第49回スプリンターズS回顧～女デュランダル、両方ぶっこ抜く

中山11R スプリンターズS
◎11.レッドオーヴァル
○7.ベルカント
▲8.ハクサンムーン
△2.ストレイトガール
×13.ミッキーアイル
ストレイトガールは体型に伸びが出てきて今は1400mぐらいがベストの加速に見えるし、ウリウリやミッキーアイルも1200mより1400mがベターで1200mだと馬場が渋ったほうが狙いやすい。香港のリッチタペストリーはデインヒル×サドラー×ガルチのイメージどおりのパワー型だろう。ハクサンムーンは腹を決めて前傾ラップで逃げまくったほうが怖さがあるし、ベルカントはラチを頼るのでここなら前走の再現も可能で、このバクシンオーの血を引く4枠2頭から狙う手もあるか。レッドオーヴァルは昨年のスプリンターズSでは好位抜け出しの横綱相撲でストレイトガールと接戦、その後は6戦して[0-0-1-5]と成績が上がっていないが、道悪や展開やペースに泣いて追い込み不発というレースつづきで、前走キーンランドCもウキノヨカゼが一気に捲ったときに内にいたので始動が遅れた。近6戦はいずれも明確な敗因があり、ここ2走のゴール前の脚色を見ると衰えは感じないし、6歳時についに安田記念を制したストロングリターンをはじめ、コートアウトの仔はみな成長力に富み晩成だ。昨年よりメンバーが強くなったとは思えず、今年は賞金的には除外対象だったがレーティング順位により滑り込み、そんな中で百戦錬磨の蛯名を確保できたという幸運(しかも主戦の田辺は結果的に今週騎乗停止)に乗ってみたくなった。昨年につづいて◎レッドオーヴァルでいこう。

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「アクティブミノルが後傾ラップで逃げ切るセントウルなんて、本番にはつながらへんで～」
「ウキヨノカゼが一気に捲りきってしまうキーンランドなんて、本番にはつながらへんで～」
「サクラゴスペルが抜け出して各馬脚余りまくりの京王杯SCなんて、本番にはつながらへんで～」

ところがところが、34.1-34.0という信じがたい後傾ラップとなったことで、キャレモンショコラが楽々と逃げ切った9R勝浦特別より遅い勝ち時計となったことで、ぬるい前哨戦が本番につながりまくってしまった今年のスプリンターズS

ハクサンムーンは敢然とハナに立ったように見えましたが、3F目を11.7とえらいペースダウンしていて、アクティブミノルがアッサリ引いたにしてもなんであんなに緩めてしまったのか、陣営はラストチャンスだから悔いのない逃げをと言ってましたが、もう若いころのように行かなくなっているんですかね…

ここもサクラゴスペルは京王杯と同じレースをしたといえるし、ウキヨノカゼはキーンランドと同じレースをしたといえるわけですが、勝ったストレイトガールも含め、1～3着馬はいずれも1400mベストというのが私の見立て

つまり1400mベスト型が息を入れて瞬発力や機動力を発揮できるレースになり、何というか朱鷺SをG1のメンツでやったようなレースだったのかと(^ ^;)

とりあえず各馬の血統については「重賞の見どころ」「競馬道OnLine」に書いたものを再掲します

ウリウリ
エンドレスノットの全妹で、母母リアルナンバーはヒルベルトレレナ大賞(亜G1・ダ1600m)勝ち馬。Halo≒Red God3×5・6のニアリークロスの影響で脚捌きに無駄がなく、ディープ牝駒としてはヴィルシーナ(Halo≒Red God3×4・5・6)などと近い機動力に富む脚質といえるが、フレンチデピュティやリアルナンバー(Ribot4×4)からパワーも強く受けて、道悪が上手だし短距離に対応できる加速をみせる。ベストコースは阪神内1400mだろうが、外回りのマイル戦でも超スローになると機動力で絶妙に立ち回るし、1200m戦でも道悪になればパワーで追い込んでくる。セントウルSは外枠なのにインに潜り込んだ岩田騎手の騎乗も圧巻だったが、1200mならばCBC賞のように馬場が渋ったほうが狙いやすい。

ストレイトガール
オースミフライトやオースミコスモの近親で、母ネヴァーピリオドは1200mで3勝。母がデインヒル経由のNorthern Dancerクロスを持つので、同じくフジキセキ産駒でヴィクトリアマイルに勝ったエイジアンウインズと似た配合パターンといえる。スプリンターズS2着に香港スプリント3着と短距離路線のトップを張ってきたが、前走セントウルSでは外枠もあったが以前ほどの行きっぷりが見られなかった。ヴィクトリアマイルでは好位で脚をタメで差し切ったように、体型に伸びも出てきて、今は1400mぐらいのほうが競馬がしやすいようにも思える。

ハクサンムーン
母チリエージェはサクラバクシンオー産駒らしい快速娘で全5勝を1400m以下であげた。その母メガミゲランも芝1200mのオープン特別を2勝した遅咲きのスプリンター。フォーティナイナーにさかのぼる父系もミスプロ系屈指のパワーとスプリントを誇る。若いころはアドマイヤムーンとバクシンオーの柔らかさが強く非力なところもあったが、デビュー当時から30キロ以上も体重が増えて一流スプリンターとして完成した。前走セントウルSはハナを譲って番手を楽に追走も、直線ではアッサリ後退。春の高松宮記念や13年スプリンターズSの踏ん張りを思い起こせば、もっと前傾ラップで逃げまくったほうが結果はついてくるかもしれない。

ベルカント
サクラバクシンオーの母母クリアアンバーはBull Lea3×3で、Alydarの母Sweet ToothもBull Lea3×3なので、Alydarの血を引く牝馬にバクシンオーを配合すると両者のパワーが伝わりやすく、パワーでゴリ押しするようなスプリンターが出る。ちなみに母系にAlydarを引くサクラバクシンオー産駒は、全29勝中26勝が1200m以下で、24勝が逃げ先行。北九州記念では好位から抜け出すという味な勝ち方で、ここへきてパワーアップと同時に脚質に幅も出てきた。サクラバクシンオーのA級スプリンターは、ショウナンカンプ然りシーイズトウショウ然りで、古馬になってスプリンターとしての筋力を増して完成することが多いから、この勢いは当然無視できない。

リッチタペストリー
北米G1サンタアニタスプリント選手権S(ダ6F)の勝ち馬。またオールウェザーのドバイゴールデンシャヒーンで2着があり、前走はシンガポールのG1クリスフライヤー国際スプリント(芝1200m)でエアロヴェロシティの5着。父ホーリーローマンエンペラーは香港年度代表馬デザンズオンロームの父として知られる。母母マーケットスライドは英2000ギニーのリフューズトゥベンド、メルボルンCのメディアパズルを産んだ名繁殖牝馬。ノーザンダンサー4・4×3を持つが、母母のところだけはノーザンダンサーが入らないので配合形は良い。デインヒル、サドラーズウェルズ、ガルチとパワー豊富な血が強く、やや硬めのパワー体質なので、高速馬場よりはダートや道悪に向いたタイプだろう。

ストレイトガールは道中はセントウルと同じぐらいの行きっぷりだったかな？ただ今日はウリウリとは内外のポジションが逆になったのと、セントウルより更にペースが緩んだことで脚が溜まり、直線でビュンと反応して馬群を割ってきました

同じフジキセキ牝駒で配合もよく似ているエイジアンウインズはスローのヴィクトリアマイルを1400m寄りの加速で抜け出してウオッカの追い込みを封じましたが、今日の勝利は1400mベスト(と私は今でも思っている)のデュランダルがスプリンターズとマイルCSの両方ぶっこ抜いたのと重なるところもあります

ただデュランダルの場合は、後方で自分のペースを守ることで、1200m戦も1600m戦も自ら1400m寄りのレースに手繰り寄せて追い込んでいるようなところはありました

もちろんストレイトガールの1400型としての卓越した能力は認めなければならないし、6歳にしてそういう馬に完成させた陣営の手腕も賞賛されるべきものですが、両方ぶっこ抜かれるというのはレースレベル的にはあまり高くないというべきでしょう

「サクラプレジデント産駒の騎手別成績を出してみると、騎乗数10以上の騎手の中では、戸崎が勝ち鞍数11で1位(横山典とタイ)、勝率22.9％で2位(1位は岩田の25.8％)、連対率37.5％で1位(2位は藤田の33.3％)と素晴らしい数字で、しかも単回値118複回値126と馬券的にもなかなか美味しい。そもそも癖馬だらけのサクラプレジデント産駒をフワッと乗りこなせる時点でそりゃ馬券的には美味しいわけですが、サクラゴスペルもサクラレグナムもサクラシャイニーも、この人が乗るようになってからもう一皮むけたという事実は見逃せないでしょう」(7/22雑感)

サクラプレジデント産駒といえば、T/Tのくせに短距離を唸りながら追い込む癖馬ビヨンジオールもノリの手綱で覚醒しましたが、サクラゴスペルは戸崎とのコンビでは[2.0.0.0]、そのゴスペルが好位で唸っている直後にいたのが戸崎ストレイトガールでした

ウキヨノカゼについてはキーンランドの回顧より再掲
「母父フサイチコンコルドだから機動力抜群でレースが上手」とクイーンCの回顧では書きましたが、ダノンカモンやクイーンズバーンを産んだ名繁殖シンコウエンジェル譲りの1400mのスピードと、バランスオブゲームやオースミハルカを出したフサイチコンコルド譲り(バレークイーン譲り)の機動力が武器で、バラゲーもハルカも札幌の重賞での4角でのスピードの乗りが秀逸でしたが、フサイチコンコルドは母父としてもジョーカプチーノやオースミイチバンなどに機動力を伝えています