市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

大同有害スラグ問題を斬る!・・・速報!千葉県で判明した新日鐵住金スラグ「ジオタイザー」大量不法投棄

2016-01-22 23:41:00 | スラグ不法投棄問題
■スラグ(鉱滓)はもともと産業廃棄物です。このスラグは安全性をきちんと確認し、品質的にあらゆる観点から評価して、環境や高齢の観点から問題がないと誰もが納得した場合に有効利用されることは、社会経済にとって決してマイナスではありません。しかし、利益追求主義がはびこり、コスト低減至上主義が叫ばれる昨今の風潮は、最近多発するスラグ不法投棄の背景になっていると考えられます。こうした中、またもや大量の鉄鋼スラグが造成工事に紛れて不法投棄されていたことが、スクープ報道されました。

**********毎日新聞2016年1月22日 
http://mainichi.jp/articles/20160122/k00/00m/040/095000c
スラグ 24万トン無断埋設 地権者が撤去要求 千葉
 千葉県袖ケ浦市の大規模な土地開発事業を巡り、土地区画整理法で義務づけられている地権者の承認を得ないまま、鉄精製時の副産物である「製鋼スラグ」が約24万トン埋設されていることが分かった。スラグは水と反応して膨張する性質があり、これ以前に宅地造成に使用された例はないとされる。地権者は不安視し、スラグの全面撤去を要求。同法を所管する国土交通省も調査を始めた。
 この事業はJR袖ケ浦駅北側に広がる田畑などを宅地として再開発するもので、地権者約400人で作る区画整理組合が主体となり、中堅ゼネコンの奥村組(大阪市)と竹中土木(東京都江東区)の共同企業体(JV)が受注した。2011年7月に着手され、東京ドーム10個分に匹敵する約50ヘクタールの敷地に、地権者の戸建て住宅や大規模マンション、大型商業施設、道路などを造成し、17年度末の完成後には約3700人が居住する計画。総事業費は約78億円で、このうち約17億円は国の、約7億円は市の補助金が充てられる。
 毎日新聞が入手した資料や地権者によると、当初はスラグの使用計画はなかったが、JV側は12年1月、組合の理事会に工事費などの詳細を説明しないままスラグを使って地盤改良することを報告しただけで、組合の意思決定機関である「総代会」や事業を所管する千葉県の承認を得ずに地盤改良工事に着手。地盤改良材として新日鉄住金(東京都千代田区)の君津製鉄所(千葉県君津市)から排出された製鋼スラグを約24万トン搬入し埋設した。
 JV側は地盤改良工事費を約10億円としているが、土地区画整理法では当初の予定にない工事費を計上する場合、地権者と県の承認を受けて資金計画を変更することを義務づけている。JV側が資金計画変更の承認を総代会に求めたのは、地盤改良工事の約8割を終えた14年12月になってからで、同法に抵触する疑いがある。
 スラグは石や砂状で有害物質を含んでいなければ再生利用でき、道路などの軟弱地盤改良に使われるが、水と反応して膨張する性質がある。新日鉄住金が地権者に説明した内容によると、これ以前に宅地開発での利用事例はないという。
 搬入されたスラグは15年8月、「ジオタイザー」の名称で国に商品登録され、新日鉄住金は国に提出した資料で「14年に開発」と記しているが、搬入開始はそれより2年も前だった。資料には留意事項として「(土との)混合率が30%を超える場合は、改良土の膨張について問題ないことを事前配合試験で確認する必要がある」と記されている。
 スラグを巡っては、再生利用できなければ産業廃棄物となり、その処分に1トン当たり2万〜4万円程度かかるため、過去に再生利用を偽装した安価な取引がたびたび問題化している。組合はJVにスラグの取引価格の開示を求めたが、JV側は拒否。このため組合は、スラグの全面撤去や取引価格の開示に応じるまで、資金計画の変更を承認しないことを決めた。国交省市街地整備課は1月12日、JV側に対して改善を求めた。【杉本修作】
 奥村組と竹中土木の話 国や県の指導を受けたことはなく、地盤改良材の安全性に問題はない。他の質問への回答は差し控えさせていただく。

 新日鉄住金広報センターの話 ジオタイザーは2011年5月には既に「軟弱地盤改良用製鋼スラグ」の名称で商品化し、15年8月に新たな名称を付けて(国に)登録した。膨張試験をして結果はJVに示している。万一地盤に問題が発生した場合、必要な協力をJVと協議させていただく。
【ことば】製鋼スラグ
 鉄を作る際に出る鉄くずの「鉄鋼スラグ」のうち、特殊鋼などを精製する際に排出されるもの。石や砂の形状をしており、強度があるために道路の路盤材などに使われる。

**********毎日新聞2016年1月22日
http://mainichi.jp/articles/20160122/k00/00m/040/096000c
スラグ無断埋設 「我々の土地、実験台か」地権者ら憤り

JR内房線の線路左側に広がる千葉県袖ケ浦市の区画整理事業地。右奥には袖ヶ浦駅が見える=2016年1月21日、阿部義正撮影
 千葉県袖ケ浦市の大規模な区画整理事業を巡り、地権者の承認を得ずに鉄精製時の副産物である「製鋼スラグ」が大量に埋設されていたことが明らかになった。スラグには水と反応して膨張する性質があり、地盤の不安定化が懸念される上、専門家は植物などに影響を及ぼす強アルカリ水が溶出する可能性も指摘。地権者からは「我々の土地を実験台にしているのか」と批判する声が上がった。
 施工した共同企業体(JV)のトップで中堅ゼネコンの奥村組(大阪市)が地権者らに説明した内容によると、JVはスラグの排出元となった新日鉄住金(東京都千代田区)と2011年5月に、スラグの利用について協議していたという。奥村組が正式に施工業者に決まったのは同年7月。その2カ月も前から協議が進められていたことになる。
 奥村組の担当者は翌12年1月、区画整理事業組合の理事に「地盤の強度が出なかった(低かった)。地盤改良のためスラグを使う」と報告したが、費用や工事の詳細は報告しなかった上、この時点で既にスラグは納入されていたという。
 15年2月、組合の意思決定機関である「総代会」から、同会の承認を得ないまま工事を進めた理由を問われた奥村組の担当者は「いろいろと不都合があった。地権者に不安を与えるといけないと思った」と回答。被害が出た場合の保証期間を尋ねられると「完了後2年」と答えたという。

 事業を監督する千葉県の指示を受けたJVは15年9月、外部の検査機関に委託し、施工が正しく行われたかを調べるボーリング調査を実施。これによると、スラグを混ぜて地盤改良したとされる層の厚さは数センチから2メートル超まで大きな幅があり、一切使用されていない場所もあった。施工に不安を感じた地権者の有志が地盤を掘削したところ、土と混ぜられることなく固まっている数十センチのスラグの塊も次々と見つかった。
 男性地権者は「こんな欠陥だらけの土地を子や孫に引き継げない」。別の男性地権者は「我々の土地が実験台かゴミ捨て場にされたのではないか」と憤った。県は先月18日、土地区画整理法に基づき改善を勧告した。
 一方、スラグには雨水などと反応して膨張する性質があり、道路で利用されるスラグには日本工業規格(JIS)で膨張率に基準(1・5%以下)が設けられているが、宅地利用での基準はない。別メーカーのスラグをもらい受けて盛り土に使った群馬県榛東村の民家では床が隆起する問題も起きている。
 また、袖ケ浦市の現場のスラグを地権者の許可を得て毎日新聞が環境省指定の第三者機関で鑑定したところ、水素イオン濃度(pH)が12前後の強アルカリ水が検出された。【杉本修作】
★スラグの被害に詳しい畑明郎・元大阪市立大大学院教授(環境政策論)の話
 使用した時点で国にリサイクル品として認定されていないのなら産業廃棄物を市街地に使ったと言われても仕方がない。大量に発生するスラグの扱いは鉄鋼メーカー共通の問題で、処分に苦慮した可能性もある。製鋼スラグは膨張する特性があり、長い年月で化学変化し、地盤が安定しなくなることは十分考えられる。

**********毎日新聞2016年1月22日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20160122/ddm/041/040/164000c
千葉・袖ケ浦のスラグ無断埋設
地盤不安定化の恐れ スラグの被害に詳しい畑明郎・元大阪市立大大学院教授(環境政策論)の話
アルカリ水溶出も

 使用した時点で国にリサイクル品として認定されていないのなら産業廃棄物を市街地に使ったと言われても仕方がない。製鋼スラグは膨張する特性があり、長い年月で化学変化し地盤が安定しなくなることは十分考えられる。また、強アルカリ水は植物や人の皮膚に影響があり、地下水の位置などの条件によってはアルカリ水が地上に溶出することもあり得る。
**********

■このように、またまた大量のスラグが不法投棄された事件がスクープされました。千葉県の大規模な宅地開発に24万トンものスラグが不法投棄されたのです。いつものようにスラグ報道のポイントをまとめてみましょう。

①国や地方自治体の補助金が投入された土地区画整理事業にスラグが不法投棄されている問題であること。

②地権者や地域住民に説明のないこと

③スラグが地盤改良材として偽装されて土と混合されていること


◆ポイント①「行政補助金事業へのスラグ不法投棄」について
 「総事業費約78億円の住宅や大規模マンションの造成事業で、このうち約17億円は国の、約7億円は市の補助金が充てられている」ことがこの報道の冒頭で紹介されています。群馬県の危険スラグ問題でも国土交通省のスタンス・考え方に疑問の声が上がっていますが、千葉県においてもお役人様の不作為・違法行為がある可能性を強く示唆しています。

◆ポイント②「ステークホルダーに説明なし」について
 群馬県の危険スラグ事件は、今のところ道路工事に用途外・違法使用された問題として被害者は国や群馬県、渋川市などとなっているので、文字通り他人事で問題解決が長引いています。この報道の最大のポイントは直接の被害者として、地権者が紹介されています。なんの説明もないままスラグが不法投棄されたのでは、事業に賛同して土地を提供した地権者の方々はたまったものではありません。スラグが全量撤去されるべく、遠隔地ながら同じ首都圏に住む者として応援してまいりたいと存じます。

◆ポイント③「スラグを地盤改良材として偽装」について

 群馬県の危険スラグ問題では、危険スラグを「公共工事から排出されたコンクリートなどの建設廃材をリサイクルした正規の再生砕石や盛り土材などの天然石だ」などと偽ることで、不法投棄されました。
 今回報道された千葉県の問題では土質改良材に偽装しスラグを不法投棄した疑惑事件であることが紹介されています。スラグなのに悪乗りして、商品名までつけて「有価物」と偽装しているようです。その名も「ジオタイザー」。かなり強そうな語感ですが、実態は単なるスラグのようです。

■強アルカリが指摘され有害物性も有するスラグですが、土質改良材という謳い文句からすると、軟弱な土にスラグを混合してしまったことが容易に想像できます。

 果たして、スラグにセメントと同じように土質を改良する効果があるのでしょうか?確かにうどんを捏ねる時のように、水分が多い材料に乾いた粉を足せば水分調整をすることはできるでしょう。しかし、スラグでは膨張する性質はあっても固まる性質は弱いと考えられることから、土質改良材として、どうして土地区画整理に使用されたのでしょうか?国などが認可しているのでしょうか?そうだとすれば、そこに癒着等スラグマネーの暗躍が想像できます。

 報道では「地権者約400人で作る区画整理組合が、奥村組(大阪市)と竹中土木(東京都江東区)の共同企業体(JV)にスラグの取引価格の開示を求めたが、JV側は拒否。」と報道されていることから、逆有償取引の疑いがあることが、紙面から伝わってきます。

 逆有償取引は、有価物の購入とみせかけ、裏で多額の金がキックバックされる取引のことで、産廃処分の形を表面上、取り繕うだけなので、この取引形態が指摘できれば、産業廃棄物の不法投棄である疑いが極めて濃厚です。

■この問題の当事者でもある竹中土木は、多額な使途不明金問題でも世間を騒がせています。スラグマネーがお役人様や政治家の皆様に渡っている可能性も考えられます、スラグ問題は新たなステージに突入したと言えるでしょう。

**********毎日新聞2016年1月21日
http://mainichi.jp/articles/20160121/k00/00m/040/138000c
http://mainichi.jp/articles/20160121/ddm/041/040/090000c
竹中土木 所得隠し 「使途秘匿金」1億円超 12〜13年 東京国税局認定
 東京都江東区の大手土木会社「竹中土木」が、東京国税局から2013年12月期までの2年間で1億数千万円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。複数の工事で外注費としての実態が不明な支出があったことが税務調査で判明した。同社は国税局の調査に支出先や支払い理由を明らかにしなかったため、1億円を超える支出について「使途秘匿金」と認定され、約5000万円の制裁課税を受けた模様だ。
 他に経理ミスも見つかり、所得隠しを含めた申告漏れ総額は2億円超に上るとみられる。重加算税を含めた追徴税額は約8000万円。同社は既に修正申告を済ませ、納税したという。
 関係者によると、問題を指摘されたのは、竹中土木が12〜13年に費用計上した関西方面での土木工事に関わる外注費。工事台帳や請求書などから外注した内容が明らかな正規支出とは別に、一部で支出先や目的が不明だったり業務に関係あるかはっきりしなかったりする支出があることが税務調査で分かった。
 不明瞭な支出の資金は、工事の現場ごとに経費の中に架空の外注費を計上することで工面し地元対策に充てていたとみられるが、竹中土木は支出先などを明らかにしなかったという。同国税局はこうした業界特有ともいえる裏金作りについて、仮装・隠蔽(いんぺい)を伴う悪質な所得隠しに当たると判断した模様だ。
 竹中土木は、大手ゼネコン「竹中工務店」(大阪市中央区)の子会社で1941年設立。資本金70億円、14年度の売上高772億円。毎日新聞の取材に対し、竹中土木管理本部総務部は「国税当局と一部見解の相違もあったが、修正申告を行い納付した」と回答した。【太田誠一】
○ことば「使途秘匿金」
 法人による金銭の支出や資産の引き渡しのうち、相当な理由がなく相手方の名称や所在地などを帳簿に記載していないもの。支出先を記載していても実際の支出先でなければ同様に使途秘匿金と認定される。税額は通常の法人税に加えて、制裁として支出額の40%を上乗せして算定される。政治家へのヤミ献金やリベートなど違法な支出につながりやすいため、ゼネコン汚職事件(1993〜94年)を機に導入された。
**********

■「ジオタイザー」についても調べてみました。国土交通省HPの「NETIS:新技術情報提供システム」の中で、「技術名称:ジオタイザーによる軟弱度改良」として紹介されています。
http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/Search/NtDetail1.asp?REG_NO=KT-150041
20160122_netis_newtechnologyinformationsystem_geotizer.pdf

 この中に開発年:2014、登録年月日:2015.08.11という記載があり、開発会社は新日鉄住金㈱の設備・保全技術センター土木建築技術部です。したがって、毎日新聞の報じているように、土地開発事業の現場に持ち込まれたのが、登録年月日よりも2年以上前だということになると、明らかに奥村組と竹中土木のJVと、新日鐵住金との間で、密約があったものと考えられます。

 しかも、現在もなお、このジオタイザーと称する胡散臭いスラグは「事後評価未実施技術」とされており、直轄工事等にて活用された後の「試行実証評価」及び「活用効果評価」が実施されていない技術という分類に位置づけられています。

 ゼネコン側にとっては、逆有償付きのサンパイ・スラグを土木資材として使うことによりコストを低減でき、新日鐵住金側にとっては、サンパイの処理費用が大幅に節約できるというメリットがあったはずです。

■スラグ(鉱滓)はそもそも産業廃棄物です。とくに鉄鋼業界から製鉄・製鋼の副産物として排出される鉄鋼スラグは、膨大な量に上ります。これまでは、有害性がないことを確認した上で、主に沿岸の埋立てに使用されてきました。しかし、排出側にとっては、スラグ等サンパイの処理には、安全・安心に処理しようとすればするほどコストが嵩むため、少しでもコストを減らし、あわよくば付加価値を付けて、安くても有償で引き取ってもられば、それに越したことは有りません。

 一方で、サンパイを大量に処理する場合、もっとも手頃なのは造成工事に紛れて不法投棄をする方法です。県土の至る所が今やサンパイ埋立場と化しつつある群馬県では、以前から「サンパイのトライアングル」と称して、次の3者関係が取りざたされてきました。
①「埼玉県の農地の下に賦存する砂利」
②「首都圏の土建工事から生ずる廃棄物」
③「群馬県の山林に賦存する山土」

 これは、①を首都圏の土建工事用の資材として利用し、砂利掘削後に農地にぽっかり空いた穴に③から持ってきた山土を搬入し、③で山土を掘り取った跡を掘るために、、②の首都圏の土建工事から排出される廃棄物を、群馬県に持ち人で不法投棄するという構図です。

 今回の千葉県袖ケ浦市での大規模土地開発事業を巡る約24万トンものスラグの不法投棄問題は、大同有毒・危険スラグ不法投棄問題にも大きく影響をあたえる予感がいたします。事件の類似性に注目して、引き続き関心を寄せ続けて参ります。

【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】

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公金を103年間群銀に支払う原資を元職員・事件関係者から取りはぐれないよう促す公開質問状を副市長に提出

2016-01-22 12:45:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■地方自治体としては史上空前絶後、前代未聞の51億円を超える巨額詐欺横領事件が発覚したのは、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件の起きた199年(平成7年)5月18日でした。その約2週間後、安中市民が地元の新聞で報じられたこの事件の記事に仰天したのが同年6月3日(土)の朝でした。その半月の間に、安中市は、元職員が安中市土地開発公社特別会計を群馬銀行安中支店に開設した平成4年4月1日以前の資料を、証拠隠滅のために夜陰に紛れて市営のごみ焼却施設に運び込み、燃やしてしまいました。その後、警察の捜査が行われ、当会は入手した情報を警察にすべて提供し、この事件が市役所の組織ぐるみの犯罪であることが立証されることを期待し、膿を出し切ることが再発防止に欠かせないと信じて活動を始めたのでした。

 同年10月に群馬銀行が先手をとったかたちで36億円余りの損害賠償の民事訴訟を安中市・市公社を相手取り前橋地裁に提起すると、当時の小川勝寿市長は市長の椅子を投げ出したため、急遽、市長選となりました。

 ところが、同年11月に行われた出直し市長選で、市民団体候補が次点に留まるや否や、警察から捜査打ち切りと、元職員単独犯行という結論が当会に報告され、事件の幕引きへのプロセスが正式に進められたのでした。

 その後、1996年4月8日に元職員の刑事裁判が確定し、群馬銀行と市・公社との裁判が継続されていましたが、1998年12月9日に裁判所主導で、和解条項により市・公社が合計24億5千万円について、初回4億円を支払い、残り20億5千万円を翌年の199年(平成11年)から、毎年2000万円ずつ、103年かけて返済するという前代未聞のとんでもない返済ローンが合意されたのでした。安中市民は、このローンを「タゴ103年ローン」と呼んでいます。

 その後、2006年3月18日に隣の松井田町が安中市と対等合併したため、この超長期ローンは現在松井田地区の住民にも影響を及ぼしています。

■民事上の制約から、この103年ローンは、10年毎に更新されることになっており、最初の更新は2008年(平成21年)12月25日の10回目のローン支払いと同時に、新たに「証」と称する合意書が、当時の岡田市長兼公社理事長と群銀との間で取り交わされました。

 そして、現在は2順目の10年間のローン支払い中ですが、先日2015年12月25日に都合17回目の支払いが、茂木一義・公社理事長から、群馬県信用組合を介して群馬銀行安中支店に振り込まれたのでした。

■一方、当会は1998年12月9日の和解条項により、安中市への損害が確定したのを契機に、この事件の関係者である市公社の歴代の理事・監事、そして元職員の上司らを相手取り、住民監査請求を行いました。ところが、市公社は安中市とは別法人だという理由で監査請求の資格がないという理由で請求が棄却された為、1998年4月に住民訴訟に踏み切りました。

 すると、その直後、市公社が元職員に対して20数億円の損害賠償請求の民事訴訟を提起し、収監中の元職員が欠席のまま僅か1週間で勝訴判決が下されました。

 その後も当会は、この巨額横領事件に関連して5件の住民訴訟を提起しましたが、当会の事務局長が政治的圧力により勤務先の命令で足掛け8年間に亘る海外勤務を余儀なくされたこともあり、弁護士に一任せざるを得なかったため、ことごとく敗訴させられてしまいました。

 帰国してみると、安中市役所は既に51億円事件のことなどとっくに風化してしまっており、事件直後にはあれほど多数寄せられた内部告発もなく、地元では政治家による清酒や金一封などの悪しき慣習がよみがえっている始末でした。

■こうした経緯のなか、市・市公社は連帯して群馬銀行に対して相変わらず毎年クリスマスに2000万円もの公金をタゴ事件の尻拭いとして支払い続けてきました。

 この原資について市・市公社は、公社の事業で生じた余剰金を充当しているので、住民への影響は皆無だという論法を掲げ続けています。公社の事業が出来るのも、安中市から事務費として事業費の5%が支出され、市職員が無償で公社の業務を兼務しているからです。だから余剰金は当然、我々住民のものですが、もはや103年ローンの支払い機関として成り下がってしまった安中市土地開発公社は、よその自治体が次々に土地開発公社を解散していくのを横目に、あと86年間は存続させなければならないのです。

 また、本来103年ローンを支払うべき、単独犯とされた元職員やその親族を始め、公社の当時の幹部連中らは、全く無責任な対応に終始しています。この20年余りで、市・市公社が元職員から回収したのは僅か1500万円弱に過ぎません。群馬銀行へのクリスマスのローン支払い1回分にも満たないのです。

 本来、元職員やその親族、友人、さらに事件に関与した市職員、職員OB、政治家、出入り業者らから優先的に損害金を取り立てるのが本筋ですが、既に事件が風化してきたのをよいことに、安中市は、市民納税者に対して滞納撲滅をアピールするだけで、元職員のタゴら関係者に対する財産差押については極めて消極的です。

■そのため、本年1月20日に、平成27年度の103年ローン支払いの経緯と事実を確認するための情報開示請求を行い、開示をうけた際に、市の企画課長らに、損害金を元職員らから取りはぐれないように、あらゆる手段を講じて対応措置を取るよう要請しました。しかし、どうにも積極性が見られません。市公社は別法人だから、執行部としては関与する立場にはないということなのでしょう。でも安中市は市公社の連帯責任を負っている立場にあります。

 そこで、やはりこのことは市公社の理事長である副市長にきちんと確認しておく必要が有ると考えて、当会では次の公開質問状を昨日郵送で提出しました。

**********20160122_annakasi_tochikaihatukousha_koukaisitumonjou.pdf
                    平成28年1月22日
安中市土地開発公社
理事長 茂木 一義 様
写し:安中市長 茂木英子様
                    〒379-0114
                    安中市野殿980番地
                    小川 賢
                    FAX 371-0364

   安中市土地開発公社巨額詐欺横領事件の簿外債務に関する公開質問状

 拝啓、貴殿ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さて、本年1月20日に開示された情報によれば、貴殿は2015年12月25日に群馬銀行安中支店長あてに、和解金2000万円を支払いました。これは、平成10年12月25日に群馬銀行に対して4億円を支払ったあと、残金20億5000万円を毎年12月25日に2000万円ずつ返済するかたちで群馬銀行に計算上103年かけて支払うという一般常識を遥かに超えた債務履行の一環ということになります。即ち、あと86年間支払い続けなければならない、ということです。
 事件の発覚から今年5月18日で21年が経過し、事件当時生まれた人たちは、今年成人式を迎えました。一方、元職員の実弟で運送会社を経営していた人物は昨年6月下旬に他界し、事件発覚当時、市議会議長だった人物も昨年11月21日にこの世を去りました。また、事件発覚当時、部下として元職員と一緒の部署だった人物らも、まもなく退職年齢に到達するようです。
 この事件では、未だに真相が明らかになっておらず、元職員が所属していた公社の上司や理事監事らも誰一人として事件の責任を取った者はおりません。公社の幹部らに責任をとってもらうべく、質問者も司法の場で決着を付けようと提訴したことがありましたが、公社は安中市とは別法人だということで、最高裁においても住民の請求は退けられてしまいました。
 こうなると、唯一のよりどころは、平成11年5月31日判決、同年6月18日に確定した、元職員に対する損害賠償請求の勝訴判決で、これにより22億2309万2000円とこれに付随する年5分の割合による遅延損害金の支払いを元職員に求めることになっており、これが実現すれば我々住民にとっても福音となるはずです。
 ところが、これまでに回収したのは市税還付金、土地および家屋の強制競売による配当金として、1500万円にも満たない金額でしかありません。
しかも、質問者による開示請求に対して、安中市長から貴殿に対する今年1月8日付の情報提供の要請に対して、貴殿は、今年1月12日付で、平成25年1月以降、現在に至る迄に為された損害金回収に関わる一切の情報について、不存在という回答を安中市によこしました。このことについて、次の質問があります。

1.消滅時効と時効の中断について

質問1-1:
 民事債権やその確定判決等は、10年の期間を経過すると時効にかかって消滅しますが、元職員に対する現時点での公社債権の消滅時効はいつだと認識していますか?

質問1-2:
 上記の時効期限の到来を中断するために、どのような対策を講ずる予定ですか?具体的にご教示願います。

質問1-3:
 今年1月20日の表件にかかる情報開示の際に、連帯保証人である安中市総務部の萩原稔企画課長らこの件について意見を伺ったところ、皆さんは「平成22年5月14日に元職員の配偶者を通じて元職員から公社に寄付された絵画等6点があるので、これを換価した時点で消滅時効の中断となりうる」とお考えになっているようです。これについて、同課長いわく「きちんと確認したわけではない」とのことです。ついては、この絵画等6点は、元職員から受け取った時点で時効が中断し、あらたに10年間の時効がカウントされ始めるのか、それとも、絵画等6点を公社が換価した時点で時効が中断し、あらたに10年間の時効がカウントされ始めるのか?公社理事長である貴殿の正式見解をご教示願います。

質問1-4:
 もし絵画等6点を公社が換価した時点で時効が中断すると貴殿が考えている場合、それは元職員から平成22年5月14日に受け取った後、10年間以上経過しても、消滅時効にならず、あらたに10年間の時効がカウントされるとお考えですか?

2.元職員およびその家族らの財産調査について

質問2-1:
 公社を舞台にした巨額詐欺横領事件では、警察の懸命な捜査にもかかわらず、使途不明金が14億円余りも生じてしまいました。さらに、元職員が甘楽信金(現・しののめ信金)安中支店勤務の友人で古物商の資格を持つ人物を介して、横領金を使って骨董品や古美術を多数買い付けていました。警察の事情聴取に対して、これらの購入金額をそうとう水増しして供述していることが窺え、実際の使途不明金は20億円を超えるものと質問人はみています。こうしたことから、元職員およびその家族は依然として相当な財産を隠し持っている可能性が高いと思われますが、これまでに、あるいは現在も引き続き、元職員やその家族の財産調査はしていますか?それとも何もするつもりがないのでしょうか?

質問2-2:
 元職員の実弟が経営していた運送会社「多胡運輸」が所有するアポロマークのタンクローリーが、平成20年(2008年)8月3日日曜日午前5時52分、首都高5号池袋線下りを走行中、熊野町ジャンクション内の急な右カーブを曲がり切れず横転炎上し、施設や設備、そして営業面で甚大な被害と損害を被った首都高は、3年後の平成23年8月までに多胡運輸に加えて、元請の北部トランスポート、さらには荷主の出光興産を相手取り、損害賠償請求訴訟を提起しました。その際、徹底した同社の資産及び従業員の生命保険などをあらゆる手段を講じて調べ上げて、強制差押の手続きをとりました。ところが、それに比べると貴殿が理事長を務める公社は、そのように積極的な債権回収を図っているように見えません。ぜひ、安中市民が容易に貴殿の努力が理解できるように、ホームページや広報などでとりあげて貰えませんか?

質問2-3:
 上記のような様々な債権回収手段を含め、貴殿はどのようなかたちで、債務者である元職員及びその親族に対して、対応していくおつもりでしょうか?

質問2-4:
 また、元職員及びその親族に対する財産調査はこれまでにどのように実施され、継続され、結果として債権回収にどの程度結びついたのか否か、ご教示ねがいます。

質問2-5:
 さらに元職員から、さまざまな便宜を図ってもらっていた市職員をはじめ、市議や職員OB、出入り業者らも大勢いました。残念ながら彼らの実態調査は全く手を付けられずに20年が経過してしまいました。こうしたケースではすでに消滅時効が到来していますが、責任を認めて賠償に応じる職員や職員OBもいるかもしれません。市民には滞納を厳しく戒めながら、元職員の巨額詐欺横領に対しては支払いを督促しないのでは、明らかに不公平です。少しでも多額の債権を回収する工夫と実践努力の必要があると思いますが、公社理事長である貴殿の抱負をお聞かせ下さい。


なお、貴殿のご回答を得た上で、あるいは得られなかったときに、記者会見で回答の有無及び内容を明らかにしてまいりたいと考えます。同時に質問者のホームページ上でも明らかにし広く安中市民に広報してまいる所存です。つきましては、平成28年1月29日(金)限り、郵送もしくはFAXにてご回答いただきますよう、お願い申し上げます。

                    以上
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■回答期限日をまって、市公社の対応を報告することにします。

【ひらく会情報部】
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