第87回日本ダービー回顧~お家芸の集大成、ダコールの上にも10年

2020-06-01 08:13:07 | 血統予想

東京11R 日本ダービー
◎5.コントレイル
○10.コルテジア
▲15.サトノフラッグ
△17.ヴァルコス
「血統屋」POG書籍でも推奨したように、コントレイルの配合はデビュー前からずっとほめてきた。ディープ×アンブライドルズソングとディープ×ストームキャットというニックス二つを駆使しているだけでなく、母ロードクロサイトがアンブライドルド≒ジーノ2×3、インカンテーション4×5とそのニックスの根拠をクロスで増幅しているのが凄い。ダノンキングリーなどと配合のアウトラインは似ているが、アンブライドルド系の強靭さ頑強さが早期に表現されているぶん3歳春の時点での完成度も段違いだ。しなやかなだけでなく強靭さを感じさせる末脚は、アンブライドルズソングの傑作アロゲートをほうふつさせるものがある。
サトノフラッグは弥生賞→皐月賞の過程において、毎週ヒューイットソンが調教に乗ってやや攻めすぎたのも敗因ではないか。それでも皐月賞のパドックでは(横の比較で)一番良く見えたぐらいで素質は全くヒケをとらない。中距離×中距離×中距離の配合だから完成するのは菊花賞という気もするが、今回のほうが出来はいいし、スワーヴリチャードのように未完成のまま2着は十分。
ヴァルコスはダンスインザダークに似た長手の体型が大箱長丁場向きだし、ノヴェリスト産駒らしからぬしなやかな体質はさすがディープインパクトのウインドインハーヘア牝系。ちなみにノヴェリストの代表産駒ラストドラフトは母父がディープインパクトだ。1戦ごとに良化が感じられるし、一瞬の速い脚がないのでセントポーリアのような上がり特化だと踏み遅れてしまうが、外枠なら青葉賞のように向正面で押し上げる手がまた使える。
コルテジアは同じシンボリクリスエス産駒のエピファネイアと配合パターンが酷似していて、クリスエス≒ハビタットのニアリークロスで前駆のいい走りで京都外回りが鬼なのも似ている。皐月賞で荒れたインを走らされたのに頑張ったのはこれとヴェルトライゼンデだけで、しかもゴール前でヴェルトを差していたのはほめられる。ヴェルトやアルジャンナに勝っていれば3着争いの資格は十分だろう。中山より東京向きだし、この鞍上なら今度は積極策だろうし、前有利な展開馬場になりそうだし、コントレイルの先導役で直線先頭に立ってしまえば簡単には止まらないだろう。
サリオスは皐月賞で◎にしたが、その理由は3強の中で最も中山向きとみたからで、ここは能力で上位争いは可能だがオッズとのバランスでいうと無印としたい。◎→○▲△の馬券をいろいろ買いたい。

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あとNETKEIBAの全頭血統解説より、リード文と1~3着馬を

2000ベストの馬が勝ちやすいレース
母方の近い世代にマイラーの血が必要
ここ5年の勝ち馬でいうと、ダービー後に引退したロジャーバローズは置いておくとして、ワグネリアンもレイデオロもマカヒキもドゥラメンテも2400よりは2000がベターの中距離馬。5頭の父はディープインパクト3、キングカメハメハ2。ロジャーバローズの母父は一流マイラーだし、ワグネリアンの母母は猛烈な短距離の追い込み馬。レイデオロの母母は快速レディブロンドだし、マカヒキの母母はアルゼンチンのマイルG1に勝っている。「父が2400の大レース勝ち馬で、母父や母母がマイラー」という配合で、2000ベストの馬が勝ちやすいのがダービーというレースなのだ

コントレイル
母母Folkloreは北米2歳女王。ディープ×Storm CatにUnbridled's SongとRelaunchが入るド真ん中の黄金配合で、母ロードクロサイトはFappianoとIncantationのクロスを持ち、この黄金配合の根拠を更に増幅した形に。ダノンキングリーと似たタイプで大箱1800~2000最強だろうが、こちらのほうが締まりが強いぶん3歳春の完成度は高い。強靭かつしなやかなストライドはUnbridled's Song産駒の名馬アロゲートをもほうふつさせる。(距離○スピード◎底力◎コース◎)



サリオス
サラキアの3/4同血の弟で、サンタフェチーフの甥。母サロミナは独オークス(独G1・芝2200m)馬。母父Lomitasはドイツの年度代表馬でリーディングサイアー。父がハーツクライで母系にデインヒルとNiniskiが入るのはワーケアと同じで、最近は母方のデインヒルが表現されたハーツ産駒がよく走っている。ワーケア以上にデインヒル的パワーで走る馬だから、東京の斬れ勝負で逆転できるかとなると…。(距離○スピード◎底力◎コース○)



ヴェルトライゼンデ
ワールドプレミアやワールドエースの3/4弟で、欧G1を3勝したManduroの甥。母マンデラは独オークス(独G1・芝2200m)3着。母方にはドイツ血脈とHyperionのスタミナが強い。ドイツ血統特有の黒光りするしなやかな体質は兄たちと似て、ドリームジャーニー産駒としても重厚な走りを見せる。2400に延びるのはプラスだが、ワールドプレミアと似た成長曲線で完成するのはもっと先か。(距離◎スピード○底力◎コース○)



コントレイルの母母FolkloreはBCジュヴェナイルフィリーズなどに勝った北米2歳女王で、勝ち距離は5~8.5F、3歳時は一戦のみで引退しました

コントレイルはディープインパクト×Unbridled's Song×Folklore、デアリングタクトはエピファネイア×キングカメハメハ×デアリングハート(桜花賞2着)、3歳春にある程度完成の域に達して頂点を極めるには「1/4マイラー」の血が必要で、そこが素質を垣間見せながらも春は未完成で終わったサトノフラッグやスカイグルーヴとの違いともいえるかと

コントレイルはPOG推奨ですから配合については新馬を勝ったときからずっとほめちぎってますが、もう一度要点をまとめてみようと思うので、細かい配合の話は次エントリ(血統屋一口POG推奨報告)でやります

一言でいうと「ディープインパクト×Storm Cat」「ディープインパクト×Unbridled's Song」という二つのスーパーニックスを併せ持ち、しかもその根拠となるニアリークロスを母ロードクロサイトがクロスで持つ(Unbridled≒Jeano2×3とIncantation4×5)のが凄い

BCジュヴェナイルでもフロリダダービーでもウッドメモリアルでもいいですが、Unbridled's Songが走っている姿をみると容易にコントレイルと重ね合わせることができ、見た目とか体つきとかはよく似てますよね

それはロードクロサイトがUnbridled's Songの血を強力に増幅しているからに他ならないのですが、Unbridled's SongはいかにもUnbridled系らしいゴツゴツした走りで、そこがもっとしなやかで前がきれいに伸びるのはやっぱりディープ産駒だからで、Sir Ivor≒Incantation≒Sequilloのニアリー継続クロスやWild Risk系のクロスの影響というべきでしょう

ロードクロサイトの仔は上2頭(父ゴールドアリュールと父ダイワメジャー)もダートで勝ち上がっていますが、配合的にUnbridledのパワーを強く伝えるだけに、Incantationのクロスを最大限に活かせるディープとの配合でないとダートに振れる可能性も高い繁殖といえます(ダートの大物も出せる繁殖ともいえる)

『パーフェクト種牡馬辞典』の鼎談では「ダノンキングリーと似て東京1800最強だが、性能の高さで皐月もダービーも勝ち負けだろう」とコメントしておいたんですが、勝ち負けどころかぶっこ抜きの連続ですからね

ダノンキングリーとの違いは母がもつUnbridledのニアリークロスで、同時期のキングリーと比較してもUnbridled的に強靭なぶん、しなやかだけど緩さが皆無なぶん完成度が高いレースができる

だから一言コメントではずっと“強靭ダノンキングリー”と書いてきましたが、Unbridled's Songの強靭さで末脚を爆発させるという意味では“和製Arrogate”とも呼びたい馬です

ディープ×Storm CatからG1馬が出たのはキズナ、アユサン、ラキシスの2010年世代からで、ディープ×Unbridled's Song(アジアンミーティア)の最初の活躍馬は2008年産の初年度産駒ダコール

皐月賞の回顧では「ノースヒルズのお家芸の集大成といえる配合」と書きましたが、どこよりも先駆けてこの二つのニックスに注目し執着してきたのがノースヒルズだったのです

ダコールの妹ルシュクルにキズナを配したビアンフェで葵Sを快勝し、ルシュクルにディープインパクトを配したエントシャイデンで日曜京都メインも制し、太刀持ちと露払いを従えての横綱相撲でコントレイルが圧巻の二冠達成

急にどこかの真似したとかじゃなくて、アジアンミーティアやルシュクルやラヴェリータやライヴに毎年のようにディープを配し、10年前から狙いつづけてきたことの積み重ねであり集大成ですから、血統屋からみてもアッパレとしか言いようがないです



「残り400~200の加速はサリオスのほうが速く、坂を全力で駆け上がっていた」とMahmoudさんが分析してましたが、デインヒルが強く表現されているからこそ坂をパワーピッチで力強く一気に駆け上がることができる

いっぽうでハーツクライらしいナスペリオン的な末脚ではないので東京でコントレイルとの差が開いてしまったともいえ、そこはスワーヴリチャードやジャスタウェイなんかとはタイプが違うハーツですよね

牛じゃなくてデインヒルだから、コントレイルを負かすとしたら皐月賞しかないと思って◎にしたんですが、今日も3着以下は離しているし、サリオスが下げたというよりはコントレイルが東京で更に上げたというべきで、コントレイルがいなかったらサリオスが無敗の二冠馬ですからね

皐月賞当日の中山芝はインが死んでいたので、そこを通らされたヴェルトライゼンデとコルテジアは苦しくなり、外を回っていれば3着争いに加わっていたはずなのでこの巻き返しが穴とみたのですが、巻き返したのはヴェルトライゼンデのほうでした

これもPOG推奨で配合はもちろん、実馬もツアーで見たときから素晴らしい出来で、この年のサンデー募集馬の1人気になったのも納得

当時からドリームジャーニーらしからぬしなやかで重厚な歩きで(それは昨日のパドックでも全く変わらない)、ドリームジャーニーよりもワールドプレミアに近いタイプなので菊花賞だろうと以前から書いてきましたが、ここで半バレしたのもちょっと悲しいですね…

中距離×中距離×中距離のサトノフラッグは3歳春には完成度が低かった…と言ってしまえばそれまでですが、これも菊花賞の頃にはグンと良くなってくるだろうという期待は持ちつづけられる素材で、夏の充電と成長に期待しましょう

第80回皐月賞回顧~お家芸の集大成、規格外のぶっこ抜き
https://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/b982c08eee9fb7037fd99f8a244b4ba3


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17 コメント

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Unknown (ゆのまね)
2020-06-01 14:30:25
ダービーの総括、楽しくも悲しみを混えて読ませていただきました。
私はサリオスの一口を持っていますので今年のクラシックシーズン程、興奮冷めやらぬ年はありませんでした。
皐月賞は運が少しあれば勝てたのに、と悔しいやら悲しいやらでして。
ダービーは距離や枠順を考えて余程の幸運が必要だろうと腹を括って見ていました。
あの位置をコントレイルにとられた時点で半ば諦めましたが、サリオスが大外を駆け上がった時は力が入りました。
勝負の世界は厳しく、2着にはメダルがありません。再びG1を手繰りよせ、惜しまれつつ引退した暁には誰からも望まれる種牡馬として旅立ってもらいたいと願っています。
まだ現役途中ですが、出資馬という以上にこの馬のファンとして切に思っています。
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Unknown (Unknown)
2020-06-01 15:23:43
“太刀持ちと露払いを従えての横綱相撲”は痺れる表現です。
ダコールさっさんも、きっとコントレイルが本命ですね!
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Unknown (Unknown)
2020-06-01 17:48:31
2コーナーでのあのポジションはユタカのダンスインザダークと姿がダブり嫌な予感もしましたが杞憂に終わりました。今年のハイライトは1コーナーでチーム・ノースヒルズを形成できたことでしょうか?大きく右に寄れる仕草も改善されておらず最もサリオスに詰め寄られた坂上でスパート開始した場合だったでしょうか?トウルヌソル、サンデーサイレンスと同じように「6頭目」のダービー馬には大物が潜んでいるようですね。
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Unknown (松崎しげらない)
2020-06-01 18:59:17
コントレイルはRelaunch持ちなので、皐月賞のような後方一気より、ダービーのようにダラッと先行した方が良いのですかね?
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Unknown (MJ)
2020-06-01 19:38:52
まあ見てのとおり、末脚特化のタイプではないですよね
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Unknown (ホーガン)
2020-06-01 22:27:26
以前の福永Jでしたら、勝負から逃げたような末脚特化で乗ろうとした気がします。彼の成長というか、一番人気を背負う勝負師になったな〜と最近特に思い、嬉しいんですよね。
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Unknown (wunderblume)
2020-06-02 03:15:32
いつも楽しく拝読しております。
コントレイルは望田さんの目から見て、「なのにの名馬」となるのでしょうか?
現時点ではそこまでの評価はされていないと感じますが、その場合「なのに」とランクするにはどの点が足りないかも興味があります。
また気が早いですが、種牡馬となった際の可能性についてもうっすらと血統的展望があればお伺いしたいです。
リクエストばかりですみません。

>ホーガンさん
騎乗ぶりと勝利ジョッキーインタビューを見て、同じ感慨を得ました。
愛すべきキャラクターながら、騎手としては若い頃からさんざん騎乗ぶりを揶揄され、挫折も幾度となく経験し。自分なりの成長方法を模索し、近年は紛れもないトップジョッキーとはなったものの、どこか「まだ第一人者ではない」という印象を個人的には拭えないでいましたが、迷いのない騎乗と堂々とした余裕のある受け答えには、もう誰かの影を追う姿はなく、確固たる自信と自負が見えたように感じます。
武豊TVで豊に「なんでそんなに勝てるんすか?」と言っていた若い彼を見てその自虐に笑いながらも、もどかしさを感じていた競馬ファンとしては、それが今年のダービーで何より嬉しかったことでした。
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Unknown (MJ)
2020-06-02 08:14:18
そのあたりのことはおいおい書いていきますが、これぐらいエンジンがすごいのに祐一が好位で御せるほど折り合い面が安定してるんですよねこの馬
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Unknown (Unknown)
2020-06-02 08:36:37
菊花賞はリアルスティールの経験が役に立ちそうですよね。
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Unknown (Unknown)
2020-06-02 09:36:25
ルシュクルは姉かな・・
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