年神さんを祭った注連縄などの正月飾りはとんどで燃やして天に帰ってもらう。
村々や地域ごとに行われている行事である。
小正月の14日の夕刻から15日の朝にかけて行われる地域が多い。
が、サラリーマン農家になったこともあって休日に移行される地域が増えつつある。
代表的なのはとてつもない大きなとんどが有名な御所市吉祥草寺がある。
茅原の大とんどと称されている。
とんどの形や大きさは地域により様々である。
その御所から東部にあたる高取町や明日香村でも同じように14日の夕刻にされている。
高取町の佐田に居たときだった。
真っ赤な火が天を焦がすような勢いで燃え上がった。
距離はほど遠くないが真っ暗な時間帯となった今は場所を断定することはできない。
同時間だった。
今度はポンポンというかバンバンというか竹が破裂する音が聞こえだした。
その音は山を越えた辺りからだったが火の手は見られない。
けたたましく鳴る音に混じって消防車のサイレンが聞こえだした。
どうやらその方向に向かっているようだ。
追跡していけばとんどの火が目に入った。
そこは明日香村の越(こし)だった。
小高い丘の広場で燃えているとんどの火。
住民たちも集まっている。
十数人の人たちがかたまってやってきた。
「誰かが火事やと思って消防車を呼んだんだって」と口を揃えて総代ら先着陣に伝えている。
都会育ちの人であろうか、とんどの風習を知らない人なのか判らないが、その音と火から家が焼けているように見えたらしい。
そんなことにも動じない総代や住民たちはとんどの火に群がった。
とんどの火はその総代が神事を行ったローソクの火を移して点けられる。
三方にお神酒徳利、スルメを載せてローソクに火を灯す。
神社祭式に則り拝む。
とんどに火を点ける方向は縁起の良いアキの方角でこの年は南南東だった。
その傍らでは小さなとんどで燃やしている。
服忌の家では大きなとんどに加わらない。
ハレのとんどに遠慮して行っているのだという。
群がった人たちは炭火となった火を持ち帰る。
火起し器に入れる人も多い。
この日のために使っている現役の道具だという。
この火種は大切に持ち帰って「くどさん」と呼ぶ竈の火点けにする。
とはいっても現代はガスコンロに変わったから神棚のローソクへの火移しである。
コンロになったが今夜はぜんざい、明朝はアズキ粥を作っていると話す婦人たち。
アズキには違いないので赤飯にしている家もある。
それが炊けたらカシの葉を裏返してアズキ粥を乗せる。
皿のようにするカシの葉。
高取町の佐田でも聞いたことがある。
カシの葉のアズキ粥は家の玄関とか裏口に供えるそうだ。
断定はできないが小正月の神さんに供えるものではないだろうか。
(H23. 1.14 EOS40D撮影)