memories on the sea 海の記録

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国策の海、ルール置き去り 台湾船十数隻、日本船見えず 日台漁業協定始まる

2013-05-23 07:17:18 | 海事
 日本と台湾の漁業協定の運用が10日に始まった。沖縄県・尖閣諸島周辺での台湾漁船の操業を認めたが、操業ルールはまだ決まっていない。協定で設けられた水域にはこの日、安全に操業できないとして日本漁船は入らず、台湾漁船ばかりだった。「このままでは実効支配が弱まる」との心配の声が上がっている。(5月11日朝日新聞)
 
10日正午前、本社機で沖縄本島方向から尖閣諸島の南側上空に入ると、すぐに漁船が見つかった。船名で台湾船とわかる。互いの漁船を取り締まらない「法令適用除外水域」南端の日本側に三角形に張り出した水域にも台湾船。ブイや大きなバケツを積み、青いカッパを着た船員たちが作業していた。1時間半余りで確認した十数隻は、すべて台湾船だった。
 協定の水域は黒潮の通り道で、この時期はマグロはえ縄漁の最盛期だ。本来は沖縄だけでなく、宮崎、鹿児島、高知など国内各地から船が集まる。
 しかし水産庁によると、この日、日本船は確認できなかった。沖縄県近海鮪(まぐろ)漁協から出漁した7隻も、協定の水域を避けて宮古島北東部へ。「台湾船とのトラブルを避けるため」だという。
 台湾船は20~50トンと大きく、船員も6人はいる。日本船はほとんどが1人か2人という。「台湾の船を見たら沖縄の船は近寄ってこないよ」。台湾東部宜蘭県蘇澳の漁協の黄森宜理事は余裕の表情を浮かべた。
 台湾側は前日夕、はえ縄漁船の楊徳信船長が約100隻の台湾船に「10日に協定が始まる。協定の水域の外には出ないように」と呼びかけた。操業する権利を得たのだからトラブルは避けたい、との思いがにじむ。
 しかし、日本が取り締まる権利を放棄しない「特別協力水域」の南西辺りで、10日朝まで漁をしていた宮崎県川南町の第58光宝丸の俵伸二船長(53)は、仕掛けたはえ縄が2カ所で切られ、浮き球2個もなくなった。直前までレーダーには台湾船らしき10隻が映っていた。「ルールも決まっていないからこうなるんだ」。台湾船の関与を疑い、怒りで顔をゆがませた。
 
■米軍訓練・中国とも協定 漁場、狭まる一方
 沖縄周辺は「国策」の海だ。本島東側には米軍の訓練区域が広がり、射爆撃訓練中は漁が禁じられる。本島から南西に延びる日中協定線以西は、1997年に日中が交わした書簡で中国漁船は自由操業できる。
 さらに八重山諸島の南北海域は、日台双方の船が入り乱れ、トラブルが相次いでいた。台湾は2003年、専管水域だとして一方的に境界線を設定した。
 今回の協定を頭越しに結ばれたと反発を強める沖縄県。農林水産省の江藤拓副大臣は5日に県庁を訪ね、「ルールがない海域に秩序をつくる。協定はその第一歩だ」と意義を説いた。
 水産庁は「台湾の漁網が(協定の)水域をはみ出すことも許さない」と強調したが、台湾側は水域の周りに取り締まり緩衝帯の設定を主張。7日の日台漁業委員会の初会合でも、日本側がルール決定まで操業自粛を求めたが、台湾側は拒否し、沖縄の漁業関係者が途中退席した。台湾側は、マグロ漁が一段落する7月ごろに次の会合を開きたいとしたが、未定だ。
 
■尖閣周辺への出漁、敬遠 実効支配弱まる?
 問題は水産業にとどまらない。尖閣諸島の周辺から漁業者が減れば、領海や領土の実効支配が弱まるとされるからだ。
 本川一善・水産庁長官が3日に八重山漁協を訪れた際、漁業者から尖閣の国有化で「かえって漁に行けなくなった」と不満の声があがった。中国公船と海上保安庁の巡視船の牽制(けんせい)が続くからだ。本川長官は「『仕事にならない』と漁船が遠ざかるのは実効支配の点でいいことではない」と話した。
 今回の協定でも、同漁協の上原亀一組合長は「トラブルを避けて沖縄側が操業しなければ、海は台湾に占拠されてしまう。しかし操業ルールがないのに『占拠されないように出漁してくれ』と頼めない」と悩む。
 沖縄県水産課によると、7日の漁業委員会の最終盤で、台湾側は「まだ議題がある」と尖閣領海内の漁業権も求めてきた。「『当然の権利』という雰囲気だった。今後、再燃するだろう」と担当者は語った。


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