栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第38回フェブラリーS回顧~UnbridledとLady Be Goodが躍動

2021-02-22 12:56:06 | 血統予想

東京11R フェブラリーS
◎4.ヘリオス
○16.レッドルゼル
▲13.ソリストサンダー
スピードも要求される東京マイルのダート王決定戦。ストームキャットの血を引く馬が過去5年で3勝で、ゴールドアリュール産駒をはじめとするヌレイエフの血も例年上位を賑わせる。馬場が水分を含んで軽くなったときはストームキャット、乾いた状態ならばヌレイエフを重視というのが筆者のスタンスだ。あと血統とは関係ないが、ここ5年の勝ち馬のうちゴールドドリーム以外の4頭は前哨戦の根岸Sか東海Sを勝って挑んでいた。ダートと短距離は勢いも大事。
レッドルゼルの母フレンチノワールのフレンチデピュティ×フジキセキは一世を風靡したダート黄金配合で、そこにロードカナロアだからダートのスピード競馬に強い血統。川田がマイルまでにらんで差すケイバを教えてきて、前哨戦の根岸をみごとに差し切り。ただベストは1400だしストームキャットの血を引くから、欲をいえば雨が降って締まった馬場になってほしかったか。
カフェファラオはアメリカンファラオ産駒でエンパイアメーカーの父系だから、馬群で揉まれたり砂をかぶったりすると戦意喪失。だからチャンピオンズはルメールといえども外々を回すしか策がなかった。この枠順並びだとインの3列目になりそうで、砂をかぶってジッと我慢できるかどうか。馬具も工夫するようだがその効果やいかに。
ソリストサンダーは前走オープン特別を横綱相撲で完勝。今週の追い切りでも唸っていて、陣営も言うように今まさに絶好調だろう。脚長の直飛だし東京も合っているが、血統はトビーズコーナー×スペシャルウィーク×ブライアンズタイム、中距離×中距離×中距離でベスト距離は1800だと思う。
となると、良の東京マイルでどこから入るか。◎ヘリオスの根岸は直線何度も前がカベになり脚を余した。オリオールの血を引くシャンランの牝系だから、ああなると馬群を割りたがらないのかもしれないが、揉まれても詰まってもレースをやめなかったのは収穫といえる。これも母がフレンチデピュティ×フジキセキの黄金配合で、そこにオルフェーヴルだから売り出し中の砂の女王マルシュロレーヌと似た配合だ。ダ短距離に転じて軌道に乗ったが、血統や馬体や走りからはマイルに延びるのはむしろプラスとみたい。内枠に行く馬が揃ったので、その直後追走から直線外に持ち出せれば…という狙い。5歳オルフェの一発に期待したい。他となると拾い出したらキリがないし、抜けた馬不在の混戦だが印はこの3頭で。
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例によってNETKEIBAの全頭血統解説より

カフェファラオ
レイクプラシドS(米G2・芝8.5F)のRegal GloryやトランシルヴァニアS(米G3・芝8.5F)のNight Prowlerの半弟。母Mary's FolliesはミセスリヴェラS(米G2・芝8.5F)勝ち。父American Pharoahは北米三冠馬でダノンファラオの父。エンパイアメーカー系らしく馬群が苦手で、揉まれず先行か大外一気の二択に。チャンピオンズは外々を回って、さすがにあれで差せるほどの力はまだつけてないということか。ここもおそらく大外一気になるだろう。(距離○スピード○底力○コース◎)



エアスピネル
エアウィンザーの全兄で、エアシェイディの甥で、母エアメサイアは秋華賞馬。エアシャカールも近親で、ボールドルーラー的な機動力をよく伝える牝系だ。母母父ノーザンテーストの影響も強いマイラーっぽい体型で、Kingmamboのパワーの血を増幅した配合でもあり、プロキオンSや武蔵野Sではダートの脚捌きも上々。以前から中山記念型と書いているが、機動力が最大の武器だから大箱ワンターンよりは小回り一周で狙ってみたいタイプだ。(距離○スピード○底力○コース○)



ワンダーリーデル
母母オカノスピカはJRA5勝だが近親に目立った活躍馬はいない。父スタチューオブリバティはコヴェントリーS(英G3・芝6F)に勝ったスピード型で、アクティブミノルやキクノストームなどを出している。Storm CatとBlushing Groomが強いマイラーで、東京マイルは武蔵野S勝ちがあるベストコース。8歳でも衰えが見られないのはマヤノトップガンの血か。これも母がオリオールのニアリークロスなので馬群は苦手のようで、直線大外に出して差す一手。(距離◎スピード○底力○コース◎)



東京ダートは良馬場とはいえヒヤシンスの勝ち時計1.36.8も昨年のカフェファラオ(1.37.7)より1秒速いし(まあ今年のほうが前半が1秒ぐらい速いんですが)、終わってみれば1着3着はStorm Catもち、2着は芝でも重賞級、勝ち時計1.34.4は良馬場フェブラリー最速、良にしては時計が出やすい馬場やったのかなと思ってます

特にインが走りやすいバイアスやったようで、9Rヒヤシンスは逃げ粘るプロバーティオの最内をすくったラペルーズが差し切り、6Rは先行3頭の行った行った行ったでした

そのバイアスをみごとに突いたのがノリで、いつもワンパターン大外一気のワンダーリーデルをスタートからゴールまでラチ沿いを走らせつづけ、「完ぺきに乗れた」とコメントしているのはそういうことでしょう

しかしこの馬が内から差してくるとはかなり驚きで、初ブリンカーの効果も大きかったのかもしれないですが、こういうAureole魂の外差し馬が最内を突くと(ラチ沿いは視界が開けているので)我慢して差してしまうシーンというのはたまにありますな…しかし高齢トップガンの一発は怖い

エアスピネルはアイドリーム牝系らしい小脚つかいで、東京マイルをストライドで差してくるイメージは全くわかなかったのですが(^ ^;)、これもノリの直後をインベタでついて回ったのがまず大きかった

あと直線半ばまで前カベで追い出しを待たされたのも、ピッチ加速で長く惰性で伸びるわけではない末脚の質からすればむしろよかったのでは…あれ最初から開いてて、残り500mから全開になったら、ゴールまで伸びつづけたかというとそうでもない気がするんですよね

そういう意味では、大外16番を引いてしまい最後まで内には入れられなかった(入れる気もなかったでしょうが)レッドルゼルは、最後同じ脚になったのは1400ベストというのもあるでしょうが、内容としては2番目に強かったといえるのではないかと

ヘリオスは4角で一杯ですから力負けといえばそれまでですが、これもAureole魂が強いシャンランの牝系ですからね、ショウナンアルバやショウナンタレントみたいに4角先頭ぐらいでないとやめちゃうのはやめちゃうんでしょう

カフェファラオはAmerican Pharoah産駒らしいエンパイアメーカー系らしい気性で、馬群で揉まれたり砂をかぶったりすると戦意喪失する気性で、2番枠のJDDはもう途中から手応えが怪しく、チャンピオンズもずっと外々を回りつづけるしか策がなかった

ここは1番2番と4番5番ができれば行ききりたい揉まれ弱い先行馬で、その4頭に挟まれた3番となると、どれが行ってどれが控えるにしても3列目のインで砂をかぶりながら我慢するしか手がなく、今までのレースぶりを思い起こせばそれで直線まで我慢できるのかと、ルメール騎乗で1人気が予想されただけにそこは斜めに構えたくなりました

実際3列目インになったんですが、幸運やったのはサクセスエナジーが出遅れたこととインティのユタカが最初から差しに回ったこと、先行4頭のうち2頭が消えたことで、離れた3番手で砂をかぶらず追走できました

そのため道中の行きっぷりは上々で、真横にいたヘリオスもAureole魂なので内には入れたくないですから、ラチ沿いをスイスイ押し上げていくと前にも横にも馬がいない3番手、こりゃカフェが勝つわというポジションを中盤にしてゲットできたのです

緩みないペースのバラけた3番手というのはまさにアメリカ競馬のウイニングポジションといえ、東京マイルで北米の名血に跨ったフレンチの鉄人は、最高にアメリカンなケイバをさせてみごとに1人気に応えました

そして異例ともいえる長期厩舎滞在で、ルメールとミーティングを重ねながら馬具を工夫し、ややこしい気性のカフェファラオをどうやってマジメに走らせるかに尽力し、名門厩舎の本気を見せつけられたフェブラリーでもありました

いつものようにG1レース後はいろんな人とあれこれ回顧してたら中京最終が走り出して、ピック馬レッドブロンクスがエピファ産駒らしく内々で砂をかぶって手応えが悪く、あ~あ今日は人気を裏切りそうやと思っていたら、直線でひょいと外に出すチャンスがあり、そこからはしっかり伸びて2着確保

Aureole魂でもエンパイア魂でもアフリート魂でも、いつもいつも単騎で逃げることはできないし外枠を引くとも限らないので、馬群をこじ開けたり狭いところに突っ込んでいったりということまではできなくても、道中我慢して下がらず追走できればどこかで絶ポジになるチャンスはあるので、カフェファラオをそういう馬にした陣営の勝利でもあったと思います(「まだ馬が自ら喜んで走っている状態ではない」とはレース後の堀先生のコメント)



「Unbridledってのはミスプロ系でもKingmamboと並んで大一番に強いし実に底力がある血。ミスプロ系の頂点にそびえ立つ名配合、サンデーサイレンスやブライアンズタイムに比肩する名配合と言っていいでしょう」(望田bot)

これはダノンプラチナが勝った朝日杯の回顧で書いたやつかな、その名配合Unbridledの血脈構成をIn RealityとBuckpasserのクロスを中心に綿密に増幅しているのがエンパイアメーカーで(Unbridled's Songは増幅ではなくNasrullahとCequillo≒Incantationにひねっている)、Pioneerof the Nile~American Pharoahを幹に北米で父系を伸ばしつづけています

Pioneerof the NileもAmerican Pharoahも強いクロスをもたないアウトブリードなので、活力旺盛なエンパイアメーカーの遺産で2世代食ってきたといえますが、さすがにAmerican Pharoahの産駒の代ではそろそろ強いクロスが渇望されてくる

カフェファラオの母Mary's FolliesはミセスリヴェラS(米G2・芝8.5F)勝ち馬で、クロスはMr.Prospector4×3とBuckpasser5×4・5、ザックリいうとWoodmanとMiswakiとWavering Monarchを通じるRaise a NativeとNasrullahとBuckpasser的な組み合わせのクロスで、そこにBetter Self×Belle of TroyのBest Sideや、Better Self×Eight ThirtyのLady Be Goodや、War Relic3×3のIn Realityが絡むという配合

特にBuckpasserの有能な娘3頭を通じるクロスは魅力で、産駒がみんな重賞を勝っても驚けないぐらい繁殖としては有能な配合をしています

エンパイアメーカーじいちゃんの遺産を食いつぶした(というと語弊があり、クロス以外にやるべきことはやってる配合なのですが)American Pharoahと、エンパイアメーカーの血脈構成を綿密強力にクロスするMary's Folliesとの配合で、カフェファラオは生み出された

そんな話はユニコーンの後にも詳しく書いてましたね
https://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/dab93c88d21158982671121555a49652

特に注目できるのは、上でも書いたUnbridledとWavering Monarchを通じるCharedi≒Uncommittedのクロスで、向こうで走ってるAmerican Pharoah産駒の血統表をみると、米G1アメリカンファラオS2着American Theorem、G1ラブレアS3着Merneithの母系にもWavering Monarchの名があるんですよね







そして今年からブリーダーズで供用されるフォーウィールドライブFour Wheel Drive(通算4戦3勝でBCJターフスプリント勝ち)、これが母父More Than Readyで母母母父Zilzalで母はMr.Prospector4×3なので、カフェファラオと酷似した配合なんですよね(ZilzalはWavering Monarchと同じLady Be Good牝系)

私もゼンノロブロイ(マイニングはLady Be Good牝系)の肌にダンカークを配したり、ダノンレジェンド×ダンカーク(キングヘイロー)がブレイクするかもみたいな話を浦河の生産者としてるんですが、ヒヤシンスを勝ったラペルーズはエンパイアメーカーをマイニング≒タラズチャーマーのニアリークロス4×4でサンドイッチした腰が抜けそうな配合で、ペルーサ産駒が北米に殴り込みというのも痛快ですな(・∀・)





そんなわけで、すでに9Rから、UnbridledとLady Be Goodが躍動していた日曜の東京でした

コメント
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