今日は「虫歯の日」ですね。
それで、虫歯に関する最新のトピックを。
最近「3Mix-MP法」という治療方法がメディアで紹介されています。
「虫歯を薬で治す驚異の治療法」「今までの歯科治療の常識を覆す発想」などと
紹介されているので、それについてコメントします。
3Mix法という治療法は3種類の抗生物質(メトロニダゾール、ミノサイクリン、シプ
ロフロキサシン)を混ぜた軟膏を虫歯に効かせて、虫歯を削らずに治すという治療
方法です。
この治療方法は15年以上前から開発されていました。
しばらく衰退していたのですが、最近「3Mix-MP法」と改良されて再び脚光を浴び
ています。
私も15年前に3Mix法を試しました。ただ、それ以前から水酸化カルシウムという
薬を使って虫歯を治療するという方法はありましたので、それほど珍しい治療法で
はありませんでした。
水酸化カルシウムは強アルカリなので、虫歯が歯の神経にまで達している場合は
神経に刺激になってしまうという欠点がありました。
そこに、「神経まで達した虫歯でも、神経に刺激を与えないどころか炎症を起こした
神経も修復することができる」、というふれこみで3Mix法が登場しました。
ですから神経まで達した深い虫歯に3Mixを用いることが歯科界で流行りました。
私は中等度までの虫歯は水酸化カルシウム、深い虫歯は3Mixと使い分けて
いました。
そして治療の感触として両者に差はありませんでした。
また虫歯の再石灰化という面では水酸化カルシウムの方が分がありま
した。
3Mixではあまり再石灰化が認められませんでした。
また虫歯を削るときに神経を刺激しなければ、水酸化カルシウムでも治療がうまく
いくこともだんだんわかりました。(これは3Mix法の手順で水酸化カルシウムを用
いると痛くなく治療できることがわかったので、3Mix理論のお陰です。)
ですので、3Mixの理論で、水酸化カルシウムを使うという治療方法をずっと行って
きました。
それで問題はなかったのですが、、、、、。
最近3Mixが3Mix-MP法と名を変えて再浮上してきました。
MP(マクロゴール、プロピレングリコール)を3Mixに混ぜると治療の効果が劇的に
上がったということです。
たしかに、3Mix法の欠点は薬剤の管理でした。3Mixの薬剤は売っていないので
(薬事法の都合上これからもメーカーが売ることは難しいでしょう。)自分で3種類
の抗生物質を買って、基材と混ぜて軟膏にしなければなりません。
管理が適当だと抗生物質の効能も落ちてしまいます。
管理の大変さも3Mixが一度人気がなくなった理由だと思われます。
本当にMP法になって治療効果が上がるのかは、あと2、3年様子をみて歯科界の
反応を見て見極めたいと思います。
それまでは実績のある水酸化カルシウム療法でやっていこうと思います。
なお、テレビで紹介されていた「たった1回で虫歯の治療が終わる」ということに
ついて、、、、、、、。
虫歯の治療にもっとも大切なのは辺縁封鎖(しっかりと詰め物をする)ことです。
虫歯を残したまま詰め物をした場合どんなに緊密にしたとしても長期的にはもち
ません。
2~3年くらいです。
虫歯を残したまま詰め物をすると、どうしても不安定になり数年ですき間ができて
しまいます。
ですから1回で終わっても数年後にまた治療をする必要があるはずです。
詰め物にすき間ができてしまったらせっかくの3Mixも効果がなくなるどころか、
虫歯が進行してしまいます。
極論を言えば、虫歯を削らないまま何も薬を入れなくても、緊密な詰め物で虫歯菌
をシャットアウトできれば虫歯は再石灰化します。
ですから虫歯を残したまま長期間(10年以上)しっかりもつような詰め物が
開発されたら、「常識を覆す驚異の治療法」といえます。
小幡歯科医院
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