■東京ガスが、ガス事業法第28条第1項の規定に基づき、ガス工作物の技術上の基準を定める省令第22条に定められた付臭措置を怠り、臭いを付けない都市ガスを平成25年9月18日午前12時前から19日午前11時半までおよそ24時間の間、群馬県内に供給した問題で、当会では、同9月23日付で東京ガス本社代表取締役及び同社群馬支社長あてに、次の内容の公開質問状を提出しました。
↑安中市北野殿にある東京ガスの野殿バルブステーション。淡いクリーム色の塔が、今回大量のガスを空中に放出させたとみられる放散塔。↑
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2013年9月23日
〒105-8527東京都港区海岸1-5-20
東京ガス株式会社
代表取締役社長執行役員 岡本毅 様
(写し)〒370-0045高崎市東町134-6東京ガス群馬ビル
東京ガス株式会社 群馬支社長 殿
〒379-0114安中市野殿980
小川 賢
FAX:027-381-0364
E-mail:ogawakenpg@aol.com
公 開 質 問 状
貴殿並びに貴社におかれましては、平素より県内のエネルギーの安心・安全・安定な供給に尽力されていることと存じます。
ところが、平成25年9月19日付の貴社ホームページによれば、ガスの安全な使用のために義務付けられている付臭装置が1日間にわたり作動せず、無臭ガスが供給されていたことが判明しました。また、同9月19日の夜に、地元北野殿地区にある貴社の放散塔付きのバルブステーション施設で、大掛かりな工事が実施されていました。
これらのことについて、次の質問がありますので、誠意ある回答をお願い申し上げます。
なお、本質問状及び貴回答は、ひろく公表することを前提としていますので、あらかじめご了承ください。つきましては、平成25年9月27日(金)当方必着にて、書面又はFAXもしくはE-mailにてご回答いただきますよう、お願い申し上げます。
質問1:貴社のホームページでは、現時点で、付臭装置の不作動の原因については調査中との事ですが、調査結果はいつごろどのような形で、公表する方針ですか。
質問2:今回、付臭義務が果たせない原因となった作動トラブルを起こした付臭装置が設置されていた施設の所在地はどこですか。
質問3:付臭に使用されている物質の名称とそれらの構成割合、また1ノルマル立方メートルあたりの添加量を教えてください。
質問4:北野殿地区にあるバルブステーションで9月19日の夜から翌日未明にかけて実施された作業目的、作業内容、作業人数、投入機材内訳、作業結果、作業の安全対策措置など、当該作業に関する詳しい情報を教えてください。
質問5:当該作業が高圧導管内に滞留していた高圧ガスの除去であった場合、その必要性を判断するに至った経緯と理由を教えてください。
質問6:その場合、高圧導管内からどのように高圧ガスを除去したのか、質問4にも関連しますが、その除去方法を詳しく教えてください。
質問7:除去した高圧ガスのボリュームはノルマル表記で何㎥でしたか。
質問8:除去した高圧ガスは、フレアとして燃焼させたのですか。それとも生ガスのままでしたか。
質問9:除去するガスは、フレアとして燃焼させた場合と、生ガス状態で排出したときの環境負荷の程度と差異について、地球温暖化効果の観点も含めて教えてください。
質問10:磯部のステーションで付臭装置を使って付臭作業を行っていた場合には、高圧の状態でガスに付臭していたことになります。ガスの使用者がガスを使う場合には低圧で使用されることから、高崎市下小塙町のガバナステーションで減圧した段階で付臭するほうが、すなわちガスの使用者に近い段階で付臭するほうが合理的と考えますが、貴社がそうしない理由について教えてください。
質問11:ガスの安全な使用のために付臭が義務付けられていることを示す法令や規則等がありますか。あれば、どのようなものか、またどういう内容なのか教えてください。なお、付臭義務を怠った場合の罰則等はありますか。
質問12:付臭装置の作動が停止した場合、当該装置にはアラームなど異常を検知する機能はなかったのでしょうか。無い場合は、なぜそうした機能をつけなかったのか、その理由について教えてください。
質問13:マスコミの報道によれば、臭いの無いガスが供給されたのは貴社では初めての事態だということですが、今回のトラブルはあらかじめ想定されていましたか。
質問14:可燃性のガスの取り扱いについては安全第一が社是だと思われますが、臭いの無いガスが供給された場合の対処マニュアルは、事前に作成してあったのでしょうか。
質問15:今回の北野殿のバルブステーションで深夜にかけて行われた一連の作業は、そうした対処マニュアルに沿って実施されたものでしょうか。
質問16:今回の北野殿のバルブステーションで深夜にかけて行われた一連の作業では、事前、事後、作業中のいずれの期間においても、地元住民への広報活動による周知徹底が行われた形跡がありません。実際にはどうだったのでしょうか。
質問17:対処マニュアルの類がある場合、地元住民等ステークホルダーに対する広報等による周知徹底義務に関する記載がありますか。
質問18:それとも、当初から地元住民等ステークホルダーに対する広報等活動による周知徹底は想定していなかったのでしょうか。
質問19:私は、貴社による高圧導管敷設計画が地元で伝えられた当時、こうした事故やトラブル時に地元住民に対する説明責任を明記した災害防止協定の締結を、貴社と地元との間で締結されるべきだと提案していましたが、貴社には全く取り合っていただけませんでした。今回のトラブルを踏まえて、地元との災害防止協定の締結について、再考するつもりはありますか。再考するつもりが無い場合、その理由についてお聞かせ願います。
質問20:貴社の9月19日付ホームページに「21:00 臭いの付いたガスへの復旧」とありますが、この意味をわかり易く教えてください。即ち、臭いの付いたガスが末端の使用者まで届けられるようになった時点を指しているのか、それとも、付臭装置の再稼動により臭いの付いたガスの送出がスタートした時点を指しているのか、あるいはその他のどんな事象をさしているのか、など、どのような意味でこのように発表したのでしょうか。
質問21:同様に「13:45 東京ガス本社ビルに『群馬支社未付臭ガス対応非常災害対策本部』を設置」「14:20 経済産業省に第一報を報告」とありますが、非常災害対策本部の設置や経済産業省への報告は、法令・規則等で義務付けられているのでしょうか。もしそうであれば、どのような法令・規則等なのか教えてください。
質問22:群馬支社未付臭ガス対応非常災害対策本部とはどのような役割を義務付けられ、どのようなメンバーで構成されているものなのか教えてください。また、この対策本部の設置の解除が発表された日時はいつでしたでしょうか。
質問23:今回のトラブルを踏まえて、貴社ではどのような再発防止策を講じましたか。あるいは講じる予定ですか。
以 上
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■東京ガスから回答があり次第、報告します。
【ひらく会情報部】
※参考
【ガス事業法】
(ガス工作物の維持等)
第28条 一般ガス事業者は、一般ガス事業(一般ガス事業者がガス導管事業又は大口ガス事業を行う場合にあつては、そのガス導管事業又は大口ガス事業を含む。以下この節において同じ。)の用に供するガス工作物を経済産業省令で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。
2 経済産業大臣は、一般ガス事業の用に供するガス工作物が前項の経済産業省令で定める技術上の基準に適合していないと認めるときは、一般ガス事業者に対し、その技術上の基準に適合するようにガス工作物を修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる。
3 経済産業大臣は、公共の安全の維持又は災害の発生の防止のため緊急の必要があると認めるときは、一般ガス事業者に対し、そのガス工作物を移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、若しくはその使用を制限し、又はそのガス工作物内におけるガスを廃棄すべきことを命ずることができる。
【ガス工作物の技術上の基準を定める省令】
(平成十二年五月三十一日通商産業省令第百十一号)
ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第二十八条第一項(第三十七条の七第一項、第三十七条の十及び第三十八条において準用する場合を含む。)の規定に基づき、ガス工作物の技術上の基準を定める省令の全部を改正する省令を次のように定める。<以下抜粋>
(ガスの置換等)
第十三条 ガス発生設備、ガス精製設備、排送機、圧送機、ガスホルダー及び附帯設備であって製造設備に属するもののガス又は液化ガスを通ずる部分(不活性のガス又は不活性の液化ガスのみを通ずるものを除く。)は、ガス又は液化ガスを安全に置換できる構造でなければならない。
2 ベントスタックには、放出したガスが周囲に障害を与えるおそれのないように適切な措置を講じなければならない。
3 フレアースタックには、当該フレアースタックにおいて発生するふく射熱が周囲に障害を与えないよう適切な措置を講じ、かつ、ガスを安全に放出するための適切な措置を講じなければならない。
(付臭措置)
第二十二条 ガスの使用者及びガスを供給する事業を営む者に供給されるガス(ガスを供給する事業を営む者に供給されるものにあっては、低圧により供給されるものに限る。)は、容易に臭気によるガスの感知ができるように、付臭されていなければならない。ただし、準用事業者がその事業の用に供するもの、中圧以上のガス圧力により行う大口供給の用に供するもの、適切な漏えい検知装置が適切な方法により設置されているもの(低圧により行う大口供給の用に供するもの及びガスを供給する事業を営む他の者に供給するものに限る。)及びガスの空気中の混合容積比率が千分の一である場合に臭気の有無が感知できるものにあっては、この限りでない。