マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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別所町極楽寺お大師さん

2012年06月25日 07時36分05秒 | 奈良市(東部)へ
番条町を含め大和では各地で弘法大師を奉る大師講やお大師さん参りが行われている4月21日。

その数は数え切れないほどに多い。

盆地平野部、山間などさまざまな土地で継承してきたお大師さん。

奈良市の別所町では7軒で営んでいる高野講がある。

弘法大師が開いた一大聖地の高野山。

それを信仰する別所町の高野講。

その夜は当番の施主家で掛軸を掲げて講中が手を合わせる。

念仏は唱えない。

それが始まるまでに前施主が新施主家に出向いて掛軸を引き継ぐ。

山をもっている高野講。

木を伐採してその代金で総まいりと云って高野山へ参るそうだ。

講中が亡くなったときは遺骨を高野山にもっていく。

奥の方にあるお寺だという。

そんな話をしてくれた講中の一人にOさんが居る。

その日の午後は極楽寺に集まる。

お堂の奥に入った人たちは3月のお釈迦さんのときと同じ顔ぶれ。

いつもそうなんだと話す。

そのときと同じように風呂敷に包んだ家のオソナエ。

古くから安置されているお大師さんは厨子の中。

手を合わせて席に着く。



本尊の木造阿弥陀如来坐像が安置されているお堂はとても狭い。

6人ほどで満席になる。

仕方なく廊下まではみ出した。



そこには威厳ある顔立ちの行者像もある。

中央の股ぐらに置かれたモノに目は届かない。

御供はヨモギモチやお菓子など。

ヨモギはこの季節もん。

ダンゴにする家もある。

田畑で摘んできたヨモギは米粉を混ぜて作った。

一斉に手を合わせて念仏を唱えることもなく、ただただお堂で語らい。

「何の秩序もなく、決まりもない。四月はお大師さんやいうて。集まってなんちゅうこともないダラダラと話しをしているだけだ」と話す村人たち。

お釈迦さんの日も同じような感じで、お堂の時間を過ごす。

こうしてひとときを過ごした人たちは供えたお菓子などを風呂敷に包んで持ち帰る。

御供のお下がりは家で食べるのだ。

「こんなことしかしていないのに何故か我が家に問合せの電話が架かってくる」というOさん。

息子さんがある参拝者に尋ねて判ったその秘密。

平成3年に偕成社から発刊された(吉野正美文・岡田栄一写真著の)『大和古寺めぐり』にその理由があった。

20年前の発刊だが本屋で売っていた。

ベストセラーだったのだろう。

頁をめくれば別所町の極楽寺が掲載してある。

そこには問合せの電話番号も。

名前はOさんの親父さんだ。

どういう経緯があったのか判らないが民家の電話番号を掲載してある本は珍しい。



謎が解けたOさん宅は萱葺き家。

高野講の当番家になる時期がくれば再訪したいものだ。

(H24. 4.21 EOS40D撮影)