阪神11Rエリザベス女王杯
◎6.ランブリングアレー
○3.アカイトリノムスメ
▲1.レイパパレ
△5.ステラリア
×7.シャムロックヒル
注9.ウインマリリン
このメンバーだとシャムロックかロザムールがハナで、レイパパレのルメールはその直後のインで折り合いをつける。前半はそんなに出入りはなさそうだから、3~4角の動きや捌きもポイントになりそうな阪神内2200のエリザベス女王杯。
ウインマリリンはオールカマーのパドックがはちきれそうな馬体で、レースでもグラスワンダーが降臨したのかと思うような力感溢れる走りだった。しかし一週前追いから陣営が泣きはじめており、馬体写真ひとつとっても前走が素晴らしすぎただけに一枚落ちる感は否めず…。
アカイトリノムスメはアパパネの娘らしいトムフール走法で俊敏自在。ルメールの直後で虎視眈々と立ち回るだろうが、阪神内2200はスタミナも要すレースになりがちだし、昨年だってスローをサラキアが2着に追い込んでいるのだから、ディープ産駒なら母系のスタミナが優位なランブリングアレーにひねる手はあるだろう。
今週の追い切りは軽めも、まさに友道の本番仕上げというべき無駄のない体つきで気配は絶好。逆にいうとオールカマーは一皮厚かったか。伯父で3/4同血のトーセンラーとスピルバーグは5歳時に本格化しマイルCSと秋天を勝った。母父がロベルト系なのでソコソコ小回りはきくし、吉田隼人とのコンビは[2-2-0-1]。1800~2000で逃げ切りと好位差しで勝ち、ヴィクトリアマイルを追い込んで2着。いろんなシーンを経験してきた百戦錬磨の馬と人が、ルメールと戸崎を前に見ながらどう立ち回るかに一票。
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例によってNETKEIBAの全頭血統解説より1~3着馬を
アカイイト
ステキナシャチョウの姪で、母ウアジェトはJRA2勝(芝1600~1800)。さかのぼるとTom Foolの母Gagaに辿り着く牝系だが、近親に目立った活躍馬はいない。キズナ×シンボリクリスエスはソングラインやロジーナと同じ。母系にSeattle SlewやNijinskyが入るので伸びのある体型で、ストライドでジワジワ追い込む脚質。府中牝馬Sも最後方から上がり3位の脚で追い込んでいたが、そんな脚質だけに阪神なら外回りがベターだろう。(距離○スピード○底力○コース○)
ステラリア
愛ダービー馬Jack Hobbsが出る牝系で、母ポリネイターはメイヒルS(英G2・芝8F)勝ち。母父Motivatorは英ダービー馬でタイトルホルダーやヴァンドギャルドの母父。本馬はStorm Cat≒Bluebirdのニアリークロスだが、母方のHyperion的持続力で走る中距離馬。エイシンヒテンをねじ伏せた忘れな草賞は地力の高さを感じさせた。秋華賞もジワジワ詰めてはいたが速い脚はなく、女版タイトルホルダーのイメージなので持続力勝負なら。(距離◎スピード○底力◎コース○)
クラヴェル
ドレッドノータス、ディアデルレイ、サンマルティン、カウディーリョの姪で、母ディアデラマドレは府中牝馬Sなど重賞3勝。母母ディアデラノビアはフローラSなど重賞3勝。エピファネイア×キングカメハメハはデアリングタクトやスカイグルーヴなどと同じで牝馬がよく走っている。古馬になって本格化し、デビュー時から馬体を40キロ近く増やして重賞の上位常連に。コース不問で追い込んでくるが、阪神内回りで大外一気でどこまで。(距離◎スピード○底力○コース○)
去年もスローやったけどサラキアが2着に追い込んできたし、阪神2200のG1やからスタミナも要すレースになるんやろな~という予感はあったんですが、前後半が59.0-12.3-60.8、ハナを争った2頭は惨敗で、3番手のウインマリリンも4番手のレイパパレも、それを負かしにいったアカイトリノムスメとランブリングアレーも、前の組はみんな直線苦しくなりました
レイパパレの解説では「理想はハナを切っての高速巡行押し切り」と書いておいたんですが、ルメールをもってしても控える形だとうなって力んでしまうし、もう思い切ってパンサラッサするしか手がないのかも…母ちゃんのシェルズレイもルメールとエリ女に出て、1000m57秒で逃げつぶれてましたが…
「昔の秋華賞みたいや」とMahmoudさんがつぶやいてましたが、ゴール前では後方待機組がドッと差してきて、アカイトリが前に並びかけたかのところへ、514キロのアカイイトが豪快に捲って先頭に躍り出たのがレースのハイライト
「中山の捲りは大型馬のほうが決まりやすい」というのは笠シショーの格言で、阪神内2200の前傾ラップを馬格とスタミナで捲り差したアカイイトが、父キズナに初のG1タイトルをもたらしたのです
何度かまとめたことがあるネタですが、種牡馬キズナはリーディング上位の中でも産駒の先行率が群を抜いており、勝ち馬率が高くてダートもよく走るし、Storm Cat的なスピードをよく伝えていて、Storm Catのスピードを中距離に定着させて成功している、という言い方でもいいですかね
産駒の配合においても、Storm Catの血脈構成、Storm Bird(≒Nijinsky)、Secretariat(≒Sir Gaylord,ナスキロ)、First Rose(≒Tom Fool)、Eight Thirty(≒War Relic≒Good Example)などを押さえた配合が成功しやすく、たとえばディープボンドなんてNorthern DancerとTom FoolとナスキロとEight Thirtyの組み合わせのニアリークロスを代々複雑に重ねていて、まさに村田牧場のStorm Cat×モガミヒメの手口そのものなんですよね
キズナ×シンボリクリスエスだとTom FoolとナスキロとEight Thirtyのクロスになるので、あとは他からNorthern Dancerのクロスをトッピングすればソングラインの出来上がりですが、アカイイトの場合は母母父Mud RouteがNijinskyのラインでStorm Bird≒Nijinsky4×6
あとアカイイトの配合で注目できるのは、牝系がTom Foolと同じで、牝祖Auntie BettyがTom Foolの母Gagaの3/4同血クロス3×4をもっていることですかね
クリスタルブラックが京成杯を豪快に差し切った直後の20年1月、石塚さんと「クリスタルブラックとアカイイトは母系にKris S.とNijinskyが入るのが同じで、ライバル(エピファネイア)の血を取り込む配合ってやっぱり代表産駒が出るんやなあ…」という話をしていて、クリスタルブラックは屈腱炎で長期休養に入っていますが、ここでアカイイトが大仕事をやってのけるとは
キズナ×タイキシャトルがクリスタルブラックやアブレイズが出て成功しているのも、ウェルシュマフィンの血脈構成がNijinskyとナスキロとRelicですからStorm Catとよく脈絡するわけで、タイキシャトル×Storm Catはメイショウボーラーとレッドスパーダが出て一世を風靡しました
思い起こせば18年秋のジェイエス繁殖セールにポリネイターが上場されていて、Motivatorの肌やし、一発ありそうな面白い繁殖やと某オーナーと某生産者と食指を伸ばしかけたんですよね
不受胎だったり仔が競走馬になれなかったりということがつづいていて、その年に久しぶりに父キズナの牝を産んでたんですが、けっきょく仔出しの悪さに二の足を踏んでしまったのが今でも悔やまれます(タイトルホルダーとメロディーレーンの母メーヴェも素晴らしいモチ肌ですが、仔出しそのものはあまりよくない)
ポリネイターにキズナが配されて産まれたステラリアも、Storm Cat≒Bluebirdのニアリークロス3×3、下は両者の母の組み合わせ血統表ですが、Storm Bird、Secretariat≒Sir Gaylord、First Rose≒Tom Fool≒Attica、Eight Thirtyが共通する密なニアリークロスです
POGでもモチ肌を指名しようと思っていた私は、ここは晩成ステイヤーっぽいタイトルホルダーよりもキズナ×ポリネイターのステラリアだろうと、今年のキズナはこれですよとイチオシしたんですが、そんな“女タイトルホルダー”というべきステラリアが、スタミナ勝負になってついにジワジワ差してきて、しかしそれを大外からぶっこ抜いたのがキズナ産駒やったというね
パドックはクラヴェルが一番よく見えると書いておきましたが、キズナ産駒ワンツーの3着がエピファネイア産駒というのも、ディアデアノビア→ディアデラマドレ→クラヴェルと母娘3代3着を達成してしまったというのも、血の因縁を感じずにはいられないエリ女でした
エピファネイア×キングカメハメハ×サンデーサイレンス、エピカメサンデーは成功するだろうと予言してきましたが、この配合はデアリングタクト、クラヴェル、スカイグルーヴ、ソネットフレーズと圧倒的に牝が走ってます
キズナとエピファネイアの種牡馬としての大成功は、Storm Catとスペシャルウィークの母父としての優秀さを抜きには語れず、いつも言うようにStorm Catが母父として優秀なのはSecretariatやPrincequilloが母父として優秀だからで、スペシャルウィークが母父として優秀なのはマルゼンスキーやBuckpasserとが母父として優秀だから
Motivator肌が優秀なのも、Lady Be Goodにさかのぼる牝系の良さもありますが、母父Gone Westの母父がSecretariatだからに他ならないのです