リチャード・アッテンボロー製作・監督 ベン・キングスレー イアン・チャールソン マーティン・シーン キャンディス・バーゲン ジョン・ミルズ ロシャン・セス 1982年英=インド
たった2回の、それもそれぞれ10日間ほどの短い旅だったが、インドはどこの国とも違っている、そして、どこの国よりも深い国であると思った。貧しくて、階級格差の国であるにもかかわらずに。
そう思わせるのはなぜかという答の一部が、この「ガンジー」にあると思った。
この映画の最後に、次のようなガンジーの言葉が流れる。
「絶望に陥ったとき、私は人類の歴史を思う。
勝つのはいつも真実と愛だ。
暴君や殺戮者は一時的には無敵に見えても、結局滅びてしまう。
そのことを忘れてはならない」
しかし、現代を見ても、人類は歴史に学んでいるとは思えない。何度も同じ過ちを繰り返しているようだ。
長い間イギリスの植民地であったインドは、第2次世界大戦後の1947年に独立を果たす。その立役者がガンジーで、インド独立の父と呼ばれている。
若い頃、ロンドンで学んだガンジーは、南アフリカに弁護士として赴任する。そのとき、1等に乗った列車から有色人種であるという理由で放り出される。この日より、ガンジーの白人=大英帝国への抵抗運動が始まる。
故郷インドへ帰ったガンジーは大英帝国に反抗した英雄として迎えられる。その彼は、イギリスからの独立運動に動き出す。
彼独特の思想である、非暴力で非協力という武器で。
ガンジーは、イギリス側との会談で、こう言う。
「あなた方は、他人の家に主人としている」。そして、インドからのイギリスの撤退を要求する。
イギリス側は、こう反論する。
「あなた方インドは、我々イギリスがいないと、ヒンドゥーやイスラムなどがいて混乱してやっていけないでしょう」
ガンジーはこう答える。
「人々は外国の良い政府より、悪い自分たちの政府を選びます」
このやりとりは第2次大戦以前の70年以上前のことだが、まるで現代のアメリカとイラクのようだ。
また、ガンジーはこうも言う。
「人間の幸せは物ではない。いくら便利でもね。幸せは労働と働く誇りにある」
こう言って、イギリスから輸入している布のために旧来の仕事がなくなって失業と貧困を招いているインドの現状を憂い、イギリス産の衣服を燃やすよう勧める。服を燃やした彼は上半身裸で生活し、率先して、自分の服のために糸を紡ぐ。
今日、人間の幸せはすっかり物、すなわち金になってしまった。金のために世界は市場経済のグローバリゼーションになってしまった。何かを生産する歓びより、金を手に入れるために懸命になってしまった。
いくつもの宗教があるインドでは、ヒンドゥーとイスラムの対立が激化し、ガンジーの非暴力運動も虚しく内紛を起こす。そして、結局インドとパキスタンが袂を分かつのである。
病気で臥しているガンジーのところへやってきたヒンドゥーの男とガンジーの対話は、仏陀の教えのようで示唆に富んでいる。
男が、「俺は地獄に行くが、お前は生きてくれ」と言いながら、ガンジーにパンを投げ出す。
男の「俺は地獄へ行く」という言葉に、ガンジーが「なぜ」と聞き返す。
「男の子を殺した。息子の敵討ちのために」と男は涙ながらに答える。
その答えを聞いたガンジーは、「地獄に行かない方法がある」と言う。
その方法とは、
「男の子を拾って育てなさい。父と母を亡くした子を。それもイスラムの子を」と。
そのガンジーも、ヒンドゥーの右派にピストルで射殺される。
ガンジーの遺体の灰は、聖なるガンジス河に撒かれる。
ガンジス河はキラキラと光りながら、流れていく。まるで、ガンジス河だけは悠久であるかのように。
改めてこの映画を見て、インドは、どこの国にも属さない。インドは、どこの国とも違っていると感じた。
モハンダス・ガンディー(ガンジー)は、通称マハトマ・ガンディーと呼ばれる。マハトマとは、「偉大なる魂」という意味である。
たった2回の、それもそれぞれ10日間ほどの短い旅だったが、インドはどこの国とも違っている、そして、どこの国よりも深い国であると思った。貧しくて、階級格差の国であるにもかかわらずに。
そう思わせるのはなぜかという答の一部が、この「ガンジー」にあると思った。
この映画の最後に、次のようなガンジーの言葉が流れる。
「絶望に陥ったとき、私は人類の歴史を思う。
勝つのはいつも真実と愛だ。
暴君や殺戮者は一時的には無敵に見えても、結局滅びてしまう。
そのことを忘れてはならない」
しかし、現代を見ても、人類は歴史に学んでいるとは思えない。何度も同じ過ちを繰り返しているようだ。
長い間イギリスの植民地であったインドは、第2次世界大戦後の1947年に独立を果たす。その立役者がガンジーで、インド独立の父と呼ばれている。
若い頃、ロンドンで学んだガンジーは、南アフリカに弁護士として赴任する。そのとき、1等に乗った列車から有色人種であるという理由で放り出される。この日より、ガンジーの白人=大英帝国への抵抗運動が始まる。
故郷インドへ帰ったガンジーは大英帝国に反抗した英雄として迎えられる。その彼は、イギリスからの独立運動に動き出す。
彼独特の思想である、非暴力で非協力という武器で。
ガンジーは、イギリス側との会談で、こう言う。
「あなた方は、他人の家に主人としている」。そして、インドからのイギリスの撤退を要求する。
イギリス側は、こう反論する。
「あなた方インドは、我々イギリスがいないと、ヒンドゥーやイスラムなどがいて混乱してやっていけないでしょう」
ガンジーはこう答える。
「人々は外国の良い政府より、悪い自分たちの政府を選びます」
このやりとりは第2次大戦以前の70年以上前のことだが、まるで現代のアメリカとイラクのようだ。
また、ガンジーはこうも言う。
「人間の幸せは物ではない。いくら便利でもね。幸せは労働と働く誇りにある」
こう言って、イギリスから輸入している布のために旧来の仕事がなくなって失業と貧困を招いているインドの現状を憂い、イギリス産の衣服を燃やすよう勧める。服を燃やした彼は上半身裸で生活し、率先して、自分の服のために糸を紡ぐ。
今日、人間の幸せはすっかり物、すなわち金になってしまった。金のために世界は市場経済のグローバリゼーションになってしまった。何かを生産する歓びより、金を手に入れるために懸命になってしまった。
いくつもの宗教があるインドでは、ヒンドゥーとイスラムの対立が激化し、ガンジーの非暴力運動も虚しく内紛を起こす。そして、結局インドとパキスタンが袂を分かつのである。
病気で臥しているガンジーのところへやってきたヒンドゥーの男とガンジーの対話は、仏陀の教えのようで示唆に富んでいる。
男が、「俺は地獄に行くが、お前は生きてくれ」と言いながら、ガンジーにパンを投げ出す。
男の「俺は地獄へ行く」という言葉に、ガンジーが「なぜ」と聞き返す。
「男の子を殺した。息子の敵討ちのために」と男は涙ながらに答える。
その答えを聞いたガンジーは、「地獄に行かない方法がある」と言う。
その方法とは、
「男の子を拾って育てなさい。父と母を亡くした子を。それもイスラムの子を」と。
そのガンジーも、ヒンドゥーの右派にピストルで射殺される。
ガンジーの遺体の灰は、聖なるガンジス河に撒かれる。
ガンジス河はキラキラと光りながら、流れていく。まるで、ガンジス河だけは悠久であるかのように。
改めてこの映画を見て、インドは、どこの国にも属さない。インドは、どこの国とも違っていると感じた。
モハンダス・ガンディー(ガンジー)は、通称マハトマ・ガンディーと呼ばれる。マハトマとは、「偉大なる魂」という意味である。