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波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

【新連載】 言葉のケイコ

2019年10月01日 | 【保管】言葉のケイコ


 『心』を読む

風先生が以前ブログで、「若い頃に読んでいた大江健三郎をまた読み始めようと思う」と書かれていました。かつて熱中して読んでいた本を改めて読み返してみる、ということは読書の醍醐味の一つだと思います。私にはそのように「定期的に」読む本が何冊かあります。その中でも若い頃と今とで大きく印象が違った本が、夏目漱石の『こころ』です。

校の教科書に載っていたことで興味を持ち、高校時代に夏目漱石の本を何冊か手に取りました。その中でも『こころ』は高校・大学・社会人と「定期的に」読んできました。そうしてある程度年を重ねてから読んだ時、私は急に気づいたのです。今までおまけのように感じていた「上 先生と私」「中 両親と私」がなんと細やかに書かれているのだろう、と。だいたいの人が知っているのは「下 先生と遺書」の部分であり、教科書に載っているのもその部分であったことから、私は若い頃に何度読んでも『こころ』は「先生」と「友人K」と「お嬢さん」との三角関係の話であると思っていました。ですが私が年を取り、『こころ』の全ての答えは、「上 先生と私」の中にあったのだと感じた瞬間、それまで読み流していた言葉が、急に色を変えて私の目に飛び込んできました。「恋は罪悪ですよ」という「先生」の言葉が実感として迫ってきたその時の感動は忘れ得ぬものです。

生を重ねると、本の読み方も変わります。心に響く「言葉」がその都度違ってくるものです。それもまた読書の面白さの一つなのであろうと、改めて感じました。



今日から始まる連載エッセー『言葉のケイコ』。作者は、ケイコさん。本ブログ4人目の座付きエッセイストさん。読書大好き女性とだけ紹介しておきます。プロフイ-ルがこれからの文章の中で明らかになっていくのも楽しみですね。毎週火曜日にUP予定。

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