■昨年3月から本格的に取り組んできた大同有毒スラグ問題も、いよいよ大詰めに差し掛かりつつあるようです。本日、毎日新聞朝刊の全国版社会面に「有害スラグ 強制捜査へ 大同特殊鋼 不正処理委託の疑い 群馬県警」の見出しが躍るスクープ記事が掲載されました。
**********毎日新聞朝刊2015年(平成27年)7月27日
http://mainichi.jp/select/news/20150727k0000m040117000c.html
有害スラグ 強制捜査へ
大同特殊鋼 不正処理委託の疑い 群馬県警
大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の群馬県渋川市の工場から出た鉄鋼スラグに環境基準を超える有害物質が含まれていた問題で、群馬県警が近く廃棄物処理法違反容疑で強制捜査に乗り出す方針を固めたことが捜査関係者への取材で分かった。同社を巡っては、高額な処分費を避けるため、事実上の引き取り料を支払ってスラグを建築資材として販売する「逆有償取引」も判明しており、県警は実態解明を進めるとみられる。
群馬県などによると、大同は2009~12年ごろ、渋川市の建設会社にスラグを販売する際、受取額以上の金額を「販売管理費」名目で支払っていた。環境基準を超えるフッ素を含んだ状態で出荷しており、さらに逆有償取引をしていることから、事実上の廃棄物処理にあたり、同法の規制対象となる。
スラグは鉄精製時に出る副産物で、さまざまな化学物質が残存することがある。大同は、建設会社が処理資格を持っていないとしりながら処理委託していた疑いがあり、県が近く同法違反容疑で刑事告訴、県警が家宅捜索に着手する見通し。
逆有償取引は、買い取る側が購入分だけ逆に収入が増えるため適正使途がないのに取引を続ける可能性があり、産廃が野積みされる温床と指摘される。スラグを産廃として処分すると費用がかさむため、県警は大同側が有害性を認識しながら取引を続けた可能性が高いとみて調べる。
この問題を巡っては同県の八ッ場ダム建設地から立ち退いた住民の移転代替地や、国道17号バイパスに大同の有害スラグが混じった建設資材が使われていたことが、毎日新聞の調べで判明。毒性の強い六価クロムも検出されている。【尾崎修二】
********
■本日の毎日新聞の報道のポイントを整理してみましょう。
ポイントその1
何よりもまず、大同特殊鋼および佐藤建設工業に群馬県警が強制捜査に乗り出す方針を固めたこと。
ポイントその2
その容疑は「廃棄物処理法違反」であること。その理由は、大同特殊鋼が佐藤建設工業に産業廃棄物を処理する資格がないと知りながら委託していること。また、大同・佐藤が有害性を認識しながら取引をつづけた可能性が高いことから、県が近く同法違反で刑事告訴、県警が家宅捜査に着する見通しであること。
ポイントその3
「逆有償取引」の実態解明を進める模様であること。
ポイントその4
「逆有償取引」は買い取るだけで収入が得られることから、産廃が野積みにされた事件が過去にあったこと。今回の事件ではそのことを大同が研究していて、野積されたのではなく、八ッ場ダム建設地の住民移転代替地の盛り土や、国道17号バイパスの盛り土に、大同の有害スラグが大量かつ広範囲に不法投棄されてしまったこと。
ポイントその5
環境基準を超えるフッ素や六価クロムを含んだ状態で、有害性を認識しながら、建設資材として出荷してきたことが強調されていること。
などが上げられます。
■こうして、ようやく群馬県が重い腰を上げる未透視であることがハッキリしてきました。今後の推移を注目したいと思います。
その上で当会としては、公共事業に大量に使われたスラグにより、無駄に費消された税金の行方についても、どの程度、捜査のメスが入れられるかどうか、注視していきたいと思います。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】
※毎日新聞がこれまで報じた本件関連の主な記事
**********毎日新聞 2015年04月25日 地方版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20150425ddlk10040208000c.html
有害物質:大同特殊鋼渋川工場、鉄鋼スラグ問題 国道17号4工事で、土壌から基準超フッ素 /群馬
大同特殊鋼渋川工場から出た鉄鋼スラグを巡る問題で、国土交通省関東地方整備局は24日、環境基準を超える有害物質を含むスラグとみられる砕石が使われていた工事のうち、国道17号関連の4工事の周辺土壌から、土壌汚染対策法の基準を上回るフッ素の溶出が確認されたと発表した。
国交省によると、これまでの調査で、国道17号や八ッ場ダム関連の計27工事で使われたスラグとみられる砕石から環境基準を超える有害物質を検出。今回の土壌分析では27工事のうち22工事について、土壌汚染対策法に基づき、材料直下の土壌の有害物質の含有量などを調査した。
その結果、国道17号関連の計4工事でフッ素の溶出量が基準の1・05〜7倍を記録。このうち2工事については土地所有者らと相談して今後撤去する。残りの2工事は対応を検討中という。
また砕石から基準を上回る有害物質が検出された八ッ場ダム関連の工事のうち計3工事では既に材料の撤去が完了しており、周辺土壌から基準を超えるフッ素は検出されなかったという。
県も24日、大同に出荷記録がある工事の追跡調査により県工事として新たに6工事でスラグを含む材料の使用が確認されたと発表した。
そのうちみなかみ町の県道1工事の材料から環境基準を超えるフッ素を検出。周辺土壌のフッ素は基準値内だった。【角田直哉】
**********毎日新聞 2014年12月30日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20141230ddm003040044000c.html
クローズアップ2014:広がる有害スラグ 根深いリサイクル偽装
↑鉄鋼スラグの取引構図。↑
八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の移転代替地の整備工事などで有害物質を含む建設資材「鉄鋼スラグ」が使われていた。国土交通省が26日に公表した分析結果では、スラグ使用の疑いがある国発注の56工事のうち27工事で環境基準を超える六価クロムなどが検出された。スラグを巡っては過去にもトラブルが繰り返されており、その背景に本来は産業廃棄物であるスラグの再利用を巡る「リサイクル偽装」とも言える構造的な問題が浮かぶ。【杉本修作】
◇「手数料」付け販売
問題となったスラグは、大手鉄鋼メーカー・大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から排出され、その大半を渋川市の建設会社が販売または自社の工事に利用したとみられる。スラグは本来、環境基準を下回っていることを前提に道路の路盤材などに許可を得て使用できる。だが今回は、群馬県内の公園や駐車場で使われたスラグから基準を超える有害物質が次々と検出され、本来使用が認められていない宅地にも使われていた。
スラグは鉄精製時に出る副産物で、石や砂利の形状をしている。さまざまな化学物質が残存することがあり、そのままでは廃棄物処理法上の産業廃棄物となる。一方で、建設資材などとして以前から再利用され、1991年施行の「再生資源の利用の促進に関する法律」(リサイクル法)でも指定対象となった。
大同の渋川工場も90年代半ばからスラグの製品化を始め、最盛期で年間2万トンを建設資材として出荷した。だが、毎日新聞が入手した2009年の売買契約書によると、大同側は渋川市の建設会社に1トン当たり100円で販売しながら「販売管理費」として1トン当たり250円以上(出荷量に応じて変動)を支払っていた。製品を売る側が販売額以上の費用を別の名目で支払うこうした取引は「逆有償取引」と呼ばれる。
スラグを廃棄物として処分するには遮水などの管理が必要で、1トン当たり2万〜3万円の費用がかかるとされるが、逆有償取引なら輸送費などを負担しても同数千円程度とみられ、格段に安価だ。一方、買い取る側は購入した分だけ逆に収入が増えるため、適正な使途のあてがないのに取引を続けることになりかねない。渋川市の建設会社OBは「大同から『スラグを取りに来い』と言われれば全て引き受けた。使い道がないから許可されていない工事にも使わざるを得なかった」と証言する。
逆有償取引は07年、山陽特殊製鋼(兵庫県姫路市)でも発覚し、リサイクル販売とされた約10万トンのスラグが淡路島で野積みのまま放置されていた。山陽は買い取り業者に運搬費など1億数千万円を支払ったとみられるが、仮に全量を廃棄物として処分していれば20億〜30億円の費用がかかった計算だ。
スラグは原材料の3〜4割、年間約4000万トン生成されているが、鉄鋼スラグ協会(東京都中央区)のまとめによると、99%が再利用され、廃棄物などの埋め立て処分はほとんどないとしている。再利用の約半分を占めるセメント製造は100年以上の実績がある一方、近年は路盤材などの「逆有償取引」が繰り返されている。ある製鉄関係者は「スラグを廃棄物処分すれば鉄鋼価格に反映され国際競争力は保てない」と打ち明け、「リサイクル偽装」の根深さを示唆した。
◇格安、行政にもメリット
有害スラグの拡散を生んだ別の理由として、建設業界からは行政の不作為を指摘する声も少なくない。
スラグを使った建設資材は元手があまりかからず、競合する別の資材と比べて価格が3〜4割ほど安いとされ、費用を抑えたい自治体にとっては「渡りに船」という。群馬県では10年6月に県内工事での使用が認められたのを機に、市町村や国の出先機関で利用が広まった。だが、行政による資材の検査は行われず、安全管理は業者任せだった。
スラグ以外の資材を扱う業者は「あれだけ安く売られたら勝負にならない。行政もそのことを知りながら(有害物質拡散の懸念を)放置していた」と憤る。
26日に国交省が公表した調査結果に対しては、八ッ場ダム移転代替地の住民に国への不信感ものぞく。今回調査された無許可の56工事の大半は国の管理地で、住民に分譲された土地については「調査に地権者の同意が必要」だとして、一部しか行われなかった。
ある住民は毎日新聞が八ッ場ダムの問題を報じた8月以降、国交省八ッ場ダム工事事務所の担当者が住民説明会で「住宅地にスラグは使われていない」と強調していたと証言。宅地の下にスラグが使用されていれば土壌や住民の健康に影響を及ぼす可能性もある上、撤去も困難だ。26日の国交省関東地方整備局による記者会見でも担当者は「使われたのは家の下ではなく敷地内。庭の一部」と強調し、影響を最小限に抑えたいとの思惑が垣間見える。長野原町の70代男性は「国が調査結果を公表しても、それだけでスラグの使用がとどまるとは思えない。調査で幕引きしようとしている」と危機感を募らせる。
一方、スラグを取り扱った渋川市の建設会社は、群馬県以外に長野県などで工事を受注しており、そうした工事に有害スラグが利用された可能性も否定できない。環境問題に詳しい粕谷志郎・岐阜大名誉教授(環境生態学)は「行政は安全管理を業者任せにせず、汚染防止に主体的に取り組むべきで、スラグについても問題がある以上、使用されている資材を徹底して調査すべきだ」と話している。
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◇鉄鋼スラグを巡る主な事件やトラブル
2005年
7月 「神鋼スラグ製品」(神戸市)が親会社の神戸製鋼からスラグを買い取った価格が通常より高く、親会社に所得を移転したとして大阪国税局が所得隠しと認定していたことが発覚
10月 JFEスチール東日本製鉄所千葉地区(千葉市)で、スラグの堆積(たいせき)場から汚染水が海に流出しながら水質測定データを改ざんしたとして社員3人を水質汚濁防止法違反で略式起訴
2007年
8月 山陽特殊製鋼(兵庫県姫路市)がスラグをリサイクル販売した形を取りながら引き取った業者に販売額以上の運搬費などを支払う「逆有償取引」を行っていたことが判明。スラグは野積みされ健康被害を訴える苦情が相次ぎ、山陽が自社で撤去
2010年
2月 新日鉄名古屋製鉄所(愛知県東海市)でスラグを積んだ敷地内から高アルカリ水が名古屋港に流出していたことが発覚
2014年
1月 大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)でスラグの逆有償取引が判明。群馬県が同社を立ち入り検査
8月 八ッ場ダム(同県長野原町)の移転代替地でも大同渋川工場から出たとみられる有害スラグが使用されたことを毎日新聞が報じる
10月 名古屋市上下水道局が発注した水道管の取り換え工事で特定の数社が請け負った約220カ所で道路が盛り上がるなどのトラブルが生じていたことが判明。埋め戻し材にスラグが使われ、水を吸って膨らんだためとみられる
**********毎日新聞 2014年09月20日 地方版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20140920ddlk10040140000c.html
有害物質:鉄鋼スラグ問題 県「深刻」と答弁 /群馬
大同特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグに有害物質が含まれていた問題で、県の青木勝・環境森林部長は19日の県議会一般質問で「有害物質が出たことを深刻に受け止めている」と答弁した。大手治之議員(自民)の質問に答えた。
これまでに大同製のスラグが使用された渋川市内の国道や市道など計29カ所で土壌から環境基準を超える六価クロムやフッ素を検出。県は1989年から渋川で井戸水を調査しているが、有害物質による地下水汚染は確認されていないという。青木部長は「廃棄物処理法に基づいて調査を進めている。一日も早く問題の全容を明らかにしたい」と述べた。【角田直哉】
**********毎日新聞 2014年01月28日 06時40分
http://mainichi.jp/feature/news/20140128k0000m040152000c.html
廃材違法取引疑惑:「スラグなぜむき出しに」園児の親怒り
鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から出荷された鉄鋼スラグ。同社のスラグからは環境基準を超えるフッ素や六価クロムが検出されており、汚染への不安や戸惑いが住民の間に広がっている。
渋川市の調査では、大同のスラグを使って1996〜2009年12月に整備された市内11カ所の施設で、土壌汚染対策法が定める環境基準以上のフッ素や六価クロムが検出された。フッ素の環境基準は、検査対象を水に入れて溶け出す濃度が1リットル当たり0.8ミリグラムだが、最もフッ素濃度の高い保育所駐車場で約8倍の同6.6ミリグラムを検出。六価クロムは、遊園地の駐車場で基準(同0.05ミリグラム)の22倍の同1.1ミリグラムだった。いずれもスラグは手で触れられる状態にあった。
このうちの保育所は2009年12月ごろ、駐車場に砂利として同社のスラグを敷いた。長男を通わせる同市の30代女性は「子どもは砂利に直接触れるし、手をなめることだってある。なんでそんなものがむき出しになっていたのか」と憤った。
また、前橋市で現在も進められる国道17号の舗装工事の一部で、大同のスラグがアスファルトの下に敷く「路盤材」として使われている。
大同によると、09年7月以降、大同や子会社が直接、道路や施設の管理者に販売したことはなく、砕石会社や建設会社を通しているという。【杉本修作、吉田卓矢、角田直哉】
◇六価クロム
フッ素は、継続的に体内に取り込むと骨折リスクが高まるとの研究がある。六価クロムは毒性があり、吸入すると鼻や喉に炎症を起こしたり、肺がんを引き起こしたりするとされる。
**********毎日新聞 2014年01月28日 06時30分
http://mainichi.jp/feature/news/20140128k0000m040153000c.html
大同特殊鋼:鉄鋼廃材、違法取引か 群馬県が立ち入り検査
東証1部上場の鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)が、渋川工場(群馬県渋川市)から出た有害なフッ素や六価クロムを含む「鉄鋼スラグ」を再生資材として業者に販売する際、販売額より高い費用を払っていたことが分かった。高額な処分費用を免れるため、「引き取り料」として支払っていたとみられる。こうした取引は「逆有償取引」と言われ、廃棄物処理法の適用を受ける。群馬県は27日、今回の取引について同法違反の疑いがあるとして同社を立ち入り検査した。
同社のスラグを砂利として使った渋川市内11カ所からは環境基準を超えるフッ素などが検出されている。
毎日新聞が入手した契約書によると、大同は2009年7月、大同の子会社を通じて同市内の道路用砕石会社にスラグを1トン100円で販売する一方、砕石会社に対し「販売管理費」として1トン250円以上(出荷量に応じて変動)を支払う契約を結んだ。
販売管理費は12年6月の契約更新でなくなったが、代わりに、砕石会社がスラグ入り道路資材を建設会社に販売する際、工事現場までの輸送費を大同が肩代わりするほか、資材の在庫置き場の賃料や事務手数料などとしてスラグ代金(1トン500円)より高い費用を大同が負担するようになった。同工場では年間約2万トンのスラグが生じる。
大同は契約書の内容を認め、「販売代金より製造、運搬のコストが高くなる場合がある」としている。砕石会社の社長は「うちは大同の指示で動いているだけ。リスクを抱えている以上、大同の負担は当然のこと」と話した。【杉本修作、吉田卓矢】
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**********毎日新聞朝刊2015年(平成27年)7月27日
http://mainichi.jp/select/news/20150727k0000m040117000c.html
有害スラグ 強制捜査へ
大同特殊鋼 不正処理委託の疑い 群馬県警
大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の群馬県渋川市の工場から出た鉄鋼スラグに環境基準を超える有害物質が含まれていた問題で、群馬県警が近く廃棄物処理法違反容疑で強制捜査に乗り出す方針を固めたことが捜査関係者への取材で分かった。同社を巡っては、高額な処分費を避けるため、事実上の引き取り料を支払ってスラグを建築資材として販売する「逆有償取引」も判明しており、県警は実態解明を進めるとみられる。
群馬県などによると、大同は2009~12年ごろ、渋川市の建設会社にスラグを販売する際、受取額以上の金額を「販売管理費」名目で支払っていた。環境基準を超えるフッ素を含んだ状態で出荷しており、さらに逆有償取引をしていることから、事実上の廃棄物処理にあたり、同法の規制対象となる。
スラグは鉄精製時に出る副産物で、さまざまな化学物質が残存することがある。大同は、建設会社が処理資格を持っていないとしりながら処理委託していた疑いがあり、県が近く同法違反容疑で刑事告訴、県警が家宅捜索に着手する見通し。
逆有償取引は、買い取る側が購入分だけ逆に収入が増えるため適正使途がないのに取引を続ける可能性があり、産廃が野積みされる温床と指摘される。スラグを産廃として処分すると費用がかさむため、県警は大同側が有害性を認識しながら取引を続けた可能性が高いとみて調べる。
この問題を巡っては同県の八ッ場ダム建設地から立ち退いた住民の移転代替地や、国道17号バイパスに大同の有害スラグが混じった建設資材が使われていたことが、毎日新聞の調べで判明。毒性の強い六価クロムも検出されている。【尾崎修二】
********
■本日の毎日新聞の報道のポイントを整理してみましょう。
ポイントその1
何よりもまず、大同特殊鋼および佐藤建設工業に群馬県警が強制捜査に乗り出す方針を固めたこと。
ポイントその2
その容疑は「廃棄物処理法違反」であること。その理由は、大同特殊鋼が佐藤建設工業に産業廃棄物を処理する資格がないと知りながら委託していること。また、大同・佐藤が有害性を認識しながら取引をつづけた可能性が高いことから、県が近く同法違反で刑事告訴、県警が家宅捜査に着する見通しであること。
ポイントその3
「逆有償取引」の実態解明を進める模様であること。
ポイントその4
「逆有償取引」は買い取るだけで収入が得られることから、産廃が野積みにされた事件が過去にあったこと。今回の事件ではそのことを大同が研究していて、野積されたのではなく、八ッ場ダム建設地の住民移転代替地の盛り土や、国道17号バイパスの盛り土に、大同の有害スラグが大量かつ広範囲に不法投棄されてしまったこと。
ポイントその5
環境基準を超えるフッ素や六価クロムを含んだ状態で、有害性を認識しながら、建設資材として出荷してきたことが強調されていること。
などが上げられます。
■こうして、ようやく群馬県が重い腰を上げる未透視であることがハッキリしてきました。今後の推移を注目したいと思います。
その上で当会としては、公共事業に大量に使われたスラグにより、無駄に費消された税金の行方についても、どの程度、捜査のメスが入れられるかどうか、注視していきたいと思います。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】
※毎日新聞がこれまで報じた本件関連の主な記事
**********毎日新聞 2015年04月25日 地方版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20150425ddlk10040208000c.html
有害物質:大同特殊鋼渋川工場、鉄鋼スラグ問題 国道17号4工事で、土壌から基準超フッ素 /群馬
大同特殊鋼渋川工場から出た鉄鋼スラグを巡る問題で、国土交通省関東地方整備局は24日、環境基準を超える有害物質を含むスラグとみられる砕石が使われていた工事のうち、国道17号関連の4工事の周辺土壌から、土壌汚染対策法の基準を上回るフッ素の溶出が確認されたと発表した。
国交省によると、これまでの調査で、国道17号や八ッ場ダム関連の計27工事で使われたスラグとみられる砕石から環境基準を超える有害物質を検出。今回の土壌分析では27工事のうち22工事について、土壌汚染対策法に基づき、材料直下の土壌の有害物質の含有量などを調査した。
その結果、国道17号関連の計4工事でフッ素の溶出量が基準の1・05〜7倍を記録。このうち2工事については土地所有者らと相談して今後撤去する。残りの2工事は対応を検討中という。
また砕石から基準を上回る有害物質が検出された八ッ場ダム関連の工事のうち計3工事では既に材料の撤去が完了しており、周辺土壌から基準を超えるフッ素は検出されなかったという。
県も24日、大同に出荷記録がある工事の追跡調査により県工事として新たに6工事でスラグを含む材料の使用が確認されたと発表した。
そのうちみなかみ町の県道1工事の材料から環境基準を超えるフッ素を検出。周辺土壌のフッ素は基準値内だった。【角田直哉】
**********毎日新聞 2014年12月30日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20141230ddm003040044000c.html
クローズアップ2014:広がる有害スラグ 根深いリサイクル偽装
↑鉄鋼スラグの取引構図。↑
八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の移転代替地の整備工事などで有害物質を含む建設資材「鉄鋼スラグ」が使われていた。国土交通省が26日に公表した分析結果では、スラグ使用の疑いがある国発注の56工事のうち27工事で環境基準を超える六価クロムなどが検出された。スラグを巡っては過去にもトラブルが繰り返されており、その背景に本来は産業廃棄物であるスラグの再利用を巡る「リサイクル偽装」とも言える構造的な問題が浮かぶ。【杉本修作】
◇「手数料」付け販売
問題となったスラグは、大手鉄鋼メーカー・大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から排出され、その大半を渋川市の建設会社が販売または自社の工事に利用したとみられる。スラグは本来、環境基準を下回っていることを前提に道路の路盤材などに許可を得て使用できる。だが今回は、群馬県内の公園や駐車場で使われたスラグから基準を超える有害物質が次々と検出され、本来使用が認められていない宅地にも使われていた。
スラグは鉄精製時に出る副産物で、石や砂利の形状をしている。さまざまな化学物質が残存することがあり、そのままでは廃棄物処理法上の産業廃棄物となる。一方で、建設資材などとして以前から再利用され、1991年施行の「再生資源の利用の促進に関する法律」(リサイクル法)でも指定対象となった。
大同の渋川工場も90年代半ばからスラグの製品化を始め、最盛期で年間2万トンを建設資材として出荷した。だが、毎日新聞が入手した2009年の売買契約書によると、大同側は渋川市の建設会社に1トン当たり100円で販売しながら「販売管理費」として1トン当たり250円以上(出荷量に応じて変動)を支払っていた。製品を売る側が販売額以上の費用を別の名目で支払うこうした取引は「逆有償取引」と呼ばれる。
スラグを廃棄物として処分するには遮水などの管理が必要で、1トン当たり2万〜3万円の費用がかかるとされるが、逆有償取引なら輸送費などを負担しても同数千円程度とみられ、格段に安価だ。一方、買い取る側は購入した分だけ逆に収入が増えるため、適正な使途のあてがないのに取引を続けることになりかねない。渋川市の建設会社OBは「大同から『スラグを取りに来い』と言われれば全て引き受けた。使い道がないから許可されていない工事にも使わざるを得なかった」と証言する。
逆有償取引は07年、山陽特殊製鋼(兵庫県姫路市)でも発覚し、リサイクル販売とされた約10万トンのスラグが淡路島で野積みのまま放置されていた。山陽は買い取り業者に運搬費など1億数千万円を支払ったとみられるが、仮に全量を廃棄物として処分していれば20億〜30億円の費用がかかった計算だ。
スラグは原材料の3〜4割、年間約4000万トン生成されているが、鉄鋼スラグ協会(東京都中央区)のまとめによると、99%が再利用され、廃棄物などの埋め立て処分はほとんどないとしている。再利用の約半分を占めるセメント製造は100年以上の実績がある一方、近年は路盤材などの「逆有償取引」が繰り返されている。ある製鉄関係者は「スラグを廃棄物処分すれば鉄鋼価格に反映され国際競争力は保てない」と打ち明け、「リサイクル偽装」の根深さを示唆した。
◇格安、行政にもメリット
有害スラグの拡散を生んだ別の理由として、建設業界からは行政の不作為を指摘する声も少なくない。
スラグを使った建設資材は元手があまりかからず、競合する別の資材と比べて価格が3〜4割ほど安いとされ、費用を抑えたい自治体にとっては「渡りに船」という。群馬県では10年6月に県内工事での使用が認められたのを機に、市町村や国の出先機関で利用が広まった。だが、行政による資材の検査は行われず、安全管理は業者任せだった。
スラグ以外の資材を扱う業者は「あれだけ安く売られたら勝負にならない。行政もそのことを知りながら(有害物質拡散の懸念を)放置していた」と憤る。
26日に国交省が公表した調査結果に対しては、八ッ場ダム移転代替地の住民に国への不信感ものぞく。今回調査された無許可の56工事の大半は国の管理地で、住民に分譲された土地については「調査に地権者の同意が必要」だとして、一部しか行われなかった。
ある住民は毎日新聞が八ッ場ダムの問題を報じた8月以降、国交省八ッ場ダム工事事務所の担当者が住民説明会で「住宅地にスラグは使われていない」と強調していたと証言。宅地の下にスラグが使用されていれば土壌や住民の健康に影響を及ぼす可能性もある上、撤去も困難だ。26日の国交省関東地方整備局による記者会見でも担当者は「使われたのは家の下ではなく敷地内。庭の一部」と強調し、影響を最小限に抑えたいとの思惑が垣間見える。長野原町の70代男性は「国が調査結果を公表しても、それだけでスラグの使用がとどまるとは思えない。調査で幕引きしようとしている」と危機感を募らせる。
一方、スラグを取り扱った渋川市の建設会社は、群馬県以外に長野県などで工事を受注しており、そうした工事に有害スラグが利用された可能性も否定できない。環境問題に詳しい粕谷志郎・岐阜大名誉教授(環境生態学)は「行政は安全管理を業者任せにせず、汚染防止に主体的に取り組むべきで、スラグについても問題がある以上、使用されている資材を徹底して調査すべきだ」と話している。
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◇鉄鋼スラグを巡る主な事件やトラブル
2005年
7月 「神鋼スラグ製品」(神戸市)が親会社の神戸製鋼からスラグを買い取った価格が通常より高く、親会社に所得を移転したとして大阪国税局が所得隠しと認定していたことが発覚
10月 JFEスチール東日本製鉄所千葉地区(千葉市)で、スラグの堆積(たいせき)場から汚染水が海に流出しながら水質測定データを改ざんしたとして社員3人を水質汚濁防止法違反で略式起訴
2007年
8月 山陽特殊製鋼(兵庫県姫路市)がスラグをリサイクル販売した形を取りながら引き取った業者に販売額以上の運搬費などを支払う「逆有償取引」を行っていたことが判明。スラグは野積みされ健康被害を訴える苦情が相次ぎ、山陽が自社で撤去
2010年
2月 新日鉄名古屋製鉄所(愛知県東海市)でスラグを積んだ敷地内から高アルカリ水が名古屋港に流出していたことが発覚
2014年
1月 大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)でスラグの逆有償取引が判明。群馬県が同社を立ち入り検査
8月 八ッ場ダム(同県長野原町)の移転代替地でも大同渋川工場から出たとみられる有害スラグが使用されたことを毎日新聞が報じる
10月 名古屋市上下水道局が発注した水道管の取り換え工事で特定の数社が請け負った約220カ所で道路が盛り上がるなどのトラブルが生じていたことが判明。埋め戻し材にスラグが使われ、水を吸って膨らんだためとみられる
**********毎日新聞 2014年09月20日 地方版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20140920ddlk10040140000c.html
有害物質:鉄鋼スラグ問題 県「深刻」と答弁 /群馬
大同特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグに有害物質が含まれていた問題で、県の青木勝・環境森林部長は19日の県議会一般質問で「有害物質が出たことを深刻に受け止めている」と答弁した。大手治之議員(自民)の質問に答えた。
これまでに大同製のスラグが使用された渋川市内の国道や市道など計29カ所で土壌から環境基準を超える六価クロムやフッ素を検出。県は1989年から渋川で井戸水を調査しているが、有害物質による地下水汚染は確認されていないという。青木部長は「廃棄物処理法に基づいて調査を進めている。一日も早く問題の全容を明らかにしたい」と述べた。【角田直哉】
**********毎日新聞 2014年01月28日 06時40分
http://mainichi.jp/feature/news/20140128k0000m040152000c.html
廃材違法取引疑惑:「スラグなぜむき出しに」園児の親怒り
鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から出荷された鉄鋼スラグ。同社のスラグからは環境基準を超えるフッ素や六価クロムが検出されており、汚染への不安や戸惑いが住民の間に広がっている。
渋川市の調査では、大同のスラグを使って1996〜2009年12月に整備された市内11カ所の施設で、土壌汚染対策法が定める環境基準以上のフッ素や六価クロムが検出された。フッ素の環境基準は、検査対象を水に入れて溶け出す濃度が1リットル当たり0.8ミリグラムだが、最もフッ素濃度の高い保育所駐車場で約8倍の同6.6ミリグラムを検出。六価クロムは、遊園地の駐車場で基準(同0.05ミリグラム)の22倍の同1.1ミリグラムだった。いずれもスラグは手で触れられる状態にあった。
このうちの保育所は2009年12月ごろ、駐車場に砂利として同社のスラグを敷いた。長男を通わせる同市の30代女性は「子どもは砂利に直接触れるし、手をなめることだってある。なんでそんなものがむき出しになっていたのか」と憤った。
また、前橋市で現在も進められる国道17号の舗装工事の一部で、大同のスラグがアスファルトの下に敷く「路盤材」として使われている。
大同によると、09年7月以降、大同や子会社が直接、道路や施設の管理者に販売したことはなく、砕石会社や建設会社を通しているという。【杉本修作、吉田卓矢、角田直哉】
◇六価クロム
フッ素は、継続的に体内に取り込むと骨折リスクが高まるとの研究がある。六価クロムは毒性があり、吸入すると鼻や喉に炎症を起こしたり、肺がんを引き起こしたりするとされる。
**********毎日新聞 2014年01月28日 06時30分
http://mainichi.jp/feature/news/20140128k0000m040153000c.html
大同特殊鋼:鉄鋼廃材、違法取引か 群馬県が立ち入り検査
東証1部上場の鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)が、渋川工場(群馬県渋川市)から出た有害なフッ素や六価クロムを含む「鉄鋼スラグ」を再生資材として業者に販売する際、販売額より高い費用を払っていたことが分かった。高額な処分費用を免れるため、「引き取り料」として支払っていたとみられる。こうした取引は「逆有償取引」と言われ、廃棄物処理法の適用を受ける。群馬県は27日、今回の取引について同法違反の疑いがあるとして同社を立ち入り検査した。
同社のスラグを砂利として使った渋川市内11カ所からは環境基準を超えるフッ素などが検出されている。
毎日新聞が入手した契約書によると、大同は2009年7月、大同の子会社を通じて同市内の道路用砕石会社にスラグを1トン100円で販売する一方、砕石会社に対し「販売管理費」として1トン250円以上(出荷量に応じて変動)を支払う契約を結んだ。
販売管理費は12年6月の契約更新でなくなったが、代わりに、砕石会社がスラグ入り道路資材を建設会社に販売する際、工事現場までの輸送費を大同が肩代わりするほか、資材の在庫置き場の賃料や事務手数料などとしてスラグ代金(1トン500円)より高い費用を大同が負担するようになった。同工場では年間約2万トンのスラグが生じる。
大同は契約書の内容を認め、「販売代金より製造、運搬のコストが高くなる場合がある」としている。砕石会社の社長は「うちは大同の指示で動いているだけ。リスクを抱えている以上、大同の負担は当然のこと」と話した。【杉本修作、吉田卓矢】
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