■当会は現在、大同特殊鋼渋川工場から排出され、群馬県内各地にばらまかれた有害スラグの不法投棄問題に取り組んでいます。同工場では、年間2万8千トン規模の鉄鋼スラグが製造過程で排出されていますが、県内ではもっと大量にスラグを排出している企業があります。それが、安中カドミウム公害で名をはせた東邦亜鉛安中製錬所です。同製錬所には年間25万トンの亜鉛精鉱が海外から運び込まれて、最大14万トンの亜鉛製品を生産していますが、同時に年間5万トンを超えるスラグも副生品として排出されています。
↑「安中公害 農作物に大被害」と報じた1970(昭和45)年7月3日付上毛新聞↑
https://www.jomo-news.co.jp/playback/data/07/0703/archive0703.pdf
この非鉄スラグ(鉄鋼スラグと対比させてこう呼ばれます)には、鉄成分を多く含み、以前は高炉セメントの一種の鉄ポルトランドセメントの増量材に好んで使われていました。このセメントは、混合セメントとも呼ばれており、ポルトランドセメントのクリンカと石膏のほかに、高炉スラグを混合して作られます。
ところが高炉スラグとことなり、東邦亜鉛の非鉄スラグには、中身に鉄以外の鉛や亜鉛、カドミウム、ヒ素、水銀なども含んでおり、近年はセメント会社が環境配慮の観点から、さほど引き取らなくなりました。
代わって、東邦亜鉛があらたに見つけた用途が、遮音材としてゴムに非鉄スラグの粉末を練りこませることでした。鉄に加えて鉛を含む安中製錬所の非鉄スラグは、比重が重く、遮音効果アップに好都合であり、しかも廃棄物ですから価格の安さもベラボーなので、遮音材メーカーとの取引が続いています。
※参考URL:遮音材メーカー ⇒ http://www.ishii-shoji.co.jp/products/board_process.html
このほかには、サンドブラスト(錆落とし作業)の研磨剤としての用途がありますが、安中製錬所では実績は殆どありません。そのかわりに数年に一度の港湾埋立てに土砂代替として販売し、在庫調整しています。
また、非鉄スラグは、土建用資材としての骨材の用途は大きいのですが、要求特性を完全には満たせていないのが現状です。
■東邦亜鉛では、安中製錬所から排出される大量のスラグを「K砕」と呼んでいます。これはクリンカーのローマ字の頭文字「K」から採ったもののようですが、鋼滓の「滓」ではなく、なぜか破砕とか砕石の「砕」の字を使っています。
当会は2017年3月に、たまたま「K砕」というキーワードでネット検索していたところ、思わぬホームページをヒットしました。
それは群馬県高崎市箕郷町矢原987にある「株式会社岡田工務店」という土木会社のHPでした。
http://okada.gunma.jp/
なお、後で知ったのですが、「有限会社岡田興業」という建築資材販売業者が群馬県高崎市箕郷町松之沢32-1にありますが、これは上記の岡田工務店と同じ系列で、兄弟で経営しているようです。
■ところで、この岡田工務店・岡田興業のHPで「K砕」というキーワードがヒットした理由は、当時の同社のHPを見るとわかります。
*****2017年4月13日以前の岡田工務店のHPより*****
再生粒度調整材詳細
再生粒度調整材とは、K砕(スラグ)と再生サンドベース(化粧ブロックの破砕材)を混合したものです。これを敷均して締め固めることで、防草対策、地面のぬかるみ防止になります。施工も容易で防草シートやアスファルト舗装よりも低価格であるため、広大な敷地から小さな駐車場まで施工かのうです。
K砕(スラグ)の安全性
弊社で取り扱っているK砕(スラグ)は、各種試験を行い、施工性・安全性について確認を行った上で使用しております。
製造工程
材料・施工例
**********
このように、「再生粒度調整材」と称して、東邦亜鉛安中製錬所から排出されたK砕(スラグ)と再生サンドベース(化粧ブロックの破砕材)を混合したものを販売していたことがわかります。そして聡明な読者の皆さんはこれが大同有毒スラグを砕石と混合して「混合再生砕石」と名前を付けて、大量に捌いていた事件のことを連想されたに違いありません。
正にそうなのです。岡田工務店・岡田興業は、大同スラグを捌いた佐藤建設工業と同様に、スラグ排出源の東邦亜鉛と取引があったのです。
実際、上記の写真を見ると、岡田工務店・岡田興産の自社ソーラー発電施設の造成に大量に非鉄スラグ「K砕」が使用されていることや、東邦亜鉛安中製錬所が、造成地から流れ出している水のサンプリングと分析を岡田工務店らのために行っていることがわかります。
このため、当会は2017年4月8日に開催された東邦亜鉛安中製錬所の第26回工場視察会の席上でK砕について東邦亜鉛に初めて質問しました。
〇2017年4月18日:東邦亜鉛安中製錬所で4月8日に開催された第26回工場視察会で分かった驚くべき新事実↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2213.html#readmore
ところが、安中製錬所は、非鉄スラグのことは東京本社のリサイクル事業部の責任者がすべて把握しているから、そちらにコンタクトするように、言いました。
■そしてこの頃、当会に、東邦亜鉛の非鉄スラグ「K砕」と称する物質が、公共道路工事や民間の庭先に使用されているという驚くべき情報の提供がありました。そのため、当会では当該現場に赴き、非鉄スラグとおぼしき物質を採取するとともに、同社の東京本社を訪れて次の内容の公開質問状を提出するとともに、非鉄スラグと思しき物質を同社責任者に見せて、しかるべき見解を求めました。
*****東邦亜鉛本社あて公開質問状*****PDF ⇒ mj170418.pdf
2017年4月19日
〒100-8207
東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 鉄鋼ビル
東邦亜鉛株式会社
代表取締役社長 手島 達也 様
〒379-0114
群馬県安中市野殿980番地
小川 賢
電話090-5302-8312
公 開 質 問 状
前略 御社安中製錬所の周囲の郊外特別対策事業につきましては、平素より、ご理解とご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、4月8日に開催された第26回安中製錬所工場視察会における質疑応答の際にもご質問させていただきました貴社同製錬所が排出するスラグが、出荷先の岡田興業・岡田工務店を通じて、県内の道路の公共工事に盛り土として使われている可能性について、指摘する声が寄せられています。
つきましては、次の事項について、貴社のご見解をご教示賜りたく、よろしくお願いいたします。なお、回答期限としては、5月15日(月)までに文書でお願いできれば幸いに存じます。
質問1:同封のスラグ様のサンプルは、県内の道路工事の現場で採取したものです。これらが貴社安中製錬所から排出したものかどうかを鑑定していただけますか?
鑑定していただける場合、鑑定結果を文書でいただけますか?
鑑定していただけない場合、その理由を教えてくださいますか?
質問2:貴社がK滓とよぶスラグについて、出荷先別に、なるべく付加価値を付けるために性状を変えているとの説明が工場視察会及びその後の協議の場で明らかにされました。ついては、それぞれの出荷先別のK滓について、それぞれ1キロずつ見本をいただけますか?
質問3:また、実際にK滓置き場で、本物のスラグを検分し、自ら採取したいのですが、工場内への立ち入りを含め、そうした作業についてご許可いただけますか?
もしご許可いただける場合は、貴社の都合のよい日時を複数ご連絡いただけますか。
もしご許可いただけない場合、その理由を教えてくださいますか。
質問4:岡田興業・岡田工務店に対しては1年ほど前まで、毎年排出される年間約5万トンの2割を占める量のスラグを1年前から出荷停止とするとともに、一切の取引を行っていないとのことですが、これまで岡田興業・岡田工務店に対して出荷したスラグの量を年毎に教えてくださいますか?
初出荷年月日 ____年__月__日
2008年以前 総計________トン(又は㎥)
2009年 __________トン(又は㎥)
2010年 __________トン(又は㎥)
2011年 __________トン(又は㎥)
2012年 __________トン(又は㎥)
2013年 __________トン(又は㎥)
2014年 __________トン(又は㎥)
2015年 __________トン(又は㎥)
2016年 __________トン(又は㎥)
2017年元旦~現在まで _________トン(又は㎥)
質問5:貴社が岡田興業・岡田工務店に対して出荷をしていた時の、置き場渡しのトン当たり(又は㎥当たり)の価格は、1000円程度とのご説明でしたが、間違いありませんか? ちなみに、トンあたり1000円では、比重が重いため、スラグは立方メートルあたり2000円になってしまいます。
かつて、県内の渋川市にある大同特殊鋼渋川工場が、鉄鋼スラグを直接、役場や顧客に販売した時は、トンあたり100円だったと言われています。貴社の場合は、出荷先がダンプでやってきて、置き場渡しで、トン当たり1000円という話なので、なぜ高額で販売できるのか大変関心があります。
草々
**********
■すると回答期限日から遅れること4日で、なぜか東京本社からではなく、東邦亜鉛安中製錬所から回答が到来しました。
*****東邦亜鉛からの回答書*****JPEG ⇒ m.jpg
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2017年5月19日
第26回 工場視察会 オブザーバー
〒379-0114
群馬県安中市野殿980番地
小川 賢 様
〒379-0197
群馬県安中市中宿1443番地
東邦亜鉛株式会社
安中製錬所 環境管理室
公開質問状に関する回答について
拝啓 平素は弊社安中製錬所の地域活動に於いて、ご尽力頂きありがとうございます。また、弊社安中製錬所の事業活動に於いてもご理解、ご協力賜り厚く御礼を申し上げます。
さて、2017年4月8日に開催し、安中緑の大地を守る会様にご参加いただきました「第26回 工場視察会」におきましてご質問頂きました事項と同様に2017年4月19日付け「公開質問状」でお問い合わせいただきました内容に関しまして、以下の通りご回答申し上げます。ご理解賜ります様お願い申し上げます。
敬具
ご回答につきましては下記の通り2017年4月19日付「公開質問状」のご質問内容を「ゴシック」で記載させていただき、そのご質問毎に後述させていただく形でご回答させていただいております。
ご質問1:同封のスラグ様のサンプルは、県内の道路工事の現場で採取したものです。これらが貴社安中製錬所から排出したものかどうかを鑑定していただけますか?
鑑定していただける場合、鑑定結果を文書でいただけますか?
鑑定していただけない場合、その理由を教えてくださいますか?
ご回答1:大変申し訳ございませんが、鑑定することは難しいと考えております。
弊社は分析機関/会社ではありませんので、鑑定保証を行う権限がありません。誠に申し訳ございませんが、正式に鑑定を依頼したいご意向であれば、専門分析機関への委託をお願い申し上げます。
ご確認させて頂きますが、「県内の道路工事の現場で採取」とありますが、所有者及び管理者へのご許可を頂いた上で採取されたのでしょうか。
また反対にご提案ですが、前述の通り鑑定は出来ませんが、所有者及び管理者からのご依頼であれば、前述の通り鑑定は出来ませんが、所有者及び管理者からのご依頼であれば、条件が整えばサンプルがどういった成分のものであるか、分析のご協力は可能かと考えますのでご検討されてはいかがでしょうか。
ご質問2:貴社がK滓とよぶスラグについて、出荷先別に、なるべく付加価値を付けるために性状を変えているとの説明が工場視察会及びその後の協議の場で明らかにされました。ついては、それぞれの出荷先別のK滓について、それぞれ1キロずつ見本をいただけますか?
ご回答2:大変申し訳ございませんが、サンプルをお渡しすることは出来かねます。
工場視察会及びその後の協議の場で説明させていただきました通り、付加価値製品として価値を高めるためいくつかの工程を付随しております。
ご要望の見本につきましてですが、K砕に限らずほかの製品の見本についても、品質管理、製造物責任の企業理念上、事業目的がない方等、一定の条件が揃わない会社/個人の方へのサンプル提供はお断り申し上げておりますので、ご容赦いただけます様お願い申し上げます。
ご質問3:また、実際にK滓置き場で、本物のスラグを検分し、自ら採取したいのですが、工場内への立ち入りを含め、そうした作業についてご許可いただけますか?
もしご許可いただける場合は、貴社の都合のよい日時を複数ご連絡いただけますか。
もしご許可いただけない場合、その理由を教えてくださいますか。
ご回答3:大変申し訳ございませんが、弊社工場内の立ち入りにはご容赦お願い申し上げます。工場内への立ち入りは、どなたに係らず部外者の工場立ち入りはお断りしております。一般の方の立ち入りは大変危険を伴います。ご理解賜ります様お願い申し上げます。
ご質問4:岡田興業・岡田工務店に対しては1年ほど前まで、毎年排出される年間約5万トンの2割を占める量のスラグを1年前から出荷停止とするとともに、一切の取引を行っていないとのことですが、これまで岡田興業・岡田工務店に対して出荷したスラグの量を年毎に教えてくださいますか?
初出荷年月日 ____年__月__日
2008年以前 総計________トン(又は㎥)
2009年 ________トン(又は㎥)
2010年 ________トン(又は㎥)
2011年 ________トン(又は㎥)
2012年 ________トン(又は㎥)
2013年 ________トン(又は㎥)
2014年 ________トン(又は㎥)
2015年 ________トン(又は㎥)
2016年 ________トン(又は㎥)
2017年元旦~現在迄 ________トン(又は㎥)
ご質問5:貴社が岡田興業・岡田工務店に対して出荷をしていた時の、置き場渡しのトン当たり(又は㎥当たり)の価格は、1000円程度とのご説明でしたが、間違いありませんか? ちなみに、トンあたり1000円では、比重が重いため、スラグは立方メートルあたり2000円になってしまいます。
かつて、県内の渋川市にある大同特殊鋼渋川工場が、鉄鋼スラグを直接、役場や顧客に販売した時は、トンあたり100円だったと言われています。貴社の場合は、出荷先がダンプでやってきて、置き場渡しで、トン当たり1000円という話なので、なぜ高額で販売できるのか大変関心があります。
ご回答4、ご回答5:個別案件についてご回答はご容赦お願い申し上げます。
営業機密に関する事項に直接的に抵触しており、ご質問4及びご質問5のご回答は、個別の秘密保持契約違反、不正競争防止法違反、また記入商品取引法違反(インサイダー取引)の恐れがあり、ご回答申し上げることによって、安中緑の大地を守る会様、小川様も含め多くの方にご迷惑をおかけする可能性を否定できません。
法規範、社内規範、倫理規範のコンプライアンス上ご容赦いただけます様お願い申し上げます。
また、ご質問4、ご質問5に記載の内容に関し、対応させていただいた営業担当者から口頭とは言え情報を入手されているかと思いますが、営業担当者のコンプライアンス違反は明白であります。早速、弊社社内において営業担当者を厳重注意処分とさせていただきました。
このような形ではありますが、営業担当者だけでなく社員の認識の甘さをご指摘いただいた事案として、今後の社員教育に役立てたいと考えております。ありがとうございました。
**********
■このように、いかにも公害企業らしい文書作成ですが、確かに当会としても、サンプリング時に道路管理者である群馬県の立会を求めて、サンプル採取の許可を得ることは意義があると考えました。
そこで、まずは、なぜ県道に非鉄スラグと思しき物質が投棄されているのか、その経緯を探るため、2017年8月4日に群馬県知事に対して、次の情報公開請求を行いました。
*****開示を請求する公文書の内容又は件名*****PDF ⇒ 20170804jimxoj.pdf
群馬県土整備部建設企画課技術調査係に7月23日付で電子メールにて送信した「東邦亜鉛安中製錬所由来の非鉄スラグの不法投棄問題について」と題する電子メールについて、未だに返事がないため、請求情報の特定がいまひとつ不十分かもしれませんが、次の情報開示請求をします。
東邦亜鉛安中製錬所由来の思しき非鉄スラグが、群馬県が施工した道路工事現場に投棄されています。この投棄場所は、「群馬県県土整備が整備した高崎渋川バイパスで、高崎方面より、イオンの前を通過して、高崎渋川線を超え、三愛会と言う病院へ行く道を通過して最初の舗装されていない中央分離帯」です。この工事現場になぜ東邦亜鉛のスラグが投棄されたのか、その経緯と理由がわかる一切の情報。とくに次の情報を含みます。
①当該工事名称
②施工年月日(期間)
③施工業者
④投棄されたスラグの材料検査証明書
⑤投棄されたスラグを搬入した業者名
⑥中央分離帯に使うべき材料を示した仕様書や積算内訳書等、スラグ使用の妥当性の可否が分かる情報
⑦当該工事の入札調書
⑧投棄されたスラグが未だに放置されたままとなっている理由・根拠を示す情報
**********
その結果、2017年8月17日に開示決定通知書が到来しました。
※公文書開示決定通知書:PDF ⇒ 20170817jmimxoj.pdf
そして、同23日に1枚の情報が開示されました。それによれば、工事契約状況調書(公表用)は次の通りでした。
*****工事契約状況調書(公表用)*****PDF ⇒ 20170823j1ih_j.pdf
●事業名:単独地域道路管理
平成25年4月1日から平成26年3月13日現在
高崎土木事務所
〇路線河川施設名:主要地方道 高崎 渋川線 外
〇事業の付加名称:管内一円(交通安全対策)0県債
〇施工場所:高崎市金古町 第一係管内一円(交安)、
〇工事の種別:土
〇工事の概要【工事の規模等】:管内一円(交通安全対策)修繕箇所N=85箇所
〇契約金額(変更);12,547,500(16,537,500)
〇契約者の住所及び商号又は名称:群馬県高崎市浪江町150 群馬土建工業(株)
〇入札見積年月日 一般・氏名・随契の別:H25.3.15 指名競争入札
〇随意契約の選定理由:
〇工期(変更):H25.3.16 H26.3.20 (H26.3.20)
〇契約金額を変更した場合の理由:関係機関・地権者及び関係権利者等と協議の結果、計画を変更したため
**********
■このことから、県道高崎渋川線の85箇所の修繕工事一式として2013年3月15日に入札が行われ、高崎市にある群馬土建工業が受注したことがわかりますが、使用した非鉄スラグの材料試験成績書などは3年間の保存年限を経過しているとして、すべて廃棄されたという理由で不存在とされてしまいました。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項続く】
↑「安中公害 農作物に大被害」と報じた1970(昭和45)年7月3日付上毛新聞↑
https://www.jomo-news.co.jp/playback/data/07/0703/archive0703.pdf
この非鉄スラグ(鉄鋼スラグと対比させてこう呼ばれます)には、鉄成分を多く含み、以前は高炉セメントの一種の鉄ポルトランドセメントの増量材に好んで使われていました。このセメントは、混合セメントとも呼ばれており、ポルトランドセメントのクリンカと石膏のほかに、高炉スラグを混合して作られます。
ところが高炉スラグとことなり、東邦亜鉛の非鉄スラグには、中身に鉄以外の鉛や亜鉛、カドミウム、ヒ素、水銀なども含んでおり、近年はセメント会社が環境配慮の観点から、さほど引き取らなくなりました。
代わって、東邦亜鉛があらたに見つけた用途が、遮音材としてゴムに非鉄スラグの粉末を練りこませることでした。鉄に加えて鉛を含む安中製錬所の非鉄スラグは、比重が重く、遮音効果アップに好都合であり、しかも廃棄物ですから価格の安さもベラボーなので、遮音材メーカーとの取引が続いています。
※参考URL:遮音材メーカー ⇒ http://www.ishii-shoji.co.jp/products/board_process.html
このほかには、サンドブラスト(錆落とし作業)の研磨剤としての用途がありますが、安中製錬所では実績は殆どありません。そのかわりに数年に一度の港湾埋立てに土砂代替として販売し、在庫調整しています。
また、非鉄スラグは、土建用資材としての骨材の用途は大きいのですが、要求特性を完全には満たせていないのが現状です。
■東邦亜鉛では、安中製錬所から排出される大量のスラグを「K砕」と呼んでいます。これはクリンカーのローマ字の頭文字「K」から採ったもののようですが、鋼滓の「滓」ではなく、なぜか破砕とか砕石の「砕」の字を使っています。
当会は2017年3月に、たまたま「K砕」というキーワードでネット検索していたところ、思わぬホームページをヒットしました。
それは群馬県高崎市箕郷町矢原987にある「株式会社岡田工務店」という土木会社のHPでした。
http://okada.gunma.jp/
なお、後で知ったのですが、「有限会社岡田興業」という建築資材販売業者が群馬県高崎市箕郷町松之沢32-1にありますが、これは上記の岡田工務店と同じ系列で、兄弟で経営しているようです。
■ところで、この岡田工務店・岡田興業のHPで「K砕」というキーワードがヒットした理由は、当時の同社のHPを見るとわかります。
*****2017年4月13日以前の岡田工務店のHPより*****
再生粒度調整材詳細
再生粒度調整材とは、K砕(スラグ)と再生サンドベース(化粧ブロックの破砕材)を混合したものです。これを敷均して締め固めることで、防草対策、地面のぬかるみ防止になります。施工も容易で防草シートやアスファルト舗装よりも低価格であるため、広大な敷地から小さな駐車場まで施工かのうです。
K砕(スラグ)の安全性
弊社で取り扱っているK砕(スラグ)は、各種試験を行い、施工性・安全性について確認を行った上で使用しております。
製造工程
材料・施工例
**********
このように、「再生粒度調整材」と称して、東邦亜鉛安中製錬所から排出されたK砕(スラグ)と再生サンドベース(化粧ブロックの破砕材)を混合したものを販売していたことがわかります。そして聡明な読者の皆さんはこれが大同有毒スラグを砕石と混合して「混合再生砕石」と名前を付けて、大量に捌いていた事件のことを連想されたに違いありません。
正にそうなのです。岡田工務店・岡田興業は、大同スラグを捌いた佐藤建設工業と同様に、スラグ排出源の東邦亜鉛と取引があったのです。
実際、上記の写真を見ると、岡田工務店・岡田興産の自社ソーラー発電施設の造成に大量に非鉄スラグ「K砕」が使用されていることや、東邦亜鉛安中製錬所が、造成地から流れ出している水のサンプリングと分析を岡田工務店らのために行っていることがわかります。
このため、当会は2017年4月8日に開催された東邦亜鉛安中製錬所の第26回工場視察会の席上でK砕について東邦亜鉛に初めて質問しました。
〇2017年4月18日:東邦亜鉛安中製錬所で4月8日に開催された第26回工場視察会で分かった驚くべき新事実↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2213.html#readmore
ところが、安中製錬所は、非鉄スラグのことは東京本社のリサイクル事業部の責任者がすべて把握しているから、そちらにコンタクトするように、言いました。
■そしてこの頃、当会に、東邦亜鉛の非鉄スラグ「K砕」と称する物質が、公共道路工事や民間の庭先に使用されているという驚くべき情報の提供がありました。そのため、当会では当該現場に赴き、非鉄スラグとおぼしき物質を採取するとともに、同社の東京本社を訪れて次の内容の公開質問状を提出するとともに、非鉄スラグと思しき物質を同社責任者に見せて、しかるべき見解を求めました。
*****東邦亜鉛本社あて公開質問状*****PDF ⇒ mj170418.pdf
2017年4月19日
〒100-8207
東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 鉄鋼ビル
東邦亜鉛株式会社
代表取締役社長 手島 達也 様
〒379-0114
群馬県安中市野殿980番地
小川 賢
電話090-5302-8312
公 開 質 問 状
前略 御社安中製錬所の周囲の郊外特別対策事業につきましては、平素より、ご理解とご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、4月8日に開催された第26回安中製錬所工場視察会における質疑応答の際にもご質問させていただきました貴社同製錬所が排出するスラグが、出荷先の岡田興業・岡田工務店を通じて、県内の道路の公共工事に盛り土として使われている可能性について、指摘する声が寄せられています。
つきましては、次の事項について、貴社のご見解をご教示賜りたく、よろしくお願いいたします。なお、回答期限としては、5月15日(月)までに文書でお願いできれば幸いに存じます。
質問1:同封のスラグ様のサンプルは、県内の道路工事の現場で採取したものです。これらが貴社安中製錬所から排出したものかどうかを鑑定していただけますか?
鑑定していただける場合、鑑定結果を文書でいただけますか?
鑑定していただけない場合、その理由を教えてくださいますか?
質問2:貴社がK滓とよぶスラグについて、出荷先別に、なるべく付加価値を付けるために性状を変えているとの説明が工場視察会及びその後の協議の場で明らかにされました。ついては、それぞれの出荷先別のK滓について、それぞれ1キロずつ見本をいただけますか?
質問3:また、実際にK滓置き場で、本物のスラグを検分し、自ら採取したいのですが、工場内への立ち入りを含め、そうした作業についてご許可いただけますか?
もしご許可いただける場合は、貴社の都合のよい日時を複数ご連絡いただけますか。
もしご許可いただけない場合、その理由を教えてくださいますか。
質問4:岡田興業・岡田工務店に対しては1年ほど前まで、毎年排出される年間約5万トンの2割を占める量のスラグを1年前から出荷停止とするとともに、一切の取引を行っていないとのことですが、これまで岡田興業・岡田工務店に対して出荷したスラグの量を年毎に教えてくださいますか?
初出荷年月日 ____年__月__日
2008年以前 総計________トン(又は㎥)
2009年 __________トン(又は㎥)
2010年 __________トン(又は㎥)
2011年 __________トン(又は㎥)
2012年 __________トン(又は㎥)
2013年 __________トン(又は㎥)
2014年 __________トン(又は㎥)
2015年 __________トン(又は㎥)
2016年 __________トン(又は㎥)
2017年元旦~現在まで _________トン(又は㎥)
質問5:貴社が岡田興業・岡田工務店に対して出荷をしていた時の、置き場渡しのトン当たり(又は㎥当たり)の価格は、1000円程度とのご説明でしたが、間違いありませんか? ちなみに、トンあたり1000円では、比重が重いため、スラグは立方メートルあたり2000円になってしまいます。
かつて、県内の渋川市にある大同特殊鋼渋川工場が、鉄鋼スラグを直接、役場や顧客に販売した時は、トンあたり100円だったと言われています。貴社の場合は、出荷先がダンプでやってきて、置き場渡しで、トン当たり1000円という話なので、なぜ高額で販売できるのか大変関心があります。
草々
**********
■すると回答期限日から遅れること4日で、なぜか東京本社からではなく、東邦亜鉛安中製錬所から回答が到来しました。
*****東邦亜鉛からの回答書*****JPEG ⇒ m.jpg
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mp4.jpg
2017年5月19日
第26回 工場視察会 オブザーバー
〒379-0114
群馬県安中市野殿980番地
小川 賢 様
〒379-0197
群馬県安中市中宿1443番地
東邦亜鉛株式会社
安中製錬所 環境管理室
公開質問状に関する回答について
拝啓 平素は弊社安中製錬所の地域活動に於いて、ご尽力頂きありがとうございます。また、弊社安中製錬所の事業活動に於いてもご理解、ご協力賜り厚く御礼を申し上げます。
さて、2017年4月8日に開催し、安中緑の大地を守る会様にご参加いただきました「第26回 工場視察会」におきましてご質問頂きました事項と同様に2017年4月19日付け「公開質問状」でお問い合わせいただきました内容に関しまして、以下の通りご回答申し上げます。ご理解賜ります様お願い申し上げます。
敬具
ご回答につきましては下記の通り2017年4月19日付「公開質問状」のご質問内容を「ゴシック」で記載させていただき、そのご質問毎に後述させていただく形でご回答させていただいております。
ご質問1:同封のスラグ様のサンプルは、県内の道路工事の現場で採取したものです。これらが貴社安中製錬所から排出したものかどうかを鑑定していただけますか?
鑑定していただける場合、鑑定結果を文書でいただけますか?
鑑定していただけない場合、その理由を教えてくださいますか?
ご回答1:大変申し訳ございませんが、鑑定することは難しいと考えております。
弊社は分析機関/会社ではありませんので、鑑定保証を行う権限がありません。誠に申し訳ございませんが、正式に鑑定を依頼したいご意向であれば、専門分析機関への委託をお願い申し上げます。
ご確認させて頂きますが、「県内の道路工事の現場で採取」とありますが、所有者及び管理者へのご許可を頂いた上で採取されたのでしょうか。
また反対にご提案ですが、前述の通り鑑定は出来ませんが、所有者及び管理者からのご依頼であれば、前述の通り鑑定は出来ませんが、所有者及び管理者からのご依頼であれば、条件が整えばサンプルがどういった成分のものであるか、分析のご協力は可能かと考えますのでご検討されてはいかがでしょうか。
ご質問2:貴社がK滓とよぶスラグについて、出荷先別に、なるべく付加価値を付けるために性状を変えているとの説明が工場視察会及びその後の協議の場で明らかにされました。ついては、それぞれの出荷先別のK滓について、それぞれ1キロずつ見本をいただけますか?
ご回答2:大変申し訳ございませんが、サンプルをお渡しすることは出来かねます。
工場視察会及びその後の協議の場で説明させていただきました通り、付加価値製品として価値を高めるためいくつかの工程を付随しております。
ご要望の見本につきましてですが、K砕に限らずほかの製品の見本についても、品質管理、製造物責任の企業理念上、事業目的がない方等、一定の条件が揃わない会社/個人の方へのサンプル提供はお断り申し上げておりますので、ご容赦いただけます様お願い申し上げます。
ご質問3:また、実際にK滓置き場で、本物のスラグを検分し、自ら採取したいのですが、工場内への立ち入りを含め、そうした作業についてご許可いただけますか?
もしご許可いただける場合は、貴社の都合のよい日時を複数ご連絡いただけますか。
もしご許可いただけない場合、その理由を教えてくださいますか。
ご回答3:大変申し訳ございませんが、弊社工場内の立ち入りにはご容赦お願い申し上げます。工場内への立ち入りは、どなたに係らず部外者の工場立ち入りはお断りしております。一般の方の立ち入りは大変危険を伴います。ご理解賜ります様お願い申し上げます。
ご質問4:岡田興業・岡田工務店に対しては1年ほど前まで、毎年排出される年間約5万トンの2割を占める量のスラグを1年前から出荷停止とするとともに、一切の取引を行っていないとのことですが、これまで岡田興業・岡田工務店に対して出荷したスラグの量を年毎に教えてくださいますか?
初出荷年月日 ____年__月__日
2008年以前 総計________トン(又は㎥)
2009年 ________トン(又は㎥)
2010年 ________トン(又は㎥)
2011年 ________トン(又は㎥)
2012年 ________トン(又は㎥)
2013年 ________トン(又は㎥)
2014年 ________トン(又は㎥)
2015年 ________トン(又は㎥)
2016年 ________トン(又は㎥)
2017年元旦~現在迄 ________トン(又は㎥)
ご質問5:貴社が岡田興業・岡田工務店に対して出荷をしていた時の、置き場渡しのトン当たり(又は㎥当たり)の価格は、1000円程度とのご説明でしたが、間違いありませんか? ちなみに、トンあたり1000円では、比重が重いため、スラグは立方メートルあたり2000円になってしまいます。
かつて、県内の渋川市にある大同特殊鋼渋川工場が、鉄鋼スラグを直接、役場や顧客に販売した時は、トンあたり100円だったと言われています。貴社の場合は、出荷先がダンプでやってきて、置き場渡しで、トン当たり1000円という話なので、なぜ高額で販売できるのか大変関心があります。
ご回答4、ご回答5:個別案件についてご回答はご容赦お願い申し上げます。
営業機密に関する事項に直接的に抵触しており、ご質問4及びご質問5のご回答は、個別の秘密保持契約違反、不正競争防止法違反、また記入商品取引法違反(インサイダー取引)の恐れがあり、ご回答申し上げることによって、安中緑の大地を守る会様、小川様も含め多くの方にご迷惑をおかけする可能性を否定できません。
法規範、社内規範、倫理規範のコンプライアンス上ご容赦いただけます様お願い申し上げます。
また、ご質問4、ご質問5に記載の内容に関し、対応させていただいた営業担当者から口頭とは言え情報を入手されているかと思いますが、営業担当者のコンプライアンス違反は明白であります。早速、弊社社内において営業担当者を厳重注意処分とさせていただきました。
このような形ではありますが、営業担当者だけでなく社員の認識の甘さをご指摘いただいた事案として、今後の社員教育に役立てたいと考えております。ありがとうございました。
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■このように、いかにも公害企業らしい文書作成ですが、確かに当会としても、サンプリング時に道路管理者である群馬県の立会を求めて、サンプル採取の許可を得ることは意義があると考えました。
そこで、まずは、なぜ県道に非鉄スラグと思しき物質が投棄されているのか、その経緯を探るため、2017年8月4日に群馬県知事に対して、次の情報公開請求を行いました。
*****開示を請求する公文書の内容又は件名*****PDF ⇒ 20170804jimxoj.pdf
群馬県土整備部建設企画課技術調査係に7月23日付で電子メールにて送信した「東邦亜鉛安中製錬所由来の非鉄スラグの不法投棄問題について」と題する電子メールについて、未だに返事がないため、請求情報の特定がいまひとつ不十分かもしれませんが、次の情報開示請求をします。
東邦亜鉛安中製錬所由来の思しき非鉄スラグが、群馬県が施工した道路工事現場に投棄されています。この投棄場所は、「群馬県県土整備が整備した高崎渋川バイパスで、高崎方面より、イオンの前を通過して、高崎渋川線を超え、三愛会と言う病院へ行く道を通過して最初の舗装されていない中央分離帯」です。この工事現場になぜ東邦亜鉛のスラグが投棄されたのか、その経緯と理由がわかる一切の情報。とくに次の情報を含みます。
①当該工事名称
②施工年月日(期間)
③施工業者
④投棄されたスラグの材料検査証明書
⑤投棄されたスラグを搬入した業者名
⑥中央分離帯に使うべき材料を示した仕様書や積算内訳書等、スラグ使用の妥当性の可否が分かる情報
⑦当該工事の入札調書
⑧投棄されたスラグが未だに放置されたままとなっている理由・根拠を示す情報
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その結果、2017年8月17日に開示決定通知書が到来しました。
※公文書開示決定通知書:PDF ⇒ 20170817jmimxoj.pdf
そして、同23日に1枚の情報が開示されました。それによれば、工事契約状況調書(公表用)は次の通りでした。
*****工事契約状況調書(公表用)*****PDF ⇒ 20170823j1ih_j.pdf
●事業名:単独地域道路管理
平成25年4月1日から平成26年3月13日現在
高崎土木事務所
〇路線河川施設名:主要地方道 高崎 渋川線 外
〇事業の付加名称:管内一円(交通安全対策)0県債
〇施工場所:高崎市金古町 第一係管内一円(交安)、
〇工事の種別:土
〇工事の概要【工事の規模等】:管内一円(交通安全対策)修繕箇所N=85箇所
〇契約金額(変更);12,547,500(16,537,500)
〇契約者の住所及び商号又は名称:群馬県高崎市浪江町150 群馬土建工業(株)
〇入札見積年月日 一般・氏名・随契の別:H25.3.15 指名競争入札
〇随意契約の選定理由:
〇工期(変更):H25.3.16 H26.3.20 (H26.3.20)
〇契約金額を変更した場合の理由:関係機関・地権者及び関係権利者等と協議の結果、計画を変更したため
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■このことから、県道高崎渋川線の85箇所の修繕工事一式として2013年3月15日に入札が行われ、高崎市にある群馬土建工業が受注したことがわかりますが、使用した非鉄スラグの材料試験成績書などは3年間の保存年限を経過しているとして、すべて廃棄されたという理由で不存在とされてしまいました。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項続く】