レイ・ブラッドベリ原作 フランソワ・トリュフォー監督・脚本 オスカー・ウェルナー ジュリー・クリスティー 1966年英=仏
華氏451とは、本、つまり紙が発火するときの温度である。
本を読むことが禁止された近未来社会の出来事を、あのトリュフォーが風刺的に映像化した。つまり、焚書坑儒の世界を描いたものである。
舞台となっている街は、閑静な住宅街。燃えないコンクリートの家が散在している。今でもよく見かけるような郊外の街である。
家にあるテレビは、今の液晶テレビのような大画面で壁に装置されている。
放映されている内容は、本を持っていた(法律を犯した)何名の者が逮捕されたといった、政府の一方的報道のような番組が主流のようである。討論のような番組では、視聴者も家にいながら参加できるようになっている。かといって、娯楽ではない。
電話は、旧式のダイヤル式であるが、部屋のあちこちに置いてある。40年前には、携帯電話の普及は想像外だったようだ。
いや、さらに未来になると携帯電話もなくなるかもしれない。
街に車はなく、出てくるのは赤い消防車のみである。人の交通機関は、モノレールが使われている。
モノレールは未来社会を想起させるのだろうか。映画で描かれた未来の街といえば、モノレールがしばしば登場する。
主人公の男(オスカー・ウェルナー)は、消防士である。かつて消防士とは、火を消す役目であったが、本を燃やすのが仕事である。政府の警官とも特高機関ともいえる職業だ。
彼の上司である長官は、本の害毒についてことあるごとに語る。
「本は人を不幸にする。人心を乱して、人々を反社会的にする」
「隊員にもっとスポーツをやらせろ。忙しくしていれば、幸せに感じる」
「本を読むと不幸になる。なかでも小説は、幻に憧れてしまうからだ」
「本を読むと人より賢くなったと思いこむ。それがまずい。皆、同じでないとな。平等でないと、幸せを感じない」
本を読むこともない実直な消防士が、少し本に興味を持ちだしたときから、彼の人生は変わりだす。昇進を前に、彼は本を読み始めたのだ。
そして、反抗を、すなわち小さな反乱を起こす。
トリュフォーの、全体主義、独裁主義への風刺作品である。
彼は、芸術表現への規制を非常に嫌った。だから、新しい映画というものを模索した。それが、ヌーヴェル・ヴァーグと呼ばれた。
主人公のオスカー・ウェルナーは、トリュフォーの名作「突然炎のごとく」に出演していた男である。ハンサムではないのだが、奇妙な味がある。
小学校の校内で、小さな生徒が出てくるシーンがある。その子は、おそらく4年前の「小さな恋のメロディー」(1970年)のマーク・レスターに違いない。
華氏451とは、本、つまり紙が発火するときの温度である。
本を読むことが禁止された近未来社会の出来事を、あのトリュフォーが風刺的に映像化した。つまり、焚書坑儒の世界を描いたものである。
舞台となっている街は、閑静な住宅街。燃えないコンクリートの家が散在している。今でもよく見かけるような郊外の街である。
家にあるテレビは、今の液晶テレビのような大画面で壁に装置されている。
放映されている内容は、本を持っていた(法律を犯した)何名の者が逮捕されたといった、政府の一方的報道のような番組が主流のようである。討論のような番組では、視聴者も家にいながら参加できるようになっている。かといって、娯楽ではない。
電話は、旧式のダイヤル式であるが、部屋のあちこちに置いてある。40年前には、携帯電話の普及は想像外だったようだ。
いや、さらに未来になると携帯電話もなくなるかもしれない。
街に車はなく、出てくるのは赤い消防車のみである。人の交通機関は、モノレールが使われている。
モノレールは未来社会を想起させるのだろうか。映画で描かれた未来の街といえば、モノレールがしばしば登場する。
主人公の男(オスカー・ウェルナー)は、消防士である。かつて消防士とは、火を消す役目であったが、本を燃やすのが仕事である。政府の警官とも特高機関ともいえる職業だ。
彼の上司である長官は、本の害毒についてことあるごとに語る。
「本は人を不幸にする。人心を乱して、人々を反社会的にする」
「隊員にもっとスポーツをやらせろ。忙しくしていれば、幸せに感じる」
「本を読むと不幸になる。なかでも小説は、幻に憧れてしまうからだ」
「本を読むと人より賢くなったと思いこむ。それがまずい。皆、同じでないとな。平等でないと、幸せを感じない」
本を読むこともない実直な消防士が、少し本に興味を持ちだしたときから、彼の人生は変わりだす。昇進を前に、彼は本を読み始めたのだ。
そして、反抗を、すなわち小さな反乱を起こす。
トリュフォーの、全体主義、独裁主義への風刺作品である。
彼は、芸術表現への規制を非常に嫌った。だから、新しい映画というものを模索した。それが、ヌーヴェル・ヴァーグと呼ばれた。
主人公のオスカー・ウェルナーは、トリュフォーの名作「突然炎のごとく」に出演していた男である。ハンサムではないのだが、奇妙な味がある。
小学校の校内で、小さな生徒が出てくるシーンがある。その子は、おそらく4年前の「小さな恋のメロディー」(1970年)のマーク・レスターに違いない。