マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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瀧倉旧暦閏年の塔揚

2012年06月17日 09時20分57秒 | 桜井市へ
前回は平成21年5月24日に行われた桜井市瀧倉の旧暦閏年の庚申さん。

庚申さんは塔婆を上げるからトアゲと呼ぶ。

当時は充てる漢字を「塔上」だと云っていた。

閏年の庚申さんはその年によって祭事日が異なることから、前もって確認をしておいた。

2月末に訪れたO家。

ご主人が話すには、今年は3月が当たりの閏月で、2回目にあたる旧暦3月の期間中に行っていたという。

新暦日は4月21日から5月20日まで。

平成21年の場合は5月が閏月だった。

1回目の旧暦5月の新暦日は5月24日から6月22日だった。

前々回は平成18年。

閏月は7月だったが、実施日は4月16日にされていた。

当たりの閏月は年によって大幅に変化する。

場合に寄れば11月の年もある。

それでは遅すぎるのだ。

閏年の庚申さんは各地によって異なるがおよそ3月、4月、5月辺りである。

日程の決定は講中内で決められる。

今年の瀧倉の庚申さんは区長さんが決められたようだ。

前回は特別の5月実施。

毎回の記録を見れば4月が多い。

農作業の関係でそうするのが妥当だとこの日にされた。

桜井市上の郷の瀧倉には上垣内、鳥居堂垣内、中垣内、峠垣内の4垣内にそれぞれ庚申講中があった。

村を出ていく家もあることから講中の軒数が減ったため中垣内を吸収した峠垣内。

また、鳥居堂垣内の住民は上垣内に移ったことから一つの組にした。

垣内の講中を統合して二つの組の講中にしたというわけだ。

この日の午後、ゴクダイや花立てに塔婆を作る講中。

箒をひっくり返したような形状に、上から藁で編んだ円形のものをつけたのがゴクダイ。

先を四本に割いて挿している。

かつては粳米を臼で挽いて丸いダンゴを作っていた。

水で練って蒸したダンゴは手でひねるようにして作ったそうだ。

それをお盆に乗せて供えていたのがゴクダイである。

昭和30年代までそうしていたという。

花立ては丸竹三本仕立てだ。

彩りいっぱいの花を飾っている。

塔婆は葉付きの杉の木。

それぞれの組が願文をよせている。

一つは「奉修 青面金剛 国家安泰 五穀豊穣 村内平穏 身体健全 交通安全 七難即滅 諸願成就 祈願成 峠垣内」とある。

上部には判読できない五つの梵字が書かれている。

もう一つの組は「奉納 五穀成就 家内安全 交通安全 祈願 月火水木金土日 上垣内為 鳥居堂垣内 講中」とある。

庚申塚は薬師堂の前にある。

権現桜が咲く地から100mほど旧道を下った処にあるお堂だ。

中央に南無青面金剛であろうか薄くなった文字が見える石造の庚申さん。

その両脇には村人か僧侶らしき人の名が連なる。

もう一つの庚申石造は判読できない。

昔からここで参っているという。



お灯明や線香に火を点けて長老六人衆が般若心経3巻唱える。

広げたシートに座った村人たちも手を合わせて静かに祈るトアゲの会式。

Oさんは「塔揚」の字を充てるのだと話す。

お参りを済ませた講中はシートに座って会食をする。

いつもこうしているという。

以前は家で作った料理をもってきた。

いつしか簡略化されてオードブルになった。

陽が暮れるまでしばらくはここで寛ぐ講中たち。

60日おきに回ってくる庚申の日はしなくなった。

この閏年の庚申日だけに寄りあう村人たち。

終われば供えた御供を貰って帰る。

(H24. 4.15 EOS40D撮影)