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佐川美術館と佐藤 忠良
趣味を楽しむ
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2006年07月22日 19時00分02秒
佐川美術館の平山作品の展示室の横には柱の列が美しい廊下があり、その奥には平山と佐藤の会談をビデオで紹介するビデオライブラリーがあった。
その平山棟の隣が佐藤 忠良の彫刻作品の展示棟で、「ブロンズの詩」という看板が掲示されていた。
佐藤忠良は1912年宮城県に生まれているので現在94歳という高齢であるが今も健在のようで、少年期を北海道で過ごしている。
ロダン、マイヨールなど新しい生命主義の作品に惹かれて彫刻家を志し、東京美術学校彫刻科に進み、卒業の年に新制作派協会彫刻部を創立したという。
1944年徴兵されて満州に渡り、終戦後3年間シベリアで抑留生活を経験している苦労人である。
帰国後すぐに彫刻家としての仕事を再開し、それまでの人生経験からか作品は身近な人物たちをモデルにした生命感みなぎる頭像、清新な女性像、純真無垢なこども等に限定されている。
1970年代に〈帽子〉シリーズに代表される現代感覚あふれる新境地を開拓し、自然体のポーズ、さりげないコスチューム、抑制されたモデリングが高く評価されているらしい。
佐川美術館のなかにも帽子シリーズの作品が何点かあるが、この「夏」という作品は見事であった。
ライブラリーでの平山との対談で佐藤は、展示会に出すメインの作品と平行して、「夏」をサブの作品として作っていたが、メイン作品よりも力を抜いて造った「夏」が高く評価されたのでびっくりしたと語っている。
肉体の成熟と精神の幼さのアンバランスを彫刻で見事に表現した傑作で、肩の力をぬいて自然体で作った作品には、人の心を打つ何かが表現されるのであろう。
佐藤の作品はすべて平明で詩情豊かな作風で、現代具象彫刻のひとつの到達点ともいわれている。
1981年にはフランス国立ロダン美術館の熱心な招きで、日本人として前例の無い個展を開催し、これを契機にフランス、イタリアの美術アカデミーの会員に迎えられている。
日本ではそれほど有名な彫刻家とも思えないが、国際的には高い評価を受けているという。
となりの展示棟の平山郁夫が日本では文化勲章画家として超有名でも、世界ではまったく評価されていないのと好対照なのが面白い。
佐藤の作品は美術館で鑑賞されるほか、駅前広場や空港ロビー、公園などで気軽に出会えるくらい全国各地に多数展示されている。
また、素描家としても活躍しており、絵本『おおきなかぶ』や新聞小説などの挿絵も多く手がけていて、1960年代後半の若者に絶大な人気のあった女優、佐藤オリヱの父親でもある。
佐藤オリヱが出演した「若者たち」に感動した団塊の世代は多いと思う。
ひょっとしたら、佐藤忠良の最高傑作作品は佐藤オリヱであったかもしれない。
佐藤作品を楽しんで出口に向かう途中に佐川美術館のコーヒーショップがあった。
コーヒー500円は少し高いが、心洗われる作品を見た余韻をこのコーヒーショップで楽しみながらゆったりと過ごすひと時は良いものである。
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