるために、「アセスメントを実施するかしないかは事業者判断である」と論点をすり替えたのでした。また、原審裁判所も、何の疑いもなく被告の主張を丸飲みにし、あっさり裁判を打ち切ってしまいました。
また、②については、実際に羽鳥に対して開示された文書は、群馬県が判断して作成した文章そのものです。それを原審裁判所は「群馬県が判断するための資料ではない」と、どうして言えるのでしょうか。
さらに言えば、この公開された文書は、平成27年3月31日に被控訴人によって決裁されたことになっていますが、公文書としては成立していません。実施時期が未記入だからです。公文書として成立していない文書を根拠に、被控訴人は、事業者である関電工にこの事業がアセスメント対象になるかならないかを判断させたと主張しているのです。どうしてそんな理屈がまかりとおるのでしょうか。原審裁判所もそのよう無茶苦茶な被控訴人の主張を支持したのです。こんなことは絶対にあってはならないと思います。
また、平成28年10月に被控訴人から公開された電子データを解析すると、印刷日のみ平成27年3月31日と偽装工作(公文書偽造行為)されており、作成日は、平成28年10月27日となっています。
つまり、開示を決定した前日に、文書を作成し、印刷日を当時にさかのぼって偽造したことは明白なのです。
では、なぜ被控訴人はこのようなことを行わねばならなかったのでしょうか。それは被控訴人が、平成27年3月に関電工に対し、条例の特例措置の運用基準を新たに作成したので、それをもとに実質上、環境アセスメントを通じて住民の意見を聞く必要なく事業を進めてもよい、とお墨付きを与える判断をしたからに他なりません。
しかし、この条例というルールをないがしろにした被控訴人の判断の背景には、なんの根拠も無いわけですし、事業者である関電工の立場を忖度して、アセスメントの実施を積極的に免除し、開発を推進させようとする被控訴人の恣意的な意図が見え隠れています。
被控訴人は、本来、県民の命や健康を守ることが目的の大切な群馬県環境影響評価条例を、こうして捻じ曲げてしまったのです。この罪は誠に大きいものがあります。行政のこの不正は公開され、正されなくてはいけません。
では、この文書はいつ作られたものなのでしょうか。前述のとおり、平成28年7月頃と推定されます。なぜなら、時を同じくして、関電工らは被控訴人に対し、事業計画を提出しているからです。
これまでの出来事を時系列で考えるならば、すべてが、関電工らの発電計画を1日でも早く、また、県民が気付かずに寝ている状態のうちに、発電設備を稼働させてしまえというスケジュールのもとで動いていることがわかります。
なぜ、被控訴人は環境影響評価調査の実施を関電工にさせたくないのでしょうか。それは、放射能に汚染された間伐材等を長期にわたって大量に燃焼処理させるという、まさに除染事業を兼ねた一石二鳥の発電事業だからです。
したがって、長期的には放射能二次汚染の拡大及び拡散という問題を孕んでいるとともに、短期的に見れば、環境影響評価調査は一般的に2年から3年の調査期間を要すことになることから、被控訴人や事業者にとっては無駄な期間でしかないわけです。だから環境影響評価調査をできるだけショートカットすべく、行政である被控訴人と事業者である関電工が、県民の命を引換えにしようと画策していることがうかがえるのです。
さらに言えば、関電工の発電施設に使われる燃料となる木質チップを乾燥させるためにプレス機で脱水しますが、その汚染された廃液は、何の処理もされず、地下浸透させるというものです。被控訴人群馬県は、この県民の不安にも耳を傾けることなく、事業者に対応策さえ取らそうとしていないのです。
羽鳥の開示請求により初めて存在が確認されて公開された文書ですが、木質バイオマスの水分量に応じた水分量、2割を排ガス量から削減してもよいという特例です。しかし、被控訴人群馬県は、現在においてもなお、ホームページ上でも木質バイオマスの水分量の計算は、15%にしており、なぜ2割の削除という特例措置にしたのか、基準とした脱水前の木質チップの水分量の数値が明確に示されておらず、根拠となる説明が全く見当たりません。
見方を変えると、なぜ2割でなければ被控訴人群馬県や事業者にとって都合がつけられないのかと言えば、排ガス量毎時42000㎥といわれているものを、群馬県環境影響評価条例に規定する40000㎥以下にしたいがためだけであります。
被控訴人群馬県が主張する『判断は事業者』とするならば、こんな特定の事業者だけを救う運用は不要なはずです。裏を返せば、基準を超えているものは、実施が義務づけされていることを被控訴人自らが認めたことから、事後になって作成したとしか考えられません。だからこそ、この文書は部内で作成したことにしておく必要があったのです。しかし、そのまま公表されることなく書庫に保管されてしまいました。この運用を知っていたのは被控訴人群馬県と関電工のみであり、まさに、特定事業者との癒着であることは間違いありません。
そして、原審裁判所の判決は、それを支持するものであり、控訴人による文書嘱託申立や調査嘱託申立に対して、なりふり構わず却下したことが、原審裁判所の問答無用の判断を雄弁に物語っているのです。
以上
*****上申書*****PDF ⇒ 20171204_ombuzman_gunma_jousinsho.pdf
平成29年(レ)第 号 公文書不存在決定処分取消控訴事件
控 訴 人 市民オンブズマン群馬 代表 小川賢
被控訴人 群馬県
平成29年12月4日
東京高等裁判所 御中
上 申 書
私たちは、控訴人たる市民オンブズマン群馬の代表者が、現在もなお「小川賢」であることをここに証明いたします。
市民オンブズマン群馬
副 代 表 大河原 宗 平 印
事務局長 鈴 木 庸 印
なお、補足資料として次の文書を添付します。
補足資料1:2017年1月21日開催の市民オンブズマン群馬例会・総会議事録
補足資料2:市民オンブズマン群馬会則
以上
*****補足資料1*****
PDF ⇒ hosokusiryou_1_20170121_gijiroku.pdf
*****補足資料2*****
PDF ⇒ hosokusiryou_2_ombzman_gunma_kaisoku.pdf
**********
■今後、今回提出した書類に瑕疵がなければ、前橋地裁では、遅くとも12月15日までに控訴に係る書類を東京高裁に送致するものとみられます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
当会では、なぜこのようなことが出来るのか、その理由を確かめようと、当会が群馬県に情報開示請求しましたが、群馬県はその根拠を示す文書が存在しないと主張しています。そのため、行政訴訟に踏み切りましたが、一審の前橋地裁の塩田裁判長は、被告群馬県側の主張である「口頭で条例の特例措置を説明したが、条例に対象外と判断したのは事業者である関電工だから、文書としては存在しない」という、無茶苦茶な主張だけを採用し、11月8日に原告オンブズマン敗訴の判決を下してしまいました。
そこで、当会では11月22日に控訴状を前橋地裁に提出したところ、この度、11月30日付で補正指示が地検からあったため、12月4日に補正の為の追加文書を裁判所に提出しました。併せて控訴理由書も一緒に提出しました。判決から今の控訴に至る過程は次のブログをご覧ください。
○2017年11月8日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…環境アセス不要根拠文書不存在訴訟で地裁が原告敗訴の問答無用判決↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2456.html#readmore
○2017年11月22日:【緊急速報】東電の毒牙から赤城と県土を守れ!・・・バイオマス発電施設から大量の白煙!関電工の暴挙!↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2472.html#readmore
○2017年11月30日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…赤城山南麓に漂うバイオマス発電の白煙と控訴状不備を指摘してきた裁判所↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2482.html#readmore
*****控訴状訂正申立書*****PDF ⇒ 20171204_kousoteisei_mousitatesho.pdf
平成29年(レ)第 号 公文書不存在決定処分取消控訴事件
控 訴 人 市民オンブズマン群馬 代表 小川賢
被控訴人 群馬県
平成29年12月4日
東京高等裁判所 御中
控訴人 市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 印
控 訴 状 訂 正 申 立 書
頭書事件について,控訴人は次のとおり控訴状を訂正する。
第1 申立ての趣旨及び理由
(1)趣旨
控訴状の被控訴人名「群馬県知事大澤正明」を次のとおり訂正する。
「被控訴人 群馬県」
(2)理由
原審判決の被告名の記載に合わせた。
以上
*****控訴理由書*****PDF ⇒ 20171204_kousoriyuusho.pdf
平成29年(レ)第 号 公文書不存在決定処分取消控訴事件
控 訴 人 市民オンブズマン群馬 代表 小川賢
被控訴人 群馬県
平成29年12月4日
東京高等裁判所 御中
控訴人 市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 印
控 訴 理 由 書
頭書事件について,控訴人は次のとおり控訴理由書を提出します。
ちなみに控訴状に記載した控訴の趣旨は次のとおりです。
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,平成28年5月6日付環政第30066-1号で行った次の文書:
関電工とトーセンが赤城山南麓の電中研の敷地内で計画中の「前橋バイオマス発電施設」に関する情報のうち、次のもの。
③ 環境政策課が、上記施設について群馬県環境影響評価条例に定める毎時4万ノルマル㎡の排ガス量の観点から、対象除外と判断した根拠と経緯等を示す一切の情報(とくに関電工から提供された排ガス量に関する情報、条例に基づく判断基準、その判断基準の根拠となった議論の経緯が分かる会議録等、当該判断基準の運用を最終決定した協議の議事録、そして当該判断基準の運用を開始した年月日と県庁関係出先等への通達内容、さらに関電工との間でこの件について交わしたすべてのやり取りを示す情報を含む)。
の不存在決定処分を取り消す。
3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
次に控訴の理由は次のとおりです。
控訴理由
原判決でもっとも事実誤認をしていることは、原審裁判所が被告の「・・・条例アセスメントは,事業者において,その対象となるか否かを自ら判断するものとされており,行政機関は,条例アセスメントにつき,その対象となるか否かを判断する立場にはない。したがって,被告が,本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの対象とならない」とする主張を全面的に鵜呑みにしてそれを支持してしまい,原告側の反論に全く耳を傾けようとしなかったことです。
原審のこのような偏った判断、つまり常に行政側を勝たせようとする現在の我が国の司法の悪しき体質を表面化したことにより、原審は次のとおり間違った判断をしてしまったのでした。即ち、
「・・・しかし,仮に,環境政策課の職員が本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの適用対象となるか否かについて,株式会社関電工と何らかの協議及び確認を行った事実があったとしても,その協議及び確認の態様は明らかではなく,直ちに環境政策課において主体的に本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの適用対象となるか否かを判断したとまで認めることはできないし,協議及び確認が口頭のみによるものであった可能性も否定できず,上記書面の記載から,直ちに被告の担当者が,本件文書を作成し,又は取得し,群馬県知事が本件文書を保有するに至ったと推認することはできない。」
だとか、
「なお、少なくとも被告の担当者が,主体的に本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの対象となるか否かを判断すべき立場にないことは既に説示したとおりであり,羽鳥の開示請求により群馬県知事が開示した文書(甲10)は,事業者の判断の資料になるものということはできても,環境政策課の判断の資料となることはあり得ず,本件文書には該当しない。以上により,原告の主張はいずれも採用できない。その他に本件決定当時において群馬県知事が本件文書を保有していたことを認めるに足りる証拠はないから,被告が本件文書を保有していないことを理由として行われた本件決定を違法ということはできない。」
などと結論付けたことは、我が国の司法、とりわけ、保守色の強い政治風土にある群馬県の裁判所の典型と言えるでしょう。
以上の背景を踏まえて、控訴人はあらためて次のとおり控訴の理由を項目ごとに述べます。
1.環境影響評価条例は、該当する事業を行う事業者は必ず条例を遵守しなければならないこと
全国の各都道府県、自治体にはそれぞれ環境影響評価条例があります。今回事件の舞台となった群馬県にも群馬県環境影響評価条例(以下「条例」という)が存在します。
今回の事件では、木質原料を燃料として燃焼させるバイオマス発電施設であることから、燃焼後に必ず発生する排ガス量と、間伐材や製材端材など、いわゆる木くずとしての観点から、産業廃棄物の燃焼(=中間処理)の観点から、全国の主な自治体の条例について調べてみました。これについては、被控訴人の群馬県も事前に調査していることが控訴人の会員の公文書開示請求の結果、判明しています。(甲21号証)
これを見ると、幾つかの自治体では排ガス量が4万ノルマル㎥以上の火力発電設備は条例で環境影響評価を課していることが分かります。
群馬県も条例で、排ガス量4万ノルマル㎥以上の火力発電設備に対して環境影響評価を義務付けています。条例による環境影響評価の義務化については、原審裁判所も、判断理由のところで明示しています。
したがって、関電工は条例に基づいて、平成27年1月~3月にかけて、自ら計画する前橋バイオマス発電施設計画における排ガス量が被控訴人に対して、環境影響評価条例に該当するのかどうか、判断を被控訴人に仰いでいたことは間違いない事実です。
しかし原審裁判所は、そのことについて「その協議及び確認の態様は明らかではなく,直ちに環境政策課において主体的に本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの適用対象となるか否かを判断したとまで認めることはできないし,協議及び確認が口頭のみによるものであった可能性も否定できず,上記書面の記載から,直ちに被告の担当者が,本件文書を作成し,又は取得し,群馬県知事が本件文書を保有するに至ったと推認することはできない。」と、推測だけで結論付けてしまっています。
控訴人は、関電工が被控訴人群馬県との間で、どのような協議をしたのかを確認するために調査嘱託申立を行いました。同時に、群馬県がバイオマス発電施設の排ガス量について、どの様な基準で関電工に対して対象外と判断できたのかを確認するために、文書送付嘱託申立を行いまして。しかし、これら2つの申し立ては、原審裁判所によって、前者は「本件訴訟と関係がないから」として、後者は「既に原告(控訴人)がすでに手元に所有済みだから」として、認められませんでした。
原審裁判所は、被控訴人の言い分のみに耳を傾けて、鵜呑みにしただけで、その真偽や真相を確認しないまま控訴人らの主張や調査嘱託・文書送付嘱託の申立てをことごとく退けました。条例対象外の可否の判断の根拠となった文書が存在しているにもかかわらず、判断をしていないなどということは、行政の事務事業において、決して有り得ません。あるいは、本当に存在していないのに、あとで日付をバックデートしてでっち上げたとなれば、それこそ被控訴人の所為は公文書変偽造に当たります。
2.行政判断は必ず文書により行われなければならないこと
内閣府のHPにも記載があるとおり、行政の文書主義の原則として、「行政事務の遂行に当たっては、記録として文書を作成すること」が定められています。
※内閣府のHP「文書の作成」:http://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/about/shikumi/g_bun/tebiki1.pdf
これによれば、文書の作成が明確に義務付けられているのです(公文書の管理に関する法律第4条・行政文書の管理に関するガイドライン第3関係)。
これは、とりもなおさず、行政機関の諸活動における正確性の確保、責任の明確化等の観点から重要であり、行政の適正かつ効率的な運営にとって必要だからです。
また、作成すべき文書についても、①意思決定に関する文書、②事務及び事業の実績に関する文書があります。前者は、最終的な意思決定のみならず経緯・過程を跡付け、検証できるよう文書を作成するものです。後者は事務及び事業の実績を合理的に跡付け、検証でいるよう文書を作成するものです。
行政手続法第7条は「申請に対する審査、応答」について定めており、「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならない。また、行政庁は、法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(申請者)に対し申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない」とあります。申請は当然文書主義で為されなければなりません。今回、被控訴人は、事業者との協議及び確認が口頭のみであったとしているようだが、本来そのようなことは考え難い。
このため、控訴人は、事業者である関電工に対して、裁判所に調査嘱託申立をしました。しかし原審裁判所はこれを、本事件とは無関係だとして、取り上げようとしませんでした。
ちなみに我が国の文書主義を定めた法令には行政手続法を含め次のものがあります。
・行政手続法(平成五年十一月十二日法律第八十八号)
・公文書等の管理に関する法律(平成二十一年七月一日法律第六十六号)
・公文書等の管理に関する法律施行令(平成二十二年十二月二十二日政令第二百五十号)
一方、司法における文書主義としては、民事訴訟法131条に定めるとおり、「訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。」とあります。但し、司法の分野では口頭弁論など、口頭主義も見られることから、原審裁判所は、「行政も同様に口頭主義の場合もあるのでは」とその判断を誤った可能性が指摘されます。
3.曖昧な事情を確認しようとしないまま、推測だけで判断してしまったこと
原審裁判所は「・・・しかし,仮に,環境政策課の職員が本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの適用対象となるか否かについて,株式会社関電工と何らかの協議及び確認を行った事実があったとしても,その協議及び確認の態様は明らかではなく,直ちに環境政策課において主体的に本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの適用対象となるか否かを判断したとまで認めることはできないし,・・・」と判断していますが、控訴人は、関電工と被控訴人との間で取り交わされた何らかの協議及び確認の態様を明らかにすべく、原審裁判所に、事業者である関電工に対する調査嘱託申立をしました。しかし、原審裁判所はこれを不要だとして却下しました。
このことは、原審裁判所はそれなりの心証を確信して、控訴人の調査嘱託申立を却下したはずにちがいありません。そうであれば、「行政と事業者との間の虚偽及び確認の態様は明らかではなく」などと判断するはずがありません。
原審裁判所の心証に基づく訴訟指揮と、判決に至る判断過程と結果がチグハグです。控訴審であらためて、関電工への調査嘱託申立を受理していただきたいと思います。
4.これまでの時系列の出来事を鑑みると関電工が被控訴人と協議を始めた時期は平成27年1~3月だけではないこと
関電工が開催した地元説明会における情報や、関電工と地元住民との直接面談時における関電工の回答内容などから、これまでに判明して本件に係る出来事を時系列の順番に並べてみました。
平成26年7月 関電工が赤城試験センターを視察した。
群馬県の環境影響評価条例では環境アセスメントを実施しなければならず、条例だけがネックと判断、群馬県に環境アセスメント不要等の圧力をかけた可能性がある。その為、群馬県は、アンケート形式で全国の県・市の環境アセスメント条例状況を調べた。調査結果、規制緩和(おまけ等)の自治体が無かった。
全国の状況をアンケート形式で調査して一覧表まで作成しているのだから、見解なり、会議で議論した議事録などがあるはずだ。群馬県と同じ基準である埼玉、北九州市に再度確認のための問合せをした可能性もある。
平成26年8月頃 被控訴人は、根拠も無く、GOサインを出した可能性がある。この場合には、関連する文書が存在するはずである。
平成26年9月 関電工は赤城山に木質バイオマス発電所を建設すること決定した。
平成26年10月 関電工はボイラー設計開始、FIT申請。群馬県森林組合連合会を訪問。
平成27年1月 関電工は前橋市と調整を開始。環境アセスメントの適応有無について協議を開始。
平成27年3月 群馬県が口頭で、関電工に対して、条例の運用に基づき本件はアセス対象外と通告をした、と主張するが、これには確たる根拠がありません。
平成27年4月 群馬県は、設計排ガス量(4万2千)を関電工から報告を受けた。
平成28年3月31日 控訴人の代表をしている小川が直接事情を群馬県当局(環境政策課)に聴取する。
平成28年5月 控訴人代表の小川が情報公開請求したところ、公文書不存在決定通知が到来する。その後、控訴人が提起した裁判でも、一審で被告は「無い」と主張し、判決に至った。
平成28年7月頃 平成27年3月31日付けのおまけ文書を偽造した可能性が高いが、実際には公開されずに書庫へ格納した。
平成28年9月 控訴人の会員である羽鳥が情報公開請求し、おまけ文書が公開された。
以上の経過推移から鑑みれば、関電工は平成26年7月以降に被控訴人にアプローチをかけた可能性があります。そのため、被控訴人群馬県環境政策課は全国のバイオマス発電の現状を把握するため、主要な自治体にアンケートを送り、実態調査をしました。
このように控訴人は被控訴人に対して、被控訴人が関電工の事業を環境アセスメント条例適用外と判断した根拠になったさまざまな情報について、開示請求をしたわけですが、被控訴人はことごとく不存在決定にしました。しかし、実際には被控訴人が、数多くの情報を保有していたことは間違いない事実です。それにもかかわらず、原審裁判所は、ことごとくそうした情報は不存在だとする被控訴人の主張のみを採用しました。これは公正な裁判ではありません。
5.被控訴人代表小川の開示請求情報と会員羽鳥の開示請求情報は同一であること
原審裁判所は「なお、少なくとも被告の担当者が,主体的に本件発電施設の設置工事が条例アセスメントの対象となるか否かを判断すべき立場にないことは既に説示したとおりであり,羽鳥の開示請求により群馬県知事が開示した文書(甲10)は,事業者の判断の資料になるものということはできても,環境政策課の判断の資料となることはあり得ず,本件文書には該当しない。・・・」と判断し、小川と羽鳥の開示請求情報が異なるかのように歪めて判断しています。これでは、開示請求情報を特定する場合に、恣意的な判断を許すことになり、行政の今後の事務事業において、住民が公文書開示請求をする場合、行政側がいかようにも自らの不都合な情報を不存在として回答できる余地を担保してしまうことになり、ひらかれた行政の実現に対して重大な脅威となってしまいます。
控訴人代表小川の情報開示請求は、平成28年4月22日に行われ、同5月6日に被控訴人群馬県が不存在決定を通知しました。この時の請求内容は次のとおりでした。
関電工とトーセンが赤城山南麓の電中研の敷地内で計画中の「前橋バイオマス発電施設」に関する情報のうち、次のもの。
環境政策課が、上記施設について群馬県環境影響評価条例に定める毎時4万ノルマル㎥の排ガス量の観点から、対象除外と判断した根拠と経緯等を示す一切の情報(特に関電工から提出された排ガス量に関する情報、条例に基づく判断基準、その判断基準の根拠となった議論の経緯が分かる会議等、当該判断基準の運用を最終決定した協議の議事録、そして当該判断基準の運用を開始した年月日と県庁関係出先等への通知内容、さらに関電工との間でこの件について交わした全てのやり取りを示す情報を含む)。
他方、控訴人の会員である羽鳥の情報開示請求は、平成28年9月13日に行われ、同9月27日に公開決定されました。この時の請求内容は次のとおりでした。
環境影響評価条例施行規則の別表第1で、6工場又は事業場の新設または増設の事業の第一種事業の規模要件である琲ガス量4万立方メートル以上ですが、木質バイオマス発電に関しては、その排ガス量を2割削減して計算してもよいとされているようですが、技術的な根拠、決定までの議論経過や議事録、承認された会議等のすべての資料。
以上のとおり下線で示したように、約5カ月のインターバルを置いて、両者から出された情報開示請求は、いずれも木質バイオマス発電において排ガス量の観点からなんらかの線引きをしたことが分かる基準根拠を求めている点で、同一であることは明らかです。
控訴人の会員である羽鳥は、前橋バイオマス発電施設予定地のすぐ近くに居住する住民であり、市民運動の事務局長であり、開示請求に記した木質バイオマス発電として想定しているのは前橋バイオマス発電施設を念頭においていたことは容易に推測され得ます。
6.被控訴人代表小川の開示請求時点で不存在の公文書が、会員羽鳥の開示請求時点で存在したのであれば、当該文書はその期間内に新たに作成されたことを意味し、それは虚偽公文書の作成及び行使にあたること
控訴人が提起した本件訴訟に対して原審裁判所は、平成29年11月8日判決言渡で控訴人の請求を棄却しました。判決の趣旨は、①環境影響評価の実施は、事業者の判断次第、②被告(被控訴人)が条例の除外対象事例として内部で作成したルールは、事業者の判断用資料であり、被控訴人の判断資料ではない、というものでした。
しかし①については、群馬県環境影響評価条例の条文に、そのように判断できる文言は見当たりません。対象事業には実施義務があると明確に記載されています。
環境影響評価法は、環境アセスメントを行うことにより重大な環境影響を未然に防止し、持続可能な社会を構築していくためにとても重要であるとの考えのもとに作られた法律です。その中で、事業者は、事業の位置・規模等の検討段階において環境保全のために適切な配慮をすべき事項について検討を行い、国民等や地方公共団体等の意見を聴取するよう努め、その結果をまとめた「計画段階環境配慮書」を作成することになっています。さらに、条例で、新たに基準を設け、環境影響評価法を補完することができる仕組みになっています。
しかし、今回の一件では、第一種事業の場合は「環境影響調査を行わなければならない」というふうに法や条例でその実施の義務づけをしているのにかかわらず、被控訴人は、明らかにその実施を事業者である関電工が逃れられるよう、配慮を画策しているのです。
控訴人は、この特定事業者だけ、なぜ環境アセスメントを実施しなくて済むのか、その根拠を示す情報の公開を求めました。にもかかわらず、被控訴人は、なんとか不正な手続きの過程がばれないように、また、裁判を有利に進めるために、「アセスメントを実施するかしないかは事業者判断である」と論点をすり替えたのでした。また、原審裁判所も、何の疑いもなく被告の主張を丸飲みにし、あっさり裁判を打ち切ってしまいました。
また、②については、実際に羽鳥に対して開示された文書は、群馬県が判断して作成した文章そのものです。それを原審裁判所は「群馬県が判断するための資料ではない」と、どうして言えるのでしょうか。
さらに言えば、この公開された文書は、平成27年3月31日に被控訴人によって決裁されたことになっていますが、公文書としては成立していません。実施時期が未記入だからです。公文書として成立していない文書を根拠に、被控訴人は、事業者である関電工にこの事業がアセスメント対象になるかならないかを判断させたと主張しているのです。どうしてそんな理屈がまかりとおるのでしょうか。原審裁判所もそのよう無茶苦茶な被控訴人の主張を支持したのです。こんなことは絶対にあってはならないと思います。
また、平成28年10月に被控訴人から公開された電子データを解析すると、印刷日のみ平成27年3月31日と偽装工作(公文書偽造行為)されており、作成日は、平成28年10月27日となっています。
つまり、開示を決定した前日に、文書を作成し、印刷日を当時にさかのぼって偽造したことは明白なのです。
では、なぜ被控訴人はこのようなことを行わねばならなかったのでしょうか。それは被控訴人が、平成27年3月に関電工に対し、条例の特例措置の運用基準を新たに作成したので、それをもとに実質上、環境アセスメントを通じて住民の意見を聞く必要なく事業を進めてもよい、とお墨付きを与える判断をしたからに他なりません。
しかし、この条例というルールをないがしろにした被控訴人の判断の背景には、なんの根拠も無いわけですし、事業者である関電工の立場を忖度して、アセスメントの実施を積極的に免除し、開発を推進させようとする被控訴人の恣意的な意図が見え隠れています。
被控訴人は、本来、県民の命や健康を守ることが目的の大切な群馬県環境影響評価条例を、こうして捻じ曲げてしまったのです。この罪は誠に大きいものがあります。行政のこの不正は公開され、正されなくてはいけません。
では、この文書はいつ作られたものなのでしょうか。前述のとおり、平成28年7月頃と推定されます。なぜなら、時を同じくして、関電工らは被控訴人に対し、事業計画を提出しているからです。
これまでの出来事を時系列で考えるならば、すべてが、関電工らの発電計画を1日でも早く、また、県民が気付かずに寝ている状態のうちに、発電設備を稼働させてしまえというスケジュールのもとで動いていることがわかります。
なぜ、被控訴人は環境影響評価調査の実施を関電工にさせたくないのでしょうか。それは、放射能に汚染された間伐材等を長期にわたって大量に燃焼処理させるという、まさに除染事業を兼ねた一石二鳥の発電事業だからです。
したがって、長期的には放射能二次汚染の拡大及び拡散という問題を孕んでいるとともに、短期的に見れば、環境影響評価調査は一般的に2年から3年の調査期間を要すことになることから、被控訴人や事業者にとっては無駄な期間でしかないわけです。だから環境影響評価調査をできるだけショートカットすべく、行政である被控訴人と事業者である関電工が、県民の命を引換えにしようと画策していることがうかがえるのです。
さらに言えば、関電工の発電施設に使われる燃料となる木質チップを乾燥させるためにプレス機で脱水しますが、その汚染された廃液は、何の処理もされず、地下浸透させるというものです。被控訴人群馬県は、この県民の不安にも耳を傾けることなく、事業者に対応策さえ取らそうとしていないのです。
羽鳥の開示請求により初めて存在が確認されて公開された文書ですが、木質バイオマスの水分量に応じた水分量、2割を排ガス量から削減してもよいという特例です。しかし、被控訴人群馬県は、現在においてもなお、ホームページ上でも木質バイオマスの水分量の計算は、15%にしており、なぜ2割の削除という特例措置にしたのか、基準とした脱水前の木質チップの水分量の数値が明確に示されておらず、根拠となる説明が全く見当たりません。
見方を変えると、なぜ2割でなければ被控訴人群馬県や事業者にとって都合がつけられないのかと言えば、排ガス量毎時42000㎥といわれているものを、群馬県環境影響評価条例に規定する40000㎥以下にしたいがためだけであります。
被控訴人群馬県が主張する『判断は事業者』とするならば、こんな特定の事業者だけを救う運用は不要なはずです。裏を返せば、基準を超えているものは、実施が義務づけされていることを被控訴人自らが認めたことから、事後になって作成したとしか考えられません。だからこそ、この文書は部内で作成したことにしておく必要があったのです。しかし、そのまま公表されることなく書庫に保管されてしまいました。この運用を知っていたのは被控訴人群馬県と関電工のみであり、まさに、特定事業者との癒着であることは間違いありません。
そして、原審裁判所の判決は、それを支持するものであり、控訴人による文書嘱託申立や調査嘱託申立に対して、なりふり構わず却下したことが、原審裁判所の問答無用の判断を雄弁に物語っているのです。
以上
*****上申書*****PDF ⇒ 20171204_ombuzman_gunma_jousinsho.pdf
平成29年(レ)第 号 公文書不存在決定処分取消控訴事件
控 訴 人 市民オンブズマン群馬 代表 小川賢
被控訴人 群馬県
平成29年12月4日
東京高等裁判所 御中
上 申 書
私たちは、控訴人たる市民オンブズマン群馬の代表者が、現在もなお「小川賢」であることをここに証明いたします。
市民オンブズマン群馬
副 代 表 大河原 宗 平 印
事務局長 鈴 木 庸 印
なお、補足資料として次の文書を添付します。
補足資料1:2017年1月21日開催の市民オンブズマン群馬例会・総会議事録
補足資料2:市民オンブズマン群馬会則
以上
*****補足資料1*****
PDF ⇒ hosokusiryou_1_20170121_gijiroku.pdf
*****補足資料2*****
PDF ⇒ hosokusiryou_2_ombzman_gunma_kaisoku.pdf
**********
■今後、今回提出した書類に瑕疵がなければ、前橋地裁では、遅くとも12月15日までに控訴に係る書類を東京高裁に送致するものとみられます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます