鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『橘花抄:葉室麟・著』

2012-04-09 20:50:16 | Weblog
桜が満開。春、やっと到来。


この頃の週末は、あまり天気に恵まれず、雨だったり、強風だったり、季節にそぐわいない寒さだったりして、電車が運行してなくて、外出をキャンセルしたりで、自宅に籠ることを余儀なくされてしまったけれど、元来、インドア派なので、毎週、本ばかり読んで過ごした。

江戸時代・九州の黒田藩内の政権争いの中で、立花家の兄弟(重根・峰均)に愛されながら、次々と縁者を失い、失明、命を狙われたり、家禄没収と過酷な運命は、情け容赦なく卯乃を襲う。

立花家の後妻のりくは、重根にとっては、義母、峯均の母。

りくが、教える雅やかな『香道』。
峯均と離縁した妻・さえの存在が、卯乃と峰均の娘・奈津を苦しめる。

親子・兄弟の政権争いは、間断なく続く間に、卯乃の出生をめぐって、政治の道具に利用しようと画策する家臣達。
政権をめぐり家中が乱れる中、とりあえずの均衡を保たれたが、先代藩主の死去に伴い、暗躍する政敵は、卯乃をますます苦境に立たせることになる。
護りたくても、護ることも叶わない・・・。
立花重根(しげもと)と峯均(みねひら)の兄弟は、流刑。

『悲運』も運のうちだ・・・と重根は、静かに言い放つ。
残された卯乃、峯均の娘・奈津、そして、立花家を支えるりくの3人の女たちの苦難。

この物語は、『香(香道)』が、ベースとなっている。
桜が満開で、ひらひらと舞い散る最中、父親が自害し、寄る辺なき身となった卯乃が、立花家の門前に立ったのは、14歳。ちょうど今頃の季節だろうか?
迎えてくれた重根は、袖に香を焚きしめており、奥ゆかしい。

峯均は、剣により、立花一族を守る志をたて、二天流を体得する。
歴史は、繰り返すかのように、二天流(宮本武蔵)対巌流(佐々木小次郎)の奥義をさずけられた二人の運命の対決が、後半を鮮やかに彩る。

立花家と橘をかけているタイトル。

柑橘の味は、清(すが)しい。
人も、清しく生きていきたいものだと思ったりする。