鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『柚子の花咲く:葉室麟・著』

2012-04-10 22:58:12 | Weblog
美しいはずの桜も、霞がかかる。
明日は、雨なのだろうか・・・?


武士は、かくあるべし・・・。
凛として、潔く、正しくあれ・・・。
そして、武士であるまえに、ひとりの清い人間であれ・・・。

醜聞にまみれたかつての師の死の謎と、崩壊された領内の境界を巡る覚書の行方。
江戸詰めから、帰国した筒井恭平は、郷学(藩校以外の学問所)に学んだ師の梶与五郎の不慮の死の真相を、探るべく、隣国へ潜入する。
それまで、凡庸で、普通の先生だとばかり思っていた梶与五郎の予想すらできなかった姿を知る。
彼を慕う女達の存在。
不遇の過去。
・・・そして、出直しをかけた郷学での師範。
幼き日、郷学で、ともに学んだ身分は、違うけれど、それぞれに成長した友の姿。
武士と庄屋、豪農の貧農。幸運と不運・・・避けようのない運命に導かれて、命を落したもの・・・。

あのとき・・・あのときは、どうしても気づかなかった。
今更・・・。
それでも、悔いのないよう、これからを生きようとするかつての幼馴染たち。

桃栗3年、柿8年、柚子は、9年で花が咲く。梨の大馬鹿18年・・・。
私たちは、あなたの息子の先生が、丹精込めて育て上げた柚子の花です・・・それを、無残にも切り落とすのですか?

親子の確執、秘めた恋、ひとを愛することの意味、それを貫くことの難しさ。
人を教え、導き、育て上げることの難しさ・・・。
ひとは、それを乗り越えて、生きていく。
例え、乗り越えられずとも、生きているだけで、美しい・・・。
鮮烈な柚子の花のように、花咲く日を、待ち続けて、ひとは、生きていく。