午後から雷雨。
蒸し暑さ続く・・・。
水上勉の『精進百選』を読んでいたら、『典座教訓(てんぞきょうくん)』のくだりの記載があったので、抄訳本を読んでみた。
典座とは、禅寺の食事全般を担当する職である。
著者の道元は、鎌倉時代初期の禅僧で、日本に於ける曹洞宗の開祖。
24歳のとき、南宋へ渡るも、上陸を許されず、停泊中に、典座職の老僧に出会い、帰国後、寺院の規律を保つための新たな基準となる書を撰述しようとし、『典座教訓』を著した・・・。
現在の精進料理はお寺の宿坊などで、供されたりするのが一般的だろうか?
例えば、高野山の宿坊など・・・。
或いは、寺院などの多い鎌倉なども、精進料理を供する料理屋もあったりする。
私の近隣?というか・・・(実際に、それ程、近いわけではないけれど)、日光なども、名産の湯波(日光では、ゆばを湯の波と書くようで、京都などでは、湯葉が普通らしい)をメインにした精進料理タイプの料理を供する店が多い。
肉・魚などは、使わず、たんぱく質は、大豆や小麦などから、手間暇かけて抽出し、動物性たんぱく質と同じような食感、見た目、味などを再現したりする。
調理に手間が、かかるため、普通の料理よりは、かなり高額な場合が多いけれど、質素な中にも滋味深く、濃い味に慣れた現代人にとっては、(量的に)物足りない場合も多いかもしれない。
お値段の割には、あまり満足できない・・・そんな感じだろうか?
今年になって、既に練り上げられ、ビン詰めされている胡麻を使って作る、簡単な胡麻豆腐のレシピを見つけたので、時々、作っているけれど、暑さの厳しかった今年の夏には、滋養と薬効のある葛粉と胡麻を使うので、老齢の家人などには、好評であった。
実際、禅寺の胡麻豆腐などは、炒った胡麻を、アタリ鉢で丁寧に摺ることから始めるのだろうと思うけれど、練り胡麻を使う簡単レシピでも、後片付けが、結構、面倒だったりする。
料理は、典座職の修行で、大地の恵みに感謝し、心を込めて、調理し、後片付けなども手を抜かず・・・手間暇をかけて・・・が、修行だから、炒り胡麻をフードプロセッサーにかけて・・・なんてことは、会社勤めで、食事も作らなければ・・・という普通のひとは、やらないし、時間的に制約もあるし、出来ない。
食に対する心構え、食と修行、極める先は、食材も、また命あるもので、命をいただく・・・ということに尽きるのではないだろうか・・・。
そう思いつつも、忙しかったり、面倒だったり・・・食事作りに充分な時間の取れない現代人には、現実的に難しい。
・・・だから、スーパーの胡麻豆腐には、身体に悪い原材料不明の加工デンプンや増量剤、増粘剤だの訳の分からん添加物がてんこ盛り・・・精進料理の対極の商品を臆面なく売り出し、消費者もソレを疑いもなく買うのである。
本書は、道元の原文に、訳・監修の藤井宗哲氏の体験などを織り込み、禅の精神を語る。
章の間に、精進料理のレシピなども紹介されている。