memories on the sea 海の記録

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ケープサイズがモーリシャス沖で座礁・燃油流出

2020-08-31 10:27:20 | 海事

 国内船主の長鋪(ながしき)汽船(本社・岡山県笠岡市)グループが保有・管理し、商船三井が運航するケープサイズバルカー「WAKASHIO(わかしお)」(20万重量トン級、2007年竣工、パナマ籍)がインド洋南西部のモーリシャス島沖で座礁により船体が損傷し、救助作業中の6日に燃料油が流出した。商船三井が7日明らかにした。

 

 「WAKASHIO」は中国からシンガポール経由でブラジル方面に向かう途中の日本時間7月26日にモーリシャス島沖で座礁。6日に燃料油が流出し、「現場海域・地域に甚大な影響を及ぼしている」(商船三井)という。

 

 商船三井が7日に公表した長鋪汽船からの現状報告によると、「WAKASHIO」は過去数日間の悪天候と激しい揺れにより、右舷側の燃料タンクに亀裂が生じ、燃料油が流出。同船の周囲にはオイルフェンスを設置し、油流出防止策を講じている。

 

 乗組員20人は全員無事で岸壁に移送された。ただ、海象条件の悪化により、報告時点では離礁作業を中断している。

 

 油濁を最小限に抑えるため、長鋪汽船とP&I (船主責任保険)クラブが契約している油流出対策の専門家やサルベージチームがモーリシャス当局と連携。油濁防止の技術支援を提供する国際タンカー船主汚染防止連盟(ITOPF)も長鋪汽船とサルベージチーム、関係当局に対し、海洋汚染と想定される影響についてアドバイスしている。

 

 長鋪汽船は関係当局と協力し、事故原因の調査・究明を進める考え。

 

 商船三井は座礁事故発生後、池田潤一郎社長をトップとする海難対策本部を発足。日本とモーリシャスをはじめとする関係当局と連携しながら現地への要員派遣を含め対応しており、「引き続き船主や関係者と協力し、早期の事態解決に向けて全力で取り組む」とコメントしている。

 

 モーリシャス政府は7日の声明で「WAKASHIO」からの流出油の封じ込めにオイルフェンス設置をはじめ、あらゆる措置を講じていることを説明。近隣諸国や海運会社に油流出防止へのサポートを求めた。 

 

 「WAKASHIO」は長鋪汽船の関連会社「OKIYO MARITIME CORP.」が保有し、商船三井が用船・運航。全長299.5メートル、全幅50メートルのケープサイズで事故当時、船員20人(インド人 3名、スリランカ人 1名、フィリピン人 16名)が乗船していた。

 

 

■解説:海運の「保有」と「運航」、責任の所在の違い

 今回、WAKASHIOの座礁事故で「船舶保有・管理」が長鋪汽船、「運航」が商船三井と区別されているが、これはどういうことだろうか。 外航海運では船舶保有者と運航船社が別々ということは珍しくない。

 

 船舶保有者は船主(オーナー)と呼ばれ、船長や機関長含め本船の船員の配乗、貨物管理など運航中の船舶の管理全てを行う。 この点で本船の事故の当事者は一義的に船主である、という認識が海運業界では一般的だ。

 WAKASHIOのケースでは長鋪汽船が本船の実質的な現場管理者で、商船三井は長鋪汽船から船舶をチャーター=用船して、商船三井が荷主と契約した貨物を輸送する立場にある。

 

 実際、日本の海運大手3社の運航船2000隻前後のうち、6-7割が船主からのチャーター船で構成されている。チャーター船について実際の航海中の運航は船主が管理している。 一方、海運会社に比べ船主は家族経営的な規模が小さい会社が多く、今回のような事故が発生した場合、広報対応や現地からの情報収集能力が乏しい。 このため、チャーターしている側の商船三井のような大手の運航船社側が社会的な説明責任の立場から広報を行うケースが多い。

 この場合、本船の事故の責任所在に関係なく、運航船社が広報を行っているため、実際の本船の現場管理者の責任と運航船社の責任は必ずしも一致していない点に注意する必要がある。(山本裕史)(Aug.10,2020-TJMD))

 


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