
写真は雲南農業大学でミツバチの管理やハチミツの採取の実習を行う学生。(2005年3月撮影)
【「硬蜜」が「皇蜜」に?】
次に「皇蜜」という名の由来です。不思議な名前ですよね。山口氏が経営する蜂蜜専門店 薬蜜本舗(http://www.yakumitsu.jp/pdt/koumitsu/)によると、
「歴代皇帝に献上されたと伝えられる」から、と書かれています。
そこで、いつの時代にだれが献上したのか、調べようと雲南ゆかりの詩も含めて文献をあさってみました。見当たりませんでした。私と同様の疑問を持った人がいたようで、日本の国会図書館のレファレンスサービスに「皇蜜」の調査依頼が出ているのを発見しました。以下、引用します。
「質問:蜂蜜販売会社のホームページに下記の情報が掲載されています。
『中国雲南省にはヤハシという植物があり、この花の蜜をミツバチが集めて作ったハチミツは普通のハチミツと違い固形化することから硬蜜ともいい、歴代の皇帝に献上されたことから皇蜜とも呼ばれるようになった。』
中国において「硬蜜」が皇帝に献上されたことを記録した古記録や歴史史料を探しています」
(2011年11月29日 レファレンス事例詳細より)」
この質問に対して、国会図書館は諸橋轍次『大漢和辞典』や中国学術雑誌全文データベース、雲南の地方志、『中国薬学大辞典』、『中国歴代貢品大観』など18種類以上のデータベースを検索し、結果、記載が見当たらないことを回答。
ただ、『楚雄彝族自治州志』の「野坝子」の項目に「素有“雲南硬蜜之称”」(「もともと“雲南硬蜜”という呼ばれ方はあった」:筆者訳)という記載はあった。ただ、その硬蜜が皇帝に献上された、という記述は見当たらなかったと記しています。
さて、日本語で考えると「硬」と「皇」は同じく「コウ」と発音しますが、中国語では「硬」は「イン」、「皇」は「ホワン」と読みます。こう考えると、「硬」に「皇」の字を当てるのはじつに日本的な発想ですね。
山口氏がヤハシ蜜の地元で「硬(い)蜜」と言ったのを通訳から日本語で聞いて、「皇(帝の)蜜」と考えてしまった、または、そもそも食物の由来話は、根拠のないものにさらに尾ひれをつけたものが多いので、地元の人が話す内容を鵜呑みにしてそのまま書いてしまった、というところでしょう。
ちなみにこのレファレンスサービスの質問を知ったためなのか同社のホームページの文言が断定調から伝聞調に変化し現在(2015年3月1日)に至っています。
(つづく)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます