栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第40回フェブラリーS回顧~二代目アイアンホース、万全の取り口で

2023-02-20 00:47:54 | 血統予想

フェブラリーS
◎4.ドライスタウト
○7.レモンポップ
▲12.セキフウ
△6.メイショウハリオ
×2.シャールズスパイト
×11.ソリストサンダー
×14.ヘリオス
×15.レッドルゼル
今年はカフェファラオ級は不在で混戦だ。レモンポップは母父ジャイアンツコーズウェイに瓜二つのレースぶりで、安定感抜群の取り口で大勝ちはしないが連は外さない。乗りやすい馬だしテン乗りでも◎でいいと思っていたが、中間の映像を見ると前走と比較して馬体の張りは少し落ちる。調教もビッシリとはやってないし、上積みという点でどうなのか。
レッドルゼルは1400ベストで、フェブラリーだと最後前と同じ脚色になってしまう。一昨年◎で狙ったヘリオスはユタカが珍しく逃げ宣言も、短距離で速い馬がいるからそんなにペースは落とせないのではないか。
外枠を引いたセキフウの一発も考えたいが、ミルコの雑な騎乗にガッカリするぐらいなら、また川田にブロックされて前が壁になりそうでも、そこを割って差したすばるSが収穫だったドライスタウトが馬群を割るほうに賭けたい。短距離で活躍したマストバイアイテムに中距離のシニスターミニスターをかけて、マイルで好位差しがベストだろう。大跳びで実績どおり東京向き。混戦だけに前哨戦でいい負け方をした点を買った。シャールズスパイトは大箱は合いそうだが、速い馬場のほうが怖さはある。

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例によってNETKEIBAの全頭血統解説より導入文と1~3着を

東京マイルはナスキロとナスペリオン
近4年はStorm Catもちが勝利
スピードも要求される東京マイルで行われるダート王決定戦。22年と21年はカフェファラオ(父American Pharoah)、20年はモズアスット(母父ヘネシー)、19年はインティ(母母父Forestry)と、Storm Catの血を引く馬が4連勝中。この3頭はMiswakiやGone Westやアフリートといった「Mr.ProspectorとTom Foolとナスキロ」の組み合わせの血をもつという共通点もある。Nureyevの血も相変わらず有力で、イメージとしては、馬場が渋って軽くなるとStorm CatやA.P.Indyなどのナスキロ優勢で、良馬場ならキングカメハメハやゴールドアリュールのなどNureyev優勢。いつの時代も東京マイルはナスキロとナスペリオンなのだ。

レモンポップ
母母ハーピアはデインヒルの全妹でシャーリージョーンズH(米G3・ダ7F)勝ち馬。母父Giant's CausewayはStorm Catの代表産駒でマイル~10Fの大レースを勝ちまくった。父Lemon Drop KidはベルモントSに勝ったKingmambo産駒でビーチパトロールなどの父。安定の好位差しで大きくは勝たないが、決して連は外さないレースぶりは母父に瓜二つ(見た目も似ている)。ここも同じ取り口で、また熱い叩き合いを見せてくれるだろう。(距離◎スピード◎底力◎コース○)



レッドルゼル
フィルムフランセの半弟でレッドヴァンクールの甥でテーオーマルクスのイトコ。母フレンチノワールはフレンチデピュティ×フジキセキのダート黄金配合でJRA4勝(全てダート)。カナロア産駒はこのように母系にWar Relic≒Eight Thirty的な血が入ると、体質が締まり短距離とダートに振れやすい。差しが完全に板についてドバイでも凄い脚で追い込んでくるが、マイルのフェブラリーでは昨年も一昨年も前と同じ脚色になってしまった。(距離○スピード◎底力◎コース○)



メイショウハリオ
テーオーロイヤルの半弟で、メイショウカドマツやメイショウキョウジの甥で、4代母はCourtly Deeという名門牝系。父パイロはミューチャリーやデルマルーヴルなどを出すダートのトップサイアー。母母父がRoberto系でBold Rulerの継続クロスをもつので、機動力のある差しで軽い馬場が鬼の中距離馬。帝王賞を制しダート一線級にのし上がってきたが、東京マイルで後ろからズバっと差せるタイプだろうか。(距離○スピード○底力◎コース○)



終わってみれば5年連続Storm Catもちが勝ち、良馬場に乾いたからかNureyevもちのワンツーとなった今年のフェブラリーS

ドライスタウトとレッドルゼルは一口ピック馬なので、枠順が出てからは出資者たちと、どんな展開になればチャンスあるかな~みたいな話をよくしてました

たしかにドライスタウトの内枠は歓迎とはいえなかったけれど、すばるSでは川田に収納されてから最後割って伸びてきたし、レモンポップというこれ以上ない目標がいるんやから、戸崎はレモンの直後を取りにいくやろと言ってたんですよね

坂井瑠星は気鋭の若手ですが騎乗ぶりはなかなか老獪で、戦略やプランで乗る人で、だから枠順が決まったときに、この並びなら戸崎は必ずレモンの後ろを狙ってくるだろう…と読んだと思うんですよね、望田でもそう思ったぐらいやしね

レモンもドライもスタートは決まり、いつものように難なく好位につけるレモン、それを見ながら出していってレモンの後ろに付けようとする戸崎

しかし瑠星が巧かったのは、他の先行勢が内に寄せながら行くところをずっと真っすぐ走らせつづけて、そのためレモンの左にはずっとスペースができていて、さあ戸崎さんここに入れ、入ってこい…と誘導されたところに、噛み気味に出て行ったドライスタウトはまんまと収納されてしまった

こうなると46.6-49.0の前傾ラップですから、先行3頭は直線早々と止まりはじめるので、結果その後ろにいたドライスタウトはいったんレモンの外まで切り返さざるをえず、大跳びで長い直線でも加速に時間がかかるタイプだけに踏み遅れてしまったのは痛恨

ライバル封じの完ぺきな絵図を描き、それをテン乗りでみごとにやってのけたのは、操縦性抜群で乗りやすい馬ではありますがアッパレで、ここで坂井瑠星を起用したのは陣営のヒットでしょう

過去2年のフェブラリーでは直線半ばで前と同じ脚色になってしまったレッドルゼルは、今年は直線までタメにタメて、1F長いところを辛抱させて、前が止まるペースでそれが見事にハマったかに見えましたがさすが川田でした

力の足りない馬は追走で脚をなくしてしまうようなペースで流れ、大出遅れのメイショウハリオも地力で間に合ったという3着で、けっきょく1~4人気が1~4着を占める結果になりました

レモンポップについては、うちのブログの読者ならみんな同じように思うでしょうが、上の血統解説にも書いたように2~3代目に並ぶ祖先が名血ばかりで、それをNorthern Dancer5×4・5とBuckpasser4×5でオーソドックスにまとめていて、しかも非サンデーサイレンスですから種牡馬としての上積みというか余白が大な血統

加えてCharming Lassie≒A.P.Indyの3/4同血クロスやHarpia=デインヒルの全きょうだいクロスも容易に狙えるわけで、今からレモンポップ付けたいなあ~と言う生産者やオーナーは私の周りにも散見されますが、アポロキングダムの代表産駒アポロビビがCharming Lassie≒A.P.Indy3×3ですよね



あとGiant's Causewayという血もね、母父がGlorious Songの息子Rahyですから肌に回って優秀な血で、Giant's Causewayが母父というのも種牡馬レモンポップのセールスポイントのひとつだろうと

Giant's Causewayは通算[9-4-0-0]、“アイアンホース”の異名を取り、マイル~2000の大レースを勝ちまくり、常に番手や好位から絶妙のタイミングで抜け出して、競り合いに強く決して連は外さない安定感抜群の名馬でした

レモンポップは今日の勝利で通算[8-3-0-0]、見た目もLemon Drop KidではなくGiant's Causewayなんですが、サッと先行して好位につけ、万全の取り口で抜け出して叩き合いを制するレースぶりが本当に瓜二つで、あだ名をつけるなら「二代目アイアンホース」「デイン尻ジャイアン」ですかね

Giant's Causewayとレモンポップのレースの巧さは、Rahy~Blushing Groomのラインの美点やと思いますが、Blushing GroomってのはCandy Ride(母父Candy Stripes)なんかもそうですが、直父系はそんなに拡がっているわけではないんですが、肌に回ったほうが美点をよく伝えるといえるかもです(生産者にデクラレーションオブウォーをよく推してるのも、母父Rahyで肌に回っていいと思ってるからです)

ディープインパクト系とキングカメハメハ系の次はなんぞや?最良後継はどれなんや?みたいな質問をよくされるんですが、意外にちょいとお隣のブラックタイドやLemon Drop Kidの枝が拡がったりね、サラブレッドの父系ってそういうことあるんですよね

コメント (2)
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