昭和ひとケタ樺太生まれ

70代の「じゃこしか(麝香鹿)爺さん」が日々の雑感や思い出話をマイペースで綴ります。

黒豆の煮豆

2005-12-29 18:28:36 | 日々の雑記
 黒豆の煮豆は正月料理に欠かせない物だが、とかく豆類の好きな私としては、正月などに関わらず、また本場の丹波篠山の高級品で無くても、何時だって歓迎するすこぶる付きの好物である。
 黒豆の栄養価などは、此処に事改めて載せることも無いほどに、一般的に広く知られていますが、唯一つ子どもの頃に母から聞いた、「黒豆の煮汁は喉に良い」と云う事は、この年齢になった今でも覚えていて、どうせ音痴で唄など余り歌うことも無いのに、永年この煮汁だけは独り占めにして、しっかりと飲みつづけて来た。

 またこの黒豆を煮る場合や、茄子を漬ける時などに、錆びた鉄釘などを入れると、黒豆は見事な黒色に煮あがり、また茄子は鮮やかな紫に染まりしっとりと漬け上がる。
 勿論これらの現象の詳しい事は知る由もありませんが、先人たちが永年に亘って培って来た英知は、科学の進んだ現在でも立派に通用する物が多くて、ただただ頭が下がってしまう。こうした事柄は他にもまだまだ沢山在るから、それぞれの子を通し、また孫を通して代々教え伝いたいものである。

 さて我が家でも今日29日、そろそろ正月料理の準備に取り掛かり始めたよう  で、
「何処かに錆びた鉄が無いかしら、物置へでも行って錆び釘でも探して来て・・・」
 と老妻が声を掛けて来た。
 当然黒豆を煮るのだろうと、早くから気付いていたのだが、こちらは空トボケテ 何食わぬ顔で、
「何に使うんだい」
 と問い返した。
「黒豆を煮るのですよ」
 との老妻の声に、すかさず遣り返した。
「錆びた物ならわざわざ物置などに行かなくとも、お前さんの直ぐ傍に在るだろう。それを使ったら良いだろうに・・・」
「・・・?」
 怪訝そうにこちらを見返す老妻に、
「自分で何時も云っているだろう。脳がすっかり錆び付いて言葉や人の名前それに顔が浮かんで来ない・・・と、だからその錆を有効に使えば良いのだよ」、
 一瞬顔を合わせて、大笑いとなった。
 その後直ぐに、ブツブツ云っている老妻の声を背にして、私は外の物置へ向かった。