かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

『かりそめの旅』出版へ

2009-06-07 00:10:19 | □ 本「かりそめの旅」
 やっと本としてできあがってきた。
 何がって?
 『かりそめの旅』が、出版された。
 表紙カバーを見ると、サブタイトルに「ゆきずりの海外ひとり旅」とある。
 そうである。著者は、恋に疲れ、仕事に行き詰まったときにひとり、旅に出た。この本は、著者のあてどもない海外への旅を綴ったものである。
 目次を見ると、1章の「初めての旅、パリ」から、11章の「めぐり会いのフランス、イタリア」まで、380頁を超える分量だ。
 本はこのブログと同じ題名だが、最後の章の「めぐり会いのフランス、イタリア」以外は、すべて書き下ろしである。

 目次を見てみよう。
 1章 初めての旅、パリ 
 2章 釜山港へ帰れ、韓国
 3章 神々の棲む島、インドネシア・バリ島 
 4章 落日のタイ
 5章 森と湖の、フランス・サヴォワ地方 
 6章 妖しい檳榔の味、台湾
 7章 目眩のするインド 
 8章 喪失の香港、澳門
 9章 帰りくるインド  
 10章 黄昏の輝き、スペイン、ポルトガル
 11章 めぐり会いの、フランス、イタリア 
 旅のゆくえ──あとがきに代えて

 *

 『かりそめの旅』の本の中を、かいつまんで見てみよう。

 旅は、私の人生の到るところで、それぞれの彩りを添えている。そのなかでも初めての旅は、初めての恋と同様ことさら忘れがたい。初恋は、往々にして小さな野苺の棘のような甘酸っぱい痛みを残して終わるが、私の初めての旅は、瞬く間に消えていく陽炎のように切なく、淡い綿菓子のように甘い思い出のみを残していった。(初めての旅、パリ)

 街との出合いは、女性との出会いに似ている。私は着いたすぐの街の臭い、雰囲気でその街が好きか嫌いかを決めてしまう。そう長い時間は必要としない。ある意味では、瞬間に決まると言ってもいい。
 私は、マラガに留まることなく、一四時発のロンダ行きのバスに乗った。 (スペイン、ポルトガルへの旅)

 リスボン二二時発マドリッド行きの国際夜行列車に乗った。快適な寝台列車だ。
 夜行寝台列車が好きだ。見知らぬ人と車内で擦れ違ったときのお互いが一瞬交わす、同じ列車に乗っているという連帯感と、この人は何の目的でどこへ行くのだろうといった思惑と、もう二度と遭うことはないだろうという切なさなどが混じりあった、目と目の会話が好きだ。 (スペイン、ポルトガルへの旅)

 日本を発ってデリーに着いた次の日から、この旅が早く終わればと思った。しかし、旅は続けねばならなかった。暑くても、つらくても、次の目的地に向かわなければならなかった。インドでは、毎日その日の旅をするのに精いっぱいだった。旅の途中は、微熱を案じる余裕すらなかった。インドは、そんな些末な体調や心情など問題にもしない国だった。
 インドはエネルギーに満ちていた。タクシー、リクシャ、物売り、物買い、物乞い、両替屋、観光案内などなど、こちらが何か行動を起こすと、すぐに彼らはやって来る。いやいや、インドでは黙っていても、向こうから様々なものが押し寄せて来る。そして、何かが起こる。プロブレム(問題)がある。何も起こらないことはない。 (インドへの旅)

 旅の終わりはいつだって、夢から醒めたときの何か忘れ物をしたような、少し虚ろで切ない茫洋とした浮遊感を味わうことになる。つい先ほどまで目の前にあった、旅先の景色も人々も街の臭いも、もはやそこにない。(フランス、イタリアへの旅)

 *

 『かりそめの旅』ゆきずりの海外ひとり旅
 岡戸一夫 著  グリーン・プレス 発行
 URL:http://greenpress1.com
 定価1200円+税  ISBN978-4-907804-08-4
 
 現在、版元では品切れです。(2013年)

 著者岡戸一夫への本の感想などのメールは、ocadeau01@nifty.com へ。
 改訂版を準備中です。

コメント (1)
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