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『河合隼雄のカウンセリング入門』

2015-09-17 23:28:12 | 読書。
読書。
『河合隼雄のカウンセリング入門』 河合隼雄
を読んだ。

セラピストとして名高い、故・河合隼雄さんの、
40歳前のころの講座を4つ収録したものです。
カウンセリングの基礎の基礎である、
その立場や姿勢について述べている。

しかしながら、
カウンセリングの技術的なことに終始しているわけではなくて、
一般の人として、他者と向かいあうためだったり、
自分自身を知るためだったりすることに役立つ考えや
知識がたくさんでてきます。

たとえば、
頑張れない人に対して、そのひとのなかに怠け心をみるよりも、
まず劣等感が強いのではないかと見るべきじゃないか、というような考えもそう。

また、
早期解決をまず考えるというのがセオリーかもしれないけれど、
早期解決が本当の解決になるとは限らない。
早期解決にこだわらずに、その問題(こういう場合の多くは人間の心理の問題)が
本当に必要とする解決策を見つけるべきなんだろうと思う。
早期解決で解決したようにみえても、
それはうわべだけの解決だったり、
いっときの対症療法だったりする。
そうすると、そのうちぶりかえしたりこじらせたりするんだと思う。
問題と真正面から向き合って、
自分から克服していける方法がもっとも好ましいんじゃないだろうか。
と思うようになる箇所もでてきたりなどして、
考えながら読んでしまう。

自分で自分の気持ちをごまかすことによって、
それから自分のこころを起点としたヘンなことが起こってくる、
というカウンセラーならではのこころの見方もありました。

と、いうように、少し内容の欠片をならべただけでも
いろいろと興味をひかれるのではないかと思うのです。

そして、最後になりますが、
カウンセリングの目的としてのその本質が書かれていたので、
紹介しましょう。

___________________

人間というのは、相当な悪環境に放りこまれて、
相当な悩みがあり、相当に嫌なことがあっても、
自分で立ち上がってくる、そういう力を持っているということですね。
___________________


これは、カウンセラーが立ち会って、
話を聞いてあげることによって、
クライエントが自分の力で立ち上がってくると言っているんです。
なかなか一人だけで考えて、難しい境遇から脱することはできなかったりする。
その手伝いをカウンセラーはするのだ、と言っている。

これを聞いて、ぼくはこう思ったんだけれど、
たとえばSNSの言葉でも、誰かの名言でも、
誰かの本でもいいですけど、そういうのに触れて、
「あっ」と共感したり発見したり、
気づかされたりすることってあるでしょう?
それも一種の、カウンセリングによって自分が立ち上がることにつながるものと
同じような意味合いを秘めているんじゃないだろうか。
そういう言葉によって、癒されたり励みになったりする。
まあ、でも、これはあくまでぼくの私見です。

ぼくは河合隼雄さんの本を昔から何冊か読んでいますが、
この本こそ、その考え方や知識の土台となる本であると感じました。
この『カウンセリング入門』からはじめて、
人間の理解を深めていくのもおもしろいと思いますよ。


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