Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『「やる気がでない人」の心理学』

2009-05-20 22:12:43 | 読書。
読書。
「「やる気がでない人」の心理学」 加藤諦三
を読んだ。

これも、前回のUFOの本と同様、コンビニで同じときに買った本です。
とくに、自分は「やる気がでない人」ということで困っているわけではないのですが、
どういうもんかと思い、さらに著者の加藤諦三さんが
ラジオの人生相談をやっているのを何度か聴いたことがあって、
面白かったこともあったので、買ってみました。
プロフィールを見てみたら、東大卒の人でしたよ。

さて、内容はと言いますと、絶望感と無力感、そしてそこから生じる無気力について、
ほとんど全編を通して、まるで執着するように、愚直なくらいに語られています。
それも、言葉はやわらかいのだけれど、言っていることは辛辣めいた感じで。
あとがきでも触れられていましたが、無力感や絶望感をもった人たちに
批判的に語られています。やっとね、200pを過ぎたころから変わってくるし、
あとがきが救いになっているんだけれど、
昨日なんて、これを170p目くらいまで読んで寝たら、頭の中でその内容、
言われていることが頭の中でぐるぐるしだして、考え出して、寝付けませんでした。
どうやってか、反論したいし、逃げ道をみつけたいんだけど、
それができないんですよねぇ。
絶望感を持つ者になる理由、それを犬を相手にした実験で紹介しています。
犬に逃避不可能なかたちで電撃を加えて危害を与える。
それを何度もくりかえしたあと、逃避可能な状態で電撃を与えると、
逃げようと思えば逃げられるのに、
だまって、電撃の痛みを甘んじることになるそうです。
それが、絶望の状態。
話は戻りますけれど、僕がこの本を読んで寝付けないのは、逃避不可能な電撃を
浴びせられていることに似ているような気がします。
今日なんて、続きを読むのがおっくうでおっくうで。
一時的な無力感ですな。
この本では、犬の絶望によって無力感、無気力がしょうじて、電撃を逃れないのだ
と説明しています。それも、何度も。
こう、何度も同じようなくだりが出てくるので、僕のような、読みながら
すぐに細かいところを忘れていくタイプの人にも十分に内容をわかって読めるでしょう。

心に絶望感を宿す人、子どもの頃に逃避不可能な心的・身体的外傷を負った人。
そういう人が、なにをするにもおっくうに感じてやろうとしない人になると
書かれています。たしかに、論理の筋は通っていて、そのとおりだと読めます。
それだと、人生が楽しくないし、損をする。真の自立的な人間になれない。
さっきも書きましたが、あとがきも含めて200pを過ぎる頃に、
「では、どうしたらいいのだろうか」という読者の問いに対しての示唆が
与えられます。この本を読む人は途中で投げないで、最後まで読んだほうが
いいです。じゃないと、逆に、不快な思いをして本を投げ出してしまうことになる。
読んでいると、まるで絶望を抱えている人が読者その人だけで、
しかもそれを糾弾されているようにも思えてきます。

それでは、そんな、絶望を抱える人はマイノリティで、
非難されるような人なのでしょうか。
そうじゃないですね。読んでいるとわかってきますが、現代人の大体が絶望を
抱えているでしょう。
また、「どこへいくのだがわからないが急いでいる」人を、神経症的と書かれています。
絶望感も、神経症も、現代的だと思いませんか。
現代に生きる人は、誰でも病んでいると言えそう。
『ラスト・エンペラー』で知られる映画監督のベルナルド・ベルトリッチが、
「救いなんてないんだ」と言っているのを、坂本龍一さんのコンサート場内で
音楽にあわせてながれる映像で観たことがあります。
これも、絶望ですよね。
また、坂本さんの曲なんてのは、絶望を知っていなければできない表現だと
言えると思うんです、ずっとファンをやっていて。
とくに、ぱっと思いつくところだと、『音楽図鑑』というアルバムに収録されている、
『Self Portrait』なんかそうですね。
映画音楽の『シェルタリング・スカイ』もそうだなぁ。
でも、また、絶望とともに、その次の2次的なステージも表現しているような
気がするんですよね。この本には書かれていませんが、カタルシス的な
何かがあると思います。

話は変わりますが、終戦直後の日本人は絶望していなかったか、という疑問が
ふと頭に浮かびました。もしも絶望していたら、無気力になって、
その後の戦後の復興や高度経済成長もなかったに違いありません。
戦火や戦闘が、逃避不可能な電撃にはならなかったんですね。
いや、もちろん死者がでていますが、生殺しの苦痛ではなかったんじゃないか。
どこか、戦中も希望を持てていたのではないかと思います。
また、米軍の司令官、ダグラス・マッカーサーは終戦後、来日して、
「日本人は中学生レベルだ」みたいなことを言ったと何かで読んだことがあります。
中学生レベルの知性だったから、絶望しなかったのか。
はたまた、そこは関係ないのか。
先日、JMMで村上龍さんが、日本人は昔と違って、頭が良くなったというようなことを
書いていました。そんな、頭が良くなった現代の日本人は、
絶望を内に抱えていたりする。
何か、知性と絶望を抱えることと関係があるのでしょうかねぇ。

今回はこれ以上深く考えるのはやめにします。
あんまり長文を書きすぎたせいか、タイプしてから画面に表示されるのに
えらいタイムラグがかかっています…。
今ブログ史上最長の文章になってしまいました。失礼しました。
2454文字です。どうも。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。
この本に興味を持たれましたか?読んでおいても良い本でしたよ。
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