栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

天皇賞・春回顧~田辺の丁寧さと、Princely Giftの“下る力”が一角を崩す

2014-05-05 21:05:15 | 血統予想

京都11R 天皇賞
◎18.デスペラード
○14.キズナ
▲7.フェノーメノ
△8.ゴールドシップ
△12.ウインバリアシオン
×17.ヒットザターゲット
二冠馬ネオユニヴァースは典型的な中距離馬で、皐月賞ではサクラプレジデントに競り勝ち、ダービーではゼンノロブロイをねじ伏せたが、菊はザッツザプレンティの捲りを追いかけたものの、あと200mで一杯になってリンカーンにも差されてしまった。翌年は始動戦の大阪杯を59キロで完勝、続く春天では2人気に支持されるも、イングランディーレの大逃げの前に10着に沈んだ。しかし息子のデスペラードは母から濃厚なスタミナを受けて晩成ステイヤーと化し、6歳春にようやく完成のときを迎え、先週も今週もうなっていると表現するしかない凄い追い切りをこなし、イングランディーレで逃げ切った天才騎手を背に、淀の長距離決戦に歩を進めてくる。父や母のコピーはつくれない、父や母を超えるためには、何か新たな強さを身につけて変化していかなければならない、サラブレッドの配合とはそういうものだ。だからネオユニヴァースにスタミナを入れすぎてクラシックの晴れ舞台とは無縁だったデスペラードが、雌伏3年のときを経て、父が苦手とした淀の長距離戦で、父がスタミナ切れを起こした残り200mで先頭に立ち、母から受けたおびただしい数のハイペリオンを最後の一滴まで振り絞り、ダービーや皐月賞で脚光を浴びてきた馬たちを撃破する、そんなことが時にはあってもいいだろう。マイネルキッツやジャガーメイルが、ヒルノダムールやビートブラックが、ついに勲章を手にする、そんなレースが一つぐらいはあってもいい。

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キズナはゴール前で内からホッコーブレーヴに交わされた絵面が悪くて、誤解を恐れずにいえば、あの絵面だけで「意外に伸びなかった」と言う人が多いんじゃないかと思います

でももともとこの馬はナスキロ的斬れとハイインロー的持続力が幹の配合で、ジェンティルドンナやトーセンラーのようにFair Trial的なところはいじってないので、ディープA級産駒のなかでは俊敏さや脚の回転はそんなに速いほうではありません

だからこそ東京や外回りで持続力を要求されるレースになったときにベストパフォーマンスを叩き出してきたわけで、大阪杯では内回りの4角でこれまでにない反応をみせた点に成長がうかがえたものの、それでも本質は大きくは変わらないというべきで、だから上がりが11.0-11.7と速くなっても最後ジワジワ詰めてきたというのは、やっぱり3歳時よりは着実に成長しとるんやなあ~というのが私の感想

4角ではウインバリアシオンの直後にキズナが取りついていたのですが、そこからの加速の仕方や末脚の伸ばし方に両者のキャラの違いが浮き彫りになっていて、残り400~200m、上がり11.1の最速ラップのところでは明らかにウインの加速が上回っていてキズナは半馬身ぐらい離されてしまうんですが、200m~ゴールまでの11.7のところではクビ差まで詰めてるんですね

あの最速ラップのところで11秒を切るラップでビュンと急加速できないのがキズナであり、しかしラスト1Fの脚色は1,2着馬より優っているわけで、だから繰り返しますが横にいるホッコーがラスト1Fでかなり斬れているので伸びてないような錯覚を起こしてしまうのであって、2000mや2400mを走っているときと比較しても、決してバテているわけでも、脚色が鈍っているわけでもないと思います(しかも後述しますが、ホッコーは勝負どころで脚温存してますから)

単純にフェノーメノとの着差だけでいうと昨年のトーセンラー以上には駆けているわけで、ディープの最強牡駒といえるだけの走りはみせたと思うし、上がりが11.8-12.0ぐらいだったならば結果はもうちょっと違ったかもしれませんよ

フェノーメノとウインバリアシオンとゴールドシップについては、「血統クリニック」で書いたことに特に付け足すことはないのでそちらを読んでくださいということで、あとは1文字も触れられていない(^ ^;)ホッコーブレーヴについて書いておきます

今の京都のイン伸び高速馬場において、4強の中ではフェノーメノだけが道中ラチ沿いを走りつづけ、直線もスムーズに外に持ちだしながら追い出すというロスのないレース運びで、いつもにも増して出遅れてしまったゴールドシップや勝負どころから外々を回らざるをえなかったウインバリアシオンやキズナに対しては、これがアドバンテージになっていたことは明白でした

そしてフェノーメノの直後のラチ沿いをずっとついて回って、直線もフェノーメノが抜けたあとを追い出してきたのがホッコーブレーヴで、つまりフェノーメノと全く同じコースロスのない競馬で、2,4着馬が脚を使っていた3~4角でジッとしていられたことが、賞味残り400mに末脚を凝縮することができたことがあのゴール前の斬れ味につながったのはたしかで、そこは田辺のソツのなさが光りました

大一番でレースを動かしたり主導権をつかんだり、そういう戦略的なファインプレーはまだあんまりみられませんが、見た目や言動とは裏腹に実に丁寧に乗るジョッキーで、丁寧すぎるのが逆に物足りないときもあるぐらいですが、今日のホッコーブレーヴの騎乗はほんとに丁寧でソツがなかった

そして丁寧に脚を温存されたことでホッコーブレーヴも持ち前の斬れ味を存分に発揮、この斬れ味はHalo≒Drone3×4だけでなく、母母に入るサクラショウリやPrincely Giftの柔らかさ由来で、だから一言コメントでは“桜勝利的柔斬”と書いたのです
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102064/

パーソロン、フォルティノ、Princely Giftというのはフレンチな斬れ味のイメージで、ダービー馬サクラショウリは父や母父として平坦向きの少し非力な差し馬をよく出しましたが、ホッコーブレーヴが東京や新潟を専門に使われてきたのは左回りが得意だからというよりも、直線が長くて急坂がないコースが合うからで、右回りでも下級条件ですが小倉2600mを凄い追い込みで勝ってます

そういう平坦向きの斬れ味で東京2400mを追い込んでいた馬が、ウインバリアシオンのひと捲りの恩恵があったとはいえ中山内回りで鋭く斬れたのですから、日経賞2着は実は成長の証だったということで、そこを見抜けなかったのは節穴だったと言われても仕方ないですね…

そしてホッコーブレーヴの柔らかな体質と前駆がきれいに伸びるフォームにはPrincely Giftの影響も少なからず感じられますが、先日も書いたように京都の長丁場はPrincely Gift的な“下る力”がモノをいうのだということを、改めて思い知らされた春天でもありました

デスペラードはペースアップしたところでアッという間に圏外へ、負けるにしても内容が悪すぎてちょっとコメントのしようもなく、まあノリらしいといえばそれまでなんですが(^ ^;)、ただまともに走ったとしても、この上がりではステイヤーらしさで勝ち負けするのは難しかったんじゃないかと

日経賞組が上位を独占、“柔肉デインヒル”と“胴長しなやかStorm Bird”の叩き合い、Princely Gift持ちの1,3着、超高速馬場の春天において要求されるものは何なのか、いろいろと示唆に富んだ結果ではあったと思います

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かしわ記念かんたん回顧など

2014-05-05 18:26:43 | 血統予想

毎年母の日は実家にいることが多いので、握力が衰えてきたオカン用に、ビンやペットベトルのフタが簡単に開けられる例のやつを通販購入
神様、私なりに小さな善行もしておりますので、今週は何とぞ馬券の方でよろしく…(^ ^;)

本日18時更新のNETKEIBA「重賞の見どころ」では、NHKマイルCと京都新聞杯と新潟大賞典の人気どころの血統解説をしています
「血統クリニック」の対象レースはNHKマイルCです、今週もよろしくお願いします

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ここ数年のかしわ記念はエスポワールシチーとフリオーソの、「ブライアンズタイム+Nureyev、骨肉の争い」が繰り広げられてきたわけですが、コパノリッキーはゴールドアリュール産駒で母系にRobertoが入るのはエスポやオーロマイスターと同じで、いつも書くようにこの配合はNureyevとRobertoを通じるNantallah≒Nashuaのニアリークロスが両者のパワーをONにするので、小回りを先行捲るようなパワーと機動力に持ち味があるのです

エスポワールシチーとコパノリッキーとオーロマイスターは配合的にやってることはだいたい同じで、脚質的にもだいたい同じで、どちらかというと小回りに向いた先行捲りというのが私の見立て

昨年の兵庫Cでも逃げ切りといっても、4角の加速でベストウォーリアを圧倒していて、あそこで差を広げていて、逃げて捲ってるような勝ち方やったんですよね~

だから今日のひと捲りこそこの血統・配合の本領というべきで、むしろフェブラリーがスローすぎて、「東京のドスローで機動力型がくるパターン」やったと思うのですよ

春天の回顧は夕飯食ってから書きます~

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5/3,4の血統屋コンテンツ推奨馬の結果速報

2014-05-05 15:33:00 | POG

NETKEIBAの原稿がやっとこかたづいたので、春天の回顧を書こうかと思ったらかしわ記念のTV中継が始まるんですね(^ ^;)これ見てから…

■『ディープインパクト好配合リスト』で望田潤が推奨したリリコイパイ(牝3歳)が土曜京都3R未勝利戦(芝1800m)を勝ちました。

◎リリコイパイ(牝 母クイーンカアフマヌ)
カナロアの全妹。母はNureyev≒Sadler's Wells4×3にRaise a Native4×4とクロスを重ね、一方でKing's Bestの母のドイツ血脈を1/4異系とする好配合。ディープとの配合がベストではないかもしれないが、オープン馬を産んで当然のポテンシャルを秘める繁殖だ。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011100783/

■土曜京都7R3歳500万下 ベアトリッツ(ディープ好配合・栗山)
■土曜東京11R青葉賞 2着 ワールドインパクト(一口・栗山/ディープ好配合・栗山)

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「血統クリニック」天皇賞(春)再掲

2014-05-05 09:34:19 | 血統予想

昨日も飲みすぎてしまいさっき起きたところで、とりあえず「血統クリニック」を再掲しますが、これから今週の重賞登録馬のメンツをチェックして3重賞の有力馬の血統解説を書かなければならず、レースをジックリ見直しての回顧は夕方以降にやりたいと思います

デスペラードは見せ場もなく沈んでしまいましたが、ペースアップしたときに何も反応がなくアクシデントでもあったのかと心配になるほどの見せ場のなさ(^ ^;)

ゴール前の2Fが11.1-11.7ですから伏兵がスタミナだけで食い下がれる余地はなく、一応は人気馬の末脚比べの形にはなりました

そして4強のなかではフェノーメノだけが好位を進みフェノーメノだけが直線までインベタで回ってきて、今の京都ではこのアドバンテージは、クビ・ハナ・1/2の接戦になっただけに大きかったというべきでしょう

キズナとゴールドシップの持続型の差しでは前と同じ脚で伸びつづけるのが精一杯でしたが、下りからの加速で前との差を思ったほど詰められなかったというか、詰めさせなかったフェノーメノとウインバリアシオンの“下る力”と“機動力”が上回った、というレースでもあったかなと

ちなみにホッコーブレーヴについては…あれ何にも書いてない(^ ^;)

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デスペラード
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100484/
6代母Marche LorraineがDark Legend3×4で元来スタミナがある牝系に、Damascus、His Majesty、Northern Dancer、ブライアンズタイムと配されてきた母母マイネキャロルは、Graustark=His Majesty3×3だから“スタミナのある鈍重なナリタブライアン”という配合。そこにトニービンが配されたマイネノエルはHyperion4・6・6×6・7・7(血量4×4)、そこに5代アウトのネオユニヴァースが配されて「3/4Hyperion,1/4米」となったのがデスペラードで、サンデーサイレンス、トニービン、ブライアンズタイムという「ノーザンテースト以降」を担ってきた3巨頭の血を、Hyperion系の継続クロスについての緊張→緩和で融合させている。
ダートの追い込み馬として着々と地力を蓄え、晩成ステイヤー血統が開花してきたのを見計らったかのようなタイミングの芝転向と距離延長で一線級のステイヤーにのし上がり、最近は脚質に幅も出て今や堂々のトップグループに数えられる存在になった。改めてこの馬の戦績を振り返ると、ユタカ、ミルコ、そしてノリと、名手との出会いがそれぞれ重要な転機になっていることがハッキリ見てとれるし、安達厩舎は地味だがエスポワールシチー、バンブーエール、ヤマトマリオンなど息の長いダート馬を育てる手腕には定評がある。後駆のつくりはネオユニとブライアンズタイム譲りで、中山の急坂を抜け出してくるときの蹴りの強さがすさまじい。体質や脚質はかなりHyperion的でしなやかに優雅に大きく動けるタイプではないが、持続力は相当なもので、京都記念はスローで逃げたノリの作戦勝ちではあるのだが、直線ではトゥザグローリーにいったん交わされ、ゴール前ではトーセンラーに並びかけられ、しかしこの馬はどこかでビュンと速い脚を使うわけでもなく、機械のように同じピッチでゴールまで走りつづけ、そして最後の200mは後続のどの馬よりもこの馬の脚色がよかった。実にステイヤー然とした勝ち方だったと思うし、前で受けてこういう勝ち方ができるのだ…という感触をノリが得たことが大きい。大一番を前にして、デスペラードはHyperion的な脚質の晩成ステイヤーなのだということを、天才騎手が肌で感じ取ったであろうことが何よりも大きい。

フェノーメノ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106599/
JC2着Indigenousの甥で、近親にコロネーションS(英G1・芝8F)のNanninaなどが出る。母母Sea PortはNearco3×5、Pharos=Fairway4・6×5・6・6、そこにNatalma3×3のデインヒルが配されて、母ディラローシェはRibot4×4。代々4×4レベルのクロスを重ねて緊張状態できたディラローシェに、父も母も自身も強いクロスを持たないステイゴールドを配し、自身は「3/4欧,1/4米」の配合形。一方でFlower Bowl、Tudor Minstrel、Heliopolisと「HyperionとSwynford」的な組み合わせを重ねることによって、ステイゴールドからみるとLady Angela的頑強さをONにすることに成功している…というのが本馬の配合のあらすじといえる。母系にデインヒルが入るのはナカヤマフェスタと同じで、母がRibot系のクロスを持つのも同じ(ナカヤマフェスタの母はHis Majesty2×4)。デインヒルはNorthern DancerとFlower Bowl(Alibhai+Mahmoud)とHeliopolisを持つので、Dixieland Band(レッドリヴェールの母父)とも血脈構成が似ている。
体型はデインヒルそのもので典型的な中距離馬と言っていいだろうが、体質はナカヤマフェスタ以上にしなやかで、デインヒル的な掻き込み走法がONになっておらず前駆をきれいに伸ばして走れる。だから字面の血統以上に高速馬場への適性が高いし、東京で斬れる脚を使えるし京都外回りの坂をスムーズに下って惰性で流れ込める。もちろんHyperion的な粘着力も持ち合わせており、高速馬場を好位で立ち回れる機動力と、3角からスムーズに下る力と、そして直線先頭に立っての粘り腰、この三つが噛み合っての昨年の春天勝ちだったと思う。前走の敗因は仕上げが甘かったことに尽きるだろう。鉄砲は走る馬だが、それだけにセントライト→秋天→JC、日経賞→春天→宝塚と叩き3走目には下降線に入る傾向もあり、だから今年は休み明けは仕上げすぎずに春天と宝塚でデキ上昇という目論見があったかもしれない。先週今週の動きは絶好調時のそれに見え、思惑どおり上り調子でここに挑んでくる。蛯名ダンスについては相変わらず否定的な見方をする人が多く筆者もその一人だが、先日の皐月賞などは大レースの勝ち方を知っているベテランらしいいぶし銀の騎乗で、手の内に入れている馬で大一番を狙ってきたときには今でも頼りになる存在には違いない。ステイゴールドの大物牡駒は概ね5歳時に全盛期を迎えるぐらいの成長力があるから、ここは昨年と同じかそれ以上のパフォーマンスも想定した印。当たり外れは別にして、この馬を軸にして馬券を買って蛯名の目線で、レースの流れや周りの動きをうかがいながら観戦するのが一番面白いかもしれない。

キズナ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010105827/
ファレノプシスの半弟でナリタブライアン、ビワハヤヒデのイトコ。ディープ×Storm Catはアユサン、ラキシス=サトノアラジン、ヒラボクディープ、ラングレーなどと同じで、ナスキロ柔い体質のストレッチランナーに出やすい配合だ。本馬の場合は母がEight Thirty≒Speed Boatのニアリークロス、自身がBurghclere≒Fijiのニアリークロスをもつことで、体質が柔らかくなりすぎず適度に頑強なのがよく、ロンシャンのタフな馬場でもシッカリした脚どりで走っていた。
トーセンラー(Vaguely Noble)、ワールドエース(3代母Alycidon=Acropolis4×3)、スマートレイアー(Ela-Mana-Mou)、ラストインパクト(Fiji)、ウリウリ(Fair Alycia)、フィエロ(Fair Alycia)など、Burghclereのニアリークロスを持つディープ産駒が歩調を合わせるかのように古馬になって一皮むけてくるのはさすがと言うしかない。キズナの大阪杯にしても、これまで内回りの4角ではエピファネイアに置き去りにされていたのに同じぐらいの加速でついて回ったのにまず驚かされた。あの4角での加速に明らかな成長がみてとれるし、今ならばナリタブライアンやビワハヤヒデのように4角先頭でねじ伏せるような競馬も可能ではないか。2000~2400mベストの典型的な中距離馬だが、トーセンラーよりは距離適性そのものは長めだし折り合いはつく馬だから、距離延長を割り引く必要はないだろう。ただ一瞬の鋭さではなく持続力に長けた末脚が武器なので、スローの上がりだけの競馬よりはある程度ロンスパ戦になってほしいところ。

ウインバリアシオン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103206/
米2歳女王Countess Dianaなどが出る牝系で、Battle Joined、Wise Exchange、Dancing Count、Time for a Change、Storm Birdと、比較的地味だがあまり悪い影響は及ぼさない北米血脈が代々重ねられてきて、母母カウントオンアチェンジはDancing Countの欧血を1/4異系とする「3/4米,1/4欧」、母スーパーバレリーナはNorthern Dancerを1/4異系とする「3/4米,1/4欧」で、そこに「1/2米,1/2欧」のハーツクライが配されて、自身は「3/4米,1/4欧」となり、クロスがNorthern Dancer5×3・5(LyphardとDancing Countを通じるNorthern DancerとCourt Martialのクロス)。Promised Land5×6やNothirdchance≒Revokedの薄いクロスなどもあり、母方からNorthern Dancerと米血を重ねてハーツクライの開花を早めようとした配合で、晩成のハーツクライ産駒ながらダービーで2着したのも納得できるものはある。
古馬になってトモや腰がパンとして、先行力や機動力を増してきて本格化する、というのがハーツ産駒のスタンダードな成長曲線。本馬も3歳時はPromised Landクロスらしい斬れでダービーや菊を追い込んでいたが、ここ2走中山内回りでみせた捲りは実に鮮やかで、ハーツ産駒にしては3歳時の完成度は高かったほうだが、後駆のパワーアップがここへきての機動力アップにつながっているのはたしかだ。母系の血からもギュスターヴクライやアドマイヤラクティのようなステイヤーではないのだろうが、この時期の京都高速馬場の3200mはトーセンラーのようなマイラー寄り中距離馬でも好走可能な舞台だから、距離延長で割り引く必要はないだろう。高速馬場における機動力はキズナやゴールドシップより上で、ピンチヒッターのシュタルケがそれを活かせるような絵を描いて乗れるかどうか、そこが一つポイントになってきそうだ。

ゴールドシップ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102739/
ステイゴールド×メジロマックイーンの黄金配合で、オルフェーヴルはノーザンテースト4×3だがこちらはノーザンテースト≒The Minstrel4×4で母がAurora6×7(AuroraはHyperion×Swynfordの組み合わせ)。体型もノーザンテースト≒The Minstrelが強いが、Princely Gift5×5も併せ持つので柔体質で直飛になり、その結果オルフェーヴルよりも動きは緩慢だが、ストライドを伸ばして惰性で長くいい脚を持続できる脚質になった。バテないステイヤーというよりは惰性で長くいい脚を使いつづける中距離馬というべきで、ようするにメイショウサムソンとかコスモバルク(どちらもPrincely Giftの影響が強い柔緩慢ストライド)と近い脚質のイメージで、あまり急激ではないペースアップで押し切るような形が理想形だろう。
アクションやストライドからすると広いコース向きではあるのだが、俊敏な動きができないので東京や京都外でスローの鋭さ勝負になると辛く、内回りの宝塚や皐月でもロンスパ戦ならばストライド加速で寄りきってしまう。この戦績はメイショウサムソンと実に重なるところが多いように思うのだ。11.8ぐらいのラップを1000mぐらい持続できるのが最大の長所であり、問題はその長所を活かしきれる流れや展開になるのかどうか。やっぱり先週よりは時計ひとつかかるぐらいの馬場にならないと、どこかで無理が生じてくるように思うが、ここはウィリアムスだから少しずつポジションを上げていっての先行策もありうるか。周りに馬がいない形で伸び伸び走って1000mスパートを仕掛けたいところで、今までのレース運びだとインベタ馬場の外々を回らされる公算が大なので、14-12-4-2ぐらいの通過順で運べるようなら面白いし、シワクチャに期待されているのはそこだろう。

ヒットザターゲット
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104835/
母ラティールは3歳春に未勝利と特別を連勝し、桜花賞8着→4歳牝特(現フローラS)5着→オークス4着とクラシックロードを歩み、古馬になってからも愛知杯2着や中山牝馬3着などタフに堅実に走りつづけた。Conquistador Cieloが出るタミーズターンの牝系で、そこにノーザンテースト(Lady Angela3×2)、ニホンピロウイナー(Abernantとチャイナロックを通じるハイインローのクロス)、タマモクロス(母グリーンシャトーがSwapsとテューダーペリオッドを通じるハイインローのクロス)が重ねられ、古馬になってもタフに活躍したのはこのHyperionの賜物だろう。
そこにキングカメハメハが配された息子のヒットザターゲットはNorthern Dancer5・5・7×5となったが、母父タマモクロスにNorthern Dancerが入らないのがよく、Miesque(ForliとFlower Bowlを通じるハイインローのクロス)、グリーンシャトー、ニホンピロウイナー、ノーザンテーストから受け継いだHyperionの血が騒ぎ始めたのはやはり古馬になってからで、4歳以降3つの重賞を手中に収めることとなった。典型的な平坦巧者で、全8勝の内訳は小倉3、函館2、京都福島新潟が各1。一昔前だとナイスネイチャ、テンザンセイザ、ダービーレグノ、ニホンピロキース、最近ではエピファネイア、マイネルラクリマ、ケイアイエレガントなど、母系にHabitatの血が入るとやや後駆が非力で平坦向きに出ることがあるが、この馬もHabitat的にトモが非力でかなり前輪駆動なので、下りで惰性をつけられる京都外回りはベストコースだろう。京都大賞典はちょっと展開がハマりすぎた感はあったし叩き合った相手がアンコイルドだからG1レベルの実績ともいえないが、超スローを上がり1位で追い込んだ京都記念にしても阪神大賞典よりは間違いなく内容は上で、京都外ならばG2通用の中距離馬、という評価はできる。G1通用となるとまた何か恵まれる必要がありそうだが、アドマイヤラクティには京都大賞典でまともに先着しているのだから、恵まれれば複穴ぐらいの期待はかけてもいいのではないか。

レッドカドーRed Cadeaux
http://www.pedigreequery.com/red+cadeaux
母母Almaasehの産駒に昨年のQエリザベス二世C勝ちMilitary Attack(今年は2着)がいる。そのAlmaasehがDrone≒Red God3×3、そこにNative Dancer4×4のパントレセレブルが配されて母ArtisiaはNorthern Dancer3×4、そこにYoung Generation×Sharpen Upと「HyperionとLady Juror」的な粘着力が強いスプリンターのCadeaux Genereuxが配されたのが本馬。母系の中距離適性と父系の粘着力で走る馬で、Sharpen Upという血はサドラーと組むとステイヤーをよく出すが、ForliやTudor MinstrelやPetingoなどはLady Juror的な機動力とハイインロー的な粘りとの二面性をもつ血だ。少し時計のかかる沙田の芝2400mで、毎年ジャガーメイルやドゥーナデンと叩き合う実力馬。昨年の春天3着も上がりがかかったのがよかったというしぶとい末脚で、メルボルンCで二度2着していることからも長距離への不安はなし。ただし京都の高速馬場が大歓迎というタイプではないから、たとえ昨年のように上がりがかかる決着になっても昨年ぐらいが精一杯ではないかと思う。

ラストインパクト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104439/
ナリタブライアンやビワハヤヒデの甥で、キズナとは父ディープインパクトと母方のNorthern Dancer+Pacific Princessが共通する。母父ティンバーカントリーはスーパー名繁殖Fall Aspenの息子でプリークネス勝ち馬でパワーが勝ちすぎて力馬ばかりを出したが、母父としてはコパノリッキーやプレイアンドリアルなどの活躍で見直されている。母母パシフィカスがDamascusを1/4異系とする「3/4欧,1/4米」、そこに「1/2米,1/2欧」のティンバーカントリーが配された母スペリオルパールはやはり「3/4欧,1/4米」で、そこに「1/2米,1/2欧」のディープインパクトが配されたラストインパクトもサンデーサイレンスを1/4異系とする「3/4欧,1/4米」の配合形で、クロスの緊張と緩和のリズムでみても、パシフィカスがNearctic≒Mossborough2×4で、ティンバーカントリーがSwpas4×3で、ディープインパクトがHalo≒Sir Ivor2×4。「サンデー×ミスプロ×War Admiral×La Troienne」の配合形で、キズナと同じBurghclere≒Fijiのニアリークロス。名血良血をオーソドックスに積み上げてきたという意味では好配合と言っていい。
菊花賞ではエピファの直後で好位差しの正攻法もサトノノブレスやバンデにも完敗の4着だったが、キズナ同様Burghclereのニアリークロスをもつディープ産駒だけに着実な成長曲線を描いていて、年明けの2連勝これまでにない鮮やかさ、日経賞は内々で少し窮屈な競馬になってしまったし、今の充実ぶりならばサトノやバンデには雪辱可能かとも思える。ただ馬のタイプはキズナとは少し違って、やっぱり「サンデー×ミスプロ」的な中距離馬というか、ゼンノロブロイを少し力馬寄りにしたようなイメージの馬だろう。一線級と互せるぐらいのところまで地力アップしてきたが、距離延長で特にアドバンテージがあるわけではないので、一線級に割って入るとなると川田のファインプレーがあってどこまで…というのが現状か。

アドマイヤラクティ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103079/
牝祖Spy DemonがBalladier≒Far Star2×3をもつ典型的な北米牝系だが、そこにHerbager(仏ダービー)、Nijinsky(英三冠)、Caveat(ベルモントS)、エリシオ(凱旋門賞)、ハーツクライと12Fの大レース勝ち馬が代々配合されてきた。母アドマイヤテレサはNorthern Dancer3×4、Seattle SlewとCaveatを通じるBold RulerとPrincequilloとLa Troienneのクロスなど父母相似配合になっていて、そこに「1/2米,1/2欧」で強いクロスを持たないハーツクライをもってきて、アイリッシュダンスとFairy Kingを通じるNorthern DancerとNasrullahとHyperionとFair TrialとLa Troienneの組み合わせのクロス。エリシオは母父に回るとコスモヘレノスやファタモルガーナなど牡馬にはスタミナを伝えるし、アイリッシュダンスとエリシオとNijinskyとHerbagerのスタミナや持続力が発現し、Seattle Slew+Nijinskyの胴長体型とSeattle Slew+Cannonadeのボルキロ的斬れも受け継いだ、ややズブく長い直線向きのステイヤー。
阪神大賞典は5-5-5-3という通過順だけみると内回りを捲っての2着だが、実際は4角でゴールドシップに完全に突き放されてしまっており、その差が最後まで詰まらないままゴールという2着だった。レースを見返すと、本馬やバンデの内回りでの機動力のなさもゴルシの強さをより際立たせていたように思う。本来は外回り向きの馬なのだろうが、京都の超高速馬場は持続力だけではなかなか追い込めないし、最近の春天は良だと4角5番手内にいないと勝負にならなくなっている。昨年は11-11-14-10で4着。今年は4角5番手まで押し上げられるかとなると、四位はそういう変則的な仕掛けはしてこない乗り役だし、昨年ぐらいは追い込んでくるだろう…と言うしかないか。

フェイムゲーム
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104296/
バランスオブゲームの半弟で、母母ベルベットサッシュはサッカーボーイの全妹にあたり、ステイゴールドやタマモ○○○プレイも近親のおなじみダイナサッシュ牝系。そこにハーツクライだから最先端の晩成ステイヤー血統というべきで(晩成ステイヤーに最先端という修飾語は似合わないが)、3歳春に京成杯を勝ったのが快挙というべきで、古馬になって距離延長でスタミナを見せつけたのは順当というべきなのだろう。ちなみにHalo≒Boldnesianのニアリークロスはマンハッタンカフェと同じ。
ハーツクライにもステイゴールドにも似ていない伸びのない体型はアレミロードやTom Rolfeが強く、しかし体質は決してパワー型ではなくて、わりと薄手で無駄肉がなく、燃費の良さそうなピッチ走法で走る。ダイヤモンドは道中13秒台ゼロで淀みなく流れ、勝ち時計も過去10年の中では2番目に速かった。それを4角ひと捲りで先頭に立って押し切ったのだからこれは機動力とスタミナの勝利と言うべきで、バラゲーのような中山マスターに完成するのではないかと思っていたが、燃費の良いピッチ走法はそうかトウカイトリックの後釜だったのか…という勝ち方。トウカイトリックは春天に8回出走し[0.0.1.7]、京都外回りのロンスパ戦にあのピッチ走法はあまりフィットしなかったということなのだろうが、となると同じようなイメージが本馬にも重なる。サッカーボーイの血が淀の長丁場に強いのはPrincely Gift的にしなやかに前駆を伸ばして走れるからであって、そこがあまりONになっていない以上、マイネルキッツやアイポッパーなどと重ねてみるのは少し違うのではないかと思うのだ。

タニノエポレット
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007100206/
Lady Josephine直系Mah Mahal(Mahmoudの母)にBig Gameが配された牝祖MbaleはThe Tetrarch4×3、そこにGrey Sovereign系でThe Tetrarchの血を5本引く仏ダービー馬クリスタルパレスが配されたタニノクリスタルはSicambre3×4でThe Tetrarchの血を計9本引き、小型ながら斬れ味のある追い込み馬としてならした。息子にもこのフレンチ風味のThe Tetrarch的な柔らかな斬れ味を伝え、タニノギムレットはブライアンズタイム産駒とは思えない地を這うようなストライドでダービーを差し切り。そのタニノクリスタルにCaerleon産駒の英ダービー馬だが母がFighting Fox=Marguery5×3で牝系特有のパワーを伝えた(つまり日本ではパワー型すぎて成功しなかった)ジェネラスが配され、そこにダンスインザダークが配されたのが本馬で、Nijinsky3×4、Graustark5×5と父のスタミナ源をクロスするだけに3000m以上[1.1.1.0]と長丁場は滅法得意で、Graustarkクロスのダンス産駒といえばスリーロールスがいた。しかも母母のフレンチ斬れも受け継いだので脚質的にはタニノギムレットと似たストレッチランナーで全6勝中5勝が東京と外回り、ここにダイヤモンドと万葉で一年食う外回り向きステイヤーの完成である。ただNijinskyのクロスは(Nijinskyの牝系にMargueryの全兄Gallant Foxが入るだけに)ジェネラスの力馬的側面も少なからずONにしており、その点で長距離のスタミナ以上に高速馬場の適性が問われる最近の春天においては、速い脚のないステイヤーはビートブラックのような大技が使えないとなかなか勝ち負けまでは難しい。

サトノノブレス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010103602/
おなじみのアンティックヴァリューの牝系だが、本流のベガではなくオールドスタッフの分枝で、ここにGeiger Counterのスピードが入るとエクセラントカーヴやコレクターアイテムが出る。きょうだいや近親にはヒカルオオゾラ、テイエムクレナイ、バトルドンジョン、メジロスプレンダー、メジロガストンと何ともつかみどころのないメンツが並ぶが、これは母母父のAlways Run Luckyという謎のBold Ruler系がつかみどころがないからで、その母Big PuddlesがAlibhai2×3で力馬っぽさを伝えるので、ダートや短距離向きのパワー型が出たりして何ともつかみづらい。
本馬もディープ×トニービン×Irish River×アンティックヴァリューならば鋭敏に斬れる中距離馬のイメージなのだが、わりとHyperion的な体質で外回りでタメてももう一つ斬れないし、雨の菊で最内をジワジワ追い上げてきたり、インベタ1京Aで絶妙なペースで逃げてギリギリ粘り込んだりと、むしろ立ち回りの巧さと粘り強さを活かしたときに高パフォーマンスを発揮しており、これはBold Ruler忍者とAlibhaiパワーが同居したAlways Run Luckyのイメージでもある。ここも好走するには4角で先頭に近いところにいる必要があると思うが、それで踏ん張りきれるほどの地力があるかとなると、私はAlways Run Luckyにそこまでの信は置けない。

アドマイヤフライト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009100570/
牝祖Tiznaがチリ産でサンタマルガリータ招待Hなど米15勝した活躍馬。この南米土着牝系にLyphard、ジャッジアンジェルーチ、トニービン、マンハッタンカフェが配されて、「サンデー×トニービン×Lyphard」というハーツクライ的骨組となった。ただ間にLaw Societyとジャッジアンジェルーチが入ってここでBold Rulerをクロスするせいか、わりと忍者走法でソコソコ小回りもきく。なかなか手堅い中距離なのだが、そのぶんハーツクライのように前で受けて絶対的に強いという地力は感じられないし、今のところはG1レベルまでくると少し足りない馬だろう。ジャッジアンジェルーチというのは、芝中長距離の大物を出すには少し足枷になる血だと思う。 

コメント (15)
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