スティーヴ・クローブス脚本・監督 ボー・ブリッジス ジェフ・ブリッジス ミシェル・ファイファー 1989年米
いつも、気になるのは恋のゆくえ。
恋に落ち、二人が夢中になり、幸せを感じたとて、それは束の間のこと。咲いた花が次の日も咲いていたとて、いつまでも咲き誇ってなどいない。
いつだって恋は、ブランコのように揺れて、行きつ戻りつするし、胸はわくわくするだけでなく、締めつけられもする。恋は、掴んだと思ったら、目を離した瞬間、シャボン玉のようにちょっとしたことで壊れたりする。ラグビーボールのような硬い恋なんて……グランドの外に蹴り上げて、見えなくなればいい。
だから、ハッピーエンドの恋物語ほどつまらないものはない。それは、第1章の終わりであって、そこから第2章が始まるのだから。第2章こそが、恋のゆくえ。
フランク(ボー・ブリッジス)とジャック(ジェフ・ブリッジス)の兄弟は、しがないホテルのピアノ・デュオ。毎回、おそらくここのところ毎年、同じ曲を弾いている。
兄のフランクは機転が利きマネージメントをしていて、弟のジャックはピアノはうまいが気難しい男だ。まったく性格も顔も似ていない二人だが、うまくいっていないことはない。ただ、仕事がジリ貧なのだ。
そんなマンネリを打破するために女性ヴォーカルを入れようと思いたち、オーディションを行う。そこで、遅刻をしてきた蓮っ葉だが何となく気になるスージー(ミシェル・ファイファー)という歌い手を雇うことにする。
スージーの枯れたような歌とセクシーな雰囲気が予想外に客に受けて、3人のトリオは人気者になる。
いつしか、弟のジャックとスージーは惹かれ合う。兄のフランクは2人の接近に猛反対する。ピアノの腕はいいが何となく世間に背を向けているジャックと、やはり流れ者の生い立ちを隠せないスージーは、お互い好きになりベッドインするのだが、最後まで素直にはなりきれない。
この頃より次第に、3人の間に微妙なすきま風が吹き出す。
そして、スージーがこのトリオから抜け出し、ジャックとも別れることになる。 再びしがないホテルのピアノ弾きになった2人だが、ジャックとフランクも大げんかし、ジャックは兄フランクにデュオをやめると言いだす。
結局3人は、ばらばらになってしまう。
フランクの家に、ピアノ・デュオをやめると言いに来たジャックと家を整理していたフランクは、家にあった小さな向かい合ったピアノで、思いきりデュオを弾く。それは、子どもの頃、2人で弾いたときを思わせるように、最も嬉しそうな表情だった。
別れたスージーに会いに来たジャックだが、2人はまだ愛し合っていると感じながらも、よりを戻そうとはっきり言わずに、「またいつか会うだろう」と言ったまま別れる。これがラストシーンである。
2人がまた会って、恋を復活させるのかどうかは分からないまま、映画は終わる。
兄と弟は、もうデュオを組むことはないのだろうか。
兄は、これからは子供たちにピアノを教えて生計をたてると言っていたが、うまくいくのだろうか。
弟は、あのプライドが高く気むずかしい性格のうえにアルコール依存症気味だから、才能はあっても兄がいなくて一人で生きていけるのだろうか。
女は、また違った男と曖昧な関係になって、結局その土地にいられなくなって、さまようことになるのではなかろうか。
ラストシーンは、次の物語のファーストシーンだ。映画の終わりとともに、次の物語の想像を掻きたてる。物語は、頭の中でちりぢりに飛んでいく。
恋のゆくえ。それは、果てしなく続く物語だ。
原題は、何とも味気ない「素晴らしきべイカー兄弟THE FABULOUS BAKER BOYS」。
ミシェル・ファイファーの歌は決してうまくないが、最後の字幕と同時に流れる「マイ・ファニー・バレンタイン」は、余韻を伴って切ない。
物語の筋はありきたりだが、3人が役柄にはまっていて、このラストシーンのお陰で、印象深い映画になっている。
シャルル・アズナブールから人生の皺を抜きとったような、ニコラス・ケイジからアクをすくい取ったような、兄フランクを演じた、実際ジェフの兄でもあるボー・ブリッジスがいい。
いつも、気になるのは恋のゆくえ。
恋に落ち、二人が夢中になり、幸せを感じたとて、それは束の間のこと。咲いた花が次の日も咲いていたとて、いつまでも咲き誇ってなどいない。
いつだって恋は、ブランコのように揺れて、行きつ戻りつするし、胸はわくわくするだけでなく、締めつけられもする。恋は、掴んだと思ったら、目を離した瞬間、シャボン玉のようにちょっとしたことで壊れたりする。ラグビーボールのような硬い恋なんて……グランドの外に蹴り上げて、見えなくなればいい。
だから、ハッピーエンドの恋物語ほどつまらないものはない。それは、第1章の終わりであって、そこから第2章が始まるのだから。第2章こそが、恋のゆくえ。
フランク(ボー・ブリッジス)とジャック(ジェフ・ブリッジス)の兄弟は、しがないホテルのピアノ・デュオ。毎回、おそらくここのところ毎年、同じ曲を弾いている。
兄のフランクは機転が利きマネージメントをしていて、弟のジャックはピアノはうまいが気難しい男だ。まったく性格も顔も似ていない二人だが、うまくいっていないことはない。ただ、仕事がジリ貧なのだ。
そんなマンネリを打破するために女性ヴォーカルを入れようと思いたち、オーディションを行う。そこで、遅刻をしてきた蓮っ葉だが何となく気になるスージー(ミシェル・ファイファー)という歌い手を雇うことにする。
スージーの枯れたような歌とセクシーな雰囲気が予想外に客に受けて、3人のトリオは人気者になる。
いつしか、弟のジャックとスージーは惹かれ合う。兄のフランクは2人の接近に猛反対する。ピアノの腕はいいが何となく世間に背を向けているジャックと、やはり流れ者の生い立ちを隠せないスージーは、お互い好きになりベッドインするのだが、最後まで素直にはなりきれない。
この頃より次第に、3人の間に微妙なすきま風が吹き出す。
そして、スージーがこのトリオから抜け出し、ジャックとも別れることになる。 再びしがないホテルのピアノ弾きになった2人だが、ジャックとフランクも大げんかし、ジャックは兄フランクにデュオをやめると言いだす。
結局3人は、ばらばらになってしまう。
フランクの家に、ピアノ・デュオをやめると言いに来たジャックと家を整理していたフランクは、家にあった小さな向かい合ったピアノで、思いきりデュオを弾く。それは、子どもの頃、2人で弾いたときを思わせるように、最も嬉しそうな表情だった。
別れたスージーに会いに来たジャックだが、2人はまだ愛し合っていると感じながらも、よりを戻そうとはっきり言わずに、「またいつか会うだろう」と言ったまま別れる。これがラストシーンである。
2人がまた会って、恋を復活させるのかどうかは分からないまま、映画は終わる。
兄と弟は、もうデュオを組むことはないのだろうか。
兄は、これからは子供たちにピアノを教えて生計をたてると言っていたが、うまくいくのだろうか。
弟は、あのプライドが高く気むずかしい性格のうえにアルコール依存症気味だから、才能はあっても兄がいなくて一人で生きていけるのだろうか。
女は、また違った男と曖昧な関係になって、結局その土地にいられなくなって、さまようことになるのではなかろうか。
ラストシーンは、次の物語のファーストシーンだ。映画の終わりとともに、次の物語の想像を掻きたてる。物語は、頭の中でちりぢりに飛んでいく。
恋のゆくえ。それは、果てしなく続く物語だ。
原題は、何とも味気ない「素晴らしきべイカー兄弟THE FABULOUS BAKER BOYS」。
ミシェル・ファイファーの歌は決してうまくないが、最後の字幕と同時に流れる「マイ・ファニー・バレンタイン」は、余韻を伴って切ない。
物語の筋はありきたりだが、3人が役柄にはまっていて、このラストシーンのお陰で、印象深い映画になっている。
シャルル・アズナブールから人生の皺を抜きとったような、ニコラス・ケイジからアクをすくい取ったような、兄フランクを演じた、実際ジェフの兄でもあるボー・ブリッジスがいい。