マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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小山戸都祁山口神社御田祭

2012年06月27日 06時43分54秒 | 奈良市(旧都祁村)へ
4年ぶりに訪れた奈良市都祁小山戸の都祁山口神社。

この日は朝から雨降りだが、社守や総代、役員の村の人たちは御田祭に集まってくる。

友田の都祁水分神社の神職が神事を斎行される。

その後が御田祭の所作に移る。

県内では数多くの社地でお田植え祭が行われている。

その一つにあるのが都祁山口神社御田祭。

作法の際に豊作を願う田植え唄が囃される数少ない行事である。

唄方と太鼓を打つ社守が席に着く。

作法に登場するのは社守と二人の総代だ。

都祁山口神社を氏神と崇めるのは小山戸(おやまと)と相河(そうご)。

それぞれに総代がいる。

その二人は重要な役割をするのだ。

始めに舞方となる社守を先頭に二人の総代が一列をつくり、「春田のよそおい うつてのこづち しゃんしゃんしゃん しゃんしゃんしゃん しゃんしゃんしゃん」の唄とともに舞殿をぐるりと時計回りに一周する。

太鼓打ちの調子に合わせて歩調する。

先頭の社守は前屈姿勢だ。

かつてはカラスキがあったというから荒起こしの作法であったろう。

何も持たずに先頭を歩くのは不自然な形態だと思っていた。

この日は伝統民俗行事を見聞きする県文化財課の調査員がいた。

久しぶりに同行取材することになった。

調査員は以前にカラスキがあったことを長老から聞いていた。と、すればだ。

牛役と思っていた社守は牛使いであろうか。

不自然な姿で演じる謎は一つ解けたが、昭和四十五年夏神楽の日に纏められた『式内大社都祁山口神社 宮守乃栞』では社守は牛役とある。

女史曰く「昔は鈴も鳴らして田植え唄」を歌っていたという。

これも長老から聞いた話だ。

「しゃんしゃんしゃん」の台詞は鉦を鳴らす音と考えれば間違いない。

もう一つの謎も解けたのであった。

なお、社守に引き継がれている『宮守乃栞』によればその鉦を須利金と書いてある。

まさに擦って鳴らす鉦のことである。

囃子方は太鼓に調子を合わせながら須利金を打つとある。

総代の役目は馬子(まご)。

牛のあとからついて一緒に回る。

この年は一回の周回で終えた。

ひと呼吸の間もなく次の作法に移る。



今度は総代二人だけの登場である。

手にはクワを持つ二人。

横に並んで「若苗とるは 女のてぶり とる手も幾栄 とらぬ手も幾栄 しゃんしゃんしゃん しゃんしゃんしゃん しゃんしゃんしゃん」の田植え唄。水クワで田を耕す所作をしながら前方に歩む。

太鼓打ち合わせて繰り返す「しゃんしゃんしゃん」。後退しながら元の位置に戻っていく。

この作法も一回であった。

三番目の作法も二人の総代だ。



杉の若苗を持って再び登場する。

「山田の田植え ふく万石(まんごく) わが所へ作り 作りすませた しゃんしゃんしゃん しゃんしゃんしゃん しゃんしゃんしゃん」の唄に合わせて田植えの作法を行う。

その様子はまさに田植えであるがこれも一回の所作で終えた。

『宮守乃栞』によればいずれの所作も三回繰り返すとあるが、唄方が替ることで田植えの作法に変化が見られた今年の御田祭であった。

(H24. 4.22 EOS40D撮影)