マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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誓多林のミトマツリ

2012年06月18日 07時33分52秒 | 奈良市(東部)へ
前月に八柱神社の造営上棟祭を営まれた奈良市の誓多林町。

氏子長老の奥さんは毎年の初春にミトマツリをしているという。

「4月初めの良い日にする」のだという。

「土用の入りに入ってしまえば土を触ったらあかんから」という。

今年の春土用の入りは4月16日。

その日から立夏までの期間は土を触らんというわけだ。

その期間中にミトマツリをするご婦人。

村で生まれ育った人だ。

母親のする仕草を真似て今でも続けている家のマツリごと。

随分前から村では苗代を作っていない。

本来のミトマツリは苗代に供えるのだがそれはない。

僅かではあるが、籾落としもしている。

それは家屋の中。

今年は3月20日ぐらいに籾を水に浸けた。

屋内の育苗器で育てていたが、今年は寒い日が続いて育ちは悪いという。

ミトマツリに奉るのは3月の彼岸講のオコナイで祈祷された「萬福寺牛王宝印」の書とウルシ棒。

それをごー杖と呼んでいる。

それに3月に田原の宮さんで行われた御田祭の松苗もだ。

田原の御田祭は毎年交替で茗荷町天満神社と日笠町今井堂天満神社で交互に行われている南田原町、誓多林町、此瀬町、中之庄町、矢田原町、中貫町、長谷町、和田町、須山町、杣ノ川町、横田町、日笠町の行事である。

今年は今井堂天満神社で行われたそうだ。

そこで祓った松苗は氏子総代が村に持ち帰って氏子の各戸に配られる。

その2本をハウス横に立てる。

書を挟んだウルシ棒。

その光景が似ていることから婦人はそれを「ハタタテ」と呼んでいる。



始めるにあたってそこに供えるハゼゴメを作る。

昨年に収穫したゲンマイ(玄米)を母親の代から使っているゴマ煎り器具で煎る。

ゲンマイは粳米。糠がついている玄米だ。

ゲンマイを入れて火で炙る。

蓋を締めているから煎り具合は判らない。



ときおり蓋を開けて焦げ具合の状態をみる。

ミュウ、ミュウという音が聞こえる。

爆ぜる音だという。

ちなみに餅米はフォン、フォンという大きな音がするらしい。

音は耳で、焼け具合は眼で確認されてできあがったハゼゴメは半紙に包んでおく。



自宅に咲いていたスイセン、アセビ、ツバキ、菜の花などを摘んでハウスへ持っていく。

ごー杖を立てて松苗を地面に挿す。



祈祷札がまるで旗のように見える。

まさに旗立てである。

お花も飾ってハゼゴメを置いて手を合わせる。



唱える詞はないが豊作を願うミトマツリの姿である。

ちなみに誓多林では毎月順番に交替するお灯明の板が回ってくる。



婦人の家のすぐ傍の八阪神社と本社の八柱神社の燈籠に火を灯す当番札だ。

昭和三十年四月吉日と書かれている。

かつては11軒で回っていたが今は6軒。

少なくなったという。

火を灯すのは毎日とされているが、風雨厳しい日はそれをしないから実質は月数より少ないらしい。

(H24. 4.17 EOS40D撮影)