第168回天皇賞回顧~ワールドチャンピオン、今年はハーツクライのように

2023-10-31 20:04:37 | 血統予想

東京11R天皇賞
◎3.ドウデュース
○7.イクイノックス
▲6.ジャスティンパレス
△4.ダノンベルーガ
スローのアルテミスSは上がり3F11.4-11.2-11.0。紅葉Sは45.7-46.2とペースが流れて1.31.9の好時計が出た。東京芝はなかなか高速で、アエロリットのようなマイラーが引っ張れば1分56秒ソコソコの勝ち時計になって不思議ないが、最内枠を引いたノースブリッジはAJCCのようにイン3でカベをつくって折り合う策だろう。となると、ハナに立ったジャックドールを引っかかってつつくような馬は見当たらない。前半60秒で入って後半57秒台、21年や20年と似た流れになるのでは。
イクイノックスは古馬になって更に凄みを増してきたが、それは斬れ味を増したというよりも持続力を増したというベクトルだろう。いっぽうドウデュースは北米短距離重賞勝ちの母の影響が更に強くなってきたような肉付きと回転を見せており、これは今は1800最強と言ってもいい適性になっているように見える。
12Fの持続力ならイクイノックス、9Fの瞬発力ならドウデュース。思い起こせばあのダービーでも、直線でルメールはユタカの直後に早々と取りついたのだが、そこから一瞬のうちに1馬身ほど離されてしまい、そこからジワジワとクビ差まで詰めたという内容で、まさに持続力のイクイと瞬発力のドウを体現した叩き合いだった。
上がり3Fを11秒前半で走破する秋天ならば、どちらが前でも後ろでも、ドウデュースがどこかで突き放すか、並ぶ間もなく差すシーンがあると予想する。
プログノーシスは持続力と成長力に富むとてもハイペリオン的な馬なのだ、ということが札幌記念でついに証明された。このハイペリオン的な資質で、60秒-57秒の秋天において、◎○に伍すには4角先頭ぐらいの運びが必要だろう。それができる並びと流れになるのかどうか。川田が3着にもってきたら脱帽するが、プログノーシスを買うのはここではない、というメッセージをここでは込めたい。
60秒で追走する秋天だと、フィエールマンが重厚なストライドで追い込んだように、長いところの馬にも(斬れ味があれば)チャンスが出てくる。ジャスティンパレスの12Fのヌレイエフなナタの斬れが3番手。

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例によってNETKEIBAの全頭血統解説から導入文と1~3着を

良ならディープ産駒が必ず連対した秋天
8枠は10年間連対ゼロも今年は少頭数
21年コントレイル(2着)、20年フィエールマン(2着)、19年ダノンプレミアム(2着)、18年サングレーザー(2着)、16年リアルスティール(2着)、15年ステファノス(2着)、14年スピルバーグ(1着)、13年ジェンティルドンナ(2着)、12年ジェンティルドンナ(2着)。不良馬場だった17年を除くと、良馬場ではディープインパクト産駒が9年連続で連対。この連続連対は22年に途切れてしまったが、ブラックタイド(ディープインパクトの全兄)の孫でディープ産駒のように斬れるイクイノックスが上がり32秒台の末脚でナデ斬った。ここ2年はイクイノックス、エフフォーリア、ダノンベルーガとダービーから直行の3歳馬が健闘しているが、今年は3歳馬の登録はゼロ。過去10年、8枠に入った馬は[0-0-2-22]と連対ゼロ。馬番15~18番も[0-0-2-19]と連対ゼロだが、12番と14番は2着がある(今年は登録数13頭)。

イクイノックス
ヴァイスメテオールやミスビアンカの半弟で、スタッドリーのイトコ。母シャトーブランシュはマーメイドS勝ち馬。父キタサンブラックは年度代表馬で本馬やソールオリエンスやガイアフォースなどを出し成功。見た目はわりと父似で、牝系由来のHyperion的持続力、ナスペリオンやWild Riskのクロス由来のナタの斬れ、そしてHaloクロス由来の機動力も兼備した世界チャンピオン。ここは取りこぼしがあるとしたら、究極の瞬発力勝負になったときか。(距離○スピード○底力◎コース◎)



ジャスティンパレス
母パレスルーマーは優秀な繁殖で、本馬の他にもベルモントS(米G1・ダ12F)勝ちPalace Maliceやアイアンバローズを産んでいる。近親にハリウッドゴールドCのRail Tripなど。母父Royal AnthemはTheatrical産駒で芝10~12FのG1を3勝。この影響が強いNureyev的な野太いストライドは坂コース向きで大箱向き。母系にはRelaunchも入るので、ある程度前々で持続力を活かすレース運びがいいだろう。天皇賞春秋連覇を狙うが、兄たち同様距離は2400以上あったほうがいい。(距離○スピード○底力◎コース◎)



プログノーシス
チェヴァリーパークS(英G1・芝6F)勝ちヴォルダやJRA3勝アヴィオールの半弟。牝祖Val d'Ericaは伊オークスや伊1000ギニーの勝ち馬。母父ObservatoryはQエリザベス二世S(英G1・芝8F)に勝ったマイラーだが、母系の奥は底力とスタミナに溢れる。ディープ産駒としても一瞬の斬れ味というよりは持続力に富む末脚で、近走の内容からもG1で格負けはないだろう。ただ母方のRobertoも表現された走りで、東京適性という点ではイクイやダノンやドウに譲るか。(距離◎スピード○底力◎コース○)



今年の秋天はもう水曜ぐらいから「藤岡祐介ジャックドールがどんなペースで逃げるのか」という話題でもちきりやったように思いますね

それはあらゆるファクターが満点に近い王者イクイノックスに対し、瞬発力特化のドウデュースか持続力特化のプログノーシスが120点を叩き出せるのかどうか、そこしかアップセットの目はないだろう…とみんな考えたからでしょう

私は60秒-57秒のレースになったときに、2頭が余力十分で同時に追い出したときに、21年日本ダービーの直線でほんの数完歩でイクイノックスを突き放したあのドウデュースの脚が再現されるのではないかと、そっちのアップセットに賭けてみたのですが、結果はご存じのとおり

ジャックドールはRoberto系の掻き込み小回り巧者というよりは母方の北米スピード由来の高速巡行力に本領があると書いてきましたが、ガイアフォースを交わしてハナに立つときに思った以上にスピードに乗ってしまったのか、公式レースラップは12.4-11.0-11.5-11.4-11.4-11.4-11.4-11.6-11.4-11.7(57.7-57.5)ですから、スタートからずっと高速巡行力全開で2000mを走ってしまった

いっぽうスタートが決まったイクイノックスは涼しい顔で3番手、母母ブランシェリーがHyperion4・6・6×7・8・8、自身はLyphard5・5×4のイクイノックスが、涼しい顔で3番手にいたのです

Lyphard+Hyperionのチャンピオン、OKハーツクライね

ルメールがそうイメージしたかどうかはわからないですが、いるべくしての3番手にはいきなり溜息が漏れましたね

思い起こせば、皐月賞でうなりながら先行してジオグリフに差されたときに「先々を見据えるならばこのケイバで間違ってない」と書いたものですが、ダービーは一転して16番手から追い込みドウデュースのクビ差2着

それから一年半後、4歳の秋にとうとう完成を迎えたかのような何とも凄い体で出てきて、57.7-57.5の秋天で涼しい顔で3番手、ああやっぱりハーツクライやったんや、とうとうハーツクライになってしまったんや

昨年はHalo≒Sir Ivor的にディープインパクトのように追い込んだワールドチャンピオンは、今年はLyphardとHyperionでハーツクライのように前受けで圧勝してしまいました



ドウデュースもイクイとは違った意味で素晴らしいパドックで、はちきれんばかりとはこのことやという馬体の張りで、映像を見ながら「いや~ついに毎日王冠になってしまったな」

急きょのピンチヒッターとなった戸崎としては、悠然と先行するイクイの直後をついて回るというのはひとまずベストな選択肢やったはずで、私は折り合いが心配やと思ったんですがこのペースですから引っかかることもなく、このペースでもイクイの後ろでうなっているというのが今のドウデュースの凄みなのだ、という言い方すらできたかと

しかし結果としては、イクイの直後でうなりながら削られつづけて追い出したときはもう完全にガス欠やったんですが、今日のペースだと仮にプログノーシスみたいに乗ったとしても、最後追い比べでプログノーシスの持続力のほうが先着しただろうと思います

イクイ以外の先行勢は総崩れで、後方にいたジャスティンパレスとプログノーシスの追い込みが2着3着に

この後先はプログが一歩先に動いたぶんという見立てもできますが、直線のフォームを見ても完歩の大きさが明らかに違っていて、東京の直線でナスペリオン(Nureyev)なストライドがHyperionなピッチを差したという2着争いだったかと

というわけでイクイノックスがハーツクライのように圧勝した秋天でしたが、北米短距離や北米2歳戦で活躍したダストアンドダイヤモンズやコーステッドにハーツクライを配して、ドウデュースもダノンベルーガも父よりは短い距離で俊敏に走れるし父よりは3歳時の完成度も高かったのですが、果たして5歳時に父のような本格化を辿るのか、ジャスタウェイやリスグラシューのような成長曲線を描くことができるのか、来年の秋天も今から楽しみですね

イクイノックスは一口ピック馬で配合についてはもう飽きるほどほめてきたので、そのあたりはこれまでのG1勝ちの回顧を読んでくださいということで、今週はJBCもBCも海外セリもあって時間がなさすぎるのでこれで終わりにします


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3 コメント

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Unknown ()
2023-11-06 15:17:32
イクイノックスの配合についてですが、異様な緊張のキングヘイロー→シャトーブランシュは緩和→イクイノックスで再び緊張のテンポであると言えますかね
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Unknown (MJ)
2023-11-06 17:55:29
そうとってもおかしくはないと思います
返信する
Unknown ()
2023-11-06 18:14:29
ありがとうございます。
返信する

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